2018年2月13日、東京都中野区のゲームイベント向け施設“Red Bull Gaming Sphere Tokyo”にて、“SKT T1 Faker 来日スペシャル!”の配信が行われました。本記事では、その様子を詳しくお伝えします。
まずは、主役のFaker選手のご紹介から。Faker選手は、LCK(PC用オンライン対戦ゲーム『リーグ・オブ・レジェンド』(以下、LoL)の韓国リーグ)のチーム、SKT T1に所属するプレイヤーです。
プロデビュー直後から、圧倒的な実力の高さを見せつけて多くのファンを魅了。2013年、2015年、2016年の合計3シーズンで世界一の座を獲得しており、名実ともに『LoL』のトッププレイヤーとして全世界から注目されています。
今回の配信は、質問コーナーや日本のトッププロゲーマー・梅原大吾氏との対談コーナーなど、盛りだくさんの内容となっていて、Faker選手のいろいろな一面を垣間見ることができました。配信の様子は、以下で視聴できます。
※アーカイブ視聴ページ
https://www.twitch.tv/videos/228568687
最初に行われたのは、Faker選手への質問コーナー。Twitterや現地に集まったTwitchパートナー、メディアなどから寄せられた、質問にFaker選手が回答。以下で、Faker選手の回答をご紹介します。
――日本に来るのは初めてですか? イベントの予告動画では流暢に日本語をしゃべられていたようですが。
Faker選手(以下、Faker) 初めてです。日本語はできませんが、簡単な挨拶だけは学びました。
――チームメイトのWolfさんは日本にお詳しいようですが、彼から教わったりは?
Faker 彼から教わったことはないのですが、彼は日本のアニメが好きで、日本語もすごくうまいようです。
――“Faker Senpai”という日本由来と思われるこの愛称はご存知でしたか?
Faker もちろん知っています。僕が活動を初めてからいちばん最初についたふたつ名なので、すごくこのニックネームを気に入っています。
――では、我々も“Faker Senpai”と呼んで問題ないわけですね。
Faker (日本語で)はい。
――試合前やソロQ(ランクマッチ)を行う前に行う習慣のようなものがあれば教えてください。
Faker 試合前には、体をほぐすためにストレッチをしています。緊張もとけますし、血液の循環もよくなって集中力も上がっているんじゃないかなと思います。
――配信でプレイされている『Poly Bridge』をクリアーした後、つぎに遊ぼうと思っている、興味を持っているゲームはありますか?
Faker いまはちょっと考え中ですね。
――『LoL』以外のゲームをプレイすることは好きですか?
Faker はい。配信のときは、ファンの方が見て楽しめるようにと考えています。
――コーチは厳しいですか?
Faker とくにkkOma監督は厳しくて、ふだんは選手の面倒をよくみてくれる方なんですが、試合のことになると怖い感じになります。
――もともと選手だったBengiさんがコーチとして入られていますが、彼とはいまどういった関係ですか?
Faker いまは選手とコーチという関係でうまくやっています。以前は選手だったということはあまり関係ないのかなと思っています。
――日本で行ってみたいところはありますか?
Faker 日本はずっと来たいと思っていた国なんですが、とくに食べものが好きなので、おいしいお店にいってみたいですね。たとえば日本の寿司やラーメンを食べたいです。
――『LoL』で最初に使ってみたいな思ったチャンピオンは誰ですか?
Faker 魔法が使えるキャラクターが好きだったので、いちばん最初はライズですね。
――“Senpai”のほかに“魔王”という愛称がありますが、こちらについてはどう思いますか?
Faker ちょっと怖いと思うので、あまり好きなニックネームではないですね。
――さきほど怖いという話だったkkOmaコーチは結婚できそうですか?
Faker 非常に難しい質問だと思うんですけれども、いまのところ見通しは立たない状態です(笑)。
――カーサスはいま苦難の時代だと思うのですが、どういったプレイを心がければいいでしょうか?
Faker さいきん僕はカーサスを使わないのですが、いまはミッドレーンから動き回るのは難しいので、ファームを中心にするのがいいかなと思います。僕はとくにカーサスを使うつもりはなくて、ほかのチャンピオンを使おうと思います。
――『LoL』を始めて6年経つものの、ブロンズ、シルバー帯から抜けられないのですが、どうすれば勝てるようになりますか?
Faker これも難しい質問だと思うのですが、じつは正解は簡単で、ただがんばればいいんです(笑)。僕から言えることとしては、よく食べてよく寝る、ということです。
――やはり体調が大事だということですか?
Faker そういうこともあるんですけども、ゲームをしてストレスを溜めると、さらにうまくいかなくなるということがあるので、気楽な気持ちで、楽しくプレイするのがうまくなる秘訣かなと思います。
――ちなみに、プロのプレイヤーは練習として1日にものすごく長い時間プレイすると思います。一般のプレイヤーが楽しみながら遊ぶとしたら何時間くらいがいいと思われますか?
Faker ゲームがうまくなりたいと思うなら、それに時間を投資すべきだなと思います。それができない状況だとしたら、どうすればうまくなるかということを考えることが重要だと思います。
――ランクマッチを始める前にノーマルマッチを遊んでいて、強くなりすぎたからマッチングしなくなった、という噂を聞いたことがあるのですが、これは本当ですか?
Faker 最初はランクマッチをやるのは怖くてノーマルマッチで遊んでいたのですが、そこで勝ちすぎました。
――いま日本サーバーでダイヤモンド5で停滞しているのですが、Faker Senpaiはどのようにそのランク帯を切り抜けましたか?
Faker 僕はダイヤモンドで停滞したことがないのでわからないんですね(笑)。僕の場合は特別なケースかもしれませんが、最初からチャレンジャーまで上がって、維持できているという状態なので、僕のほうからアドバイスするのは難しいかなと思います。
――『LoL』の女性チャンピオンの中で、スキンを含めていちばんかわいいなと思うのは誰ですか?
Faker 僕はチャンピオンの外見をちゃんと見ないのでよくわかりませんが、アーリかなと思います。プロになる前は見た目などにも注目することはありましたが、プロ生活が長くなってそういう部分は気にしなくなりました。
――プロプレイヤーになってよかったことはなんですか?
Faker ほかの方があまりできなかったような、特別な経験ができた点がよかったと思います。
――ゲーム以外で抱えている悩みはありますか?
Faker さいきんよく眠れないので、どうすればよく眠れるのかなっていうのが悩みです。
――2013年以降、ずっとSKTに所属していますが、その理由は?
Faker いちばん最初に入ったチームがSKT、というのがいちばんの理由だと思います。チームにいろいろと助けてもらった部分があるので、いまは僕のほうがチームの役に立たなければいけないなと考えています。
――LCK(韓国のリーグ)の中でいちばん警戒しているチームを教えてください。
Faker いまは、KING-ZONE DragonX、Kt Rolster、Afreeca Freecsが強いと感じています。ただ、ほかのチームのことを考えるよりも、いま自分のチームをどうすべきかをもっと考えるべきかなと思います。
――余暇はどのように過ごされていますか?
Faker 余暇は本を読むことが多いですね。あとは、休みが少ないのでたくさん寝るようにしています。
――ちなみにどんな本をお読みになるのですか?
Faker ファンの方がくださる本を読むことが多いのですが、日本の小説もたくさんいただきまして、東野圭吾さんですとか、村上春樹さんの本を読んでいます。
――日本の小説とは意外です。
Faker 韓国でもすごく人気です。
――お気に入りの一冊は?
Faker 楽しく読めたのは、東野圭吾さんの本が多いんですけども、感銘を受けたのは村上春樹さんの『ノルウェイの森』ですね。
質問コーナーに続いては、日本を代表するプロゲーマー・梅原大吾氏が登場。ゲームのジャンルを超えた、ふたりのレジェンドゲーマーによる対談が行われました。
トッププロならではの話題も多く、お互いのルーツに関わる話も聞くことができました。
――梅原さんとFakerさんはお互いにご存知でしたか?
梅原大吾氏(以下、梅原) この対談が決まる少し前に、友人から聞いて知りました。すごいプレイヤーがいるということで。唯一知っている『LoL』のプレイヤーですね。
Faker 僕もじつはそんなに詳しくは知らないのですが、さきほどの動画(登場時に流された梅原氏の大逆転シーン)は見たことがあって、その選手が梅原さんだということは最近知りました。
――お互いに聞いてみたいことはありますか?
梅原 ゲームのプロプレイヤーという点では同じですが、ゲーム性やジャンルはまったく違います。子供の頃どういったことが得意な人が『LoL』のようなゲームが上手なのかっていうのは気になりますね。
Faker 子どもの頃からゲームが大好きで、住む街では僕以上に好きな人はいないんじゃないか、と言ってもいいほどでした。6歳の頃からプレイステーションなどで遊んでいて、いまもその流れでゲームを続けています。
――梅原さんは何歳くらいからですか?
梅原 5歳くらいですかね。格闘ゲームは当時はなかったですけど。
――同じくらいの年齢からゲームに触れていたというのはおもしろい共通点ですね。Fakerさんから聞きたいことはありますか?
Faker どんなゲームでも年齢を重ねると反応速度が落ちてしまうと思います。梅原さんはいま30代中盤にも関わらず、どうしてトップレベルの実力を維持できているのかが気になります。
梅原 『LoL』の世界は反射神経が大事だから、20代前半じゃないと勝ちにくい、という話はよく耳にします。格闘ゲームも、もちろん反射神経が大事なのですが、それがすべて、というゲーム性ではないので、その部分で戦っている感じですね。
――年を重ねるごとによくなったこと、悪くなったことはありますか?
梅原 昔の自分のプレイ動画を見ると、すごくキビキビ動いてるなって感じるんですよ。だけど、戦略が甘いと感じる部分もあるります。考える力が弱いなって。衰えた部分もあるんでしょうけど、経験で伸びた部分もあるので、(総合すると)自分自身の強さは変わっていないと思って戦っています。
Faker だとしたら、おじいさんのようになっても上手くやっていける自信はありますか?
梅原 格闘ゲームだったら何とかなるとは思っています。
――となると、おふたりにぜひお聞きしたいのですが、いままで自分の限界のようなものを感じたことはありますか?
Faker 韓国では25歳を超えると限界を感じる選手たちが多くなると言われていますが、僕はまだ限界を感じたことはありませんね。
梅原 僕はセンス抜群というプレイヤーではないので、そういう意味ではしぶといというか打たれ強く、コツコツとやっていけています。
――自分はこういうプレイヤーである、と自分自身で感じている部分はほかにありますか?
梅原 日常的にはそういうことを考えることはあるんですが、ゲームに関してはあまり考えていませんね。
Faker 僕は多くの人に見られているという自覚があるので、模範にならなければならないなとは思っています。あとはトッププレイヤーとして実力を維持し続け、それを通じてファンを始めとした方々がいろいろな経験をしてもらえればいいな、とも思います。
――おふたりのようなプレイヤーになりたい、という声も多いですが、ゲームの実力だけでなく、メンタルの部分で教えられることはありますか?
梅原 僕らの世代は、ゲームに対する風当たりが強い時期が長く、気を張ってないとそもそもゲームを続けられなかった部分があります。僕は、その頃にメンタルが鍛えられた気がします。いまの世代では図太い性格のプレイヤーは出てきにくいのかもしれませんね。ただ図太ければいい、というわけではありませんが。
Faker やはりゲームがうまくなるには、たくさんプレイすることが重要だとは思うのですが、そのあいだに何を学ぶか、というのも大事だと思います。自分のうまいところを探す、というのが本当の努力なんじゃないかな、と思いますね。
対談の後は、今回の来日に先駆けて募集されていたファンアートの紹介コーナーがスタート。
Faker選手がひとつひとつじっくりと鑑賞し、コメントをされていました。Faker選手のひと柄のよさやファンを大事にする姿勢がうかがえて、心が温まりました。
最後に、Faker選手と視聴者9名によるARAM(1本道で5対5ができるモード)のカスタムマッチが実施。ふだんはまったくARAMをプレイしないというFaker選手の貴重なプレイシーンが楽しめました。
対戦中も、「3回扱えばそのチャンピオンのことはだいたい理解できる」、「使うのが難しいと思ったチャンピオンはいない」といった旨の発言が飛び出し、ファンを驚かせていました。
私は、2015年にドイツで開催されたWCS(『LoL』の世界大会)決勝を観戦しにいっていたので(レポートはこちら)、Faker選手を生で見るのは初めて、というわけではありません。しかし、休みの週とは言え、LCKのシーズン中、しかも日本でFaker選手が見られるとは思わず、配信中は興奮しっぱなしでした。
しかも、質問への受け答えや立ち振舞いからプロ意識の高さ、人柄のよさ、ユーモアのセンスをうかがい知ることができ、ますますファンになってしまいました。年々注目度が増しているLJL(日本の『LoL』リーグ)関連のイベントもそうですが、今回の配信のように海外選手にもスポットが当たるイベントが増えてくれると、観戦好きな私のような人間はとてもうれしく思います。
最後に、イベント終了時のFaker選手のコメントとともに今回のレポートを締めくくらせていただきます。
「僕は、日本にもたくさんファンがいるということを今回初めて聞きました。いつも応援してくださってありがとうございます。ファンアートも日本らしいといいますか、みなさんお上手で、描いてくださって本当に感謝しています。機会があれば、また日本に来たいと思います。いま、僕たちは韓国であまり成績がよくないですけれども、がんばっていいところをお見せしたいと思います。ありがとうございました」