2021年1月30日、作曲家・伊藤賢治氏の活動30周年を記念したオンラインライブ“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~”が開催された。

 “イトケン”の愛称で知られる伊藤賢治氏は、1990年にスクウェア(当時)に入社(ちなみに、同期は『ファイナルファンタジー』シリーズで知られる北瀬佳範氏)。入社して最初に手掛けたのは『サ・ガ2 秘宝伝説』の楽曲。それから現在にいたるまで、伊藤氏と『サガ』の深い縁は続いている。

 今回のライブは、この30年で伊藤氏が手掛けてきた『サガ』楽曲で構成されており、3時間にわたって、伊藤氏とバンドメンバーによる演奏がくり広げられた。本日では、その模様をリポートする。

 なお、ライブチケットを持っていれば、2021年2月2日(火)23時59分までアーカイブ映像を視聴できる(チケット購入締め切りは2021年2月2日(火)18時)。同ライブの映像化の予定はないとのことなので、気になっている人は、2月2日が終わるまでにチェックを!

“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert ~supported by SQUARE ENIX~”公式サイト

KENNさん&杉田智和さんを始め、多数のゲストが参加した3時間に及ぶ充実のライブ

 今回のライブは、『サ・ガ2 秘宝伝説』の楽曲「安らぎの大地」のピアノソロからスタート。同曲は、伊藤氏がスクウェア入社後に最初に作った曲。まさに、30周年ライブの幕開けにふさわしい1曲だ。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート

 ちなみに同曲については、ゲーム音楽制作に慣れていなかった伊藤氏が“曲をループさせる”ことになじみがなかったため、ほかの曲と比べると長いという逸話がある。『サ・ガ2』に関する裏話は、下記の関連記事にて語られているので、併せて読んでみてほしい。

 伊藤氏による演奏が終わると、バンドメンバーも参加して、「必殺の一撃~死闘の果てにメドレー」(『サ・ガ2 秘宝伝説』)、「バトル1メドレー」(『ロマンシング サ・ガ』シリーズ)、「全軍突撃!」(『インペリアル サガ』)、「下水道」(『ロマンシング サ・ガ』)と、バトル曲を中心に披露。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート

 さて、つぎは何の曲か……と思っていると、突如、「ハーハッハッハッハッハ」という笑い声が!

 そう、これは、サプライズゲストである声優のKENNさん&杉田智和さんの声。かつて『インペリアル サガ』にて、それぞれロビンとにせロビンに扮して「怪傑ロビンのテーマ」を歌唱したふたりが、ステージ上で「イトケン30周年は誰が知る! 天知る 地知る ロビン知る! 30周年おめでとう!」とメッセージを送った。これに合わせ、ステージでは「いざゆけ!怪傑ロビン」(『インペリアル サガ』)が奏でられた。

 その後ステージでは、KENNさんと杉田さんを招いてトーク。『サガ』への思い入れが強いKENNさんは、「怪傑ロビンのテーマ」レコーディング時、涙ぐんでいたという。また、杉田さんは思い入れがありすぎるあまりに、オファーを数度断ったというエピソードが明かされた。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート

 これからの伊藤氏の活動に関する話題では、「挑戦したことのない音楽(のジャンル)はあるんですか?」とふたりが問うと、伊藤氏は「アイドルソングはやってないかも」とコメント。これを聞いて、KENNさんは「僕用に作ってほしい」とノリノリ。もしかしたら、今後、伊藤氏の手掛けたアイドル曲が聴けるかも?

 また、このトークパートの後、伊藤氏のファンであると公言するピアニスト清塚信也さんからのビデオメッセージも公開。清塚さんは、「イトケンさんの幅の広い音楽に溺れて、沼にハマってみてほしい」と視聴者に向けて語り、『サガ フロンティア』の楽曲「Battle #4」の一節を即興で奏でた。

 さて、ライブはこの後、さまざまなゲストを迎えて、いっそう盛り上がりを見せていく。歌手の野々村彩乃さんが「胸に刻んで」(『サガ スカーレット グレイス』)と「砕かれし星」(『サガ スカーレット グレイス 緋色の野望』)で圧巻の歌声を披露した後に、作曲家・弘田佳孝氏とともに「ポドールイ」(『ロマンシング サ・ガ3』)と「ALONE」(『サガ フロンティア』)をしっとりと演奏。

 伊藤氏と言えばバトル曲が有名ではあるが、一方で、美しく穏やかなメロディーも多く手掛けてきている。同氏の楽曲の幅の広さが、これらのパフォーマンスからも伝わったことだろう。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート
伊藤氏が書く曲は難しいが、難しい曲に挑んで歌えるようになるのは楽しい、と野々村さん。「日本のサラ・ブライトマンを目指したい!」と、今後の目標を語った。
30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート
作曲家・ベーシストとして知られる弘田氏だが、今回はチェリストとして参加。弘田氏はかつてスクウェアで効果音のアルバイトをしており、伊藤氏とはそのころからの長い付き合いだという。

 続いてのゲストは、作曲家の成田勤氏。「冥魔・堕されしものども」(『サガ スカーレット グレイス』)と「怒闘」(『魔界塔士サ・ガ』)の2曲が披露された。「怒闘」は植松伸夫氏が手掛けた曲だが、今回演奏されたのは、『ロマンシング サガ リ・ユニバース』のレイドバトルに使用された、伊藤氏によるアレンジバージョンで、楽曲の途中に「決戦!サルーイン」のメロディーが組み込まれているのが特徴だ。

 なお、先日植松氏と会ったという成田氏は、植松氏からの伊藤氏へのメッセージ「こらイトケン、サングラスばっかりしてると不良になっちゃうぞ!」を伝え、会場を沸かせた。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート

 その後、バンドメンバーたちは、「ロマサガRSバトルメドレー」として「頂を目指して」~「Grave Battle」~「戦士と共に-Polka-」(『ロマンシング サガ リ・ユニバース』)を、「臨戦態勢!~サガスカキャラバトルメドレー」として「花びらを踏みしめて~ウルピナバトル」~「翔遼乱承!~レオナルドバトル」~「血の滾り~タリアバトル」~「罪を背負う者~バルマンテバトル」)(『サガ スカーレット グレイス』)を披露。『サガスカ』各主人公のメインバトル曲は、初アレンジ&ライブ初演奏ということで、テンションが上がった『サガ』ファンも多いのではないだろうか。

 そしてライブは、いよいよ締めくくりへと向かう。伊藤氏が「周りに怒られないように気を付けながら盛り上がってほしい」とコメントし、「四魔貴族バトルメドレー(『ロマンシング サ・ガ3』)、「ラストバトル」(『ロマンシング サ・ガ2』)、「ラストバトル」(『ロマンシング サ・ガ3』)と、激しいバトル曲を重ねていく。

 ちなみに、これらを演奏し終えた段階で、ライブ開始から2時間。視聴者からは、「あと1時間あるのに、大丈夫なの?」と、バンドメンバーのLPを心配する声が上がっていたが、そんな声もはねのける勢いで「決戦!サルーイン-Final Battle with Saruin-」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)、「七英雄バトル」(『ロマンシング サ・ガ2』)、「邪聖の旋律」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)が奏でられた。

 その後ついに、ボイスパフォーマーの岸川恭子さんがゲストとして登場。ずっと緊張しながら待っていたという岸川さんに、伊藤氏はやや申し訳なさそうにしつつも、「恭ちゃんと言えばオーラスなので」と、厚い信頼を見せる。そして、ボイス入り版の「Battle #4」(『サガ フロンティア』)と、「熱情の律動」(『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』)という、アツい2曲が披露された。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート
『シャドウハーツII』をきっかけに岸川さんと知り合った伊藤氏。『サガ』でもぜひいっしょにやりたいということで、『ロマンシング サガ -ミンストレルソング-』での起用につながったとか。ちなみに、岸川さんのボイスが入った「Battle #4」は、アレンジアルバム「Re:Birth II -連-」に収録されている。気になった人はこちらもチェックを。

 この後、じつは進行を巻きすぎて時間が余ったということで、作曲家であり今回のバンドメンバーでもあり、長年伊藤氏と数々の仕事を手掛けてきた上倉紀行氏を交えてのトークに。伊藤氏がフリーランスになったときの想い(同学年である作曲家・崎元仁氏の佇まいに影響され、自分ももっと世間に揉まれなければ……と思ったという)や、「50代、まだまだ新しいことをやっていきたい」という今後の活動への意欲などが語られた。また上倉氏に対しては、「死ぬまで、棺桶まで付き合ってほしい」とコメント。両名の絆が垣間見えるトークコーナーだった。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート
伊藤氏との付き合いは10年にもなるという上倉氏。息の合った掛け合いを見せた。

 トークを終え、ひとりステージに残った伊藤氏が最後に演奏したのは、「オープニングタイトル -Piano Solo-(ロマンシング サ・ガ)」。しっとりと、ライブを締めくくる曲ではあったが、「オープニングタイトル」という名の通り、伊藤氏のこれからの活動を彩る曲でもあったと思う。

 昨年には『サガ』オフィシャルバンド“DESTINY 8”としての活動も始めるなど、挑戦をいとわない伊藤氏。すばらしいライブから幕を開けた2021年、伊藤氏がどんな道を歩んでいくのか、とても楽しみだ。

30年ぶんの『サガ』曲で構成した、バトル曲もバラードもてんこ盛りのライブ! 伊藤賢治氏の歴史をたどる“KENJI ITO The 30th Anniversary Concert”をリポート

KENJI ITO The 30th Anniversary Concert~supported by SQUARE ENIX~ セットリスト

M1:安らぎの大地 -Piano Solo-(サ・ガ2 秘宝伝説)
M2:必殺の一撃~死闘の果てにメドレー(サ・ガ2 秘宝伝説)
M3:バトル1メドレー(ロマンシング サ・ガ シリーズ)
M4:全軍突撃!(インペリアル サガ)
M5:下水道(ロマンシング サ・ガ)
M6:いざゆけ!怪傑ロビン(インペリアル サガ)
トークコーナー1 杉田智和&KENN(※サプライズゲスト)
トークコーナー2 上倉紀行
M7:胸に刻んで(サガ スカーレット グレイス)
M8:砕かれし星(サガ スカーレット グレイス)
M9:ポドールイ(ロマンシング サ・ガ 3)
M10:ALONE(サガ フロンティア)
M11:冥魔・堕されしものども(サガ スカーレット グレイス)
M12:怒闘(魔界塔士Sa・Ga)
M13:ロマサガRSバトルメドレー(ロマンシング サガ リ・ユニバース)
(「頂を目指して」~「Grave Battle」~「戦士と共に-Polka-」)
M14:臨戦態勢!~サガスカキャラバトルメドレー(サガ スカーレット グレイス)
(「花びらを踏みしめて~ウルピナバトル」~「翔遼乱承!~レオナルドバトル」~「血の滾り~タリアバトル」~「罪を背負う者~バルマンテバトル」)
M15:四魔貴族バトルメドレー(ロマンシング サ・ガ 3)
M16:ラストバトル(ロマンシング サ・ガ 2)
M17:ラストバトル(ロマンシング サ・ガ 3)
M18:決戦!サルーイン-Final Battle with Saruin-(ロマンシング サガ -ミンストレルソング-)
M19:七英雄バトル(ロマンシング サ・ガ 2)
M20:邪聖の旋律(ロマンシング サガ -ミンストレルソング-)
M21:Battle #4(サガ フロンティア)
M22:熱情の律動(ロマンシング サガ -ミンストレルソング-)
M23:オープニングタイトル -Piano Solo-(ロマンシング サ・ガ)

出演者

【PERFORMER】
伊藤 賢治(Keyboard)
寺前 甲(Guitar)
上倉 紀行(Guitar & Keyboard)
榎本 敦(Bass)
岡島 俊治(Drums)
和田 貴史(Manipulator)
土屋 玲子(Violin)
MIZ(Violin)
宮崎 大介(Guitar)※宮崎大介さんの“崎”はたつさき

【GUEST】
成田 勤(Guitar)
弘田 佳孝(Cello)
野々村 彩乃(Vocal)
岸川 恭子(Vocal)