Fangamer(ファンゲーマー)をご存知でしょうか。アメリカ・アリゾナ州に本社を構えるゲームグッズの会社です。『UNDERTALE』公式ショップとして認識している方も多いかもしれません。
日常シーンで活躍するかわいい&かっこいいアパレルから、使いどきがわからないユニークなグッズまで、ゲームファンの心を射抜くグッズを多数展開しています。
2018年に初出展した東京ゲームショウでは、『UNDERTALE』グッズを中心に「かわいすぎる!」とTwitterで話題となり、完売商品が相次ぐ事態となりました。
今回は、2017年に進出した日本支社Fangamer Japanの代表にインタビュー。ゲーマー心理の芯を捉える秘訣は、“自分たちがファンであり続けること”にありました。
ゲーム好きが集まって好きなことをやっている
Mark Reichwein(マーク・ライクワイン)
Fangamer Japanの代表取締役
マーク初めまして! Fangamer Japanの代表取締役を務めているマーク・ライクワイン(Mark Reichwein)です。
――よろしくお願いします。もしかしてその格好、『UNDERTALE』のサンズの服では?
マークそうなんです! カワイイでしょ!? これも商品です。
――Fangamerが日本に進出した当初は「『UNDERTALE』のグッズが買えるお店」という触れ込みでした。商品ラインアップも『UNDERTALE』のアイテムだけでしたよね。
マーク「日本でもグッズを売ってくれ!」という声はアメリカの本社に届いていたみたいで。日本の『UNDERTALE』ファンの声がFangamer Japan誕生のきっかけになった……と聞いています。
――ん? 「みたい」とか「聞いています」とか、ちょっと引っかかる言い方ですが……。
マークじつは私、Fangamerが日本進出するタイミングで入社したんです(笑) もとは日本のゲーム会社で働いていたんだけど、思い切って退社してFangamer Japanの代表になりました。
――その大抜擢の裏にはどのような経緯が?
マークFangamerは『MOTHER2』の二次創作サークルから始まった会社なんです。で、私はサークル時代のメンバーで。Fangamerが法人化した後も、たま~に作業を手伝ったりしていました。「日本に支店出したいからマークが社長やってよ」「マネジメント経験もあるんでしょ?」って。だから大抜擢でもなんでもなくて、コネ入社なんです(笑)
――もともと付き合いの長いゲーム仲間だったわけですね。
マークゲーム仲間! そうですね! Fangamerの働きかたはあまり会社っぽくなくて、サークルの延長上にあるというか、ものすごく自由なんです。ゲーム好きが集まって好きなことをしているという感じで。ちゃんと仕事をやっていれば、いつ出社していつ帰ってもいい。夜遅くまで働いたら、朝は遅刻しても大丈夫な雰囲気です。
――すばらしいですね! それはFangamer Japanも同じなのでしょうか?
マークFangamer Japanの場合、私以外は商品を発送するパートさんで運営しているんですが、シフトはかなり自由に決めてもらってます。そもそもオフィスが愛知県にあるのも、「私の奥さんの実家が近いから」という超個人的な理由ですから(笑)
――うらやましいです。お話を聞いていて、Fangamerの商品が魅力的な理由がわかった気がします。作り手自身がファンだからこそ、自由な発送でグッズが作れるのですね。
マークそうかもしれません。僕らはつねに“持っていて特別感を味わえるグッズ”を目指しています。基本的に公式イラストをそのままプリントしたような商品は作りません。ユニークで、楽しくて、周りのお友だちから「それどこで買ったの!?」とうらやましがられるような、そんなグッズをみなさんにお届けしたい。
――なるほど……。ゲームに限らず、オタクなら誰しも「ほかのファンと差別化したい」という心理がどこかにある気がします。
――そういえば、Fangamerのグッズはデザイナーさんの個性が前面に出ていますよね。公式イラストをそのまま使わずに、デザイナーの解釈でゲームの世界を表現しているというか。このことも“特別感”や“ユニークさ”の演出に一役買っている気がします。
マークその通りです。とにかくそのゲームが好きなアーティストにお願いして、方向性はお任せしています。
――この『DARK SOULS』のTシャツなんか、あまり見ないテイストでめちゃくちゃかっこいいですよね。説明文が「アルトリウスと同じように装備者は深淵を歩けるようになる。」なのも最高……。
マーク商品をお探しいただく際は、ゲームのタイトルだけじゃなくて、アーティストの名前でも検索ができるんです。お気に入りの作風を見つけたら、ぜひ活用してみてください!
――なるほど。“デザイナーさんのファン”もうれしいし、逆にデザイナーさんも新規ファン獲得につながるかもしれない。まさにファンのファンによるファンのためのショップですね。
――お話を聞いていると、なんというか、日本の同人文化に近い精神を感じました。
マークたしかに! 公式でやっている同人活動に近いのかも。そう考えると贅沢ですね(笑) ……あー、でもやっぱりちょっと違うな……。
――違いますか? それはどのような点が?
マーク日本では“公式”と“同人”のあいだに絶対に越えられない壁みたいな意識がありませんか? アメリカはその辺りの感覚がゆるくて。ニュアンスを汲み取ってもらえるかちょっと不安ですが……。
――なるほど。フェアユースの考えかたですよね。アメリカでは他人の著作物を利用できる範囲がすごく広いと聞きます。
マークそうですね。営利目的だとNGだったりするので、いまはライセンスを受けた商品だけ扱っていますけど、少なくとも「グッズを作りたい! じゃあ作ろう!」みたいなフットワークの軽さはあるかもしれません。
――日本の『MOTHER』がきっかけで誕生した Fangamerが、アメリカ的スピリットで成長し、こうして再び日本のゲームファンに愛されている……。そう考えると感慨深いものがありますね。
今後は日本の方に向けて、日本人のデザイナー・アーティストが作った商品を増やしていきたい
マークせっかくなので倉庫を見ていかれますか?
――こんなに……! 倉庫というか宝物庫ですね。梱包や発送までこちらの場所で行なっているのですか?
マークはい。うちの従業員は、あまりゲームをしないパートタイムのお母さんが多いんです。「よくわからないけどこれ可愛いわね」なんて言いながらがんばっていただいています(笑)。
――和気藹々とした様子が目に浮かびます。
――あ、このポストカードは商品についてくるオマケですね?
マークそうです。うちは商品とセットで必ずオマケを封入するようにしています。ステッカーとか、ポストカードとか、ちょっとしたものではあるのですが、やっぱりお客様に喜んでいただけたら嬉しいので。
――Twitterで“Fangamer”と検索すると、商品のクオリティと同じくらい、サービスの質やホスピタリティを評価する声が上がっていますよね。
マークありがたい限りです。うれしいので仕事中もエゴサーチしています。「喜んでもらえてる~! やった~!」って(笑)
――(笑)
マーク日本支社は小さな会社なので、できるだけお客様に近いところでサービスをしようと心がけています。たとえば「誕生日だから絶対間に合わせたいんです」と言われれば優先して発送したり、「Happy birthday!」とおまけカードに書いたりいただいたコメントに対しても返信するようにしています。
――Twitterの感想を見ていると、クレジットカードを持っていない学生さんが「コンビニ支払いで買えるのが嬉しい」と呟いていました。たしかに海外のグッズを個人輸入するとなると、クレジットカードが必要になる場合が多いです。
マーク若い方にこそ使っていただきたいようなグッズもありますし、クレジットカードを持っていたとしても登録は不安というお客様もいらっしゃると思います。喜んでいただけるのはこちらとしても嬉しいですね。
――昨年の東京ゲームショウ2018でも、Fangamerさんは大人気でしたね。「かわいい『UNDERTALE』グッズが売ってる!」とTwitterでバズっていらっしゃいました。
マーク初めての出展ということもあり、対応が追いつかずお客様にはご迷惑をおかけしてしまいました……。長蛇の列ができて「こんなに並ぶの!?」と。アメリカ本社からもスタッフが来ていたのですが、一同うれしい悲鳴で。
――今年のTGS2019にも出展されるとのことですが、昨年以上に燃えていらっしゃる?
マーク今回はすべてにおいてレベルアップしています! ブースのサイズは去年の倍、商品の数も倍です。新商品も40種類ほど用意しました!
――40種類! それはすごい!
マーク列対応がもっと早くできるようにレジスタッフも増やしています。そして、TGS用に1会計につき1枚特別なおまけもお配りします。サンズの顔うちわです。
――『スマブラSP』出演でホットなサンズがクールなうちわに!
マークさらに、TGS2019先行で『UNDERTALE』のグッズ“骨兄弟の挑戦 トートバッグ”を新発売します。これはFangamar Japanのメインデザイナーである大橋郁乃(@sazanka_34)が提案・デザインした商品です。
マーク日本はアメリカと比べると比較的シンプルで落ち着いたファッションを好む方が多いと思うのですが、本社で制作したアパレルはアメリカのアーティストがデザインしていることもあって少し派手めなデザインが多いのですね。なので日本の方がファッションに取り入れやすいように、外から見える部分はシンプルで落ち着いたデザインになりました。ただ、バッグの中面は外からは見えない部分ですので、そこは派手でおもしろみのあるものにしたい。また、『UNDERTALE』をプレイしたことのある人だからこそわかるデザインにしたいとデザインした大橋は言っていました。
――裏地がパピルスの罠になっていますね。これはかわいい!
――支社であるFangamer Japanが商品を企画するのは初の試みですよね。
マークはい。Fangamer Japanでは、現在ほとんどの商品はアメリカ本社から仕入れていますが、今後は日本の方に向けて、日本人のデザイナー・アーティストが作った商品を増やしていきたいと考えています。
――おお! “骨兄弟の挑戦 トートバッグ”に続くFangamer Japanオリジナル商品も楽しみです。
Fangamerさんのfan artです https://t.co/V42SDcSrTV
— ねる (@neruco_)
2019-09-01 20:52:18
ここ数日のまとめ https://t.co/bZK35ngeEm
— 犬(そーだ) (@UT_soda)
2019-09-05 15:11:38
――日本にも、ものづくりを志すゲームファンはたくさんいます。あるいはFangamer様のグッズをきっかけにものづくりを始めるゲームファンが現れるかもしれません。同じ“ファン”仲間として、彼らにメッセージをお願いできますでしょうか。
マーク「これが作りたい!」という思いをちゃんと形にできるまで頑張るのは大変ですが、たくさんの小さな目標を達成していけば、大きな目標が達成できる日まで繋がります! 物作りだけじゃなくて、どんな趣味でも目標を作ることがとても大切だと思います。