家庭用向けの完全新規タイトルながら、最新技術で懐かしいRPGの魅力を再創造するという独自のコンセプトが高い評価を得た『オクトパストラベラー』。本作は、いったいどのような思想で生み出されたのか。今回はおよそ半年前、2018年12月1日に福岡市・九州産業大学にて開催されたCEDEC+KYUSHU 2018の『オクトパストラベラー』についての講演内容に注目。

 2019年6月8日よりSteam(PC)版の配信が開始されるタイミングで、“『OCTOPATH TRAVELER』開発における「懐かしさ」と「新しさ」の融合。”と題して開催されたセッションリポートの内容を元に、独自の発想が生まれた経緯を辿りながら考察したい。

 本作の制作過程が明かされたCEDEC+KYUSHU 2018のセッションでは、『オクトパストラベラー』の最新技術で表現されたドット絵のビジュアルや、往年のRPGをさらに進化させたかのような楽しさが生まれた過程がわかりやすく解説されていた。スマートフォン向けの最新作の発表などで、大きな広がりを見せ始めた『オクトパストラベラー』シリーズならではの魅力について知るうえで、貴重な講演となるはずだ。まずは、以下にリポートの模様を紹介していこう。

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 『オクトパストラベラー』は、RPGファンに懐かしさと新しさを感じさせる作品だ。一見すると相反する要素が共存できているゲームに仕上がった理由について考えて見たい。

 懐かしさを感じさせるという点で目を引くのは、なによりその最新技術で描かれた美しいドット絵の表現だろう。まるでスーパーファミコン時代のRPGかのような雰囲気を保ちつつも、広大なボクせるアートで作られたワールドマップを旅するといった、新しい感覚ももたらしたビジュアル。明らかにプレイヤーにノスタルジックな感覚を与えるべく作られたはずだ。

 こうしたビジュアルの制作については、まさにセッションに登壇した『オクトパストラベラー』の開発を手掛けたアクワイアのディレクター宮内継介氏と、アーティスト/テクニカルアーティストの飯塚三華氏のおふたりが語った映像面での制作過程からうかがい知ることができた。

 本セッションでは、ドット絵で"思い出を喚起する"、新しい映像表現を作りだした『オクトパストラベラー』のグラフィックやシステム作りの発想や技法について詳しく語られたのだ。

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ディレクターを務めた宮内継介氏。後ろはアーティスト/テクニカルアーティストを担当した飯塚三華氏。

 お話は本作の開発が企画段階のところまで遡る。スクウェア・エニックスからアクワイアに課されたお題は“進化したドット絵表現の実現”と、“そのグラフィックに合ったRPG”というものだったという。後者のゲーム性については、グラフィックが定まっていなければ開発はできない。まずはコンセプトが明確な、進化したドット絵表現を追求することになった。

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不透明なRPG部分よりも、ハッキリとしているグラフィック表現から開発がスタートした。

映像の鍵は“HD”と“SD”の境目

 グラフィック表現についてスクウェア・エニックスが提示したオーダーは、『ファイナルファンタジーVI』のようなドット絵であることや、キャラクターは2Dドット絵だが、背景は3Dにし、ミニチュア感を出すことだったという。グラフィックを担当した飯塚氏が考えたのは、スーパーファミコン後期のタイトルのような表現を用いて“懐かしさ”を出しつつ、現代的なグラフィック表現で“新しさ”を融合すること。

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スーパーファミコン後期のドット絵に、3D背景やライティング技術といったグラフィック表現がアクワイアに課されたオーダーだった。

 しかし昔のグラフィックは、とても低い解像度の中で、いかに街並みやキャラクターを表現するかという、制限された世界だったはず。現代のグラフィック表現はHD化し、グラフィック表現に制約はほぼなくなったと言っていいだろう。グラフィックの作りかたが過去と現在では異なっているのに、本作ではその融合を目指さなくてはならなかった。そこで、アクワイアのアートチームは、要素ごとに“懐かしさ”を踏襲すべき部分と、“新しさ”を取り込むポイントを選択していくことにしたのだという。

 本作は、グラフィック制作の時点ですでに、懐かしさと新しさをどのように同居させていくべきかに腐心して作られていたことがうかがえる。

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こちらはゲーム中に登場する港町のテクスチャを使用して、スーパーファミコン後期のグラフィックス表現を再現したイメージ。
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現代機の表現は、写真と見まごうほどのグラフィックが基本(スライドのものは、イメージ写真とのこと)。
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懐かしさと新しさ、どちらも感じられるものを目指した。

 背景では、新しさを感じるシェーダーを選択し、ただポリゴンにテクスチャが貼られたかのような見た目にはならないようなデザインを心がけたそうだ。また、ドット絵は基本的にドットの中に光や影を描き込むのだが、そこに光をそのまま当てると、2重の表現になってしまい違和感がある。そのため、“ドット絵らしい懐かしさ”を優先するために、ライティング表現は控えめにしたという。

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 テーブルなどのオブジェクトは、当初は角ばったポリゴンモデルを採用していたのだが、実際に見てみると“懐かしさ”ではなく“古臭さ”が際立ってしまったのだとか。そのため、現代らしい3Dモデルにして新しさを重視。ここまでの取り組みで分かったことは、当時のグラフィックから“少し先の進化した表現”を追いかけてはいけない、ということだったそうだ。とくに、ゲームがまだSD映像だったころの表現技術を採用した絵作りを行うと、プレイヤーは“懐かしい”とは思わずに、“古い”というネガティブなイメージを持ってしまうという。

 この「少し先の表現を追いかけると、懐かしさではなく古臭さを感じてしまう」、という飯塚氏の発見は興味深い。本作からいいようもない懐かしさを感じられるのは、徹底してスーパーファミコン時代の表現の進化を模索したからこそ生まれているのだと言えるだろう。

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採用されなかったのは、いわゆるプレイステーション2、ドリームキャストなどのSD解像度対応のハード表現というと分かりやすいだろうか。

 オブジェクトをひとつずつ見ていくと、それぞれに懐かしさと新しさが感じられる。だが、すべてが一枚の背景に合致した段階で、あらためて眺めてみると……画面には、どうも“なじまない”感覚が生まれてしまったそうだ。

 この難問をどのように乗り越えたのか。その答えは、懐かしさと新しさを“つなぐ”表現を追加してなじませることで、かけ離れた表現の差を埋めることだった。

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懐かしさと新しさの中間に、“つなぎ”を入れることで、自然なモノに見えることを目指した。

 オブジェクトは、キャラクターより小さいものは2Dのドット絵で描き、大きいもののみを3Dで表現。そこに、“つなぎ”として、キャラクターと同じサイズのものは、3Dだが裏面のない“2.5D”として表現したという。2Dと3Dの中間、2.5Dのグラフィックでつないだというわけだ。

 そのほか、木や石など有機的なものも2.5Dの表現が採用されている。この中間の表現があるおかげで、ドット絵の懐かしいテイストを残しつつも、3Dならではとなるライティングの美しさも、違和感なく総合的にしっくり感じられる映像になり、2Dと3Dが持つ、両方の良さを融合することに成功しているのだそうだ。なんという工夫!

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横から見ると、ビンやリンゴなどは、ペラペラとした2Dということがわかる。
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木箱や屋台は、どこからみてもオブジェクトが見える3Dモデルになっている。
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タルや布袋は、180度の表面だけが3Dになっているといった感じ。
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木や草、岩などの自然物はほとんど2.5Dとのこと。

 ちなみに、キャラクターをライティングする際の光源も難題だったことも語られていた。現代的でリアルな表現方法でライティングを行うと、非常に薄っぺらいキャラクターが動いているようにしか見えなかったそうだ。

 そこで飯塚氏は、あえてリアルさを追求するのではなく、必ず同じ位置からスポットライトが当たる“舞台演出”のような表現に変更。この表現が非常に画面にマッチし、キャラクターの存在感をよりアップさせることができたそうだ。ちなみに、本作ではダンジョン探索の際にキャラクターたちがランタンを持つ印象深く美しい光の表現があるが、このランタンの光源もスポットライト方式になっている。

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草なども、2.5Dを採用することで、キャラクターとの親和性が増しているのだとか。
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 表現技法は完成したものの、本作最大のテーマとなるのが、プレイヤーの“思い出補正”を超えるということ。プロトタイプ版では、当時のドット絵を綺麗に見せようというテーマだったのだが、それを実現したところ、多くの人に旧世代的な“古さ”と感じられてしまったことがきっかけだという。懐かしさと新しさを融合したグラフィックを実現したが、“懐かしさ”の部分にはプレイヤーの“思い出”補正がたっぷりと盛り込まれている。

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 たとえば、ブラウン管のテレビでスーパーファミコンのゲームをプレイした場合、ドット絵は通常ぼやけて見えるものだ。しかし、当時のことを思い出してみると、HD画質相当に値する綺麗なグラフィックに見えていた記憶はないだろうか? 

 それこそが“思い出補正”。講演では、プレイヤーは成長とともに、さまざまな経験を経て、当時みていたものが綺麗に見える補正をかけてしまうものであり、そこに当時よりも綺麗なドット絵を見せても、単純に荒いドット絵だとプレイヤーは感じて当時の思い出を超えることができないものだ。

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懐かしいグラフィックスには“思い出補正”がかかっているため、新しさが負けてしまうのだとか。
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さまざまなゲーム経験を経て、プレイヤーの懐かしさが“美しいグラフィック”に昇華されていく。

 そこで、飯塚氏は、ドット絵を荒く見せないために、魅せる部分のドットはクッキリと。ほかの部分はあえて“ボヤけたドット絵”として映す表現技法を考案。これはあえて情報量の少ない部分を作ることで、画面全体の情報量が多く見えるという、絵画やイラストの技法のひとつを応用したものだという。

 本作の映像は、このアイデアのおかげで、プレイヤーの思い出に“新しい技術で強く補正をかける”ことに成功したのだ。

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こちらがプロトタイプ版! 確かに古い印象を受けるような……。
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製品版。より見るべきところが豪華になり、よりクッキリとした印象だ。
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 本作の映像がスーパーファミコン世代のRPGファンの憧憬に強く訴えかける理由は、プレイヤーの思い出を超える“HD-2D”という表現方法が、試行錯誤のうえに完成したからにほかならないだろう。

 飯塚氏の手で、オクトパストラベラーの代名詞ともいうべきプレイヤーに懐かしさを感じさせる映像が完成した。ではつぎは、思い出を超えるに相応しい“新しい”RPGの遊びの要素はどう作られていったのかを、宮内ディレクターが講演で語った内容から迫っていきたい。

メモ帖で王道RPGの進化を目指す

 宮内氏が本作の開発の際に最初に掲げたテーマは、新しいタイトルなのだから当然“新しさを感じられるゲームを作る”ということだったという。そこから、“懐かしさ”のエッセンスとのバランスを考えていったそうだ。

 たしかに、本作をプレイした方ならお分かりいただけると思うが、往年のRPGのような手触りのまま、フリーシナリオで巡る遊びや、バトルの展開などは懐かしくも“いま風”とでも呼ぶべき快適さと派手さがあり、まるで過去の名作が、そのまま進化し続けて目の前に現れたかのような感覚がある。こうした感覚について、口で言うのは簡単だが、プレイヤーに懐かしくも新しい遊び心地をもたらすのは、容易ではないはずだ。どうやってこの遊びを実現したのだろうか。

 まず宮内氏は、先に完成していたグラフィックイメージから、“ファンタジーな世界観で、分かりやすいシステムを搭載した王道RPG”という遊びを連想したという。

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 懐かしいと感じられる王道RPGに求められているのは、ストーリーやNPC、バトルや成長といった要素を“王道”の遊びの部分であると宮内氏は判断。そこにむやみにほかの新要素が加わってしまうのは、蛇足になると考えたという。

 ならば、その“王道”の部分の“先”を作ることで、プレイヤーの思い出、そして想像を超えようという方針を決定した。

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これらのアートを見ても、さすがにスタイリッシュなアクションゲーム、スピーディーなレースゲームなどとは想像できないだろう。
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 当初は150時間くらい遊べるストーリーや、3000人くらいのNPCが居る広大な大地、要素の多いバトルシステム、通常の成長要素+ほかの複雑な成長要素……などを考えたのだそうだ。しかしそれでは、プレイヤーの思う懐かしき王道RPG要素は満たしても、その“枠をブチ破っている”のではと、企画を練り直したのだという。

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王道RPGをやりたいプレイヤーは、王道の要素を重視する。ほかの要素は、懐かしさを感じる妨げになってしまう。

 たとえば『ドラゴンクエスト』最新作を購入したのに、バトルに〇〇システム、〇〇バトルなど、多数の複雑な新システムが加わっていたら「プレイヤーは『DQ』を遊びたかったのに、もうそれは『DQ』ではない感覚に陥ってしまうかもしれませんよね」と、宮内氏は語る。……たしかに。

 そこで、宮内氏は、ひとつの要素に懐かしさを感じるのにも、“限界値”があることに気づいたそうだ。だからこそ、各要素は決して大きすぎず、かつ印象に強く残る要素にしようと考えたという。

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想像の範疇を遥かにはみ出す要素は、懐かしさを通り越してしまうのだ。
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 ちなみに、その要素を考えるために、宮内氏は独自の“ポストイット”(アイデアを出す際に、みんなでメモをどんどん書いて、それを集計する手法)のルールという、一風変わった発想法を採用していたことも講演で解説していた。

 これは、アイデアを8cm×8cmのメモに書いていくというもの。ポストイットに収まる範囲で、企画のおもしろさを説明できるようなアイデアを出していくというものだった。

 これにより、企画に必要な要素は大きくなりすぎず、さらに印象に残る発想を視覚化できるというわけだ。これにより、『オクトパストラベラー』の魅力となるさまざまな要素が産み出されていったそうだ。

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好きな順番でストーリーをプレイするというアイディアが、8人の主人公を選択し、冒険の途中でもストーリーを進めたり、止めたりすることができる要素となった。
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誰とでもバトルできる要素や、誰でも仲間にできるアイディアが、フィールドコマンドに発展。コマンドは破天荒なものも考えたそうだが、王道RPGらしい世界観に合わせて“盗む”というようなものにしたのだとか。
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ブーストシステムが生まれたきっかけは、1ボタンでコマンドが別のものに切り替わるアイディア。使いどころを明確にすることによって、本作のバトルの鍵となった。

 本作をプレイしていて感じるのは、漂う心地よい懐かしさを感じながらも、ブーストシステムで戦略的かつ爽快に進むバトルなど、懐かしさと新しさの“バランス”が秀逸な点も挙げられるだろう。

 すでに見てきたように、飯塚氏が苦心して到達したビジュアル面でも、つねにこの懐かしさと新しさのさじ加減で試行錯誤をくり返していた。それだけに、システム面でもこの塩梅については吟味されたに違いないはず。

 宮内氏は、冒険の際の自由度、そして新しいアイデアのバランスについては、“懐かしさ7:新しさ3”がベストなのだと語る。たとえ新しいシステムを用意したとしても、それを“絶対に使ってほしい”と押しつけるのではなく、“自分で試してみよう”と思える導線を作ることが大事なのだそうだ。

 それにより、懐かしさを損なわずに新しい体験をプレイヤーに味わってもらうことができるのだとか。

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プレイヤーの経験が完成のピース

 こうしたプロセスで、『オクトパストラベラー』は完成したのだが、講演の最後に、宮内氏は「グラフィックとゲームが完成しましたが、真の完成は“ユーザーの思い出”が鍵となるんです」と語っていた。“懐かしさ”とは、当時『ファイナルファンタジー』や『ドラゴンクエスト』、『クロノトリガー』や『ロマンシング・サガ』などを、昔遊んでいたプレイヤーだけが持ちうる感覚だ。 

 宮内氏は「ユーザーの思い出を信じ切ることが、このゲームを開発するうえでの推進力になりました」と話しつつ、「『オクトパストラベラー』も、この先数十年後にはきっと皆さんの思い出のひとつになってくれるはずです。この先も、ゲームの思い出の歴史が旅のように続いていくことを願っています」と語り、講演を締めくくっていた。

 ちなみに、CEDEC+KYUSHU 2018の開幕を飾った基調講演では、RPGファンに多くの“思い出”を残している『ドラゴンクエスト』シリーズの32年間の歩みについて、生みの親の堀井雄二氏がセッションを行ったのだが、奇しくも最後の講演は、本『オクトパストラベラー』の講演が飾ることとなっていたのだ。このことについても、宮内氏は感慨深いとひと言。基調講演の模様もファミ通.comではリポートしているので、気になる方は本記事と合わせて下記リンクをチェックして、RPGの思い出の系譜に目を通して見てほしい。

 講演では、「ユーザーの思い出を信じ切る」と印象深い言葉を残した宮内氏。思い出で映像を強く補正する手法に行きついた飯塚氏ともども、『オクトパストラベラー』はRPGの系譜に敬意を払いつつ、その遊びを進化させるために一歩ずつ慎重に歩みを進めた果てに完成した作品だと痛感できる。

 『オクトパストラベラー』は、なぜ懐かしくも同時に新しさを感じられるRPGなのか。その答えは、“つねにユーザーの思い出を意識しながら制作”され、その思い出を損なわずに思い出と絶妙な距離感を保って共存するグラフィックと新しいシステムを作り上げたからなのだろう。

 冒頭で記載した通り、本作は2019年6月8日よりSteam版が配信予定となっている。さらには、家庭用ゲームである『オクトパストラベラー』とは別に、スマートフォン用RPGとして『オクトパストラベラー 大陸の覇者』も発表されている。加えて、初のコンサート企画として“OCTOPATH TRAVELER Break, Boost and Beyond”の公演も決定! 気になる方は併せてチェックしてみてほしい!

『オクトパストラベラー 大陸の覇者』 1st Trailer