今夏ゲームファン必見のハリウッド大作がやってくる! といっても大ヒットゲームの映画化ではなく、ゲームの世界から帰れなくなった少年少女の話でもなく、なんとモブキャラが主人公のアクションエンターテイメントだって。え、モブキャラってあれでしょ、ゲームの中でエンドレスに同じ行動とセリフを繰り返す、エキストラ的な村人A的な……そう、そのモブキャラ。
そんな最もムービーヒーローから遠い存在をフィーチャーしちゃったのにハリウッド最大級のスケールで展開されちゃうのが、2021年8月13日(金)から公開される映画『フリー・ガイ』(配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン)。主演は『デッドプール』のライアン・レイノルズ、監督は『ナイト ミュージアム』のショーン・レヴィ。オンラインゲーム世代の超等身大ムービーがいよいよ幕を開ける。
“モブキャラ主人公”のコンセプトからして、ゲームファンならかなり気になる設定の映画だが、実際、蓋を開けてみると期待通りニヤリとできるゲームあるあるや小ネタが満載。
そんなわけでファミ通.comでは、映画『フリー・ガイ』の知っとくとMAX楽しめる特集企画を3回にわたって集中連載! 第1回目の今回は、まず本作の輪郭、キャラクター、ストーリーをしっかり攻略。
映画『フリー・ガイ』作品トレーラー
製作・主演ライアン・レイノルズ&ショーン・レヴィ監督がゲームに贈るラブレター
銃撃戦からカーチェイスまで何でもありの犯罪都市が舞台のゲーム『フリー・シティ』の中で日々同じ行動をくり返すNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の“ガイ”が、なぜかプレイヤーキャラクター(作中では“サングラス族”と言う)のクール美女“モロトフ・ガール”に一目惚れ。それをきっかけにパターンを逸脱していく彼の行動が、ゲーム内はもとよりゲームの外(現実世界)にも影響を及ぼしていくという新感覚アクション大作。
といってもストーリーラインは力強くシンプル。小難しさは無用の痛快アクションエンタテインメントであり、それでいてゲーム世界と現実世界のツイスト構造がピリっと効いて、笑って笑ってハラハラドキドキ、ホロリとスカっと万人にお薦めの大作に仕上がっている。
主人公であり、オンラインゲームのモブキャラ・ガイ(そもそもモブキャラなので、ガイ=男という程度の名前しかない)を演じるのは、『デッドプール』の主演でおなじみのライアン・レイノルズ。ちなみに『名探偵ピカチュウ』でピカチュウの声を担当したのも彼。コメディもシリアスもなんでもござれのライアンは、今作では製作プロデューサーも兼ね、世界に溢れるヒーロー像とは全く違うガイを“新たな時代のヒーロー”にすべく熱く企画に取り組んできた。
監督は、『ナイト ミュージアム』シリーズを大ヒットさせ、Netflixドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』(製作総指揮)で世界的ムーブメントを起こしたショーン・レヴィ。原案は『クリスマスクロニクル』のマット・リーバーマン。共同で脚本を執筆したのは『レディ・プレイヤー1』(脚本)やレトロゲームフリークを歓喜させたドキュメンタリー『ATARI GAME OVER』(監督)でゲームへの造詣の深さを見せつけたザック・ペンという最強の布陣だ。もちろん『マトリックス』や『TENET テネット』的な、ちょっとひねりの効いたSFアクションが好きな映画ファンもハマること間違いなしだ。
映画『レディ・プレイヤー1』日本版予告
彼らが生み出した映像と物語は、映画オリジナルで創造された架空のゲーム『フリー・シティ』とそれを取り巻く環境を、現実のゲーム・現実のゲームメーカーのようにリアルに映す。終始一貫して「ゲームを題材にしているけど、なんだかピントがズレてるな」的な違和感が皆無といえるのは、制作陣のゲームカルチャーに対するリスペクトの賜物と言って良いだろう。そして、そのゲームとしてのリアリティが小さく纏まりすぎず、現実のそれよりもスケールを感じるファンタジーへと昇華させている手腕はお見事と言わざるをえない。
また、ストーリーと関係のないところにゲームファンならニヤリとできる小ネタが詰まっているのも本作の注目すべきポイント。たとえば、ガイの背後を通るサングラス族が、ジャンプをくり返しながら銃を撃ちまくっている(FPSあるあるでしょ?)、建物に施設名がライトアップされるような形で浮いている(箱庭系ゲームあるあるでしょ?)といった具合。さらに、任意の場所に移動できるゲートを指す"ワープポータル”や、開発スタッフだけが使える"ゴッドモード”、プレイヤーの見た目を表す“肌=スキン”など、ゲーム好きにはお馴染みの用語も色々。そのうえ、いくつかの有名ゲームをオマージュしたような美味しいシーンもあり、二度三度観ても楽しい作りになっている。
STORY & CHARACTER ゲームと現実がクロスオーバー!
主人公のガイは、ルール無用の大人気オンラインゲーム『フリー・シティ』のNPC。ゲームで言うと『グランド・セフト・オート』のような世界観で、『フォートナイト』のようなバトルが繰り広げられていると考えるとイメージしやすいかも。世界中のゲームファンを魅了している『フリー・シティ』では、サングラス族と呼ばれるプレイヤーキャラクターが、日々強盗、乱闘、爆撃、カーチェイスなど好きなことを好き放題して暴れており、ガイや親友のバディのようなNPCたちは、彼らのなすがままのゲームプレイに巻き込まれ、蹂躙されながら、ルーティーンのように同じ毎日を送っている。
ガイ(ライアン・レイノルズ)
毎日同じ行動をくり返す、『フリー・シティ』のNPC。並外れたことを達成したこともなければ、やろうとしたことすらない男で、社交的だが、ちょっと世間知らず。銀行の窓口係をしており、90年代のポップスの女性歌手が大好き。モロトフ・ガールと出会い、自身がモブキャラであることを知る。
バディ(リル・レル・ハウリー)
『フリー・シティ』内で頻繁に強盗が押し入る銀行の守衛で、ガイの親友。ガイと同じモブキャラだが、ある種の革命を起こそうとしているガイには同調できず、いまの居心地のいい場所に留まり続けようとする。
モロトフ・ガール/ミリー(ジョディ・カマー)
モロトフ・ガールという名のミステリアスでイカした女性。ゲーム『フリー・シティ』でガイと出会い、彼の運命を変えるきっかけとなるサングラス族でもある。モロトフ・ガールを操作しているのは、美しく、頭脳明晰なゲームデザイナー兼プログラマーのミリー。アントワン率いるゲーム会社・スナミを毛嫌いしており、キーズと協力して作ったインディゲームをスナミが盗用した証拠を捜している。
アントワン(タイカ・ワイティティ)
スナミの社長であり、莫大な利益をもたらしているゲーム『フリー・シティ』の仕掛け人。大声で、がさつ、不快、口汚いナルシスト。近日リリース予定の大作『フリー・シティ2』の準備を進めている。
キーズ(ジョー・キーリー)
控え目だがハンサムで才能あるコンピュータのエキスパート。ゲーム会社・スナミで働き、『フリー・シティ』のプログラミングやゲームマスター業務を担当している。かつてミリーとともに『LIFE IT SELF』というゲームを制作したが、同作はスナミによって買い取られた後、葬られた。いまでは疎遠気味だが、ミリーに想いを寄せている。
マウサー(ウトカルシュ・アンブドゥカル)
『フリー・シティ』のプログラマー兼ゲームマスターで、キーズの相棒的存在。ゲームでの彼のアバターは、筋骨粒々で強そうだが、ピンクのウサギの着ぐるみを着ている。社長のアントワンに対して強固な忠誠心を持ち、どんなことでも喜んで引き受ける。
フリー・シティ
ある日、ガイはサングラス族のモトロフ・ガールと運命的に出会って一目惚れ。この出会いをきっかけに、ルーチンで動いているだけのはずのガイが、ゲームの設定やプログラムを逸脱しはじめる。そしてあろうことかサングラス族のサングラスを入手!! 恐る恐るグラスをかけてみると、なんとプレイヤー視点で世界が見えてしまった!! 世界の真実にとまどうガイだが、それはそれとて何よりモロトフ・ガールの気を惹くために、彼なりのやり方でレべル100を目指すことに。で、その方法とは 犯罪都市で“いい人活動”!!
現実世界
ガイの想定外の行動を見た『フリー・シティ』をプレイヤーやゲーム運営会社“スナミ”の開発陣は、NPCをハッキングしたプレイヤーの仕業だと勘違い。NPC然とした姿であるにも関わらず、“いい人活動”でみるみるレベルを上げていくガイに、世界中のプレイヤーの注目が集まっていく。 『フリー・シティ』のプログラマーでゲームマスター的な役割も担うキーズやマウサーは、ハッカーが操っていると思われるガイを排除しようとする。しかし、スナミの社長アントワンはガイへの注目が高まることで、開発中の続編『フリー・シティ2』への注目度が高まると大喜び。
フリー・シティ&現実世界
ところが、ガイの背後に、自身のプログラムを盗用されたとスナミを訴えているミリーの影が見えたことで、アントワンの態度は一転。騒ぎが大きくなる中、モロトフ・ガールとしてガイと交流するミリーは、彼とともに盗用の証拠をゲーム内で捜す。それぞれの動きは『フリー・シティ』崩壊の引き金となっていき……。
ゲームと現実世界が絡み合って、同時進行でストーリーが進んでいくのだが、思いがけず感動してしまうようなドラマチックな仕掛けも組み込まれていて、気が付くと感情移入して没入してしまう感じ。モブキャラのガイは最大の危機を救って、本当のヒーローになれるのか?映画館でぜひ見届けて欲しい!
製作陣に訊いた『フリー・ガイ』を2021年に見て欲しい理由
製作スタッフとキャスト陣は本作において、誰もが抱える人生のテーマとゲームカルチャーを見事に融合させ良質なエンタテインメントを生み出すことに成功した。
監督/製作のショーン・レヴィは「我らがガイはまさに、非凡なことをやってのける平凡な男です。彼は私たちにとても近いヒーローなので、私たちの心に響き、共感できます。この映画のテーマは“自分の暮らす世界に影響を与えられるほどの力を、自分が持っていることに気づくこと”です。満足できない世界の真っ只中で、個人として力を発揮すること、そして個々の心の力によって変化をもたらせることについて描かれています。いまの私たちにはそれが必要ですからね」と語っている。
主演のライアン・レイノルズも「この映画は、僕たちが今、世界のどこにいるのか、どのように存在しているのかを語っているんだ。とても直球の喜びとしてね。まさに映画館で楽しむべきものに仕上がった。それが僕にとって最もお気に入りな映画であるとはっきり言える理由さ」と今作へ特別な想いを寄せる。
また、キーズ役のジョー・キーリーは「この映画が掲げているテーマのいくつかは、ゲームカルチャーの根底にも流れているものと同じです。例えば“これが現実の自分だけれど、もっと自分が好きになれる別の自分がどこかにいるのかもしれない”という視点もそのひとつですね」とゲームを楽しむ気持ちとの共通点を強調している。
世界的な感染症により当初の予定から実に丸1年ずれ込んでの公開になった本作だが、その内容は待つだけの価値があるものになっていた。最後になるが、いかに本作が皆さんにお勧めな作品なのか、一足早く鑑賞したファミ通グループ代表を務める林克彦の感想コメントを紹介しよう。
「ワクワクが詰まってる!」:ファミ通グループ代表 林克彦
ゲームファンならすぐに想像できると思う。
いつも同じ場所にいて、同じセリフと行動をくり返すだけの名前もないあのキャラクターが、ある日突然、自分に「おはよう! 元気?」なんて話しかけてきたら。困惑しているうちにほかのプレイヤーとバトルを始めて、クールにカッコよく勝利したら。その横にはガールフレンドらしき美しい女性がいて、ふたりおしゃべりしながら颯爽と立ち去っていったら……。ありえないけど、もしかするとそんな未来もありえるかもしれない。でも、そのときゲームはどうなっちゃうんだろう?
そんなワクワクが『フリー・ガイ』にはたっぷり詰まっている。映画の内容は記事を読んでもらうとして、ゲームファンにとにかく伝えたいのは、この映画は“ゲームが大好きな人たちが、ゲーム愛を爆発させながら作っている”ということ。ゲームへのリスペクトが随所に感じられて、思わずニヤリとしてしまうシーンがたっぷり。もちろんオマージュも散りばめられている。そして、最後までしっかりハラハラドキドキさせてくれる。
素直におもしろかった。ぜひ映画館のスクリーンと音響で鑑賞してほしい1本。いつか『フリー・シティ』が本当にゲーム化されて、ミッションのために銀行にいったら青いシャツのガイがいて……なんてことまで想像してしまった(笑)。
作品データ
『フリー・ガイ』 2021年8月13日(金)公開
- 監督:ショーン・レヴィ
- キャスト:ライアン・レイノルズ、ジョディ・カマー、ジョー・キーリー、タイカ・ワイティティ
- 配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン