ウォーゲーミングがさまざまなプラットフォームで提供する、オンラインタンクバトル『World of Tanks』(以下、『WoT』)。
そのVR版として、2019年1月開催の“第9回VRビジネスフォーラム”でもプレイアブル出展された『World of Tanks VR』(以下、『WoT VR』)の日本正式サービス開始について発表会が開催された。会場はVRゲーム&カフェバー“VREX(ヴィレックス)渋谷宮益坂店”。
『WoT VR』正式サービスは期間限定でスタート。本作が導入される店舗は、VREX渋谷宮益坂店、VREX新宿店、VREX広島八丁堀店の3店だ。
期間は2019年7月23日(火)正午から8月11日(日)までとなっており、同期間には上記3店でコラボカフェも展開し、コラボフード&ドリンクや特製グッズが販売される。
ちなみに、日本初の『WoT VR』導入店舗となるVREXは、次世代のゲームカフェ&バー。VRゲームをさまざまに取り揃え、フードやドリンクを楽しみつつ仲間とワイワイ遊べる場となっている。
発表会ではウォーゲーミングジャパンのスペシャルプロジェクトディレクター・川島康弘氏(以下、WG川島氏)による『WoT VR』の解説が行われた。続けて、VREXを運営する株式会社フタバ図書のVREX事業室室長・川島雄一郎氏(以下、VREX川島氏)が、VREX店舗について紹介。
『WoT VR』最新の仕様は? VREXってどんなお店?
WG川島氏は解説の冒頭で、本作が「従来の『WoT』とはまったく異なるエンターテインメント」であると語った。
本作は家ではなく特定の店舗に行くことでプレイできるロケーションベースのコンテンツだ。感覚としてはアーケードゲームに近い。VRキット一式を用いて360度全周囲をゲーム世界に置き換える没入型のタイトルとなっている。
同時プレイ人数は最大4人。2on2のチーム戦と自分以外が全員対戦相手となるデスマッチの2モードが用意されている。
他プラットフォームの『WoT』とは異なり、撃破されてもすぐに再出撃が可能。勝敗は時間内に相手戦車を撃破して稼いだスコアで決定する。
最新バージョンでは重戦車IS-3、中戦車T-44-100、軽戦車LTTBという、3種の戦車を選択可能。WG川島氏いわく、全部ソ連の戦車なのは開発者の趣味だとか。
両手に持つ操作用デバイスは、左右トリガーボタンも含めて5ボタンというシンプル構造。右トリガーで前進、左トリガーで後退、首を向けた方向に旋回して照準合わせ、右コントローラーのボタンで砲撃と、直感的かつシンプルな操作方法となっている。
解説だけだと難しいゲームのようにも感じられるが、WG川島氏からは「実際にプレイしてみていただければ、すぐに分かります!」との発言が。発表会後の実機プレイでその言葉は本当だったと証明されたので、詳しくは後述する。
『WoT VR』の解説に引き続き、VREX川島氏からVREXのコンセプトや詳細についての解説がされた。
VREXを運営するフタバ図書は、その社名の通り書店経営を主にする会社だ。同社は書籍関連事業に留まらず、“本当の感動”を顧客へ届けるために、ゲームカフェやアミューズメント事業、さらには未来型コンビニやコインランドリー、生活支援サービスに至るまで、さまざまなコンテンツを提供している。
そうした中でVREXが目指すのは、さまざまな楽しみかたが詰まったテーマパークであると同時に、二次会などでも気軽に遊びに来られる”VRバー”であるとのこと。方針としてはダーツバーなどに近い。
また、VREXならではのコンセプトとして、“ワイワイ遊べる”点を挙げた。VRコンテンツはひとりで黙々と遊ぶイメージが強いが、VREXで遊べるVRゲームはすべてパーティー型となっている。
VRゲームならではの没入感に加えて、プレイ中、あるいはプレイ後の感想戦などで、共通体験の楽しさも得られるのだ。豊富なドリンク&フードメニューが、その場をさらに盛り上げてくれる。
『WoT VR』の1プレイは3ラウンドで、無限リスポーンのため時間いっぱい遊べる分、かなり濃密な戦車体験が可能。プレイ料金にドリンク&フードを付けたお得なセットも用意されていた。
WG川島氏が語った通り「やってみればわかる」という部分が通常のゲームタイトルよりかなり多いので、ぜひ期間中に体験してみてほしい。
『WoT VR』最新版とコラボメニューを味わってみた
発表会では、開催期間に3店舗で同時展開されるコラボカフェのメニューも公開された。
『WoT』と同社の『World of Warships』の海軍のイメージも取り入れつつ、味も見た目も凝ったラインナップとなっている。以下、公開されたメニューを列挙していこう。
発表会内では試食の時間も設けられ、コラボメニューをひと足先に堪能できた。筆者はミート・スパゲッティと海軍カレーをいただいたが、どちらも味が濃厚で満足感があり、とくにカレーは肉の存在感もしっかりしていて、とても美味しかった。
コラボメニューを堪能した後には、『WoT VR』をVREXのロケーションでプレイできる時間が設けられ、筆者も初プレイに臨んだ。
プレイスペースは近未来的。これから大がかりなVRゲームを遊ぶんだという期待が高まり、テンションが上がる!
ところが、VRゴーグルを装着する段階で、筆者のメガネが横幅が大きめのタイプのため、VRゴーグルと同時に装着できないという事実が判明。メガネなしでプレイすることになってしまった。筆者の裸眼視力は0.02。果たしてどうなることやら。
最初の戦車選択画面の時点で、画面の文字がまったく読めなくて困る始末。だが、そこはスタッフの人がしっかり誘導してくれたため、順調にチュートリアルを終わらせることができた。
こうしてチュートリアルを終えた参加者4名で、2on2のチームバトルに突入!
視力0.02の筆者だが、本作では従来の『WoT』と異なり、画面情報がコンパクトまとまっているので、ぼやけた視界でもミニマップの赤い点(相手戦車の表示)のある方向を確認し、そちらに首を向けて旋回しつつ前進するなど、確認と操作に支障はなかった。
いざ接敵した後も、敵戦車の周りにわかりやすい表示が出るため困ることはなかった。敵戦車の有効射撃が入る部分には赤い枠が、遮蔽物に隠れているなどして射線が通っていない部分には黄色い枠が表示されるのだ。
直感的なプレイが可能で、視力が低い筆者でも、IS-3で何度も敵を撃破できた。
『WoT』において、戦車の装甲厚は本物の戦車を元にしたリアル志向だが、『WoT VR』では遊びやすさを重視して少々簡略化。車体前方は厚め、後方は薄めくらいの設定になっている。
さらに、従来の『WoT』にあった履帯や観測装置といったモジュールの概念もない。とりあえず車体のどこでも射撃を当てればダメージが入るという気軽さがいい。
プレイを終えてみると、5ボタンと首の動きだけでできる簡単操作と、従来のリアルを追求する『WoT』よりもややパーティーゲーム寄りになったシステムの取っつきやすさが本作の魅力だと感じた。初プレイでも戦車乗りの気分が存分に味わえるだろう。
また、今回のプレイ中にはVREXのスタッフが、対戦の模様をリアルタイムで実況してくれた。おかげで誰が現在のトッププレイヤーかをいちいち画面で確認したりする必要がなく、また気分も大いに盛り上がった。
さらに、プレイ終了後には、ラウンジのモニターでリプレイが鑑賞できる。ドリンクやフードを片手に、一緒にプレイした人とプレイ内容を振り返りつつ盛り上がるという、アフタープレイの楽しみまで用意されている。
ふたりの川島氏に訊く『WoT』×『VREX』の魅力
発表会終了後には、ウォーゲーミングとVREX、両方の川島氏にインタビューの時間をいただけた。両氏からは『WoT VR』の内容や今回のコラボについて、興味深いお話が伺えたので、こちらも紹介していこう。
――日本初の『WoT VR』サービス導入やコラボにつきまして、両社が組むまでの経緯を教えてください。
WG川島氏 声をかけたのは……どちらからでしたっけ?(笑) いざ振り返るとだいぶ前であやふやなんですが、2019年1月のフォーラムの時点で協議は始まっていました。お互いのコンテンツをお互いが気に入って、いつの間にかという感じでした。
VREX川島氏 それぞれパートナーやコンテンツを探していて、それがマッチして自然とやりましょうか、という話になりましたね。
――なるべくしてなった、という感じですね。続いて『WoT VR』のゲーム自体について。どういった客層を意識しておられますか?
WG川島氏 現在展開しているPC版『WoT』などをプレイされている方にはもちろん楽しんでいただけます。さらに『WoT』や戦車のことを知らない方など、どんな層にも楽しんでいただけるように設計しています。
――リスポーンがあることもそうですけど、従来の『WoT』よりもライトな部分が多いですよね。
WG川島氏 プレイのうまさで大きな差が出ることがないように注力しつつ、どなたにも楽しんでいただけるエンターテインメントとして作らせていただいています。
――実際にプレイしてみると、IS-3で俯角が全然取れず、照準が下に行ってくれなかったりしたのですが……。
WG川島氏 あの辺はちょっとね、戦車を知らないと「えっ?」と思うかも知れませんね。超信地旋回などもですが、そこは譲れないこだわりです(笑)。そこはしっかり車体を進めて、車体ごと下に傾けてください!
――これだからソ連戦車は! ちなみに、ドイツ戦車やイギリス戦車などは……?
WG川島氏 現在はグローバルで『WoT VR』の展開を進めておりまして、VREXさんも含めて世界各国でのサービスが決まったところです。戦車が3台選べるようになったのもつい最近で、これから各国でのフィードバックを集め始める段階なんですよ。
――となると、今後の拡張などについてはフィードバック後から、ということになりますか。
WG川島氏 そうですね、いまのところは現バージョンを定着させることに注力している段階です。ただ、ティーガー乗りたいですよねー(笑)。
――日本戦車とまでは言わないので、俯角仰角がある戦車を、ぜひ。
――VREX側としては『WoT VR』を、数多く取り扱っておられるパーティー型VRの中で、どのようなコンテンツとしてPRしていこうとお考えでしょうか。
VREX川島氏 もちろん『WoT』ファンの皆さんにご来店いただいて遊んでいただくとともに、VREXのほかのVRゲームにも、これを機に興味を持っていただければと考えています。
――なるほど、VRゲームに馴染みの薄い『WoT』プレイヤー層にとって、これまでにない機会になりますね。
VREX川島氏 また、現状のVREXは、女性の方も多くご来店くださっています。そういった方はVRゲームには興味があっても、ふだんは戦車に触れる機会がないという場合が多いと思います。
――戦車ということで、ちょっとハードルが高く感じられそうな気もしますが……。
VREX川島氏 先ほどお話しにあった通り、操作性はライトですので、試しにやってみようかな、と思える作品として目に映るかと思います。
VREX川島氏 今回のコラボが、『WoT』プレイヤー層とVREXの客層という、別々の方向から入ってきたそれぞれの皆さんへのきっかけ作りになれば、と考えております。
――あと気になっている点がありまして、今日の取材中はスタッフの方が丁寧に実況もしてくれたのですが、あれは一般営業中にもしていただけるのでしょうか。
VREX川島氏 もちろんやっています。逆に、仲間内でプレイに集中したいといった場合には、お伝えいただければじっと黙ります。ガチ勢の方には「敵に状況を伝えないでください」と言われるかも知れませんから(笑)。
――同じ部屋の4人で2on2ですと、話が筒抜けになりますからね。
VREX川島氏 将来的にガチ勢で大会などということになれば、インカムなどを着けてプレイすることになるんでしょうね。
――コラボカフェのメニューの中で、お気に入りやおすすめのメニューはありますか?
WG川島氏 おすすめというと、全部ですね(笑)。実際どれも全部、コラボメニューと聞いて予想していたレベルではなく、驚くほどに美味しかったです。でもまだサーロインステーキは食べてないかな?
VREX川島氏 サーロインはおすすめですよ。戦車の形でイロモノっぽいですけど、食べてみると美味しいという意外性のあるメニューです。
――あの戦車も、だいぶ俯角取れなさそうですよね……。
WG川島氏 じつは試作段階ではむしろ俯角を取りすぎていまして(笑)。これじゃ戦車に見えない! と、下にライスをしっかり入れたら俯角が取れなくなったという経緯があります。
VREX川島氏 このように、ウォーゲーミングさんからの監修もメニューにしっかりと入っています(笑)。
――まさかウォーゲーミングさんが、サーロインステーキまで監修することになろうとは……。
WG川島氏 スパゲッティもゲーム内の回復アイテムと同じですからね、あれも美味しい。カレーも美味しかったですねー。VREXさんはランチも出してらっしゃいますから、そちらもぜひ。
VREX川島氏 ふつうに飲み会なども開けますので、どの時間帯にご来店いただいても楽しんでいただけるかと思います。対戦のリプレイを見ながら飲み会を楽しんでいただいたりすることも可能です。
――最後に、読者へメッセージなどをいただけますか。
VREX川島氏 ちょうどサービスの期間は夏休みの時期。『WoT VR』も含めて当店のVRゲームはすべて複数人で楽しめるようになっております。ご家族やお仲間での思い出作りにもピッタリかと思いますので、ぜひお越しいただければ。
WG川島氏 『WoT VR』は、これまでの『WoT』とはまったく異なる体験ができるタイトルです。『WoT』を遊んでいただいている方に楽しんでいただけるのはもちろん、『WoT』を知らない皆さんにも同じレベルでおもしろさを味わっていただけるVRエンターテインメントに仕上がっております。なおかつ、VREXさんのドリンクとフードは美味しく、夏なのに涼しく、Wi-fiも完備ですので、ぜひ!
――待ち時間に仕事したり、モバイル版の『WoT Blitz』をプレイしたりできますね。
WG川島氏 新しい戦車体験を楽しんでいただきつつ、VREXさんのほかのコンテンツもVRを知るきっかけとしていただいたりと、楽しくお過ごしください。