プロゲーミングチーム・DeToNatorのイベントで泣いてしまった。
イベントとは、2018年3月4日に開催された“Nagoya e-Sports Festival vol.0(主催:東海テレビ)”のことである。DeToNatorといっしょにesportsを楽しむべく、会場には延べ1700人ほどのファンが訪れた。
会場(名古屋市テレピアホール)の最大座席数は504席。1700人というのは述べ人数で、多くは立ち見だったとはいえ、少しばかり時空がねじ曲がっていないか。
僕、ミス・ユースケとDeToNatorの付き合いはそこそこ長い。5~6年くらいか。足跡と苦労を知っているから、大勢のファンに囲まれている姿を見るたびにグッとくる。
この記事は僕の感想だ。長く見守ってきたおじさん気分で書いている。記事内ではふだんの呼びかたそのままに、メンバーを“くん付け”。
ふだんのリポートでは主観を持ちつつもフラットな視点を崩さないように心がけているが、今回は自分の感情を優先するので、あらかじめネットでよく見る言葉で宣言しておく。
DeToNatorのイベントは最高だった。異論は認めない。
『Alliance of Valiant Arms』ステージで感極まる
本イベントの催しごとは大別して2種類。メンバーとの交流とステージ上でのエキシビションマッチだ。使用タイトルは下記の3つ。
『ウイニングイレブン2018』
Konami:サッカー
『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS』(以下、PUBG)
PUBG Corporation:FPS / TPS
『Alliance of Valiant Arms』(以下、AVA)
ゲームオン:FPS
リポート記事としては最初に披露された『ウイニングイレブン2018』か人気の『PUBG』から書くのが正解なのだと思う。
だが、まずは『AVA』のことを書きたい。DeToNatorは『AVA』から誕生したチームだから。
『AVA』ステージでは現役選手とかつてのレギュラーメンバー“DETONATOR LEGEND”による対戦が行われた。僕がいちばん楽しみにしていた企画である。
【現役チーム】
するがモンキー、翔丸、MyYqAwNG、cooldere、ももクロChan
【DETONATOR LEGEND】
Darkよっぴー、SHAKA、RobiN、Saih4tE、上海紅茶館
最近のDeToNatorはストリーマーの4人(YamatoNくん、StylishNoobくん、SPYGEAくん、SHAKAくん)がメディアに出ることが多い。
彼らの活躍でDeToNatorを知った人からしたら、LEGEND(伝説)なんて言われてもSHAKAくん以外はピンと来ないと思う。
DETONATOR LEGENDは『AVA』プレイヤーにとって憧れの存在だった。ヒーローと言ってもいい。2012~2013年頃はこの5人でチームを組み、大会で何度も優勝し、調子が悪くても上位をキープ。まさに王者だった。
国際大会への出場経験も豊富だ。国際親善試合で優勝したこともある。公式大会では世界の頂点にあと一歩届かなかったものの、果敢に挑み続けるその姿に、ファンは夢中になった。
僕がesportsという言葉を意識するようになったのは、DETONATOR LEGENDの影響も大きかったように思う。日本におけるesportsの歴史の一部と言っても過言ではない。
現役チームもすごい。国際大会でベストポイントマン(機動力に長けた兵種)に選出された経験もあるするがモンキーくんを中心に、いまの日本『AVA』オールスターのような編成である。
要はステージ上が歴代ヒーロー大集合の回みたいになってるのだ。そんなの熱くなるに決まってる。
大会のようなかっこいい演出で両チームが入場した。DETONATOR LEGENDは拳を握り、力強く叫ぶ。
「GO!」
「デト!!」
懐かしいかけ声だ。これを聞くだけでこみ上げてくるものがある。一瞬、涙で視界がにじんだ。
試合が始まった。第1試合の使用マップはDUAL SIGHT。『AVA』でもっとも人気のある定番爆破マップだ。公式大会でも数々の名勝負が生まれてきた。
開幕ののろしを上げたのはDarkよっぴーくんだった。第1ラウンドでいきなり3連続キル、そしてオールキルを達成したのである。
「よっぴーが! いきなり魅せる!!」。会場には実況・YamatoNくんの絶叫が響き渡った。一瞬にして客席の空気が変わる。みんな理解したのだ。この試合、やばいぞ、と。
Darkよっぴーくんは観客の心を揺さぶる名役者でもあった。
第2ラウンドでも、出会いがしらに、振り向きざまに、つぎつぎと敵を撃ち抜く。なんと2ラウンド連続でオールキルを決めてしまった。会場がどよめく。
「よっぴいいいいいいいいいいいいいいいいいい!!!!!!!!!」
彼の名前を叫ばずにはいられなかった。
Darkよっぴーくんは『AVA』サービス開始当初から最前線で走り続けてきた。子どもの頃に囲碁を嗜んでいて、その腕前は県代表になるほど。FPSに重要な陣取りや読み合いに長けている。
YamatoNくんは実況の中で「(日本の『AVA』に)戦術という概念を生み出したのがDarkよっぴー」と言っていた。さすがに言い過ぎかなとは思うが、全体の戦術レベルを引き上げた功労者であることは間違いない。
彼は世界で勝ち切れず、夢半ばに選手としての第一線を退いた。いまは大会の解説を務めるなどして、プレイヤーたちを支える立場にある。
あと少しで頂点に手が届きそうなのに諦めなければならない辛さは、僕には想像もつかない。相応の苦労はあったのだと思う。
そんなDarkよっぴーが大舞台に帰ってきた。いまのDeToNatorファンの中には、彼のことを知らない人も多いだろう。それなのに、彼のプレイに会場中が釘づけになっている。
どうだ、すごいだろう。これがDarkよっぴーだ。僕は誇らしくなり、また少しだけ泣いた。
試合が始まるまでは「現役勢は手加減するのかなー」なんて気楽に考えていた。エキシビションマッチであれば、多少の演出もあっていいとは思う。
ふたを開けたらDETONATOR LEGENDが3ラウンド連取し、この時点でDarkよっぴーくんのスコアは12キル0デス。さすがに想定外だったらしく、するがモンキーくんの試合後のTweetからも当時の焦りが見て取れる。
今日レジェンドチームと対戦した時、1マップ目のDSで2ラウンド連続よっぴーさんにオールキルされた時は本気でヤバいと思ったw
— するがモンキー( ˙∞˙ ) (@s_monkey0113)
2018-03-04 21:01:42
この劣勢が現役プレイヤーのプライドに火をつけた。一瞬の反応速度や勢いは現役勢が勝る。
スピーディーな動きでLEGENDの5人をかき乱し、7ラウンド連続で取得。第1マップは現役勢に軍配が上がった。
第2マップはINDIA。作りがシンプルなので、個人技と個人技のぶつかり合いに発展しやすい。
第1マップではDarkよっぴーくん以外の成績が振るわなかった。上海紅茶館くんやSHAKAくんは要所でいい動きを見せるものの、キル数がデス数を下回る結果に。
続く第2マップでは状況が一変。Darkよっぴーくんの活躍に触発されたのか、不調だったSaih4tEくんとRobiNくんが息を吹き返したのだ。
Saih4tEくんの爆発力は世界有数だ。いつもにこにこしている彼は、ひとたびマウスを握るとランボー、もしくはバーサーカーに変貌する。
1対多数の状況を苦にせず、使用武器はアサルトライフルなのに、ロングレンジでスナイパーに撃ち勝つ一幕もあった。ちょっと意味がわからない。
ノッてきたSaih4tEくんを見て、YamatoNくんも「Saih4tEが止まらないぞ」、「もはやSaih4tEゲーですね」とさじを投げる。それだけの圧力が感じられたのだ。
徐々に調子を取り戻すRobiNくんは第9ラウンドで真価を発揮した。
彼は強力だが扱いが難しいバトルライフルの名手だ。2対3と人数不利な状況で敵の中に飛び込んで大暴れし、瞬く間に3人を撃破。大逆転劇を演出した。
衰えを隠せないベテランが仲間に負けじと現役時代の力を取り戻す。マンガかよ。
失礼ながら、穴があるとすれば上海紅茶館くんかなと思っていた。ほかの4人は『AVA』の選手から退いたとはいえ、何だかんだでFPSのプレイは続けている。
唯一、FPSに触れる機会が減っていた上海紅茶館くんではあるが、心配は無用。アサルトライフルさばきとバックアップ技術は健在だった。
あとで話を聞いたら「何かできました」とのこと。経験が体に染みついている。
いまでも人前に出ることが多いSHAKAくんは安定したプレイを見せてくれた。搖動、撃ち合い、フォローと、変幻自在に立ち回る。一瞬で決める高い狙撃能力も衰えていない。
まさに、DeToNatorにこの人あり、である。
驚くほどDETONATOR LEGENDをひいきしたリポートになってしまった。そこは察してほしい。なお、第2ラウンドは7対5で現役チームの勝利。やっぱり現役プレイヤーは強かった。
試合後、両チームのプレイヤーは笑顔で言葉を交わしていた。かつてDETONATOR LEGENDが流した汗はムダではない。その重みはプレイを通して若いファンにも伝わったはずだ。
こうしてバトンはつながれていく。
人気ストリーマーたちが韓国『PUBG』チームと共演
『AVA』が最高だったという話を書いた。この流れで続ける。
多くのファンがこれを目当てに来場したであろう『PUBG』ステージも、もちろん最高だった。笑って、ハラハラして、そう来るかーと膝を打つ。うまい人のプレイを見るときの感情をひと通り味わえた。
本イベントに合わせてDeToNator韓国『PUBG』部門が来日し、ストリーマーの4人(YamatoNくん、StylishNoobくん、SPYGEAくん、SHAKAくん)と共演。
4人チームのSQUAD戦2試合と8人チームの特殊ルール戦1試合が行われた。
韓国『PUBG』部門はプロとして活動するチームだ。個々の実力が高いのは当然として、しっかり役割分担もしている。
まずは物資が豊富で序盤の拠点にしやすいMyltaを制圧し、中盤以降も有利なポジションを押さえる。
ある意味、教科書どおり。それを実行するには並外れた技術と集中力が必要だ。見ていて安心感があるほどの立ち回りで1戦目のドン勝を手にした。さすが。
一方、笑いに事欠かないのがストリーマーチームだ。1戦目で泳いで移動しているところを敵チームに狙われ、SPYGEAくんがピンチに。
フォローに入らないとやばい! と思ったら我先にと水上バイクで逃げだすふたりがいた。SHAKAくんとStylishNoobくんである。また不仲説が流れしまうぞ。
少し離れたところで4人乗りのボートを発見。StylishNoobくんが運転して助けに戻ることになった。その様子を見て、KHくんがひと言「でも名古屋の人ですよ」。
“愛知県民は運転が荒い(※イメージがひとり歩きしている説もあります)”というネタを知っている韓国人。侮れない。
その後はSHAKAくんがグレネードで複数人を同時にキルしたり、自爆したりと、安心できない流れが続いた。拍手と笑いで忙しい。それでも2戦目でドン勝を取るあたり、こちらもさすがである。
8人チーム戦では日本と韓国のプレイヤーがひとつのチームを組んで戦った。最大のポイントは“言語の壁をどうクリアするか”である。
答えは、英語。簡単な英単語さえ理解できれば何とかなるものだ。会場にはプレイヤーのボイスチャット音声が流れていて、とくにStylishNoobくんの「OKOK!」を何度も聞いた。
意思の疎通ができていたかどうかはわからないが、終盤まで順調にきたので問題なかったのだろう。韓国『PUBG』チームが気配り上手だった可能性もある。
最後の最後で2チーム12人(6対6)による壮絶な撃ち合いが発生。日韓DeToNator混合チームは惜しくも撃ち負けてしまったが、2位入賞は見事。YamatoNくんは「国を超えた友情を感じました」と満足そうだった。