インディーゲームデザイナーのテリー・カヴァナー氏による新作PCゲーム『Dicey Dungeons』を紹介しよう。本作はPC版がSteamとitch.ioで本日より配信開始され、Steamでの定価は1520円(現在は10%オフの1368円)。

 本作、元は7日間でローグライクな要素のあるゲームを開発する“7DRL”向けに作られた作品がベースで、そのアイデアをフルゲームへと発展させたもの。昨年からPCゲーム配信サイトのitch.ioでα版が公開され、アップデートが続けられてきた。コンテンツが揃って完成版となったのが今回のSteam販売版となる。

 なお現時点では日本語ローカライズは実装されていないが、アップデートで対応予定となっている(発売前のレビュー版では日本語も既に部分実装されていた)。

『Dicey Dungeons』1~6のサイコロの目にリスク管理とビルド構築の楽しさが詰め込まれた秀作ローグライク_01
レビュー版には所々抜けがあったものの、既に日本語が選択可能になっていた。

1から6までのサイコロの目にローグライクなリスクテイクのバランスの楽しさが詰め込まれた秀作

 さて本作を簡単にカテゴライズすると、ローグライクなダンジョン探索RPGの一種だ。自動生成されたダンジョンのマスを進んでいき、モンスターを倒してレベルアップと能力強化を行いながら下の階へと進んで、最終的に最深部にいるボスを撃破するのが目的。死んだら1階からやり直しだ。

 「……そんなゲーム、星の数ほどあるじゃん」と思った人は正解。では本作ならではの良さはどこなのか?

『Dicey Dungeons』1~6のサイコロの目にリスク管理とビルド構築の楽しさが詰め込まれた秀作ローグライク_06
敵がマスを動いてくることはないが、通せんぼされている事が多いのと、レベルアップで回復するのが一番効率がよく、しかもボスまでの敵をすべて倒すと丁度最高レベルに上がるという関係上、基本的にすべての敵と戦うことになる。なので迂回を考えるより、定期的な回復が可能そうなルートで戦っていくのが基本。

 それは、1から6までのサイコロの目の中にローグライクなリスクテイクのバランスの楽しさが詰め込まれた、間口がわかりやすく奥が深い設計のゲームになっている所だ。

 ポイントは、基本的に戦闘中のほぼすべてのコマンドがサイコロに左右されることと、そのサイコロの目を適用する各戦闘コマンドがランダムに道中で手に入り、デッキ構築的に入れ替え可能なこと(ちなみに移動にはサイコロは使われない)。

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サイコロの目ではなく奇数偶数で発動するコマンドが多いため、目の数を変える“ロックピック”が要になっている状態。

 例えば各コマンドは「大きい目が出る=強い」という単純なものだけではなく、「奇数のみ発動で固定4ダメージ」とか「3以下のみ発動で目の2倍ダメージ」といった条件のものも存在する。

 なので場合によっちゃあ「6がいっぱい出たのに使いみちがない」といったこともあるし、「そもそも3が複数来るのが自分にとって最強」なんてコマンド構成もありうる。

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目の上限や下限があるコマンド、目とダメージが直接関係ないコマンドなど、いろいろある。なおこの構成で最強は6ではなく5。5があれば3倍の15ダメージをぶち込める。6の目を有効活用できるのは“火炎放射器”のみ(他の項目は固定ダメージのため)。

 というわけで、最初のうちは単にサイコロの出目で勝ったりピンチに陥ったりするゲームなのだが、ランダムに出会うさまざまなコマンドを取捨選択していく内に、ビルド構成でサイコロの目というランダム要素をどう扱うかのゲームになっていく。

 “いかにコンボを形成し、期待通りの目が揃った時の攻撃力を上げるか”とか、その一方で“生存率を高めるために、どう比較的安定してダメージを出せそうな構成にするか”といった、ローグライク的なリスクテイクのバランスがここに詰まっているのだ。

 プレイ感としてはローグライクRPGというよりカードゲームに近いと言ってもいいかもしれない。絶体絶命のピンチの中でギリギリ敵を撃破する手を見出した時は本当に気持ちいい。

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盗賊の毒ビルド。サイコロを割って目を小さくする“ロックピック”とコピーする“偽造+”で小さい目のサイコロをたくさん作り、“毒針”(最大2)で毒を蓄積させて、“起爆装置”でさらに削っていくのが目的。

 プレイアブルキャラクターは、以下の6種類。それぞれ異なるプレイスタイルや専用コマンドを持っているので、フレッシュに遊べる。

戦士 オーソドックスなスタイル。
盗賊 技を盗んだりコピーする
ロボット 計算コマンドで上限値に達するまでサイコロを振れる
発明家 戦闘のたびに手持ちの能力からガジェットを強制開発する
魔法使い 魔法書にサイコロの目ごとに登録した能力をサイコロで呼び出してから使う
道化師 能力がカードデッキのようにループしていく

 また各キャラクターでメインのキャンペーンをクリアーすると、変則ルールの“エピソード”がプレイ可能になる。

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ロボットは上限値までサイコロを振り続けられ、ジャストに到達するとボーナス能力が使えるが、オーバーすると各コマンドが使用不可能になる(“エラー無効”を持つ能力は例外)。

本当に幅広い人が楽しめるローグライク

 冒頭で書いたように現段階ではまだ日本語対応していないが、サイコロの目の中で要素が整理されているため、ゲームの内容自体は小学生でも十分楽しめるだろうし、普段デッキ構築などが苦手な人のスタートポイントとしても十分にアリだと思う。幅広い人に楽しんでもらいたい作品だ。

 ちなみに英語版のままでやってみようという人は、“Min”(最低)と“Max”(最高)、“Odd”(奇数)と“Even”(偶数)ぐらいは覚えておくといいだろう。