2018年11月8日発売予定のプレイステーションVR用アドベンチャー『Deracine(デラシネ)』。寄宿学校を舞台にした懐かしく心温まる体験を描く本作は、180度方向性の異なるアクションRPG『Bloodborne』や『ダークソウル』の宮崎英高氏がディレクターを勤めることでも話題になった。

 同作のファンからするとストーリーについて余計な勘ぐりをしてしまいそうになるが、宮崎氏自身はインタビューで「素直な気持ちで楽しんでほしい」、「(キャラクターたちが)化物になったりするんじゃないか? といった心配は無用です」と語っている。

やっぱり怪しい!? 散りばめられた伏線が気になりまくりの『Deracine(デラシネ)』プレイリポート【TGS2018】_01

 本作はフロム・ソフトウェアが挑戦する新境地。だとすれば、こちらも先入観無しのまっさらな気持ちで楽しむのが礼儀だろう!

 9月20日(木)から9月23日(日)まで、千葉・幕張メッセにて開催中の東京ゲームショウ2018(20日・21日はビジネスデイ)のソニー・インタラクティブエンタテインメントブースに試遊出展されていた『Deracine』を素直な気持ちでプレイしたので、リポートをお届けする。

やっぱり怪しい!? 伏線が散りばめられた寄宿学校

 主人公は“時の止まった世界に住む妖精”であり、人間からは見ることも声を聞くこともできない。そんな隔絶された存在であるプレイヤーが、寄宿学校に住む少年少女と間接的に心を通わせていく体験が本作の肝となっている。

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妖精と人間は直接話すことはできないが、物を動かしたり、少年少女たちが残した書き置きを読んだりすることで互いの存在を間接的に確かめる。

 操作としては、移動したい場所や働きかけたいオブジェクトにカーソルを合わせて選択する“ポイント・アンド・クリック式”のアドベンチャーを VR空間内で行うようなイメージだ。PS MOVEが必須というだけあり、操作感はかなり自然。物を掴んだり置いたりという動作は直感的に行うことができた。

 出展されていたデモではふたつのチャプターをプレイ可能。ひとつ目はゲームの基本的な流れを覚えるためのチュートリアル的な章で、妖精が持つ特別な“能力”についても説明される。

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 妖精には、生命力を吸収し、また別のものに移し与える能力がある。チャプター1は、とある少女の「枯れた花を蘇らせてみて」というお願いを叶えることで、彼女に妖精(=自分自身)の存在をアピールするという内容だった。

 お願いを聞く、イタズラするなど、キャラクターになんらかのアクションを仕掛けることで、数秒だけ時間が動いて物語も少しずつ進展する。妖精が住む静止した世界にはなんともいえない孤独感があり、時が動いて少女の笑い声が聞こえるとなんだかホッとしてしまう。この静と動のギャップが心地よく、物語の展開に応じて様々な形で感情を揺さぶってくれそうに思えた。

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 また、間近で眺める少女のモデリングがとにかく美しいのもポイントだろう。

 古い少女漫画で、お嬢様学校に転校してきた美少女が「お近づきになりたい!」とクラス中の憧れの的になるシーンを読んだことがある。ずっとあれはファンタジーか何かだと思っていたのだが、本作をプレイして、息を呑むような美少女を目の当たりにするとマジで「お近づきになりたい!」と感じるのだと知った。「対等の友人になりたい」とか、まして「男女の関係になりたい」といったスケベ心ではなく、ただ傍でそっと見守らせていただきたい。こんなにもプラトニックな感情が成人男性に芽生えるとは驚きである。

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 さて、チャプター1に登場した少女は、妖精の存在を信じて疑わないややメルヘンな女の子だったが、子供たち全員が彼女のようにおおらかな性格というわけではない。続くふたつ目のチャプターでは、寄宿学校のより広い範囲を自由に移動しながら、残りの少年少女たちともコンタクトを取っていくことになる。

 「妖精なんて非科学的だね」といった様子のメガネ男子、足の不自由な妹、クールで気だるげなイケメンなど、寄宿学校に暮らすティーンエイジャーたちは個性豊かだ。デモ版で確認できた範囲では、なんとも王道なキャラ造詣というか、ともするとステレオタイプ的な印象を受けたのだが、そのぶん彼らの性格がどのように掘り下げられていくのか製品版に期待したい。

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その場所で起こった出来事をビデオのように再生してくれる“幻影”という要素も。

 ところで、寄宿学校の中を探索することで、ゲームの進行とは関係の無いメモ書きやアイテムも発見できたのだが……。このうちのひとつがなんというか、まあ、率直に書いてしまうと

「やっぱり怪しいじゃないですか!」

 という内容であった。いや、もちろん私が先入観を捨てきれていないだけなのかもしれないのだけど……。あ〜、とにかく続きが気になる。

 TGS2018で本作を体験予定の方は、ぜひ隅々まで注意深く探索してみてほしい。アイテムテキストのような断片的な情報で物語を語るのは宮崎氏の真骨頂。考察好きのフロム・ソフトウェアファンなら脳の発達した部分が刺激されるにちがいない。そして私とモヤモヤを共有してください。よろしくお願いします。