スパイク・チュンソフトは、Nintendo Switch用ソフト『ケイデンス・オブ・ハイラル:クリプト・オブ・ネクロダンサー feat. ゼルダの伝説』(以下、『ケイデンス・オブ・ハイラル』)を、2019年6月14日に配信開始した。

 本作は、2014年にSteamにてアーリーアクセス版が販売されるやいなや、アーリー・アクセスタイトルとしての最多販売本数を記録し、好評を博した『クリプト・オブ・ネクロダンサー』と、任天堂の看板タイトル『ゼルダの伝説』シリーズとのコラボレーションタイトルとなっている。

 本記事では、物心が付いてから初めて遊んだゲームがファミコン版『ゼルダの伝説』という、『ゼルダ』大好きライター・NiSHiによるレビューをお届けする。

ローグライク×リズムアクションに、謎解き要素が融合

 まずは、『クリプト・オブ・ネクロダンサー』という作品を簡単に紹介しよう。同作は、ダンジョンの構造やアイテムの配置がプレイごとに変化する“ローグライク”のシステムに、BGMに合わせてキャラクターを操作する“リズムアクション”の要素を取り込んだダンジョン探索ゲーム。プレイヤーは、ビートを刻むようにキャラクターを操作し、モンスターを倒しながらダンジョンを突き進んでいく。

 そんな『クリプト・オブ・ネクロダンサー』に、『ゼルダの伝説』を取り入れたのが、本作『ケイデンス・オブ・ハイラル』。タイトルの通り、ハイラルの世界が舞台となり、リンクやゼルダといったおなじみのキャラクターたちが冒険をくり広げていくことになる。

 『ケイデンス・オブ・ハイラル』は『クリプト・オブ・ネクロダンサー』と異なり、一部のフィールドやダンジョンの構成、アイテムの配置などは変わらない。その理由は、本作が『ゼルダの伝説』シリーズとのコラボタイトルだからだろう。

 『ゼルダの伝説』シリーズの特徴といえば、“謎解き”。アイテムなど駆使しながら、作り込まれた仕掛けの数々を解いていくことでダンジョンを突破でき、それが新たな冒険につながったり、珍しいアイテムを入手できたりと、大きな達成感を味わえる。この要素はもちろん『ケイデンス・オブ・ハイラル』にも受け継がれており、仕掛けを用意する都合上、フィールドの形が一定でなければならない、というわけだ。

『ゼルダ』らしい謎解きやボス戦がいっぱい。『ゼルダの伝説』×ローグライク×リズムアクション『ケイデンス・オブ・ハイラル』レビュー_01

リンクやゼルダが、ビートを刻みながらハイラルを冒険!

 プレイヤーが操作できるのは、『クリプト・オブ・ネクロダンサー』の主人公であるケイデンスに、『ゼルダの伝説』のリンクとゼルダを加えた3人。ゲームを始めると、プレイヤーはまずケイデンスを操作して、物語の導入を交えたチュートリアルに挑む。その後は、リンクかゼルダのどちらを操作するか選ぶことに。

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 どちらを選んでもゲームシステムは共通。左スティック(または方向ボタン)でキャラクターの移動を行い、敵の方向にスティックを入力すると攻撃をくり出す。
 
 そのほかの攻撃方法としては、『ゼルダの伝説』おなじみのバクダンや、ネズミの形をした移動式バクダン“ボムチュウ”、遠くの敵を気絶させる“ブーメラン”、魔力を消費して炎の玉が放てる“ファイアロッド”なども用意されている。

 また、ゼルダの固有アクションとしては、“ファイアロッド”のように炎の玉で攻撃できる“ディンの炎”や、魔力を消費して攻撃を反射できる“ネールの愛”などが存在。原作の要素を取り入れたアクションも、『ケイデンス・オブ・ハイラル』の魅力のひとつだ。

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 上記の方法を使って敵を倒していくことになるわけだが、戦闘では、BGMの1ビートごとに1回の行動が可能。『ゼルダの伝説』のシンボルマークでもあるトライフォースを模した“ビートフォース”に向かって、左右から緑色のビートバーが流れてくるので、ビートバーが中央に来たタイミングでスティックを入力し、テンポよく動こう。敵もビートに合わせて動いてくるため、敵の動きを把握しつつ、移動するか、攻撃するか、アイテムを使用するか、はたまたフィールド上のアイテムを拾うかなどを、素早く、かつ的確に判断することが重要となる。
 
 なお、戦闘においてダメージを受けず、さらにテンポも外さずに行動していると、ビートフォースにエネルギーがたまり、敵がレアアイテムを落としやすくなったりするなどの恩恵が受けられる。

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敵を倒すことで手に入るゲーム内通貨“ルピー”。フィールド上やダンジョン内に存在するショップにて、冒険に役立つアイテムを購入するのに使用する。

 敵との戦闘で体力がなくなると力尽きるが、ハイラルに存在する“運命の巫女”たちの力で、所持ルピーや装備アイテムを失った状態で復活させられ、彼女らが住まうほこらのような場所へと送られる。このとき、フィールド各地に点在するシーカーストーンをあらかじめ起動しておけば、ほこらからシーカーストーンを起動した場所へとワープすることが可能。つくづく、シーカー族の技術は驚異的だ。

 序盤は、体力が少ない、武器やアイテムの種類が少ない、リズムをとりつつ操作を行うことに慣れないなど、さまざまな要因が重なって力尽きることもままあるが、少しずつ行動範囲を広げながらシーカーストーンを起動させておけば、序盤のトライ&エラーもスムーズになる。

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シーカーストーンは、フィールドのあらゆる場所に設置されているので、見つけたら起動させる癖をつけておこう。
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ほこらにいる“運命の巫女”たちにダイヤを渡して、強力な装備アイテムなどを購入。ダイヤは、敵の撃破やダンジョン内でまれに入手できる。ほこら内で取り扱われているアイテムはいずれも貴重な品ばかりで、体力の上限が増える“ハートの器”も購入可能だ。なお、ダイヤはルピーとは違い、体力が尽きても失われない。

開発スタジオの『ゼルダの伝説』愛に溢れる作品

 そのほかの『ゼルダ』的要素についても触れておこう。まず、ゲームのグラフィックは、スーパーファミコン版『神々のトライフォース』がベース。温かみのあるドット絵を通じて、昔なつかしい『ゼルダの伝説』を随所で感じさせてくれた。

 またBGMも、シリーズのメインテーマを始め、ファンおなじみの楽曲のアレンジバージョンが多数使用されている。『ゼルダ』の作品だから当たり前と言えばそうなのだが、ダンジョン内の仕掛けを説いた時の“あの音”(テレレレテレレレン)や、宝箱を開けた時の“あの音”(テレレレー!)が聞こえてくると、やはり心が躍る。

 そのほか、なじみ深い魔物であるボコブリンやライネルも登場したり、とある部族たちの集落もあったり……。ゲームをプレイすればするほど、開発スタジオBrace Yourself Gamesの『ゼルダの伝説』に対する愛が存分に感じられた。

 『ケイデンス・オブ・ハイラル』は、『クリプト・オブ・ネクロダンサー』の持つゲームシステムをベースに、『ゼルダの伝説』の謎解き要素を融合させた結果、ローグライク×リズムアクション×謎解きと、本作ならではのまったく新しいゲーム体験が味わえる作品に仕上がっている。同シリーズのファンはもちろん、コアなゲーマーたちにもぜひプレイしてもらいたい1作だ。