ディースリー・パブリッシャーが2019年4月11日にプレイステーション4向けに発売予定のアクションシューティングゲーム『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』。

 2月頭にアメリカのサンフランシスコで行われたプレス向け体験会に参加してきたので、その模様を岡島プロデューサーへのインタビューとともにお届けしよう。

 本作はサンドロット開発による『地球防衛軍』シリーズのナンバリング作とは異なる、“もうひとつのEDF”を標榜したスピンオフ的タイトル。昆虫のような巨大生物の群れや怪獣と戦うというシリーズの基本は踏襲しつつ、マルチプレイの対戦モードの導入などさまざまなチャレンジが行われている。

 会場ではすでに作られたセーブデータをベースに自由にキャンペーンモードを遊べたほか、スタッフも交えつつ対戦モードも体験可能。プレイの録画もオーケーということで、春の発売に向けて着実に開発が進んでいるのがうかがえた。

プロールライダーが面白い!

 遊んでいて面白かったのが、最近発表されたPAギア(※)“プロールライダー”でのプレイ。クモ型生物の研究によって可能になったらしい“E-ニードル”と呼ばれる技で糸を放ってワイヤーアクションを行える。(※兵士たちが着用する強化外骨格で、本作での兵科的なカテゴライズになる)

 過去作をプレイしたことがある人はご存知かと思うが、本シリーズではとにかく大量の敵が押し寄せてくる中をうまく立ち回って戦わなければならない。そんな中でワイヤーアクションでうまく機動力を発揮して猛攻をかわしながら戦えると、なかなかの「俺ツエー!!」感。

 しかも過去記事でお伝えしている通り、PAギアにパワーが溜まると発動できる“オーバードライブ”モードで、プロールライダーはサポートバグを呼び出し、背に乗ってともに戦うことができる。人類の研究により強力な敵生命体を逆に利用するという、この燃えシチュエーションですよ!

アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_07
クモ型の場合は糸を吐いて攻撃したり、子グモを出したり。
アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_06
ちょっとスイングジャンプみたいなことができるので、向きを変えながら挙動をうまく調整できるといい感じ。

 PAギアにはそのほか、ベーシックな歩兵の“トルーパー”、ウィングダイバー系で一定時間飛べる“ジェットリフター”、重装甲で武器の二丁持ちができる“ヘビーストライカー”が存在。

 もちろんそれぞれの固有スキルやオーバードライブモードを持っており、プレイ感はガラッと変わる。装備や外見のカスタマイズと合わせてスタイルの見つけがいがありそうだ。

アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_03
ヘビーストライカーの火力はなかなかだが、機動力に欠け、エナジー切れを起こすとピンチになる。

対戦モードは2チームと敵が入り乱れる大混戦!

 オンライン対戦モード“マーセナリー”は、“EDF”と“カインドレッド・レべリオン”の2チームに分かれ、敵を倒すと出てくる“エナジージェム”をマップ内に出てくる黄色いドローンに納品し、そのポイントを競うという形式。

 単に相手チームを攻撃するだけではポイントを稼げないし、敵を倒すことだけに集中していると相手チームに襲撃されてせっかく集めたエナジージェムを横取りされてしまうので、独特な駆け引きが生まれそうだ。

アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_02
敵を倒してジェムを拾い、ドローンに納品したポイントを競うという形。もちろん納品前に相手チームを襲撃して横取りすることもできる。
アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_01
プロールライダーは対戦中にもバグを出せる。こちらはサソリ系で、ハサミで攻撃したり、毒を飛ばしたり。

海外のEDF隊員たちの反応は? プロデューサーインタビュー

 それでは続けて岡島プロデューサーへのインタビューをお届けする。せっかくの海外イベントでの取材なので、海外での展開や海外メディアの反応などを中心に聞いてみた。

岡島信幸(おかじまのぶゆき)

ディースリー・パブリッシャーの上席執行役員にして本作のプロデューサー。

――今回『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』は“地球防衛軍”の代わりに“EARTH DEFENSE FORCE”という英題を日本でもタイトルに採用しています。このあたり、シリーズでの位置づけやコンセプトの違いなどを教えてください。
岡島 EDF(地球防衛軍シリーズ)はもう15年ほどやっているんですけども、おかげさまで日本ではシリーズを重ねるごとに販売本数も上がっていき、『地球防衛軍5』では40万本が見えてくる所まで来ることができました。

 一方でワールドワイドという所になりますと、メジャーと言えるほどのブレイクスルーはまだできていなくて、“カルトメジャー”とでも言いますか、「カルトの中では上の方」というような。
――プレイしているアメリカの友人や配信者を思い起こすと、“カルトメジャー”という表現は割と腑に落ちる所がありますね。
岡島  コアゲーマーで好きな方はもちろんいらっしゃるものの、好き嫌いがちょっと激しく出るゲームなのかなとも思うんですけども、ゲーム性そのものは非常にシンプルで、世界のどこででも受け入れられるような題材だろうと考えていまして。

 「なんとかワールドワイドでブレイクスルーしたい」というのがディースリー・パブリッシャーと私の願いなのですが、かと言ってナンバリングのEDFを欧米で受けるように改変してしまうと、今度はこれまでシリーズを支えてきてくださったコアファンを裏切ることにもなってしまう可能性がありますよね。

 「ならば欧米向けには新しいEDFを作った方がいいだろう」ということで生まれたのがこの『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』なんですね。ナンバリングのEDFは聖域として残しつつ、もうひとつ新しいものを作ってみようと。

――海外市場を意識した新しいチャレンジ作というわけですね。
岡島 今回は開発もサンドロットさんではなくてユークスさんになっています。実はユークスさんとはSIMPLEシリーズ時代に少しお付き合いがありまして。その後しばらくお付き合いはなかったのですが、私が担当したタイトルに『ドリームクラブ』というシリーズ(※)があるんですけども……。(※2009年にXbox 360向けに発売され、さまざまなプラットフォームに展開された恋愛シミュレーションゲーム)

――いいゲームですね!(※記者は元ドリクラ紳士)
岡島 あの辺のサウンドクリエイトをやって頂いたサウンドエイムスさんが、WWEシリーズ(※)とかでユークスさんとよくお仕事されていたり、そんな感じに直接ご一緒しているわけではないけど、近しい存在ではあったんですね。(※2K Gamesのプロレスゲーム)

 それで、“EDFを世界でヒットさせるにはどうすればいいか”という構想はいくつかあったんですけども、「じゃあどこで作ればいいんだ」となった時に、久しぶりに全然別件でユークスさんとお会いして、「こういうのをやってみませんか?」とお話したのが最初になります。

 そうしたらユークスさんの中にもEDF隊員が何人かいらっしゃったようで、その方たちを中心に集まったチームが作った結果がこのゲームとなります。

 若い方が多いんですけども、これまでのゲームやサンドロットさんに対するリスペクトはありますし、「ワールドワイドでEDFをやるためにはここを変えた方がいい」、「でもここは絶対に変えない」といった所も、イチから説明しなくても結構わかりあえる人たちだったので良かったですね。

――その新しいチャレンジをするにあたって、ここは変えないという芯の部分、そして変えて挑戦した部分は。
岡島 芯の部分は、やっぱり代名詞である、巨大な“蟻”がたくさん出てくる、そしてそれに人間が立ち向かう。これですね(笑)。これでもかとたくさん出てくる絵作りさえ出来ていればEDFのアイコンとして認識はされますので、そこは絶対崩さないでおこうと。

 怪獣とか、それ以外にもアイコンとして出さなければいけないものはありますけど、基本的にはそこ(大量の昆虫型巨大生物が出現する)ができれば好きなようにアイデアを出して作って頂いて構わないとお願いしましたので、いっぱい建設的なアイデアが出ましたね。

 あと欧米の方はやっぱり対戦が好きなので、オンラインの協力プレイはそれはそれで必要として、多人数の対戦要素を入れようというのは最初からありました。あとはロケーションも日本じゃない所にしようとか、グラフィックのスタイルも洋ゲーっぽい雰囲気をある程度出したいとか……。

知っている場所が壊される楽しさ

――プレイしていて、このインタビューを収録しているサンフランシスコっぽい坂道の風景があって笑いました。
岡島 あれはその通り、サンフランシスコをイメージしたエリアです。昨日ちょっと町中を歩いたんですけど「お、ここ似てるな」っていう所が本当にありますよね。

アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_04
こういう、坂道沿いにビクトリア調の古い建物が並ぶのはサンフランシスコっぽい景色。

――そうですね、「そこの建物の間から何か出てくるんじゃないか」みたいな。
岡島 そういう感覚って大事なんです。自分たちが知っている、見たことがあるような街がどんどん壊せる/壊されるって面白いじゃないですか。たとえば『地球防衛軍5』には札幌駅前のような場所があるんですが、やはり札幌の人にはすごく喜んで頂きましたし。

――それはわかります。サンフランシスコはよく映画で壊されるんですが、2014年のハリウッドゴジラ映画(GODZILLA ゴジラ)をサンフランシスコの映画館に観に行ったら、知ってる地元の駅とかが壊されるとみんなやっぱり「おおっ」と乗り出す感じになるんですよ。
岡島 やっぱり知ってる所が出てくると嬉しいですよね。もっとも海外のユーザーみんながサンフランシスコに住んでいるわけはないんですが、どこかで見たことはあるという。

熱いEDF隊員が海外メディアにも!

――今日はアメリカのメディアのインタビュー対応をされていたわけですが、反応はいかがでしたか。
岡島 もっと表層的な質問を受けるのかと思ったら、かなりコアでよくゲームを知っていらっしゃるんですよね。これまでのナンバリングを好きで遊んでくださっているような方が非常に多かったので、すごくびっくりしました。
――遊びながらインタビュー内容に聞き耳を立てていたのですが、「SIMPLEシリーズのスピリットは……」(※)とか聞こえてきて「マジか!」と思いました。
岡島 そうなんですよ! ゲームの細かい所もご存知ですし、みなさんよく知っていらっしゃいますね。メジャーにはなっていないけど、“カルトメジャー”としてはかなり浸透していて、アメリカのEDF隊員も多いんだなと感じました。
(※シリーズの第1作『THE 地球防衛軍』および続編『THE 地球防衛軍2』が廉価ソフトのSIMPLE2000シリーズから始まった事を踏まえた質問だった模様)
――そういった「知る人ぞ知る」みたいな所から、海外でもさらにもうひとつブレイクスルーするための試みが本作であると。
岡島 そうですね、次はやはり世界での成功ですよね。もともと“SIMPLE2000シリーズ”という2000円のソフトから始まって、ほぼノンプロモーションで口コミでファンが広がって。そこからシリーズを重ねるごとにフルプライスになったりハードが変わってきたりもしたんですけど。

 プレイステーション2時代はしがらみなどもあって、あまり欧米で積極的に発売できなかったんですよ。今日も「地球防衛軍1と2を遊びたかったのに出してくれないんだもん」って言われたんですが、僕らとしても「したかったけどさせてくれなかったんだもん」って。(※地球防衛軍の1、2はアメリカで未発売で、ユーロ圏でのみ限定的な展開)。

 それで『地球防衛軍3』では、Xbox 360がいいハードだったので「HD機はコレで行こう」ということになりまして、海外で『Earth Defense Force 2017』というタイトルで発売したんですけども、これを知っている方が非常に多くて、ワールドワイドで確か45万本ぐらい行っているんですよ。今日もパッケージ持ってきて「サイン書いてくれ」という方がいましたね(笑)。

世界のゲーマーのボーダーレス化

――ここ最近、海外市場で日本のゲームの存在感が高まってきているのではないかという見かたもありますが、いかがでしょうか。
岡島 そういう質問をされた方も実際いましたね。それでお答えしたんですけども、日本市場では洋ゲーがすごく調子がいい。だから結局、ゲームのボーダーレス化が起きているんじゃないかと思うんですね。世界中のユーザーが欲しいものをパッケージなりダウンロードなりで手に入れられるようになって、いい時代ですよね。
――間違いないですね。しかも濃ければ濃いほど、それを欲している人にはいい事が多いという。EDFなんて特濃じゃないですか。
岡島 PC系の人は特にそういう所がありますね。Steamでは『EARTH DEFENSE FORCE 4.1 The Shadow of New Despair』だけが展開されているのですが、こちらも非常によく売れています。カルトゲームとしてはPCが向いているのかなと考えたこともあります。

ナンバリングとIRON RAIN系、ふたつのEDFが共存できれば

岡島 はい。ナンバリングシリーズが5で終わってこれからはIRON RAINになるという話ではないですし、ナンバリングはナンバリングで新しいものを提供していきたいと考えています。

 IRON RAINは戦略的な位置づけから発進したゲームではありますけども、これが欧米のユーザー、日本のユーザーに受け入れられれば、(この流れのものを)2作目、3作目と作っていけるようにしたいと思っています。

 ナンバリングは“Developed by サンドロット”のような形でありつつ、IRON RAINの流れもある、そんな感じに共存できればいいですね。なんだかんだで2年半ほど開発してきたのですが、元からそうしようと思って作っていますので。

――対戦モード、PAギアのシステムなどいろいろと新たなチャレンジがありますが、ここを見て欲しいという所を。
岡島 ナンバリングのEDFって、いい意味で“必要以上に変えない”のが魅力のひとつなんですよね。だから安心して遊べて、それがシリーズを重ねていって本数も増えていくということに逆に繋がっていると思うんですけど。

 IRON RAINではナンバリングではできない冒険をしていますので、そこの変化を楽しんでいただきたいと思います。ただ無数の巨大な生物と戦うゲームの核は継承していますので、そういう所は安心して欲しいです。

 今回も結構な数が一度に出ますよ。あと細かいところだと、ナンバリングでは大量に出てきた時に(表示が)重なるんですが、IRON RAINではこう積み重なるように蟻が蟻の上を歩いたりするので、そのあたりもおもしろかったりしますね。

アメリカにも熱いEDF隊員たちがいた! 『EARTH DEFENSE FORCE: IRON RAIN』プレイリポート&インタビュー_05
言われてみるとちゃんと積み重なりながら表示されてる!