『ドラゴンクエストX オンライン』や『ニーア』シリーズなどのプロデューサーで知られるスクウェア・エニックスの齊藤陽介氏がプロデュースするバーチャルアイドル“GEMS COMPANY”(以下、ジェムカン)。彼女たちの単独ファーストライブとなる“MagicBox”が2019年6月28日~30日の3日間、計5公演が神奈川県・横浜市のDMM VR THEATERで行われた。本稿では、その初日のライブの模様をお届けする。
ジェムカンは、もともと彼女たちはスクウェア・エニックスと、でんぱ組.incなどが所属している芸能事務所ディアステージの共同プロジェクトによるバーチャルアイドルグループ。ふだんは、ニコニコ生放送やYouTubeなどで、いわゆるVtuber的な活動をしているほか、アイドルグループらしく楽曲もこれまで7曲リリース(楽曲はMONACAが制作)。楽曲はYouTubeのGEMS COMPANY公式チャンネルでMVとして公開されているほか、ライブ当時の6月28日にはミニアルバム『GEMS COMPANY』も発売されている。
そして今回、ついに単独ファーストライブを行うという新たなステップに到達したというわけだ。動画配信などの活動を通じて、ジェムカンにはすでに熱心なファンもついており、3日間5公演のチケットはソールドアウトという人気っぷり。
ライブ初日は、MCを務める珠根うた(たまね うた)、星菜日向夏(ほしな ひなか)の“うたひな”のふたりと、齊藤プロデューサーによる前説で会場が温まったところで、ジェムカンメンバー全員が歌う『JAM GEM JUMP!!!』でスタート。ホログラフィックで、映し出されるメンバーたちの「その場にいる感」にまずはビックリ。ライトに照らされる彼女たちの眩しい姿や、影に入ったときのシルエット、かわいらしくもキレキレなダンスに圧倒的な歌唱など……公演が行われているあいだは、彼女たちの存在感にただただ見惚れることになった。
前述の通り、この日のMCは“うたひな”が担当。1曲目の『JAM GEM JUMP!!!』が終わると、珠根うたと星菜日向夏がステージに登場。MCでは、うたひなのふたりが観客のコールに応えながら、“60秒でわかる! ユニット紹介チャレンジ”などのコーナーを息の合った(?)コンビネーションで観客を魅了……というか、笑いの渦に。掛け合いのおもしろさもジェムカンの大きな魅力のひとつ。
最初のMCの後は、奈日抽ねね&有栖川レイカのユニット“ERINGIBEAM.(エリンギビーム)”による『しゃかりきマイライフ!』、音羽雫&城乃柚希&長谷みことのユニット”citross(シトロス)”による『メッセージ』が披露。
再び、うたひなのMCを挟み、その彼女たちがライブ限定で『残酷な天使のテーゼ』をカバー(カバーソングは、MCごとに違う選曲になっていた)。誰もが知る人気楽曲のカバーだけに、会場もノリノリ。続いて、赤羽ユキノ&一文字マヤ&花菱撫子のユニット“MATULIP(マチュリップ)”による『DESIGNED LOVE』、水科葵&桃丸ねくとのユニット“fulfill(フルフィル)”による『形而境界のモノローグ』が続けて披露された。
そして最後のMCでは、うたひなのふたりが『オンリー・マイ・フレンド』のレコーディング時のウラ話を披露。星菜日向夏は、事前に収録された珠根うたの歌を聴き、「歌うめぇ! 私の歌声でうーたま(珠根うた)の歌をジャマしないようにしなきゃ……」とプレッシャーを感じていたことを告白すると、一方の珠根うたは「ジャマなんてしてないよ! だってこのあいだボーカルレッスンの先生に、ふたりの歌声が合っているって褒めていただいたんだよ!」とコメント。このふたりのやり取りに会場もほっこり。
ファーストライブ、しかも初日のMCということで、緊張したというふたりだが、その緊張も感じさせないほど、MCパートをしっかり盛り上げることに成功していた。
その後は、ヨコオタロウ氏が原作を手掛けた舞台『君死ニタマフ事ナカレ 零_改』の主題歌となっている『鮮紅の花』を水科葵が歌い上げ、最後はうたひなの『オンリー・マイ・フレンド』でフィナーレとなった。
『オンリー・マイ・フレンド』が終わると、興奮冷めやらぬファンによるアンコールが会場をこだました。その声を受けて、うたひなが登場。星菜日向夏は、「この景色は本当にすごいです! ジェムカンの中でも最初にできたユニットのうたひなが初日のMCを務めることについては、正直プレッシャーもありましたし、みんなが来てくれるかな? という不安もありました。でも、うーたまという相棒やメンバー、スタッフさん、会場にいるみんな、来られなくても応援してくれたみんなに支えてもらって、ライブ初日を楽しく迎えることができました。みんなの笑顔を見て、またライブがしたいな、もっともっとがんばって進んでいきたいなって思いました!」と感無量の表情。珠根うたは「ライブ前にはたくさんの不安もありましたが、そんな心配が要らなかったくらいとっても楽しくて、盛り上がって、本当によかったです。SNSで応援してくれるみんなに生で会えるのが本当にうれしくて。またみんなに直接感謝の気持ちを伝えたいので、つぎのライブを開催できるようにがんばります!」と観客への感謝とともに、意気込みも語った。
アンコールはジェムカンの全員が登場。冒頭と異なる衣装で『JAM GEM JUMP!!!』を歌い上げ、MagicBoxは幕を閉じた。
熱狂うちに幕を閉じたジェムカンのファーストライブは、彼女たちの“存在”を“生(ライブ)”で感じられるという新次元のライブで、会場内で彼女たちはたしかに実在した。まさに魔法にかけらているかのようであり、ファンタジーであり、未来であり、新しいエンターテインメントでもあった。実際に生で観ると、また感動もひとしおなので、機会があれば、ぜひライブで体験してほしい。