プロジェクトEGG(以下、EGG)とは、過去のPCゲームをWindows PCでプレイできるというサービス。PC-8801やX1、FM-7といったPCのゲームから、メガドライブやPCエンジンといった家庭用ゲーム機やアーケードのゲームまで、さまざまなプラットフォームの作品を復刻している。D4エンタープライズが手掛けるこのプロジェクトが始まったきっかけや、配信するまでの流れなどを、代表取締役の鈴木氏に伺った。
鈴木直人(すずきなおと)
D4エンタープライズ 代表取締役。ボーステック在籍時よりプロジェクトEGGを統括する。ゲーム全般に深い知識を持ち、かなりのタイトルをコレクションしている。
名作を後世に残すプロジェクト
──EGGを始めたきっかけと、コンセプトなどをお聞かせください。
鈴木まず、私はボーステックの『レリクス』という作品が好きで、それをきっかけに同社に入りました。そしてボーステックで、当時プレイしていたようなゲームを供給できないか、と考えたのがEGGの始まりですね。
──好きなタイトルを残していきたい、という想いからなのですね。
鈴木そうです。じつはEGGの前に、それらのゲームミュージックを、携帯電話向けに配信していたのです。そのころエミュレータの製作者の方々と知り合いまして、話しているうちに当時はまだ違法という認識が強いエミュレータを、合法的に扱えないかという考えに切り換わりました。そこでEGGというプロジェクトを検討しまして、ゲームミュージックの配信でつながりのあったメーカーさんに声をかけて許諾をいただきました。当時はインターネットの普及でゲームのロムデータが違法で流通していたのですが、メーカーが合法的に扱うことで、そういうものを止めたいという想いもありましたね。最終的には、アクセスすれば誰でも過去のコンテンツを楽しめるというアーカイブプロジェクトを目指すというのが、コンセプトです。ですからすぐに止めるつもりもなく、まもなく20周年を迎えます。私の代からつぎの代になってもプロジェクトEGGを残していって、国会図書館のようなアーカイブにすることが目標です。
タイトル配信までの流れ
──開発はどのように行っているのでしょうか
鈴木まずは権利関係の確認から始めます。ただ、当時のメーカーさんが現存しないことがあって、権利が霧散していることが多々あります。エンドクレジットなどを見て、主要な人物に連絡を取って聞くなどして、権利関係を調整しています。それと並行して、当時のゲームソフトからデジタルデータを吸い出して、当社で開発したエミュレータでの動作確認を行っています。それで問題がなければEGGのサイトに搭載して、配信開始となります。
──ハードウェアのエミュレーター化についても確認が必要ですね。
鈴木もちろんです。最初は「マイクロソフトの権利物が含まれていてわからない」という回答が多くて、マイクロソフトにも打診したのですが、なかなか返事がありませんでした。そこで交流のあった西さん(アスキー創設者・西和彦氏)にお願いしてつないでいただいたところ、ビル・ゲイツ氏から直接許諾をもらえたのです。
──なかなかスケールの大きな話ですね。
鈴木おかげで国内でのハードウェアの許諾はクリアーできました。また、いろいろな権利者の方々とつながることで、いまのところ大きな問題も起きていません。
これからのプロジェクトEGG
──配信タイトル数は、現在どのくらいですか?
鈴木1000タイトル強といったところですが、まだまだ復刻しきれていないです。当社のエミュレータに紐付いているタイトルはその数倍はありますから。それと海外タイトルも積極的に取り入れたい、という想いもありますよ。
──それは楽しみです。最後に週刊ファミ通の読者にメッセージをお願いします。
鈴木ゲーム好きの方々が興味を持続してくれることが、この業界の支えになっていると思うんです。プロジェクトEGGを通して、いまのゲームの系譜を体験していただきたいですね。とあるゲームを遊んで育ったクリエイターの方が、その体験をどう活かしているかなど、そういうことにも興味を持っていただいて、プロジェクトEGGを盛り上げていただきたいです。
アーケードの名作たちも
プロジェクトEGGで続々配信
当時は家でプレイする機会のなかったアーケードゲームも、積極的に移植している。中でもナムコ(現・バンダイナムコエンターテインメント)タイトルが注目を集めている。写真は配信中の『ゼビウス』のもの。


iOS、iPadOS用“PicoPico”は定額で遊び放題
プロジェクトEGGとは別に、iOS、iPadOSに向けて2020年10月16日からサービスがスタートしたPicoPico。2021年1月現在の配信タイトルは、家庭用ゲーム機のソフトが45本で、今後続々と追加されていく予定だ。ゲームの進行状況をどこでもセーブできるほか、プレイ動画も保存できる。とくに注目したいのは、プレイ動画の再生中、任意のシーンの続きをみずからプレイできること。ほかのプレイヤーがアップロードした動画の続きをプレイする、といったことも可能になっている。

