金髪碧眼の侍が魑魅魍魎を斬る!

 2005年のタイトル発表からじつに12年ものときを経て、本日2017年2月9日、プレイステーション4用ソフトとして『仁王』がいよいよ発売となる。“戦国死にゲー”と称される本作では、いったいどのような体験ができるのだろうか? 発売に先駆けてプレイする機会に恵まれたので、魅力的な要素の紹介を交えつつ、プレイインプレッションをお届けしよう。

『仁王』発表から10年以上の重みは伊達じゃない! 格別の緊張感と達成感を味わえる“戦国死にゲー”プレイインプレッション_01

多彩な武器種と“構え”による奥深い戦闘

 本作の舞台となるのは、関ヶ原の戦いを目前に控える戦国時代末期。主人公のイギリス人ウィリアムは、とある理由でエドワード・ケリーという人物を追い、長い航海の末に日本に辿り着く。渡航後、黒田官兵衛や服部半蔵、徳川家康などの名だたる偉人たちと交流しながら、ケリーの姿を追って全国を巡るというのが大まかなストーリーだ。

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▲ウィリアムが“仁王”と呼ばれるに至る過程を描く。続きが気になる絶妙なストーリーは見もの。

 ケリーを追う道中には、野武士や忍者、長い戦乱の影響で世の中に跋扈するようになった妖怪など、さまざまな敵が待ち受けている。ウィリアムは刀、二刀、槍、斧、鎖鎌、の5種の近接武器と、弓、銃、大筒の3種の遠距離武器を使って敵と戦うわけだが、斧なら“動きは遅いが一撃が重い”、鎖鎌なら“分銅と鎌を使い分けて長短自在に戦える”といった具合に、武器はいずれも個性的。お気に入りの武器が必ずひとつは見つかるはずだ。筆者としては、甲乙付けがたいのだが、どんな状況でもソツなく立ち回れる刀が気に入っている。やはり、刀は安定感がすばらしい。

 また、近接武器には、上段、中段、下段の“構え”が用意されている。上段構えは“振りが遅い代わりに威力が高い”、中段構えは“攻撃範囲が広い”、下段構えは“素早い連続攻撃が得意”など、同じ武器でも構えによって戦いかたが劇的に変化するため、戦闘が非常に奥深い。「この敵は体力が少ないから上段構えで押し切ろう」、「この敵は初めて見るから、中段構えで様子を見ながら戦おう」など、戦略を練りながら臨機応変に構えを切り換えて戦うのは、本作ならではのおもしろさだ。

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▲遠距離武器は持ち運べる矢弾の数が限られているものの、弱点を狙いやすく、威力も高いので強力だ。
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▲攻撃には“気力”を消費する。この気力の管理が戦闘のキモだ。攻撃終了時に“残心”というアクションを取れば、消費した気力を一定量回復できるぞ。うまく決まったときは、気持ちがいい!

 また、特定の武器を使い込むと“サムライスキル”を習得できるようになる。サムライスキルは大別して、身体能力を上昇させるパッシブスキルと、強力なアクション“武技”の2種類。なかでも武技の習得は、戦闘中の駆け引きの選択肢が増えるので、目に見えて戦闘が楽しくなる。スキル習得画面で「どのスキルが強いかな……」と、スキルを吟味する時間も本作の醍醐味だ。ちなみに、筆者は武器ごとにいろいろな武技を習得して使っていたら、スキル習得に必要になる“サムライスキル値”が足りなくなり、パッシブスキルが習得できず、決め手に欠ける器用貧乏な感じになってしまった。メインで強化するいくつか武器を決めてから、スキルを習得するのがいいだろう。なお、“六道輪廻の書”というアイテムを使えば、スキル値を振り直せるので、記者と同じ状況に陥ってしまっても心配は無用。“死にゲー”というシビアなゲームジャンルのなかで、このあたりの親切な設計はうれしい。……本当にありがとうございます。おかげで、器用貧乏を脱却できました……。

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▲ニンジャスキルと陰陽スキルを修得すれば、有用なアイテムをステージに持ち込めるようになる。
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▲スキルに応じて、習得に必要になるサムライスキル値は異なる。スキル値をやりくりしながらスキルを習得し、ウィリアムを強化していくのだ。

くり返しステージに挑み、踏破する快感

 本作には、ストーリーが進行する“メインミッション”、アイテム収集にうってつけの“サブミッション”、そして、強敵ばかりが登場し、出現するミッションが時間によって変わる、高難度の“逢魔が時ミッション”が用意されている。ミッションをクリアーすると、報酬として、装備品などのアイテムを得ることができる。

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▲ワールドマップからミッションを選択してステージに突入する。ワールドマップにある拠点では、“鍛冶屋”でアイテムの鋳造や分解を行ったり、“修行場”で戦闘の手ほどきを受けることが可能だ。
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▲“社”では、敵を倒すなどして獲得した“アムリタ”を使って能力値を上げられる。サムライスキルと同じく、自分のプレイスタイルにあったキャラクタービルドを考えるのがとても楽しい。

 しかし、そうやすやすとミッションをクリアーさせてくれないのが本作の“死にゲー”たるゆえん。ステージのそこかしこに、人知を超えた妖怪などの手強い敵が跋扈し、さらに最後には、ひときわ強力なボスが待ち受けている。そのため、プレイ中の緊張感は尋常ではない。攻撃を食らって死んでしまったときは「うっ……!」と思わず声を出してしまうし、コントローラを握る手にはビッショリと汗が噴き出してくる。文字通り“手に汗握る”緊張感があるのだ。
 この緊張感の中で、トライ&エラーの末に敵への対処法、攻略法を見出し、自分の手で勝利をつかみ取るのがたまらなく気持ちいい。「こんなの無理!」と思ってしまうような圧倒的に強いボスにしても、こちらが付け入る隙がどこかに必ずあり、挑戦すれば挑戦しただけ勝利への筋道が見えてくるような作りになっている。その筋道を見つけ出して、自分の中の“無理”という気持ちを打ち壊した瞬間に、それまでの苦労を補ってなお、余りある達成感が得られるのだ。

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▲外見から名前を想像できるメジャーな妖怪から、筆者的には名前を見ても「?」な妖怪まで、個性豊かな妖怪が登場するのも本作の魅力。ちなみに左は“飛縁魔(ひのえんま)”で、右は“鵺(ぬえ)”だ。
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▲死亡した際に画面上にデカデカと表示される“落命”の2文字……。この画面を何度も目にしながら、プレイヤーは成長していく。

 ミッションクリアーで得られる装備には、雷神を斬ったと伝えられる刀“雷切”や、国宝にも指定されている“圧切長谷部”など有名なものもあり、それまでの苦労も相まって、入手したときの感動もひとしおだ。
 装備品の性能はどれひとつとして同じものはなく、毎回ランダムに性能が決まる。たとえば、雷切は雷切でも、攻撃力の高いものがあれば、低いものもあるのだ。また、同じ武具でもレア度が異なり、白→黄→青→紫といった具合に貴重になっていく。レア度の段階がひとつ上がるごとに、付与される特殊効果もひとつ増えるので、基本的には紫のレア度の武器がもっとも強くなりやすい。また、武器には“愛用度”があり、使い込むことで強くなる。“お気に入りのひと振り”を作れるのがうれしい。
 ただし、紫のレア度のものの中でも、強い武器と弱い武器がある。このランダム性があるからこそ、「強い武器が欲しい」という収集意欲が沸くのだ。筆者の場合は、全身の装備品をレア度が紫のもので揃えたい衝動にかられ、性能が低くてもレア度が紫でさえあれば装備している。早く、強力なもので揃えたいところだ。

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▲銃でレア度が青のものと、紫のもの。レア度やレベルが違うと、同じ武器でも性能にこれほどの差が出る。

 ここまで述べてきたように、本作は“死にゲー”に、敵を倒してアイテムを得るという要素を絶妙な塩梅でミックスした“戦国死にゲー”だ。じつのところを言うと、筆者は本作をプレイする前から、“戦国時代を舞台に金髪碧眼の侍が魑魅魍魎を斬り伏せる”という世界観を、とても魅力的に感じていた。ただ、それと同時に「ゲームとして本当におもしろいんだろうか。こけおどしになってしまうのでは……」という不安も抱いていた。しかし実際にプレイしてみると、それは杞憂に終わった。“死にゲー”というジャンルが、本作の世界観に絶妙にマッチしていたのだ。独特な世界観が売りのゲームは、得てして世界観だけが突出してしまい、雰囲気だけを楽しむゲームになりがち。だが本作の場合は、ゲームジャンルと世界観が見事に調和しているため、世界観がひとり歩きすることなく、ハイレベルな次元で完成されている。難度の高さゆえに、万人にオススメできるタイトルというわけではないが、RPGであるゆえ、レベルを上げれば何とかなる面もあるし、マルチプレイで友人らに協力してもらう、ということもできる。少しでも多くの人に、この“戦国死にゲー”をプレイしてみてほしい。

著者:河合ログ
 アドベンチャーゲームと3Dアクションゲーム、とりわけFPSが好物。最近はのんびりと『7 Days to Die』を遊びながら『フォーオナー』の発売を楽しみにしている。