よりすぐりの1本を丸ごと公開!
週刊ファミ通で連載中の、ゲームデザイナー桜井政博氏による人気コラム“桜井政博のゲームについて思うこと”。このコラムをまとめた単行本の最新刊『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』が、いよいよ2019年4月25日に発売となります!
本書の発売を記念して、担当編集者オススメの回を、2019年4月22日から発売当日の2019年4月25日まで、毎日午前10時に、1本ずつ丸ごと公開中。本書には、こんなにおもしろいコラムが103回分(※電子書籍版は99回分)も収録されています。ほかの回も読みたくなったら、ぜひ本書をお買い求めください!
以下、『桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019』より抜粋
※週刊ファミ通2018年2月8日発売号掲載(原稿は掲載当時に執筆されたものです)。
※書籍内から本文のみを抜粋しています。追記・補足部分は記事末の画像でご覧ください。
Vol.548 牧場ヤバイ
Nintendo Switchの日本と海外の2017年ダウンロード販売ランキングが発表されていました。海外のランキング第1位は『スーパーマリオ オデッセイ』や『マリオカート8 デラックス』…… ではなく。『Minecraft』……でもなく。なんと! 『StardewValley』でした!! 日本で1位になった『Minecraft』は2位。何が起こっているのだろう。信じがたい。
『Stardew Valley』は、牧場系インディーゲームです。おおむね『牧場物語』に近いと見てよいでしょう。Switchのインディーゲームは、PCでのリリースなどと比べてもかなり売れているという話があり、その中での1位なので、爆発的にヒットしているのでしょう。
わたしはかなり前、Steamで日本語訳もされていない『Stardew Valley』を購入していました。当時は正直、序盤でやめてしまっていたのですね。ハマりそうな予感はありましたが、遅めの速度で進み、スタミナ制で思う存分働けず、苦労した後の儲けも少なかった。そのときにわたし自身が忙しかったのも一因でしたが、遊びかたを間違えていることを疑いつつも保留状態だったのです。
で、Switch 版を改めて購入し、プレイしてみたところ……。PC版で感じた難点は“仕様”でした。べつに遊びかたは間違えていなかった。しかし、不自由が転じて見事にハマってしまいました。これはやめどきが難しい!! Switchと合わせた手軽感も相性がよく、ちくちく遊んでしまいます。
スマートメディアで遊ぶような牧場ゲームは、手軽さとスピード感が求められるし、それに見合った仕様になっていると思います。水やりや肥料の手間を要さなかったり、フリック入力でスパスパスパーンと刈り入れできるような。遅めの移動速度で、毎日の水やりを1コマずつ細々と行ったり、すぐにスタミナ切れになったり、木の伐採に斧をゆっくりと15回も入れる『Stardew Valley』のスピード感は、今風ではないのは確かです。
だけどそのぶん、パワーアップしたときの開放感がありますね。なんとか馬小屋を買って馬に乗れば、いままで感じなかった移動の気持ちよさが得られます。スプリンクラーで水やりをしたり、道具の加工をして能率を高めたり。もとから便利だと、こういったときの快感も減るのですよね。
もともと素材を育てたり集めたりして、組み合わせや工夫をする作品。マニュアルもなく、手探りのスタートは非常にシビアなのですが、波に乗れたらやめられません。つぎからつぎへと、やりたいことが出てきます。
牧場系ゲームは、そりゃあおもしろいよ!! だからプレイするのがコワいんだよ!! 『モンスターハンター:ワールド』が来週発売(執筆時)なのに、ハマっている場合じゃないよ!! 初めて遊んだ牧場系ゲームは『大地くんクライシス』だったと思うのだけれど、そのときから“ 牧場ヤバい”と感じていました。エンジンがかかるのに時間を要するけれど、かかったらそのラグが長いほど突っ走ってしまう……。これが、牧場系作品や育成系要素の真骨頂だと思います。
寝れば1日が終わる。ということは、畑に水だけやって寝れば、すぐにでも作物は育っていくわけで、待ち時間はありません。が、多くのプレイヤーはそうはせず、時間とスタミナが許す限り、1日のタスクを詰め込むことでしょう。のんびりのようで、タイムアタックのような密度感があると思います。『Stardew Valley』は、そのバランスがよいのでしょうね。それにしても、牧場ヤバい。
書籍情報
桜井政博のゲームについて思うこと 2015-2019
発売日:4月25日(木)発売予定
価格:1620円[税込](電子書籍版も同価格)
判型:A5判
ページ数:224ページ
約4年ぶりとなる単行本最新刊。2015年、前作『大乱闘スマッシュブラザーズ for Wii U』の発売後から、『大乱闘スマッシュブラザーズSPECIAL』発売後の2019年2月のコラムまでの時期に書かれたコラム4年分が掲載されています。収録にあたり、桜井氏が改めて監修するとともに、以下のような大量の加筆も行ってくれています。読み応え満点!
【巻頭特集】
桜井氏が制作現場で使っている道具などを公開! 桜井氏がどんなふうに仕事をしているのか、見えてくる!?
【スーパーヘルプ】
ファミ通誌面ではフォローしきれなかった用語解説や豆知識を掲載。すべて桜井氏の書き下ろし!
【ふり返って思うこと】
桜井氏と編集担当者との対話形式で、各回のテーマをさらに深く掘り下げている。
【そのころゲーム業界では】
掲載当時の出来事を掲載。時代背景を念頭に置くと、コラムをより深く理解できるかも。
お近くの書店やAmazon.co.jp、各種電子書籍ストアなどでお買い求めください!
※電子版は、書籍版を再編集して収録しています。
※電子版の画面写真は、すべて週刊ファミ通掲載時と同じカラー写真になっていますが、一部、書籍版と異なる場合があります。また、電子版には、諸般の事情によりVol.503、508、522、526は掲載しておりません。あらかじめご了承ください。
★第三回
“桜井政博氏が指南! 今日からあなたも“フレーム”が計れるようになる!?【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その3】”
は2019年4月24日(水)午前10時公開予定です。
第一回
桜井政博氏が解説する“モーション制作の極意”【桜井政博のゲームについて思うこと特別編その1】
は以下のリンクから。