中核を担うふたりが語る『アライアンス・アライブ』

 フリューが手掛ける完全新作RPG『アライアンス・アライブ』。注目度の高い本作について、週刊ファミ通2017年5月25日号(2017年5月11日発売)でプロデューサー兼ディレクターの松浦正尭氏とゲームデザインを担当する小泉今日治氏にインタビューを敢行した。このインタビューに掲載しきれなかった部分も含めた、完全版をファミ通.comに掲載する。

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■プロデューサー&ディレクター
松浦正尭(まつうら まさたか)氏(文中は松浦/写真左)
フリュー所属のゲームデザイナー。『レジェンド オブ レガシー』では企画・ディレクションを務める。本作では、マップ、UI設計も担当している。

■ゲームデザイン
小泉今日治(こいずみ きょうじ)氏(文中は小泉/写真右)
グレッゾ所属。スクウェア・エニックス在籍時、『ロマンシング サガ2』や『サガ フロンティア』など、多数の作品でゲームデザインを担当していた。

こだわりの光る世界観×心地よさ
ユーザーからも体験版は高評価!

『アライアンス・アライブ』松浦正尭氏&小泉今日治氏へのインタビューでさらに詳しいシステムが見えてきた_04

――『レジェンド オブ レガシー』(以下、『LL』)と『アライアンス・アライブ』(以下、『AA』)は、どういう立ち位置の作品として作られているのでしょうか?

松浦 共通スタッフによる『LL』の実質続編とか、『LL』を反省してストーリー性を入れたRPG……などと言われたりもしますが、これは少し誤解があります。『LL』は、短期間での制作が前提のプロジェクトでしたので、要素をシンプルにまとめて尖らせる必要があったため、もともと続編に広げられる内容のゲームではありません。仮に『LL2』を作るとしても、『AA』のようにストーリー的な要素を入れるのは間違いですので、『LL』の進化の方向は、まったく別のところにあります。『LL2』を実現するためには、ハードや制作体勢を考え直す必要があり、下準備に時間がかかりすぎるため、提案しませんでした。その代わりに提案したのが『AA』になります。これならば『LL』の資産を活かせるうえに『LL』のストーリー性への不満も間接的に解消できます。さらに、ちょうど自分が『AA』のような群像劇RPGに飢えていたこともあり、すぐにスタッフをかき集めて会社に企画を提案し、開発をスタートさせました。そんな感じで『LL』と『AA』は発想の根本が異なるので“同じ畑から採れたトマトとピーマン”くらいの違いだと思っていただければと思います

小泉 戦闘における両作の明確な違いは、パーティーの人数が3人から5人に増えたという点ですね。『LL』はもともと、“主人公が3人”の仕様でスタートしたのですが、そこから人数が増えていき、最終的に7人になった経緯があります。とはいえ、最初に設計した3人での戦闘がしっくりきたので、戦闘システムはそのまま残すことになりました。ただ、パーティーの人数が少ないぶん、それぞれの役割が固定されがちで、敵の行動を読み、一斉に防御、一斉に攻撃と、臨機応変に切り換える戦闘システムは、なかなかハードルが高かったようで……。そこで、ボタンひとつでスムーズに陣形やロールを切り換えられる“ロールシャッフル”という機能を、遊びの中心に取り入れることにしたんです。それに対して、『AA』ではパーティーの人数が5人に増えたので、それぞれがある程度、自由に行動できるようになったのが最大の違いですね。そのうえで、ロールシャッフルも活用できるので、強敵とのバトルでは戦略性の高い立ち回りも楽しむことができます。

――『LL』に比べ、RPG初心者でも遊びやすくなったということでしょうか?

小泉 そういう面もありますね。RPGに不慣れな人の場合、ガードやアタックといったポジションの重要性がわかりにくいと思ったので、序盤のキャラクターどうしの会話を通して、さりげなく理解していただけるように設計も親切に作ってあります。

松浦 何度戦っても全滅してしまうような強敵でも、戦況に応じて陣形を切り換えたりすれば、あっさり勝てたりします。そうした戦闘における駆け引きには、『LL』で蓄積したノウハウが活かされていますね。

小泉 あと、デフォルトで用意されているポジションは、アタック、ガード、サポートの3つですが、プレイ状況に応じて、選択可能な種類は増えていきます。その中から、自分の戦闘スタイルに合うようにポジションや陣形をアレンジできることも、本作の戦闘の醍醐味ですね。

――術の使用方法も大きく変わり、『LL』に比べて使いやすくなった印象を受けます。

小泉 『LL』では“精霊術”という名称で、精霊たちから術を学び、それを用いて島を探索するというのが、ゲームそのもののコンセプトでした。一方、『AA』では、魔術と印術という2種類の術が登場しますが、本作の世界観では、これらは剣術や体術と同じ、“技術”の一環という位置づけになっています。そのため、使用するにはいくつかの制約が用意されているものの、『LL』の精霊術よりは使いやすいものになっていると思います。ちなみに、これは僕のこだわりなのですが、そもそもRPGにおける“魔法”という概念が、あまり好きじゃないんですよ。誰でも簡単に炎を出せたり、テレポートができてしまう世界だと、それだけで犯罪が多発してしまいますよね? だったら、それを使うには、さまざまな制約があってしかるべきだろうと。そうした技術があってもおかしくないように、世界観については松浦さんと、とことん話し合って固めていきました。

松浦 いまの説明からもおわかりいただけると思いますが、小泉さんは毎回、作品の世界観を大切したゲームデザインをされるんですよ。強力な術で何でもできてしまうと、世界観が薄くなってしまうので、何か理屈を考えないといけない。けれどもユーザーさんからすると、世界観の整合性や理屈よりも、実際に手に取って遊んだときの心地よさこそが重要な要素なので、そこをどう結び付けるかが、今回いちばん悩んだポイントですね。

――そうなると、システムの見せかたひとつ取っても、気を配られたのでは?

松浦 RPGを熟知している人ほど、陣形やポジションをいじりたがるのですが、最初からそれらが調整できると、操作が複雑になり、かえって個々の要素の効果を実感しづらくなってしまいますから。順を追って、アレンジ可能な要素を解禁していく仕様にしました。だからゲーム開始直後は、イグニッションやファイナルストライクは使えないようにしてあります。途中で武器が壊れて進めなくなったら、プレイテンポが悪くなりますからね。

小泉 いまはどちらかというと、遊びやすさを追求したゲームのほうが広く普及していますが、僕個人としては、これからも変わらずに新しいルールを作り続けて、「このルールに沿って遊べば、こんなゲームが楽しめますよ」ということを提案していきたいと考えています。でも、「新しいルールを作ったから覚えなさい」とゲームの中でいきなり言われても、まずわからないですよね? それで今回は、ストーリーの流れに沿って、ごく自然にルールを理解してもらえるようにするため、導線もセットで考えることに気を配りました。

松浦 その甲斐あって、現在配信中の体験版はおおむね好評で、多くのユーザーさんから好意的なご意見をいただきました。「これだけだと物足りないのでは?」と、不安もあったのですが、戦闘の難度やテンポに関しては、満足してくださる方が多かったですね。

小泉 体験版は、ふたりのキャラクターだけを操作するため、敵を強くしすぎると勝てなくなる恐れがあったので、少し難度を低くしてあります。もちろん製品版では、序盤のストーリーが終わって主人公が集結したあたりから、難度が上がりますので、骨太なゲームを楽しみにしている方は、ご期待ください。ちなみに要望としては、ボイスに対する意見がかなりたくさん寄せられていました。ただ、ボイスを入れると、台本制作、音声収録、実装、チェック含めて数ヵ月かかってしまうんですよ。ゲームのシナリオは、本来なら開発に取り掛かる前に、しっかり固めてからスタートするものですが、いざ開発が進んでいくと、どうしても途中で、あれも入れたい、これも入れたいという要素が出てきて、ついつい手直ししたくなるものなんです。でも、ボイスを収録してしまうと、そうした微調整ができなくなり、途中で違う表現や演出を思いついても、活かすことができなくて……。そのせいで、自分自身も納得のいかない状態のままキャラクターを世に送り出す、ということはしたくなかったので、ボイスは収録しない形で開発に取り組ませていただきました。

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イグニッションやタレントなど
戦闘&探索を盛り上げる機能が満載

――体験版では、終盤に少しだけイグニッションやファイナルストライクといったシステムを体験できますが、これらを導入することになった経緯を教えてください。

小泉 ユーザーさんの興味を引く、キーとなる要素をひとつ入れたかったんです。とはいえ、複雑にしすぎると受け入れてもらえないので、シンプルに“武器を壊してでも強力な一撃を放てる”システムとして、搭載しました。『LL』では、強力な技を使うとなると、事前に閃いたり、レベルを上げるなど、戦闘前の準備が必要不可欠で、慣れた人なら戦闘中に覚えさせることもできましたが、すべてのユーザーさんにそうしたプレイを推奨するのは、さすがに無理があるなと。だったら“ここいちばん”で、複雑な計算をしなくても、強力な技を使えるようにしてあげようと考えました。ただし、それ相応のリスクもあるので、使うかどうかはプレイヤー次第、という仕様になっています。とはいえ、キャラクターごとに複数の武器を持てるように設計しているので、そのうちのひとつが壊れても、それほど深刻なことにはならないかと。しかもメンバーは5人いるし、素手でも戦えるので、あまり難しく考えず、戦術のひとつとしてうまく活用していただきたいですね。

――『LL 』にあった要素としては、“覚醒”も搭載されていますね。

小泉 戦闘中に突発的に成長する感覚が好きなので、本作にも継続して導入しました。個人的に、技の習得やレベルアップは、スポーツのトレーニングと同じだと思っていて。たとえば、毎日走ったからといって、1日ごとにタイムが1秒縮まるものではないですよね? けれど練習を積み重ねると、ある日いきなり、大幅にタイムが縮まることがあったりする。そうした感覚を、ゲームの中でも表現したくて考えたシステムなので、ぜひ体験していただきたいですね。

松浦 それと、いくらキャラクターが強くなっても、プレイヤー自身が成長して、積極的に戦闘に介入していかないと、あっという間に全滅してしまう可能性がある。そうした絶妙な難度になっているところも、小泉さんならではのゲームデザインだと思います。とはいえ、これは『LL』を自分でプレイして感じた部分で、ユーザーさんからも「戦闘を重ねることで蓄積される、経験値やレベルアップに相当する要素も入れてほしい」という声が多く寄せられていて。そうした意見に対する落としどころとして、今回は“タレント”という要素を取り入れることになりました。

小泉 蓄積したタレントポイントを消費することで、技の習得率アップや、消費SP減少といった能力を覚えられるシステムですが、HPや攻撃力が上昇するような、ステータスに直接反映されるスキルは用意していません。というのも、キャラクターごとに、最終的に各ステータスがどれくらい伸びるのか、バランスを見て調整しているので、スキルで補正がかかってしまうと、あっという間に強さにインフレが起きてしまうんです。中には、圧倒的な強さを楽しみたいという方もいらっしゃいますが、そのために世界観が壊れるようなことはしたくなかったので、“冒険をサポートする機能を習得できるシステム”として、現状の形を取ることにしました。

――体験版ではシステムだけではなく、特殊なモンスターとの戦闘など、フィールド上にもやり込み要素が満載でしたね。

松浦 そこもこだわって作っているポイントです。せっかく自由に歩けるワールドマップや乗り物を用意したので、モンスターやアイテム、洞窟などをマップ上にたくさん散りばめてあります。大き目のサイズのモンスターに接触すると特殊バトルが発生するので、ぜひ楽しんでいただきたいですね。

小泉 これまでに携わったどのゲームよりも、特殊バトルは多く用意してあります。開発チームからも、「本当にこれだけの量のモンスターを用意するんですか?」と驚かれました。まだ調整が終わっていないので、これからたいへんなことにないそうですが(苦笑)。

松浦 僕自身が小泉さんの作るバトルが大好きなので、たくさん用意してもらいました(笑)。サクサク進むだけだと味気ないし、実際に体験版でも、ガリルとアーシュラだけで水魔を倒すくらい、やり込んでくださったユーザーさんは、ちらほらいらっしゃいましたからね。

――ワールドマップを探索することも、本作の見どころのひとつですね。

松浦 ストーリーをなぞるだけのゲームではないので、いろいろなところに寄り道できる、自由度の高いゲームであることを知っていただきたいです。“つぎはどこにいって、何をしなさい”というクエストが提示されるわけではないので、“いかにして世界観に興味を持ってもらい、能動的に遊んでもらえるか?”というところに注力しました。方舟を手に入れれば、移動できる範囲が一気に広がり、これまで行けなかったさまざまな場所を探索できるようになるので、ぜひ、いろいろなところに寄り道して、発見を楽しんでいただきたいですね。

小泉 先ほど、魔術という概念についてもお話しさせていただきましたが、本作では自由な冒険を思う存分楽しんでいただくために、世界観にはとことんこだわらせていただきました。戦闘のルールや、術を使うためのルール、陣形を組み換えあるシステムなどは、チュートリアルで説明すると世界観が台なしになってしまうので、登場人物たちが、会話の中でさりげなく教えてくれるように作り込んであります。『AA』の世界を冒険しているうちに、自然とルールも認識できる。そうした“ゲームとしての気持ちよさ”という部分には、本作でも徹底的にこだわっています。

松浦 僕としては、各世界のビジュアルにも注目していただけるとうれしいですね。たとえば、最初の舞台である“雨の世界”なら、実際に最大降雨量が世界一の地域を調べて、その地域の写真や資料を片っ端から集めたうえで世界観を構築しました。雨の世界には“生きている森”というダンジョンもあるのですが、ゴムの木の根がからまってできた橋は、現実に存在するもので、そういったモチーフを下地にしつつ、デザインしたものです。

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分断された世界をつなぐキーワード
“テレグラフ”の活用方法を直撃!

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――新たに発表された要素の“テレグラフ”について教えてください。

松浦 本作は、異なる世界に暮らす主人公たちが集結し、分断された世界に抗うことがテーマとなっています。この“世界に抗う手段”を、ゲームとしてどのように表現するか?というところから、ギルドタワーという塔を建てて、異世界に暮らす人々とつながっていく、テレグラフのアイデアが生まれました。

――ギルドタワーは体験版にも出てきますね。実際の効果については、一部の情報が体験版の中で明かされていただけでした。

松浦 体験版では、諜報ギルド、図書ギルドのふたつのタワーが登場します。詳しい説明はありませんが、ストーリーを進めていくと、プレイヤーは必然的に諜報ギルドタワーに立ち寄ることになります。まずはそこで、テレグラフという言葉を認識し、続いて、塔の周辺で戦うことで、ギルドに所属するキャラクターたちが戦闘で支援してくれることがわかります。こうした一連の流れを通して、ギルドタワーは冒険をサポートしてくれる特殊な施設であることが伝われば、体験版の時点では十分かなと考えています。

――ちなみにギルドタワーは、世界中にいくつ用意されているのでしょうか?

松浦 詳しくはお伝えできませんが、じつは既存の塔を利用するだけではなく、プレイヤー自身が塔を作ることもできます。体験版でもフィールド上を探索中に、光の柱を見つけられたかと思います。この柱がある場所にギルドタワーを建てられるんです。じつは、アーシュラの父親であるワイアットは塔の設計者で、バルバローザがその建設者です。方舟を入手した後、彼からの提案で「黒き流れに分断された各世界にギルドタワーを建てて、強力な連絡網を作ろう」となり、協力者を求めて、さまざまな世界を旅していくわけです。

――諜報ギルドや図書ギルドなど、各ギルドにはどのような違いがあるのでしょう?

松浦 まず鍛冶ギルドでは、さまざまな武器を作れます。ギルドそのものを発展させていくと、作成可能な武器の素材も、鉄、鋼、黒鉄とどんどん強力になっていきます。戦術ギルドでは、新しい陣形を登録でき、ギルドの発展に応じて、アタック、ガード、サポート以外のポジションも選べるようになります。

小泉 ギルドは全部で5種類ありますが、その中でも諜報ギルドは特徴的ですよ。獣系や虫系など、特定のモンスターの出現率を減らしたり、強敵モンスターを発見したら教えてくれたり。強敵との戦闘は覚醒が発動しやすいので、パーティーを強化したいときには重宝するはずです。

松浦 ほかにも印術ギルドでは、新しい印術や万象器が開発でき、図書ギルドではモンスターや技術の解析ができるようになります。

――各ギルドが発展させられるそうですが、どのように発展させるのでしょうか?

松浦 順を追って説明すると、まず塔を建てるには、“ギルドマスター”となる資質を持ったキャラクターを見つける必要があります。キャラクターごとに適性のあるギルドは異なるため、誰をギルドマスターに選ぶかで、その地に建つギルドタワーは変化します。そうして、影響がおよぶ範囲内に同じギルドのタワーが増えていくと、ギルドそのものも発展し、得られる効果もより高性能なものになっていくという仕組みです。また、そうした特色だけでなく、ギルドタワーの周辺で戦うと、さまざまな支援効果を得られるところも注目していただきたいポイントですね。ギルドごとに、敵全体をスタンさせたり、強力な全体攻撃が発動したりと、支援の内容はまちまちですが、同じギルドのタワーが建ち並ぶことで、支援効果が発動するエリアも拡大していきます。フィールド探索中に強敵と遭遇しても、効果が及び範囲までおびき寄せれば、有利な状況で戦うことができますよ。

小泉 ですが、ここで覚えておいていただきたいのが、狙ったとおりに、効率よくギルドタワーを建てられるわけではないということ。たとえば鍛冶ギルドを発展させたい場合、影響がおよぶ範囲で光の柱を見つけても、鍛冶ギルドの適性を持つキャラクターがいなければ、べつのギルドのタワーしか建てられないんです。また、せっかく塔を建てても、それぞれの影響が及ぶ範囲が離れていると、ギルドの発展にはつながらないので、そちらも注意したいポイントですね。

松浦 世界中を駆け巡り、同じ適性を持ったキャラクターを集めれば、きれいに塔をつないでいけますが、できればそこだけに固執せず、ゆるく遊んでほしいですね。というのも本作の場合、なかなかすべてのキャラクターを集められないようになっています。いわゆる“キャラクター集め”を強いてしまうと、かえってプレイヤーに作業感を与えてしまい、テンポが悪くなる懸念があるわけです。仮に仲間にするという選択肢を選ばず、キャラクターが死亡した場合は、その遺品として強力な武器が手に入るというような、どういう選択をしてもメリットとデメリットがある仕様になっているので、純粋に“自分で選択した結果”を楽しんでいただければと思います。

小泉 ちなみにギルドは、必ずしも発展させなければならない要素ではないので、まったく触れないまま、冒険を進めることもできます。キャラクター集めも必須ではないので、気が向いたときにふらっと立ち寄るくらいでも、十分に本作は楽しめますよ。

――ギルドのシステムは、インターネットには対応していないのですか?

松浦 企画の時点では、「インターネット対応にしたほうがいいのでは?」との声もあったのですが、そうすると、外部からの影響で、ギルドタワーがどのようにでもアレンジできてしまって……。プレイヤーが自分の意志で塔を建て、世界の情勢に介入していくことにこそ、ギルドのシステムは意味があるので、インターネット機能は搭載していません。分断された世界に暮らすキャラクターたちが、つぎつぎにギルドに集まり、そうした関係性の中から、新たな武器や印術、陣形などが生み出されていく。あくまでも外部は挟まず、この世界の住人どうしが繋がっていく姿を見せたかったので、そこを楽しんでいただけると幸いです。

小泉 それと同じ理屈で、本作にはいわゆるダウンロードコンテンツというものも存在しません。探索可能なエリアが徐々に広がるにつれ、より貴重な素材が手に入り、それらを使った強力な武器や防具も作れるようになる。そうした流れを、課金で手に入れた武器を使うことで、台なしにはしたくなくて。序盤に登場する弱い武器やモンスターも、しっかり計算して作り込んでいるので、それらとの戦闘を経て、キャラクターをコツコツ育成していく楽しさを満喫してほしいですね。

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どちらを選んでもメリットあり!
“選択”は自身の好みで選ぶべし

――先ほど選択肢が多数用意されているとおっしゃられていましたが、選んだ回答はストーリーにも影響するのでしょうか?

小泉 いわゆるメインシナリオには影響しないので、どちらの選択肢を選んでも、物語が大きく変化することはありません。なかには“人助けを優先するか? 貴重なアイテムを優先するか?”といった選択肢もありますが、困っている人を助けて損をするような作りだと割に合わないので、人助けを選んだ場合も、ちゃんとしたメリットを用意してあります。図鑑を埋めたり、アイテムのコンプリートを楽しみたい人からすると、すべての要素を収集できないのは不満かもしれませんが、そういうものだと思って肩の力を抜いて遊んでいただきたいですね

松浦 それともうひとつ、選択肢をたくさん設けたことには狙いがあります。ジャンルやハードを問わず、最近のゲームは必ず、動画サイトに実況動画がアップされるじゃないですか。そして動画を見た人は、「どんなストーリーかわかったから、もう買わなくていいや」となってしまう。けれども、あるキャラクターを“助けるか? 見殺しにするか?”という選択肢のうち、見殺しにするほうを選んだ動画がアップされたなら、助けるほうの顛末も気になりますよね? ほかにも、序盤であるモンスターを倒したら、後半になって、その一派に命を狙われるようになるなど、本筋には影響しないものの、展開が気になるサブシナリオも多数用意しているので、そこから本作に興味を持ってもらい、遊んでいただくというのもアリだと考えています。

小泉 いっさい寄り道をせず、ストーリーだけを追う遊びかたもあるかと思いますが、寄り道をすればするほど新しい発見があり、深みにハマれる仕様になっています。とくに探索好きの方は、じっくり遊んでいただきたいです。「わざわざ寄り道をしなくても……」とおっしゃる方も多いとは思いますが、脇道にも強いモンスターが潜んでいることも多いため、そうした強敵との戦いを通して、キャラクターの育成や戦闘の楽しさを満喫していただけると幸いです。

松浦 メインシナリオだけだと、対立する人間と魔族、そして魔族に付き従い、人間を監視する妖魔といった、各種族の典型的な立ち位置しか垣間見ることができませんが、サブシナリオをこなすことで、それぞれの意外な一面を発見できるところも、やり甲斐を感じていただけるポイントだと思います。たとえば、人間に対して好意的な妖魔たちがいて、便利な施設を運営しているのですが、プレイヤーはふとしたことから、施設を運営するために犠牲になっている生物がいることを知ります。そこで、その生物を助けると、行為に見合ったぶんのメリットを得られるのですが、施設自体はなくなり、周辺には強力なモンスターも徘徊するようになってしまうんです。こうした明確な答えのないイベントも、物語に深みを与える重要な要素だと考えています。

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――最初に公開された9人の主人公に続き、新たなキャラクターが発表されましたね。

小泉 能力に関して言うと、いちばん最初に操作するガリルとアーシュラは、もっともプレーンな状態といいますか、プレイヤーの好みに応じて自由に育てられます。それ以降でパーティーに加わるキャラクターは、攻撃力が高かったり、印術に長けていたりと、少しだけ能力に特徴を持たせていて、加入タイミングが後半のキャラクターほど、個性も強くなっています。そのまま特色を伸ばしていくのもいいですし、自分の思った通りに育ててもいいですので、好きなようにパーティーを編成して、楽しんでいただければ。とくにオリジナルコマンドのようなものはありません。ただ、ペンギン族のロビンスだけは、武器を装備できないので、“ペンギン体術”という特殊な体術で戦います。

――仲間になった時点で、シキやロビンスはどれくらい強いのでしょう?

小泉 時間をかけて、全キャラクターを育ててきた人からすると、既存の9人のほうが強くなっていると思いますが、なんといっても剣聖とペンギン体術の使い手ですからね。かなり強めに設定しているので、仲間になった時点で即戦力として活躍できると思います。シキとロビンスを攻撃の要にして、ほかのメンバーはサポートに回る……といった立ち回りも、おもしろいですね。

松浦 能力的な差異は、比べてみれば確かにちょっと違うかな、という程度ですので、あまり気にせず、ご自身の好みで好きなキャラクターを選んでください。個人的には、本作の主人公たちは若者が多いので、おじさんキャラのシキがお気に入りですね。『LL』は、熟練の戦士たちが未開の地を探索していくお話だったので、必然的にキャラクターの年齢層も高くなりましたが、本作は好奇心旺盛な少年少女たちが、冒険を経て成長する物語なので、10代の若者が多いんですよ。そんな中にシキのような渋いおじさんがいるとやっぱりホッとします(笑)。

――シキはいかにも強そうですが、ロビンスも戦力として期待して大丈夫でしょうか?

松浦 もちろんです! とくにロビンスはパーティーに加わると、さまざまな場面で会話に割り込んでくるので、冒険の雰囲気がガラッと変わります。シリアスな会話の中でいきなり奇声を発したり、勝手にウロウロ移動したり、とにかく自由奔放なキャラクターなので、見ているだけで楽しいですよ。ちなみに、ややネタバレになってしまいますが、最初に紹介した9人の主人公以外のキャラクター、シキやロビンス、結晶世界で出会う女騎士のマチルダは、仲間にしなくてもクリアーできるようになっています。パーティーに加える選択肢もあるし、べつの展開を選択することもできる。具体的な内容については明かせませんが、後発の3人は世界観に広がりを持たせるために用意したキャラクターなので、「選択次第でこんな展開もあるんだ!」ということに驚きつつ、物語を楽しんでいただけると幸いです

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――なるほど。話は尽きませんが、改めて本作の見どころをうかがえれば。

松浦 ありがたいことに、体験版は多くの方からご好評をいただいておりますが、ここで改めて、本作は決してストーリーをなぞるだけのゲームではないことをお伝えしておきます。方舟を手に入れるまでは、ストーリー主体のシナリオ展開ですが、そこから広がるさまざまな世界を行き来する冒険こそ、『AA』の魅力です。そうした感覚的な楽しさ、RPGらしさを存分に楽しんでいただくために、ただいま鋭意開発に取り組んでおります。それともうひとつ、どのような答えを選んでも間違いにはならない、“選択することの楽しさ”も堪能していただきたいですね。ひとつひとつの選択に、ちゃんとキャラクターたちが反応してくれるので、システム的な損得はあまり気にせずに、自分自身の意思で、これだと思った答えを選んでください。そして最後に、改めて言わせていただきますが、『LL』と『AA』は、同じ畑から採れたトマトとピーマンくらい、プレイ感覚が異なるゲームなので、その点をご理解いただきつつ、ご期待ください。よろしくお願いします。

小泉 ストーリーに沿って進んでいくだけでも、十分おもしろいゲームですが、寄り道したくなる要素もたっぷり用意しているので、できればちょっと脇道に逸れて、キャラクターたちを育てながら、コツコツ進んでいただけるとうれしいですね。すべての要素を拾おうとするとたいへんなので、気になる物だけを食い散らかしていくプレイスタイルでもぜんぜんかまいません! 貴重品は手に入らなかったけど、強力なキャラクターが仲間になった。人助けをしたと思ったら、結果的にほかのキャラクターを不幸にしてしまった……など、さまざまな経験を重ねながら、『AA 』の物語を満喫していただきたいですね。それと、攻略に必須ではないものの、テレグラフやギルドに関する仕組みは、かなり細かく計算して作ってあります。なかなか戦闘で勝てないようなら、こちらも活用してみてください。どのようなプレイスタイルで遊んでいただいても、きっと満足していただける作品になっていると思います。一周ですべての要素を回収しようと気負わず、軽い気持ちで楽しんでいただけると幸いです


アライアンス・アライブ
メーカー フリュー
対応機種 3DSニンテンドー3DS
発売日 2017年6月22日発売予定
価格 6280円[税抜](6782円[税込])
ジャンル RPG
備考 プロデューサー&ディレクター:松浦正尭、シナリオ:村山吉隆、ゲームデザイン:小泉今日治、アートディレクター:浅野雅世、コンポーザー:浜渦正志、 キャラクターデザイン:平尾リョウ 開発:キャトルコール