支倉凍砂先生によるライトノベル『狼と香辛料』は、第12回電撃小説大賞・銀賞を受賞し出版された人気作品。シリーズ累計販売数は400万部を突破し、2019年9月にはVRアニメーション『狼と香辛料VR』の発売も話題になりました。
今回は、2008年より放送されたアニメ版『狼と香辛料』の魅力をご紹介します。
『狼と香辛料』(アマゾンプライムビデオ)本作の主人公は、馬車で各地を巡る行商人のクラフト・ロレンス。彼が、荷台の麦束に埋もれて眠る豊作の神・ホロを発見することから本作は動き出します。
ホロは狼の耳と尻尾を有した美しい見た目をしており、不思議な口調でロレンスを翻弄。「故郷へ帰りたい」という彼女の言葉に根負けしたロレンスは、彼女とともに旅へ出るのですが――。
ふたりの旅はなかなか順調にはいかず。めんどうな事件に巻き込まれてしまったり、膨大な借金を抱え込むことになったり……。
とはいえ、そんなさまざまな苦難を経るごとにロレンスとホロの絆は深まります。ふたりのあいだには旅の相棒以上の感情も芽生え初め、じょじょにその距離は近づいていきます。
ロレンスとホロのそんな恋模様にも注目ですが、個人的にはホロの不思議な話しかたがツボ。彼女は自分のことを「わっち」と呼び、「~じゃ」、「~ありんす」、「~かや?」といった花魁言葉を使った話しかたをします。かわいらしい少女の見た目でこんな話しかたをされては……。これが世に言う“ギャップ萌え”でしょうか。
ホロのかわいさもさることながら、本作には本格的な“経済アニメ”としての側面も。例を挙げると第3話では、ホロが商人としての才能をいかんなく発揮しています。
舞台は諸国との交易で栄えるミローネ商会。テンの毛皮を売却しに来たホロは、巧みな話術を用いて提示額のおよそ1.6倍もの銀貨を手に入れました。彼女は「たらふくいいものを食べたテンだから、皮から甘い匂いがする」と言って高額査定を得ましたが、じつはこれは真っ赤な嘘。テンの皮から甘い匂いがしたのは、いっしょに荷台に積んでいたリンゴの香りが移っただけのことだったのです。
嘘を悪びれることもなく、「騙されたときに怒っているようじゃ話になりんせぇ」と言ってのけるホロ。彼女の“商人っぷり”には頭が下がります……。
さらに、ロレンスが“為替の制度”を説明するシーンにも学びがたくさん。たとえばある商会で塩を購入した際、ロレンスはいっさいお金を払いません。なぜなら別の町にある同商会の支店で、ほぼ同額の麦を売っていたから。つまり、“麦を売った代金”と“塩を買った代金”を相殺したというわけです。
このように、金銭のやり取りをせずにふたつの契約を成立させる方法が“為替”と呼ばれる制度。ロレンスのような地方を巡る行商人にとっては、大切なお金を長旅の途中で取られてしまう危険が回避できるメリットがあります。
ファンタジーアニメを見ていたはずが、為替の仕組みまで理解できるなんて一石二鳥ですよね。作中にはほかにもホロの活躍場面やロレンスによる“経済学講座”シーンが多数。商人どうしの丁々発止のやりとりや、経済の実際の動きが見られるようで興味が引かれます。とはいえ、経済の仕組みに詳しくない人にもわかりやすく描かれているため、安心してご覧ください。
現在アマゾンプライムではアニメ第1期、2期が全話見放題。あなたもぜひ異色の“経済アニメ”をチェックしてみては?
※Amazon Prime Videoの配信情報は記事制作時のものです。