高速縦スクロール2Dシューテイング
ミサイルの先にちょこんと乗っかった男(?)が、パステルカラーの空を駆け回る。そんな絵本のようなかわいらしいビジュアルとは裏腹に、『Missileman』の難易度は熟練のコアゲーマーを満足させるほどストイックだ(ぜんぜんかわいくない)。敵の攻撃は熾烈を極めるうえ、被弾を避けようにも左右の壁が動きを制限する。敵を倒すことでレベルアップし、強力な特殊スキルを獲得できるが、ゲームオーバーになればレベル1からやり直し。引き継げるのは、自身の“スキル”だけだ。
ならば本作は、プレイヤーが苦しむ様子を見てあざ笑う、ドSで鬼畜なゲームなのか。答えは“否”だ。むしろ本作を遊んでいて感じるのは、プレイヤーの上達を心から喜ぶ、母親の眼差しにも似たやさしさである。本作では、うまく敵を倒してコンボをつなげることで、獲得経験値が何倍にも膨れ上がる。つまり、腕前の向上に報いる形で、ゲーム内の武装は二次関数的に強力になるのだ。「もっとうまくなりたい」というゲーマー心理がくすぐられ、何度負けてもくり返しプレイしてしまう。
クリアーできたことを誰かに自慢したくなる、挑戦しがい溢れるゲームだ。ぜひ、この難しさとおもしろさに打ち震えてほしい。そしたら僕が、ドヤ顔で自慢しにうかがいますので。
Point1 多彩で強力な特殊スキル
本作を幾重にも奥深くしているのが、レベルアップで獲得できる強力無比なスキルの数々。“ミサイルが敵を貫通する”、“ライフの最大値を上げる”といった分かりやすい能力から、“外れたミサイルを回収して経験値ゲット”といった変わり種まで、一度のプレイですべての能力を獲得することはできないため、スキルの取捨選択も腕の見せどころだ。
Point2 立ち塞がるボスとの死闘
4面あるステージの最後には、それぞれ凶悪なボスが待ち受けている。ボスの攻撃は、道中に登場したギミックの集大成。無策で挑んでも、苦戦を強いられることは必至だ。というか、まず間違いなく負ける。さればこそ、勝てたときには自分が強くなったことを実感できる! 喜びも束の間、つぎのボスにまたボコボコにされるのだけど。
スペシャルインタビュー夫婦で気負わずに、自然体で開発できた
Game or Die 大橋伸乃介氏・愛子氏に聞く
――『Missileman』開発の経緯を教えてください。どのような経緯で、『Missileman』を開発することになったのですか?
伸乃介 “ミサイルに乗った男”というビジュアルイメージは学生のときに思いつきました。当初はスケボーやサーフィンのようにミサイルの側面に乗ってトリックを決めながら敵の群れを回避し、敵母艦に体当たりをするというモノをイメージしていました。そのイメージを妻に話したところ、ミサイルの先端に乗った男がゆらゆら揺れながらバランスを取っているスケッチを彼女が描きました。それが凄くマヌケでかわいくてひと目で気に入りました。
システム的な面で言うと、私は『スター・ウォーズ』が好きで、デススター表面の溝にXウィングが入り込んでのドッグファイトのシーンがとくにお気に入りで、狭い通路をハイスピードで飛び抜けながらの戦うゲームを作ってみたいなと思っていました。
この、「“ミサイルに乗った男”のビジュアルと、“壁の隙間を抜けながら1発ずつ敵に撃ち込むシューティング”をあわせたモノを試作してみたら悪くないんじゃない?」という感じになって、本制作にとりかかりました。
――開発にあたって、とくにこだわったポイントをお教えください。
伸乃介 移動とショットをバーチャルパッドなしの2本指で操作できるようにしたところですね。スマホのシューティングというと、ショットがオート連射というのがふつうだと思うんですが、このゲームは「狙って撃つ」ことがメインコンセプトのひとつなのでショット操作は必須でした。最初はショットボタンを配置することを考えていたのですが、Unityのマニュアルを読んでたら、「ボタンなしで行けるんじゃないか?」と思い挑戦してみました。
――『Missileman』のデザインがかわいいともっぱらの評判ですが、デザイン面でのこだわりポイントをお教えください。
愛子 クールでスタイリッシュな絵柄や動きを目指した時期もあったのですが、自分的には無理があったというか、自分に近い小さくてずんぐりむっくりしたキャラクターの方が細部までイメージしやすかった、というのが正直なところです。どういうテイストだったら世間に好まれるとか、どう世間に見られたいとか、そういうことを考えないで自然に思うがままに作ることで自分らしさが出やすいというか、個人制作ならではのよさなのかなと思うようにしてました。
あとは、一番目にする機会の多いアップグレード画面でも楽しんでもらえるようにスキルが積み上がっていく見せかたや、スキルアイコンをかわいく描いたところです。
――リリース以降のユーザーさんの反響をお教えください。
伸乃介 難しさにイライラしながらも、苦労してクリアーしてくれたユーザーさんには強烈な達成感を感じていただけたようです。この“強烈な達成感”は私たちがユーザーさんに感じて欲しかった部分でした。ただ、ちょっと難易度が高すぎたようですね。ネットの反応やレビューを見ていると、評価が真っ二つに割れているように感じました。「爽快! 楽しい!!」という人と、「難しすぎる! 全然遊べない!! おもしろくない!!」という感じに。
――リリース後アップデートされましたが、その狙いをお教えください。
伸乃介 難易度が高過ぎたようなので、もう少し遊びやすくなるように修正しました。単純に敵や壁の難易度を落とすような修正ではなく、プレイヤーに対するご褒美を強化する方向での修正です。ボスを倒すとレベルアップに必要なEXPを落としたり、コンボがステージをまたいで継続するようにしました。このアップデートでクリアーできるようになった人が増えたようです。
――Twitterによると“悩んだ結果、現在の難易度が『Missileman』にとってベストであるという結論に至った”とのことですが、もう少し詳しくお聞かせいただけないでしょうか。
伸乃介 難易度が高過ぎてまともに遊べない人もいるだろう、という想像はリリース前からしていたのですが、リリースしてみてそういう遊べない人たちの声を実際に目の当たりにすると、申し訳ない気持ちが出てきてしまって。そういうユーザーさんを救済するために“イージーモード”などの実装も検討しました。そんな感じで凄く悩んでいるときに、ある方から「インディーゲームは好きで作っているものなんだから、自分たちがつまらなくなったら終わりだよ」というお言葉をいただき腹が決まりました。『Missileman』のコンセプトは“死ぬほど難しいモノを乗り越えて感じる強烈な達成感”であり、それを貫こうということに決め、“イージーモード”の実装はやめて、プレイヤーへのご褒美の強化の方向に調整しました。
愛子 じつはわたしは、まだクリアーできていないのです……。アクションゲームはめちゃくちゃ下手くそですが、よく遊びます。ただ、このゲームに限らず「クリアーできないからおもしろくない」とは感じたことはなくて、むしろ他の人より長く楽しめて得したような気分になりますし、クリアーできたときの達成感はとても大きいです。
クリアーするまでの過程がおもしろいのが一番かなと思ったので、わたしも現在の難易度でよいと思っています。
――夫婦で開発されている点が注目を集めていますが、夫婦で開発することにした理由をお教えください。役割分担はどのようにしているのですか?
伸乃介 妻がグラフィック担当で、私がプログラム担当です。ゲームデザインとレベルデザインも基本的には私が行っています。10年以上いっしょに生活しいっしょにゲームを遊んできたので、2人で作るということに何も疑問は持たなかったです。
ごく自然に、いっしょに作ろう!という気持ちでした。
愛子 主人に「僕の考えているゲームのグラフィックやってくんない?」的なことを言われて、「いいよー」と軽く返事した記憶があります。10年ほどゲーム会社でずっとUIデザイナーとして働いてきて、キャリア的に「このままずっとUIを作っていていいのかな」みたいな迷いが出てきてた時期だったので、キャラクター、背景、エフェクト、すべてのグラフィックを作るいい機会だなとも思っていました。
――夫婦で開発することのメリットをお教えください(あと、デメリットなどもありましたら…….。
伸乃介 メリットは、ずっといっしょにいられることですかね。つねにいっしょなので何か思いついたときにすぐ相談できるし、成果物をすぐに見せあえる。デメリットは、とくにないかなぁ。もちろん、価値観の違いからケンカもしますが、あんまり長引かないですね。散歩してご飯食べてゲーム遊んだら元通りって感じでした。
愛子 メリットは変に気負わず、自然体で開発できたことです。お互いの習性がわかっているので、見栄を張る必要もありませんでした。ケンカが長引かなかったのは、主人を怒らせるとその日の晩御飯を作ってくれなくなるかもしれない……それは嫌だ…という気持ちになって、ネガティブな感情が自然と消えていったからです。
――オススメのスキルをお教えください(その理由も)。
伸乃介 “ペイバック”ですね。シールドが破壊されたときに援護ミサイルを30発発射するのですが、援護ミサイルの威力が上がる“ジャイアントビーンズ”と併用するとボスに大ダメージを与えられる。“吸収”系のスキルとの相性もよく、攻めにも守りにも使えるので楽しいですよ。
――今後の展開のご予定などをお教えください。
伸乃介 現在、Android版の実験を行っているところです。たぶん、リリースできるのではないかと……。正式発表を楽しみにしていてください。
――最後に、ファンの方に向けてのメッセージをお願いします。
伸乃介 スピード感と爽快感が溢れるゲームに仕上がりました。難易度は高いですが、クリアーしたときの達成感を格別だと思います。ぜひ、がんばってクリアーを目指してください!
Missileman(ミサイルマン)
メーカー | Game or Die |
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対応機種 | iOSiPhone/iPod touch |
発売日 | 2017年1月31日配信 |
価格 | 360円[税込] |
ジャンル | シューテイング |