横アリがメメントスに!? 開演前からペルソナ愛の乱れ打ち
2017年8月2日、横浜はあいにくの小雨模様。しかしそんな天気をものともせず、人、人、人でいっぱいの横浜アリーナ! ……そう。待ちに待った“PERSONA SUPER LIVE P-SOUND BOMB !!!! 2017 ~港の犯行を目撃せよ!~”の開幕だ。
大規模な会場でのライブは約2年ぶりとあって、会場を訪れた観客は皆、期待に満ち溢れた表情。そしてその期待を裏切ることなく、横アリに一歩入ったそのときから、ペルソナの世界観に包まれる。ロビーではクマとモルガナの出迎えがあり、流れるBGMは『ペルソナ5』(以下、『P5』)のメメントスの曲。さらに、物販ブースは“ジュネス 八十稲羽店出張所”仕様という粋な計らい。ロビーを抜けて会場に入れば、メインステージ中央にある大階段の上には、過去のイベントなどで出動していたモルガナカーが! さらに会場中央のセンター席を挟んだ反対側にはサブステージが設置され、そこには『ペルソナ3』(以下、『P3』)の棺桶や、『ペルソナ4』(以下、『P4』)の電柱に釣られた男女(モロキンと小西先輩?)の電飾オブジェが吊るされている。どうやら今回のライブは、ツインステージ形式で展開されるらしい。
開演までの時間も、白いドレス姿の女性4人による弦楽四重奏によって、『ペルソナ3 フェス』のタイトル曲「Brand New Days」や、『P4』の放課後BGM「Your Affection」のクラシックアレンジが奏でられ、観客の耳を楽しませている。さらに開演前の諸注意アナウンスも、キャラクターが喋る特別版。『P3』主人公の「召喚器の使用はお控えください」の声で笑いが湧き、『P4』の菜々子による「(ほかのお客様に)迷惑かけちゃダメ!」の呼びかけには「はーい!」とお兄ちゃんたちの返事が響きわたる。
そしていよいよ、メインステージ上に設置された『P5』のセリフ枠型電光掲示板に、「まもなく開演します」との表示が浮かび、メインステージ上には白いタキシードに身を包んだバンドメンバーたちが姿を現す。今回、2年前の武道館ライブでも使用されたフリフラ(無線で色や点滅を制御できるペンライト)が多くの観客に配布されているのだが、席に着いたファンたちはそれを握りしめて固唾をのむ。そしてライブはスタートした。
パワフルな歌唱、ブリリアントな演奏、エクセレントな演出!
会場が暗転し、トップバッターが現れたのは、なんとメインステージではなくセンター席後方のサブステージ。会場のほぼど真ん中に集まるスポットライトに照らされたのは、今回がライブ初参加のLyn。『P5』に登場する新島真の学生服風衣装で、『P5』オープニングテーマの「Wake Up, Get Up, Get Out There」をパワフルに歌い上げる。また、彼女の周囲では、赤いローブと仮面を身に着けてシャドウに扮したダンサー4人が体を揺らし、さらに観客のフリフラが赤一色に染まることで、気分はすっかりメメントス。
続く2曲目はメインステージから。おなじみの川村ゆみが青いシャドウダンサー4人を引き連れて登場し、『P3』オープニングテーマ「Burn My Dread」を熱唱! 川村の衣装は『P3』主人公の月光館学園制服のアレンジ。体の芯にズシンと来る川村の歌声が、観客のハートをがっしりと掴む。さらに続けて3曲目。同じくメインステージに登場したのは、平田志穂子と黄色いシャドウダンサーズ。平田の衣装は、『P4』で久慈川りせが着ていたような、八十神高校のセーラー制服! 『P4』オープニングテーマ「Pursuing My True Self」を堂々と歌いきり、Lynが登場した時には赤一色だった会場も、川村と平田の活躍で青や黄色へと塗り替えられていった。
テンションが上がりまくりのファンたちを落ち着かせるかのように、続く4曲目は、Lynが歌う「Beneath the Mask」。『P5』の純喫茶ルブランで流れる、しっとり落ち着いた曲だ。だが、ワンコーラス歌いきるまえに、伴奏が変わって歌は平田にバトンタッチ。『P4』の堂島家で流れる曲「Signs Of Love」へと切り替わる。さらに曲はまた途中で調子を変え、川村が歌う『P3』の放課後BGM「When The Moon's Reaching Out」となった。なるほど。いわゆる「日常曲メドレー」か、とほとんどの観客が思っただろう。しかし、そんな簡単な予想通りに行かせるようなライブではなかった。川村からもぎ取るようにLynが歌を取り戻し、さらに平田が、そして川村が引き継ぎ歌い、そこからなんと、3曲分のメロディが完全に重なり3人同時に歌い始めた!? いわゆる違う曲を重ねる「マッシュアップ」のような形で、『P3』『P4』『P5』の三つ巴バトルが巻き起こる。それに気づいた瞬間の観客のテンションは、まさに絶頂! 日常曲でこれほどの盛り上がりを見せたのは、おそらくペルソナライブ史上初であろう。
ここでいったん会場が暗転し、暗闇の中より、怪盗団の“ジョーカー”からの歓迎メッセージが響き始める。彼によると、集まったペルソナファンの欲望によって横浜アリーナはメメントスと化し、そこに現れたオタカラを頂戴するつもりらしい。その直後、メインステージにLynと4体のシャドウが登場し、『P5』のCMやPVでおなじみの人気曲「Life Will Change」がスタート。通称「大明神」ことアトラスの目黒将司氏による軽快なギターが鳴り響く中、シャドウたちが身にまとった布を取ると、なんと中から現れたのは、ジョーカー、杏、双葉、そして春に扮したダンサーたち! 実はこのダンサーたちは、『ペルソナ4 ダンシング・オールナイト』(以下、『P4D』)のモーションアクターを務めたメンバー。各キャラクターの細かい動きや癖までも完全にトレースし、ふとした立ち姿さえゲームキャラクターさながらだ。続いて同じく『P5』から、フィールドBGMの「Tokyo Emergency」。これは歌のないインスト曲だが、その間もLynとダンサーたちが軽快に動き回り、見るものを飽きさせない。
曲が終わると、今度は怪盗団の面々がオタカラ奪取について相談する声が。だがそこに、「心を盗むとは捨て置けない」と、お待ちかねの声が聞こえてきた。『P3』の桐条美鶴、伊織順平、荒垣真次郎の3人だ。「川村ゆみとLotus Juice率いる、この特別課外活動部(S.E.E.S.)が、お前たちを粛正する!」とのフレーズを合図に始まったのは、『P3』の通常戦闘曲「Mass Destruction」! 川村とLotusのコンビが登場したサブステージ上では、先ほどのP5チームと同じく青いシャドウ衣装を脱ぎ捨てた、『P3』主人公、美鶴、順平、荒垣も勢揃いし、曲と合わせてスタイリッシュなダンスパフォーマンスを魅せつける。会場のフリフラは、緑と青のマトリックス状となり、P3チームを鼓舞するかのようだ。そして続けて、『P3』モノレール戦での曲「Deep Breath Deep Breath」。過去のライブではあまり演奏されなかったナンバーの登場に、『P3』ファンはヒートアップが止まらない。
メインステージでも動きがあり、平田志穂子と黄色いシャドウ4体が登場。もちろん、こちらのシャドウの正体もダンサーたちで、陽介とクマのジュネスコンビ、そして堂島遼太郎と菜々子の親子コンビが姿を現わす。平田率いるP4チームが披露するのは、『P4』最初の戦闘曲「Reach Out To The Truth -First Battle-」。陽気でかわいいダンスが、小柄な平田や菜々子、丸っこいクマによく似合う。軽快な戦闘曲の数々で追い詰められた怪盗団だが、ここで『P5』の通常戦闘曲「Last Surprise」で反撃開始! バンドマスターの小林哲也が率いるメンバーたちが奏でるクール&スタイリッシュなメロディーと、ハイクオリティーなダンサーたちの舞いを十分に堪能したところで、ご機嫌なバトルタイムは終了。フロントメンバーたちの楽しいMCを挟み、ライブはさらに上の局面へとシフトしていく。