『War Thunder』のDMM GAMESによる日本運営開始! 変化やメリットは?

 DMM GAMESは、2016年8月9日より、ロシアのGaijin Entertainmentが提供するPCゲーム『War Thunder』の日本国内運営を開始した。既存プレイヤーはアカウントの移行期間を経て、日本国内からの『War Thunder』へログインする際は、DMM GAMESが提供するゲームランチャー“DMM Game Player”を通じて行なうようになる。

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▲DMM GAMESが今春から運営を開始した『エルダー・スクロールズ・オンライン』日本語版の運営ディレクターも務める稲垣順太氏(文中は稲垣)。同社の海外タイトルパブリッシングの今後を担うキーマンだ。

 海外のタイトル、しかもすでに日本国内でもアカウントを作成して長らく楽しんでいるファンも多い作品なだけに、今回の発表に不安を覚えたプレイヤーも少なからずいたことだろう。さまざまなタイトルのパブリッシングに精力的なDMM GAMESの今後の方針を知る上でも非常に気になる国内運営について、『War Thunder』日本運営ディレクターの稲垣順太氏にお話をうかがった。

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――『War Thunder』がDMM GAMESでのサービス開始を迎えるということで、まずは『War Thunder』を知らない読者に向けて、どのようなゲームなのか、魅力はどこなのかをご説明いただけますでしょうか。

稲垣 『War Thunder』は、第二次世界大戦前後の戦車と航空機で最大16人対16人での対戦を楽しめる、コンバットシミュレーションPCゲームとなっております。その魅力としましては、まずは使用できる機体数が現段階でも700を超えているという点が大きいですね。さらに海外の一部プラットフォームでは戦車と航空機が同じ戦場で入り乱れる対戦が可能になっていまして、将来的には戦車と航空機、さらには軍艦と、陸空海で別々ではなく、同じ統合戦場での対戦が可能になるよう開発が進められています。

――ゲームモードも、非常に特徴的なタイトルですよね。

稲垣 そうですね。簡単な操作で対戦が楽しめるアーケードバトルをはじめ、空力などが忠実に再現されたリアリスティックバトル、さらにキーボードやコントローラー単体では操作ができないほどに細かに操作系統が再現されたシミュレーターバトルと、3種類のモードが用意されています。

――シミュレーターはスティック型デバイスがないと、離陸すらままならないほどに本格派ですからね(笑)。

稲垣 さらにVRの方にも対応しておりますので、スティックやVR機器をご用意いただければさらに本格的な操縦体験ができます。リアル志向の皆さんには、ぜひお試しいただきたいです。

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▲操縦席の計器類や、弾痕や煙などのダメージ表現、そのダメージによる挙動変化など、機体をどこまでもリアルに体感できる。PCに対する要求スペック基準が低いのに、機体や背景のグラフィックが非常に美麗な点にも要注目だ。

――コンバットシミュレーションということで、近年話題のe-sportsを連想する人もいるかも知れませんね。

稲垣 『War Thunder』については、個人的にはe-sportsという感じはあまりしないと思っていまして。現在もサンダーリーグという大会はありますが、そちらもみんなでワイワイと盛り上がっているといった印象で、e-sportsとしてというよりは(ゲームでありエンターテインメントであるというよりは)、“歴史”の再現に重きを置いているタイトルだと思います。

――モードによっては無理をすると空力で翼がもげたりする機体だったりするので……、e-sportsに合うかというのもたしかに話が違いますね(笑)。

稲垣 離陸や着陸、上昇など、ゲームとしては当然できるべきことがモードによっては難しいですからね。しかしそうしたリアル志向・歴史再現の側面こそが、『War Thunder』のおもしろさだと思います。ゲームとしては理不尽なんですが、歴史として見ると本当にそういう機体だったんだ、ということが体験できますし、そこが楽しいと思います。

――では続いて、DMM GAMESで『War Thunder』が運営されるに至った経緯を教えていただけますか。

稲垣 『War Thunder』開発会社のGaijin Entertainmentが、2年以上前から各国でのパブリッシャーを探していたということがありまして。しかし、2年前にはDMMもまだ認知度が低く、マーケティングの要望に応えられるほどではありませんでした。それからChina Joyなどの国際ゲームイベントで何度も先方にお会いするうちに、DMM GAMESでお客様を集められる状況とプラットフォームが整ってきまして、それならばと一度お話が決まってからはトントン拍子で進んでいきました。

――DMM GAMESでは、ほかにもさまざまな海外タイトルをパブリッシングしていますよね。

稲垣 DMM GAMESとしても、パブリッシングさせていただけるタイトルがもっと欲しいところでして、その中でも『War Thunder』は単純に“おもしろい”というところが魅力でした。知っている人は知っているといった名作ゲームでして、より多くの人に知っていただきたいと思ったところと、先方がパブリッシャーを探しているという2点が噛み合ったことが、国内運営を決定した理由の中でもっとも大きな部分ですね。

――既存プレイヤーにはとくに気になる点だと思いますが、DMM GAMES側での開発参加や、ゲーム内容の変更などはあるのでしょうか?

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稲垣 ゲーム内容自体には関わらないと言っていいかと思います。DMM GAMESのおもな役割は、日本人ユーザーの皆さんの要望をまとめ、Gaijin Entertainmentへ伝えていくことになります。 「この戦車を入れてくれ!」「爆撃が強すぎるから抑えてくれ!」などと、DMM GAMESが勝手に要望を送ったりするわけではなく、あくまでDMM GAMESは日本でのマーケティングとカスタマーサポート、それと課金システムについてのお手伝いをしていく形です。

――すると『War Thunder』はDMM GAMESでも、今までの内容がそのままプレイできるわけですね。

稲垣 このゲーム自体、先ほど触れましたように非常におもしろいタイトルですので、そのよさをお伝えするためにも、こちらでは極力いじらないようにしたいところです。逆に課金システムについては、現在のクレジットカードや海外の煩雑なシステムで少し割高な価格となってしまう状況を、DMM GAMESでよりわかりやすくできればと。

――海外のPCゲームなだけに、課金の手間や為替変動などに悩むところも多かったですからね……。

稲垣 また、課金まわりはこちらから関与していきますが、既存のプレイヤーの皆さんには、現状のサーバーでのプレイ状況はすべてそのままの形で、今後もプレイしていただけます。「現在稼働中の『War Thunder』に、DMM GAMESという新しいポータルからログインできるようになる」とお考えいただければよいかと。

――アカウントの移行はあっても、ゲーム自体をプレイする上ではとくに変わる点はなく、現状のサーバーでそのままプレイできるわけですね。

稲垣 そうなりますね。Gaijin Entertainmentでは「アパートに入る鍵が変わるだけです」とオシャレに説明されていますが、まさにその通りです。

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▲16人対16人の、海外プレイヤーも交えた対戦ごとのお祭り感も本作の魅力。日本での運営となっても従来の『War Thunder』の雰囲気はまったく変わらないようで、既存プレイヤーの皆さんはぜひご安心を。

変わらないけどメリットは多数。その運営の内容とは?

――では続いて、ゲーム内容はこれまで通りということですが、DMM GAMESのアカウントで『War Thunder』をプレイすることで、ユーザーに生じるメリットというのはどういった点でしょうか。

稲垣 メリットしましては、まずは課金がDMMポイントで可能になることが大きいかと思います。DMMポイントでしたら、PayPalなどに加えてBitCoinにも最近対応しましたし、クレジットカードやコンビニ払い、携帯料金払いなど、いつでもどこでも購入可能になっていますので。

――現状の『War Thunder』ですと、クレジットカードがあっても課金の仕方が難しかったりしましたからね。

稲垣 また、ログインする手間についても、DMMのゲームランチャーにログインしていただければそこからパッチクライアントを経てすぐに起動できますので、手間が生じるようなことはありません。今ある自動ログインについても今後導入を予定してまして、より手間が省けるようにしていきたいと考えています。

――むしろほかのDMM GAMESのタイトルと同じアカウントでログインできるぶん、DMM GAMESユーザーには楽になりそうですね。

稲垣 そして公式フォーラムについては、現在でも日本のユーザーさんがGaijin Entertainmentさんに直接問い合わせることはできるようになっておりまして、その直接の窓口は残していきます。それでも海外の会社に直接伝えるのにためらいがあるユーザーさんはいらっしゃると思いますので、その方たちの問い合わせをこちらで受け持ってやらせていただきます。DMM GAMESでは24時間対応で、また時差の心配もなくご利用いただけますので、よりユーザーの皆さんのお役に立てると思っております。

――ローカライズについてはあまり施さないのでしょうか?

稲垣 今までも有志の方々の手によって日本語化はされていたんですが、今後はユーザーの皆さんのご指摘などもいただきつつ、DMM GAMESのほうでより進めていければと思っています。サービス前にすでに直している部分もありますが、かなり量があり完了まで時間はかかるかと思いますので、順次直していけるように努めていきます。独特の味のあった訳などが直ってしまって寂しい思いをしてしまう方もいるかも知れませんが……そこはご了承いただければと(笑)。

――では、CDK(ユーザーがミッションを作成してフォーラムに投稿できるシステム)は引き続き使用できるのでしょうか?

稲垣 使えますが、まだ日本語化対応は終わっていない状態です。まずは使い方についてすべて和訳して掲載しますが、こちらは専門用語も多くスタッフも四苦八苦しておりまして……翻訳にはさらに時間をいただくことになってしまうかも知れません。

――日本向けの独自のサービスや展開はお考えでしょうか。

稲垣 日本向けには、各種イベントなどを展開できればと考えています。Gaijin Entertainmentからも「日本地域だけのイベントも可能」とのお話もいただいておりまして、さっそく事前登録キャンペーンで日本限定のデカールなども作ってもらいました。これからも日本ユーザーの皆さんに、限定アイテムをプレゼントするイベントなどを企画していきます。

――ゲーム内のラジオボイスでは、日本の声優を起用していますね。

稲垣 既存の音声も味がありますし僕も個人的に好きですので、それが好きな方のために残しつつ、大塚芳忠さんと朴璐美さんのボイスを入れさせていただきました。今後もユーザーの皆さんから「この人のボイスを!」などのご要望が多ければ、さらに実装していきたいですね。

――ちなみに、日本地域限定の機体などの実装の可能性は……?

稲垣 Gaijin Entertainmentからは「できるけどすごく時間がかかる」と言われています。もし実装するとなるとせっかくの機体ですから、最初に日本でだけ先行使用できて、のちに海外で使用できるようになるといった形になるかと思いますね。

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▲ボイスだけでなく字幕などのインターフェースも、日本語化が進むのは非常にありがたい。雰囲気重視で外国語を選択するのももちろんアリだ。

今後を支えるのはユーザーの要望や情報! そして気になる“海戦”は?

――こうしたゲームをプレイしていると気になる点なのですが、DMM GAMESの『War Thunder』運営スタッフの皆さんはミリタリー好きなのでしょうか?

稲垣 好きかどうかと言うと底なし沼レベルになるジャンルなのでお答えづらいですけど(笑)、ミリタリーというよりは歴史好きな側面は強いと思います。『War Thunder』は歴史に則っていろいろな体験ができるゲームでもありますし、戦車や航空機のことを調べてみると、それらの機体がどの戦いでどのように運用されたかなど、いくらでも時間をかけて歴史を楽しめることがとくにおもしろいと思っています。

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――第二次大戦初期から、さらには末期以降のジェット機まで幅広く登場するゲームですしね。

稲垣 ミリタリー関連では、Gaijin Entertainmentからは、日本の機体の情報を集めてほしいとも言われているんですよ。向こうでは集められない情報が欲しいということで、こちらでも国会図書館などあちこちで資料を探して送っていますが、かなり大変ですね……。

――日本の戦車や航空機は、とくに記録が残っていないらしいですからね。

稲垣 僕らも探してはいるんですけど、図面が青図面でコピーも撮影もさせてもらえずに「手書きで持ち帰るしかないのか……」と唖然としている状態でして、まだまだ資料や情報が欲しいところなんです。最近は未実装の航空機についてリストアップしたところ、「全部資料が欲しい」と即答されて慌てています。さらに航空機については、どんな資料が欲しいのか確認してみると、ただの写真や図面だけでなくテスト飛行の情報が欲しいと強く要望されているんですよ。 

――状況記録や映像記録がないと、どうしようもないところですね……。

稲垣 機体の再現についてこだわっていることは、以前から『War Thunder』を見ていてわかっていたんですが、実際にやり取りさせていただくと「そこまでこだわっていたのか!」と驚くとともに、困っている部分も多いですね。まだまだ勉強不足ですので、ユーザーさんの方からも「ここに行けばこういう資料がありますよ」などといった情報をいただけるとすごく助かります。

――Gaijin Entertainmentはいろいろな面で日本ユーザーにかなり気を遣ってくれている印象なのですが、実際はどうなんでしょうか。

稲垣 公式サイトに日本語のフォーラムが用意されているだけでなく、僕がやりとりさせていただいている方も、少し日本語が喋れたりするんですよ。さらに「何かあってもウラル山脈を越えてサポートしに行くから安心してくれ!」などと、いちいちシャレの効いた連絡をくれたりして(笑)。それくらいスタッフの皆さんは日本を気にかけてくれていまして、将来的に海戦を導入する際には日本の艦船も導入してもらえると期待しています。

――今ちょっと気になるお話が出ましたが、海戦の導入について具体的な時期などは……?

稲垣 確定次第すぐにお伝えできるよう準備をしています(※)。陸空海で同時に対戦ができる、統合戦場についても同様でして……。Gaijin Entertainmentとしても統合戦場は当初から目指している大きな目標ですし、全力で進めていますので、続報をお待ちください。

(※)8月12日に、2016年内に海戦のクローズドβテストを行うことが発表された。
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――海戦実装はそう遠くない、と。楽しみですね。

稲垣 日本向けローカライズのテコ入れにこだわるタイトルも多いですが、『War Thunder』に関しては海外のプレイヤーと同じサーバーでわいわいと遊べるという点がおもしろさの一環だと思いますので、そうした点は大事に残していきたいと思っています。僕らが入ったことで『War Thunder』のおもしろさが損なわれた、と思われてしまうことは何より避けたいところですので、今まで通りおもしろくてさらに遊びやすくなるという、付加価値を付けていくような運営体制をとっていきたいと考えています。

 元々よい作品である『War Thunder』にこちらから手を加えることはなくとも、提案や要望は開発に伝えていきますので、ユーザーの皆さんからは『War Thunder』をよりよくするためのご要望をどんどん寄せていただければうれしいです。

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▲資料の情報をもらえればどこへでも飛んでいく、と精力的な稲垣氏。イチからのスタートとなる日本での『War Thunder』運営を、よりゲームを楽しむためにも、ぜひユーザーの皆さんの力で支えていってほしい。