ほとんどの人にとって自転車は、生まれて初めて手に入れる徒歩以外の本格的な移動手段だ。一方で、子どもにとって自転車は“移動手段”なんて言葉では片づけられないほど重要な存在でもある。

 自転車の機動性は世界を一気に広くして、その年代特有の“無限の体力”という幻想も相まって「コレでどこまでも行ける!」という自信と確信を生む。

 そしていざ走り出せば、たちまち疲れと不安に襲われ、すごすごと引き返し、道に迷い、帰りが遅くなって親に死ぬほど怒られる。自転車ってのはそういうものなのだ。

 バカ丸出しで無邪気な話かもしれないが、そこには確かな成長がある。自転車によって世界の可能性と自分の限界を知り、挫折を学び、保護者のありがたさを痛感するのだから。

 フジファブリックは夏の終わりを告げる“最後の花火”に『若者のすべて』があると歌った。これに倣えば、自転車には“少年のすべて”があると言ってもいいかもしれない。

 つまり、いきなり結論を言ってしまえば、子どもたちが自転車で走りまわる『すすめ!じでんしゃナイツ』は、かつて少年だったすべての人たちにおすすめしたい作品なのである(念のため書いておくと、ここで言う“少年”は男の子、女の子の両方を含む意味で使っている)。

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今回のレビューは立候補して書かせていただきました

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 我ながらじつに勇ましく、それでいてよく意味がわからない書き出しになってしまったが、本記事ではPLAYISMから2021年7月20日にNintendo Switch、プレイステーション4、Xbox One(※)、Steamでリリースされた『すすめ!じでんしゃナイツ』のレビューをお届けしていく。

※Xbox One版の配信元はFoam Sword。

 ちなみにこのレビュー記事は「自分、書きたいっす!」と立候補して書かせてもらったもので、これは僕にとって異例のことだ。記事を読んでいる100人中100人が「オマエの異例なんて知ったことかボケ」と思ったであろうが、話を続けさせてほしい。

 ふだんの僕はファミ通.com編集部のベテラン編集者F氏から「どう?書く?」と言われない限りは決して動くことがない、典型的な指示待ち人間である。そんな僕が『すすめ!じでんしゃナイツ』に関しては「あれのレビュー記事をどーしても書きたいんですよ」と猛烈アピールをした。なぜ、そんな異例の行動をとったのか?

 『すすめ!じでんしゃナイツ』は前評判が非常に高い作品である。正確に言えば、すでに評価が定まっている作品だ。海外で2019年に発売された同作は(原題は『Knights and Bikes』)、数多くのアワードで受賞・ノミネートされているのである。

 以下、プレスリリースからまるっとコピペすると……

  • INDEPENDENT GAMES FESTIVAL (IGF) 2020:最優秀ビジュアルアート賞受賞、最優秀音楽賞 ファイナリスト
  • GDC2020:最優秀デビュースタジオ ファイナリスト
  • PLAYSTATION UNIVERSE:2019…最優秀PS4インディゲーム受賞
  • UNITY アワード 2019…最優秀2Dビジュアル賞 ノミネート
  • IGN E3 2018…最優秀ゲーム賞 ノミネート、最優秀PS4ゲーム賞 ノミネート、最優秀アドベンチャーゲーム賞 ノミネート

 ……ってなわけで、なんだかすごい。これに加えて『リトルビッグプラネット』の開発メンバーから成るFoam Swordが手掛けたという点も、作品への信頼度を上げるポイントとなっている。

 しかし、僕が「レビュー記事をどーしても書きたい」と異例の立候補をした背景に上記の“実績”は一切関係していない。

 2020年9月22日放送の“PLAYISM Game Show”で初お披露目された、日本語版アナウンストレーラー。これに完全にヤラれちまったのだ。本当に最高な仕上がりのトレーラーなので、とりあえず観てほしい。

 子どもの声で「I wanna ride my bike」とシャウトしまくる楽曲。ポップでファニーでキュートで少しダークな世界観。“パワーグローブ”らしきものまで登場する混沌としたプレイ映像に、僕はエバーグリーンなサムシングを予感したのである。

 そして念願叶って迎えたレビュー執筆の機会。果たして、僕の予感は的中した。

ユニークなルックスだがカッチリと作り込まれたアクションアドベンチャー

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 1980年代、イギリス本土に近い過疎寸前の島“ペンファージー島”。ここに住む9歳の女の子デメルザにとって、パパが経営するクレイジーなゴルフ場は島を代表する自慢のプレイランドであり、同時に最高の遊び場でもあった。しかし資金面での問題を抱え、差し押さえの危機に瀕していた。

 そこでデメルザは、ある日ふらっと島に姿を見せたネッサとともに、ゴルフ場を守る資金を手に入れるべく、島に古くから伝わる伝説の財宝を探す冒険へと出る。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 トレーラーを観ていただければわかるとおり、『すすめ!じでんしゃナイツ』のビジュアルはじつに独特だ。

 暖かみのある絵本のようなデザイン……と言うにはだいぶガチャガチャしていて落ち着きがないし、手描きテイストだけどトゥーンレンダリングとはまた違う感じで、レトロな雰囲気でもない。子どものラクガキに悪夢的なコラージュアートが合体したもの……というのが適切な表現だろう。

 そんなユニークなルックスとは対照的に、ゲームのつくりはだいぶちゃんとしている。

 公式情報として『聖剣伝説2 SECRET of MANA』からの影響が明言されていることからもわかるとおり、カッチリと作り込まれたアクションアドベンチャー(公式のジャンル表記はアドベンチャー)となっているのだ。

ふたりだから楽しいし、ふたりじゃないと進めない

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 デメルザは完全防水長靴でキックをくりだし、トイレのすっぽんを爆弾のようにあやつって、パワーグローブを天に掲げる。ネッサはフリスビー、水風船をぶん投げて、ラジカセの爆音で周囲を威嚇する。

 子どものお遊びを羅列してるわけではなく、これらがふたりのくり出すアクションだ。そしてこのアクションで戦う相手は、財宝の周囲に漂う“呪い”たち。

 呪いはさまざまなモノに取り憑いて襲ってくるのだが、その対象はゴルフボール、遊園地のマスコットキャラクターの頭部、ブルドーザー(!)……などなど、だいぶ変わっている(これらの敵は、子どもの感性で世界を見たときに、ちょっと不気味だったりイヤだったりすることのメタファーのような気がしないでもないが、たぶん考え過ぎだろう)。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 戦いはちょこまかと移動しながらキックやフリスビーを連打していればだいたいは切り抜けられるが、敵の種類によってはデメルザとネッサのアクションを連携させる必要が出てくる。

 たとえば、炎をまとっている敵はそのまま攻撃をしてもダメージ効率が悪いので、先にネッサの水風船で消火をしたほうがいい。1体なら対処は簡単だが、敵は複数体同時に登場することも少なくないので、より効率的な立ちまわりが求められる。そんなときは、ネッサの水風船で水たまりをつくってから、デメルザの長靴キックで水を広範囲に撒き散らしてやろう。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 財宝へ至る道には、少なくない量の謎解き要素があるが、それらをクリアーするときにもデメルザとネッサのアクションが役に立つ。また呪いとの戦い同様に、ふたりで力を合わせなければ進めないシーンも多々ある。

 “ふたりで”と言えば、ひとつ重要なことを伝え忘れていた。

 『すすめ!じでんしゃナイツ』はローカルおよびオンラインでのふたり協力プレイに対応しているので、上に挙げたデメルザとネッサの連携要素は攻略上必要なことはもちろん、協力プレイを盛り上げる要素としても非常に魅力的だ。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 残念ながら僕は発売前にサンプル版でプレイしたため協力プレイは未体験だが、ひとりプレイのときは自分が操作していないほうのキャラは優秀なAIが動かしてくれるので、ゲーム進行に支障はない。支障がないどころか、AIが優秀すぎて、一部の謎解きを勝手にクリアーしてくれることもあったほどだ。

 ちなみにアクションの難度はアクションアドベンチャーの“アドベンチャー”部分を阻害しない程度の手応えで、エンディングを迎えるまでに数回やられてしまうくらい。各種謎解き要素も、解けずに詰まって先に進めないといったことはなく、テンポよく進んでいく印象だ。

自転車に関連するすべてが楽しい!そのまんま『グーニーズ』な演出も

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 連携、協力アクションや謎解きも十分魅力的だが、やっぱり本作でいちばん重要な要素は自転車(デメルザの発音では“じでんしゃ”)だ。

 記事の冒頭で自転車は“少年のすべて”と書いたが、『すすめ!じでんしゃナイツ』における自転車は“ゲームのすべて”と言っても過言ではない。移動手段としてはもちろん、戦闘や謎解きにおいても欠かせないものだし、カスタマイズ要素はゲームのやり込み部分にも関わってきて、当然ストーリーのカギも握っている。

 ちなみに、子どもの冒険物語で自転車が登場……と聞くと映画『グーニーズ』を連想する人も多いと思うが、その考えは間違っていない。『すすめ!じでんしゃナイツ』に影響を与えた作品リストには『グーニーズ』の名も挙がっていて(そのほかには『MOTHER2 ギーグの逆襲』がある)、自転車を漕ぎすぎて主人公が疲れると“喘息の吸入器”の絵がカットインされるという、そのまんまな演出もあったりする。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 そんな細かな目配りがされていることからもわかるとおり、自転車にまつわるシーンはどれも最高に楽しいのだが、個人的にいちばんグッときたのは、田舎道を疾走する瞬間でもなく、敵に自転車で突進する瞬間でもなく、“カスタマイズアイテムの購入シーン”という非常に地味なポイントだった。

 『すすめ!じでんしゃナイツ』ではデメルザとネッサの外見をいじることはできないが、その代わりに自転車はゴリゴリっとカスタマイズすることができる。本体カラー、ベル、シールド、泥除け、フラッグなどなど……いろいろと取ったり付けたりが可能だ。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 カスタマイズ用アイテムはショップで手に入れるのだが、デメルザとネッサはお金を持っていない。だが、冒険の中で拾ったガラクタ……もとい、オタカラがポケットいっぱいに詰まっている。そして幸いなことに、自転車ショップの店員さんはオタカラの価値がわかる大人だ。

 カウンターにバラバラっと広げられるオタカラたち。欲しいパーツを選ぶと店員さんは対価としてオタカラを腕でガバっと持ち去っていく。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 自分がどれくらいのオタカラを所有していて、店員さんが対価としてどれくらいのオタカラを持っていったかは、数値として表示されない。つまり双方が目分量でやりあっているわけで、売買というよりは物々交換に近い。

 人によってはこのシステムを“不親切”と捉えるかもしれないが、僕はこの設定が本作の雰囲気にぴったりマッチしているように感じられてすごく好きだった。

あなたの思い出の中の“アレ”は、きっと本作の中にもある

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 カスタマイズアイテムの購入シーンが見どころです!……なんて、我ながらどうかしているとは思うのだが、そう感じた背景には個人的な事情があったりもする。

 価値はよくわからないが“貴重なもの”として扱う感じに、「近所の駄菓子屋にあるゲーム機は、銅色のお金を2枚入れると『魂斗羅』が遊べるんだな!」とお金の価値はよくわからないけど、ゲームを遊ぶ方法だけは理解していた少年時代のことを思い出したのだ(昔は20円でアーケードゲームが遊べる場所があったんです)。

 これに限らず、ゲームをプレイしているとそんな瞬間はちょいちょい訪れる。

 唐突にデメルザとネッサの自転車レースが始まったとき、僕の頭には小学校の同級生で自転車のスピードを少しでもアップさせるためにカゴを取り外したイワオくんの顔が思い浮かんでいた。

 空想力豊かなデメルザが沼地にカバの幻影を見いだし、かつて戦場だった空き地に幻の弓矢が降り注ぐ光景を空想したとき、そういえば自分も小学生のころ、近所にあった公園の一角を“江戸”と呼んでいたことを思い出した(現在そこは美しい日本庭園となっているのだが、当時は土の地面と垣根からなる道があるだけで、その景色がなんとなく教科書で見た昔の日本っぽかったから江戸を連想したのである)。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある

 『すすめ!じでんしゃナイツ』はアクションアドベンチャーであって、ノスタルジーに浸るための“少年時代シミュレーター”ではない。でも、そういう楽しみかたが許されていないわけでもない。

 アクションも謎解きもちょうどいい塩梅の本作では、つぎに何をやればいいのか迷ったり敵が強くて進めないなんてこともないんだから、たまには自転車で寄り道してみるのも悪くないし、そうしないと物語は意外とあっさり終わってしまう。

 目的地へ向かう道をあえて1本間違えてみたり、あるいは道から脇に逸れて藪につっこんでみたら、何か発見があるかもしれないし、そこから僕みたいにすてきな思い出が甦ってくるかもしれない。

 実際のところ、デメルザとネッサの物語には“少年のすべて a.k.a 自転車”以外にも、誰もが経験したであろう(あるいは憧れたであろう)瞬間がギッシリと詰まっている。

 秘密基地、コンピューターゲーム、お人形遊び、ピンポンダッシュ、探検という名の不法侵入、イカした音楽ショップ、ハイタッチ、お化け屋敷、ガラクタ(子どもにとってはお宝)集め、同じ目線で接してくれる大人、近寄りがたい大人、憧れの大人、親子喧嘩、最高の友だちとの出会いと喧嘩と仲直りと別れ

 ……なんて具合に、この調子であと100個くらいは例が挙げられそうなのだが、キリがないのでやめておこう。

 とりあえず、いまこの記事を読んでるあなたが、慌ただしい日々のなかでふと心に浮かべる「子どものころのアレ、楽しかったなぁ(or 怖かったなぁ or イヤだったなぁ)」という思い出の中の“アレ”は、『すすめ!じでんしゃナイツ』の中にもある。たぶん。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある
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執筆者紹介:ヨージロ(a.k.a キモ次郎)

 元ファミ通編集部ニュース班で現在はサラリーマンの兼業ライター。長年キモ次郎の名前で執筆をしていましたが、親戚もファミ通.comの記事を読んでいることが判明し、自分のライターネームが急に恥ずかしくなったので変えました。

 なお本文では触れませんでしたが『すすめ!じでんしゃナイツ』には1970〜80年代の有名ホラー映画の影響をうかがわせる演出、シーンが数多くありました。具体的な作品名を挙げると『死霊のはらわた』、『キャリー』、『ポルターガイスト』、『スクワーム』、『ビデオドローム』、『悪魔のいけにえ2』、『ファンハウス/惨劇の館』などなど。PLAYISMさんを通じて開発元に「ここのシーンとか、あの展開ってそうですよね?」と質問したところ……

 「挙げていただいた映画たちは、シーンのパロディというよりは、ゲーム全体に普遍的な影響を与えているものばかりです。ゲームの舞台である1980年代の子どもたちの多くは『キャリー』や『ポルターガイスト』といった映画について、VHSビデオテープの箱では目にしていましたが、親からそういった恐ろしい映画を観ることを許されていないため、内容は知りませんでした。だから子どもたちは恐ろしい表紙やポスターだけを見て、友だちといっしょに空想の映画やゲームを作ったりしていたのです。それはまさに『すすめ!じでんしゃナイツ』の世界の冒険につながっています。主人公たちはホラー映画について少しだけ知っていて、どんな風な映画なのか、とくに怖いシーンや、危険なシーンに直面したとき自分ならどう対処するか、などを想像しているのです」

 ……と肯定とも否定とも取れる回答だったたので、本文での言及は控えた次第。自分としては上記に挙げたタイトルのうち『スクワーム』以外は確実に参考にしていると思うので、ホラー映画ファンの方もぜひ『すすめ!じでんしゃナイツ』にご注目くださいませ。

『すすめ! じでんしゃナイツ』レビュー。美しい少年時代を思い返すとき、あなたの脳裏に浮かぶ“アレ”は、きっとこの作品の中にもある
本が引き起こした呪いによってうんたらとか、完全にもうね、アレじゃんね。