2019年8月20日~24日(現地時間)、ドイツ・ケルンで開催されたgamescom2019。その会場で『サイバーパンク2077』コンセプトアーティストのMARTHE JONKERS氏にインタビューを行った。
MARTHE JONKERS氏
CD PROJEKT RED所属。『サイバーパンク2077』シニアコンセプトアーティスト。(文中はマルタ)
『サイバーパンク2077』の世界を生み出すコンセプト
――よろしくおねがいします。
マルタハイ、よろしくおねがいします。
――あれっ、日本語ですね?
マルタじつは、以前、日本のゲーム会社に5年ほど勤めていたので、すこしだけわかります。でも、インタビューは英語でお願いします(笑)。
――わかりました(笑)。それではまず、シニアコンセプトアーティストというのは、どのような仕事をされているのか簡単に教えてください。
マルタはい。地区や全体のロケーションのビジュアルデザインを始め、デザインチームのコーディネートも行います。
――本作の舞台となる“ナイトシティ”を作られているのですね。ということは、本作で背景などの3DCGデザインを担当している日本人クリエイターの榊原寛さんといっしょのチームだったりするのでしょうか?
※榊原さんに訊いた『サイバーパンク2077』の街の作りかたは以下の関連記事をチェック!
マルタ彼とは働いているスタジオが違うので(榊原氏はワルシャワ、マルタ氏はクラクフスタジオに勤務)、いっしょのチームというわけではありませんが、じつはコンセプトアートを担当している日本人スタッフが私の隣の席にいますよ(笑)。
――おお、そうなのですね。今回、gamescomのブース内装などもデザインチームがかなり力を入れて作られたと聞きましたが、ポスターなども制作されたりしたのでしょうか?
マルタいいところに目を付けていただきました。
マルタこのポスターは、ゲームの時系列に沿って、コアなビジュアルスタイルを表現するために作られたものなんです。ですから、色使いや車のデザインなども、ゲーム中の時代ごとに異なっています。
――“サイバーパンク”とは、言葉としてはよく使いますが、時代的には近未来で、当然我々は目にしたことのない世界です。サイバーパンクな世界観を生み出すために、どのように制作されているのしょう。
マルタいい質問ですね。アプローチとしては、バリエーション、アングルがいろいろとあるようにということを大切にしています。
何かひとつというのではなく、東京でも、ここケルンでもそうだと思いますが、古いものと新しいものが混ざっているんです。自動車やファッションなど、ナイトシティでもそういったミックスしたものが舞台です。いろいろな地域があって、街ひとつでもいろいろな人がいて、企業があったり、テクノロジーの差があったり、貧富の差が見えるようにしたりと、“層”になっているんです。多様性を表現しようと心がけています。これは、原作のオリジナルの考えかたでもあります。
――原作というと、テーブルトークRPGの『サイバーパンク2.0.2.0』ですか。
マルタええ。やはりボードゲームがありますからその世界に基づきつつ、いまから57年ぶんの未来を想像して作っています。たとえば、プレイデモにも映っていたパシフィカ地区では、リゾート地域だったのですが、企業に乗っ取られ、その後不況となり、廃棄されたという背景があります。そこに、気候変動で住めなくなったハイチの人が移り住んでいたりと、地区ごとのヒストリーなどもあって、世界が生み出されていきます。
マルタ原作者のマイク氏ともコラボをして、こちらからも提案したりと、いっしょに作り上げているという感じです。
※『サイバーパンク2.0.2.0』原作者へのインタビュー記事もチェック!
――なるほど。とくに廃棄された高層ビル群というパシフィカ地区を見て、香港の九龍城を思い出したのですが、現実の街を参考にされたりはしたのでしょうか?
マルタいろいろなところからインスピレーションは得ています。私は九龍城は知らないのですが、最初のデモ映像で公開した“ワトソン地区”は、日本人やアジアからの移民が多くいる街ですから、京都や大阪、東京、日本の文化を多く入れています。アジア人や日本人がほかのコミュニティーから入ってきて“層”を作っているという街ですね。
――今回のプレイデモを見て、発売がますます楽しみになりました。
マルタええ、私たち制作者も、毎日ゲーム画面を見て、ワクワクしています。背景やクルマ、建物やあらゆるところまで細かく作っていますので、ぜひ皆さんもナイトシティーに来てじっくりと見てほしいですね。