TooKyoGames（トゥーキョーゲームス）は、小高和剛氏、打越鋼太郎氏、小松崎類氏、高田雅史氏らを中心に、全7名のクリエイターが設立したゲーム会社。
2018年9月に生放送で配信された設立発表会には、トゥーキョーゲームスのメンバーが出演し、4本のコンセプトアートとキャッチコピーが公開された。
今回は、2017年の設立からまもなく5年目を迎える同社の軌跡や、今後の取り組みなどをうかがうべく、メンバーを代表して小高和剛氏と打越鋼太郎氏にインタビューを実施。後半では、4本のコンセプトアートの中で、未発表のタイトルについてふたりを直撃。さらに、設立発表会では触れられなかったタイトルや、今後の展望なども尋ねた。
すでに放送、発売された『アクダマドライブ』や『ワールズエンドクラブ』について伺った前編も合わせてチェックしてほしい。
小高和剛氏（こだか かずたか）
ディレクター／シナリオライター。ゲームの企画やシナリオのみならず、小説やマンガの原作、テレビアニメの監修など、多岐にわたって活躍している。
打越鋼太郎氏（うちこし こうたろう）
ディレクター／シナリオライター。これまでに数々のアドベンチャーゲームのディレクター、シナリオライターを担当。最新作は『ワールズエンドクラブ』。
小高氏と打越氏のファンに向けた作品
――コンセプトアート3と4は詳細が未発表ですが、現在の開発状況はいかがですか？ まずはコンセプトアート3から。
Too Kyo Gamesコンセプトアート3／キャッチコピー：小高＆打越共同シナリオ作品！ “極限”ד絶望”
トゥーキョーゲームスのクリエイター陣が総力を結集して手掛けているゲーム作品。ジャンルは未公開だが、小高氏と打越氏が共同でシナリオに取り組んでいる。キャラクターデザインは、小松崎類氏が担当。コンセプトアートには、日本刀を持った女生徒を中心に、6名のキャラクターが描かれている。スカーフを巻いた、タヌキは本作のマスコットかも？
小高詳細は然るべきタイミングでお伝えしたいのですが、これはとくに紆余曲折がいろいろあって……。これまでのメイキングだけで、ファミ通の誌面すべてを取れるんじゃないかっていうほどのエピソードを語れますよ（苦笑）。
――そんなに！ いつかロングインタビューをさせてください……。作品のキャッチコピーである“小高＆打越共同シナリオ作品！ “極限”ד絶望””から考えると、小高さんや打越さんの作品が好きなファンに向けたタイトルですよね？
小高ご想像の通り、僕と打越の共同シナリオのタイトルなので、お互いのいいところを詰め込みつつ、既存ファンはもちろん、新しいファンも獲得できるような作品を目指しています。詳細を発表したとき、トゥーキョーゲームスは正気なのか。本気でこんなゲームを作るのかと驚いてもらえるような作品にしていきますので、ご期待ください。
――かなりハードルを上げましたね（笑）。
小高みずからの首を締めて、苦労しているところも多い作品となっています（苦笑）。当初想定していたよりも、スケールがかなり大きくなりそうなので、これは人を増やさないとどうにもならないなと考えて、慌てて新人募集を行いましたし。
――先日、トゥーキョーゲームスで新人募集を行っていたのは、このタイトルがきっかけになったと。
小高要因のひとつですが、もともと仲間を増やしたいという考えもありました。これまで複数のプロジェクトを同時に進める中で、外部のライターさんやデザイナーさんの力を借りることも多かったのですが、初めて仕事をする方とはうまくいくまで時間がかかることもあったので。おかげさまで、想像以上の応募をいただいたのですが、逆にチェックをするのが大変です。
打越僕はシナリオと企画の採用担当として応募書類をすべて見ているんですが、課題の内容が全体的にめちゃくちゃおもしろくて。おもしろい作品が多すぎて悩んでしまうので、読んでいる途中からもうおもしろい作品はなくていいって気持ちになりました（苦笑）。
――贅沢な悩み（笑）。募集要項にシナリオをチェックして修正もしてもらう、という記載もありましたし、それは時間がかかりますね。
打越そうなんですよ。それがめちゃくちゃ時間かかるのに、小高は「仕事が遅い」って言ってくるんです（苦笑）。
――今回は即戦力と言いますか、頼れそうな人が採用されるのでしょうか？
小高即戦力になりそうな方はもちろん、未経験の方であっても、才能溢れる方であれば採用したいと考えています。優秀な人材が多いので、当初の想定より採用人数が増えるかもしれません。
――では続いてコンセプトアート4の開発状況も教えてください。
Too Kyo Gamesコンセプトアート4／キャッチコピー：スパイク・チュンソフト×トゥーキョーゲームスで贈るダークファンタジー風ミステリー
『ダンガンロンパ』制作スタッフと、スパイク・チュンソフトのタッグが再び実現した、ファンには夢のようなタイトル。小高氏がスパイク・チュンソフトを退職する前に企画したもので、小松崎氏がキャラクターデザイン、しまどりる氏が背景デザイン、高田氏がサウンドを担当している。ジャンルはダークファンタジー風ミステリーで発売日などは未定。
小高スパイク・チュンソフトとうちがタッグを組んだ新規タイトルなんですが、どんどん豪華になっているぶん、開発に時間がかかっている状況です。残念ながら、こちらもいまの段階でお話できることはないのですが、誰も見たことのない推理アドベンチャーゲームになると思います。スパイク・チュンソフトは社運を懸けているみたいですし。うちは懸けてないですけど。
打越そんなことはないでしょ（笑）。
小高冗談です（笑）。うちも社運を懸けている作品なので、ご期待ください！
会社設立発表会で未公開のタイトルの発売＆発表も！
――会社設立発表時に動いていた4つのほかに、2020年2月に『トライブナイン』が発表され、同年6月には『デスカムトゥルー』が発売されました。これらは、当初の予定から追加された作品だったのでしょうか？
小高『トライブナイン』は、企画自体はあったものの、当時はまだ実験段階でちゃんと形になるかどうかわからなかったので、会社設立発表会での公開を見送りました。『デスカムトゥルー』は当初の構想になく、追加で開発することになったものですね。たまたま実写ゲームを作らないかという話が舞い込んできて、ちょうどほかの作品に紆余曲折があって空いている時期だったので、いまならやれるということで急遽作りました。
――『デスカムトゥルー』は全編実写ムービーの作り、1960円という映画と同等の値段設定など、挑戦的な作品だったように感じました。チャレンジしてみて、手応えはいかがでしたか？
Death Come True (デスカムトゥルー)ティザー映像/Death Come True Teaser 本郷奏多・栗山千明出演の実写インタラクティブムービー
小高初めての実写ゲームということで、純粋に楽しかったですね。全編実写で映画と同じような値段に設定していることからもわかるように、『デスカムトゥルー』はゲームファンというよりも、当時流行っていた『あなたの番です』（2019年4月から9月に日本テレビ系列で放映されたミステリードラマ）を観ているような人たちをターゲットにしていました。当初は交通広告や映画館の映画上映前の広告を大々的にやろうという企画もありましたが、新型コロナの影響で頓挫してしまって……。結果的に、ゲームファンからの反響が大きくなりました。テレビドラマ好きの方たちに、こういうドラマもあるんだってことを知ってもらいたかったので、ミステリ小説や映画が好きな方に勧めてほしいですね。
――Netflixに『ブラック・ミラー：バンダースナッチ』という選択肢のあるドラマがありましたが、『デスカムトゥルー』もストリーミングサービスでの配信などもできそうですよね。
小高プログラムを変更すれば、ストリーミングサービスで配信することもできると思いますが、変更部分も多いのでハードルはありますね。ただ今回、実写ゲームを作ったことで、機会があればまたやりたいという気持ちが強くなりました。『デスカムトゥルー』では時間がなかったので、自分の得意なサスペンスにしましたが、スマホの規制がきびしいせいで事件現場などを表現するのが難しくて。スマホでも無理なく表現できるテーマを選べば、もっとおもしろい作品ができるんじゃないかな。
――続いて『トライブナイン』は開発メンバーを募集していましたが、現在の開発状況は？
小高『トライブナイン』も、考えていた以上に大きなタイトルになっています。もう少ししたら情報をお出しできるかもしれないので、こちらもご期待いただけるとうれしいです。
TRIBE NINE (トライブナイン) コンセプトムービー
今後のトゥーキョーゲームスはコンプライアンスの限界に挑む!?
――コンセプトアートを発表した4本と追加の2本のうち、3本がリリースされました。ちょうど半分となりますが、さらなる新プロジェクトは動いているのでしょうか？
小高動き出したばかりのプロジェクトもありますね。
――会社設立時に行ったインタビューでは、小高さんからトゥーキョーゲームスとしてインディーゲームを出したいというお話もありました。こちらの進捗もお聞きしたいです。
小高じつは、これもまた紆余曲折がありまして……。
打越うちは、紆余曲折がありすぎる（笑）。
小高当初、考えていたタイトルの予算や規模感がインディーゲームの枠を越えてしまったので、いまのところ動いてはいません。ただ、インディーゲームを作るのであれば、コンシューマ（家庭用ゲーム機）で出せないものを作ってみたいですね。たとえば、開発した作品のデータをCD-ROMなどに焼いて、何かのイベントで来てくれたファンの方たちに配布するとか。
――インディーっぽい（笑）。会社設立からまもなく5年目を迎えますが、小高さんたちがやりたいことに変化はありましたか？
小高トゥーキョーゲームスにはふたつの大きなラインがあって、これまで応援してくれてきたファンの方たちを納得させるラインと、新しくチャレンジするラインが動いています。前者はコンセプトアートの3や4、後者は『ワールズエンドクラブ』や『デスカムトゥルー』ですね。いまのところ、後者の作品しか出せていませんが、今後もこの両輪で開発を行うことに変わりはないので、大枠ではやりたいことに変化はないと思います。
――『ワールズエンドクラブ』では全年齢、『デスカムトゥルー』では実写にチャレンジしていますが、つぎに小高さんたちが挑戦してみたいテーマがあれば教えてください。
小高コンプライアンスの限界かなあ。ゲーム業界も、年々、コンプライアンスがきびしくなっていますよね。この流れが続くと自主規制がどんどんきびしくなり、安全策ばかりをとってしまったがゆえに、平凡なタイトルが増えるかもしれません。それではおもしろくないので、新しいチャレンジを続けるラインでは、トゥーキョーゲームスでしか作れないような攻めた作品に挑みたいですね。
――コンプライアンスという意味では、『AI』や『ワールズエンドクラブ』は打越さんらしい際どいセリフが多いですよね（笑）。
打越『ワールズエンドクラブ』は小学生向けの下ネタみたいなものですが（笑）。でも、小高と示し合わせたわけではありませんが、コンプライアンスの限界に挑みたいという気持ちは持っています。
小高死体の欠損描写も、ますますきびしくなりましたよね。『ダンガンロンパ』は、2010年だったから許されたのかもしれません。いまの時代でゼロから作ろうとすると、コンプライアンスに引っかかって開発できないかも。
――その『ダンガンロンパ』はNintendo Switchで11月4日に発売されますね。
小高Nintendo Switch版は、小松崎が描き下ろしイラストを描いています。ナンバリングのシリーズがまとめて遊べる機会ですので、『ダンガンロンパ』シリーズを遊んでいない方はもちろん、ファンの方もチェックしてほしいですね。
『ダンガンロンパ トリロジーパック + ハッピーダンガンロンパＳ 超高校級の南国サイコロ合宿』(Switch)の購入はこちら (Amazon.co.jp)――打越さんは、『AI』の続編となる『AI:ソムニウムファイル ニルヴァーナ イニシアチブ』も発表されましたね。
打越はい。詳細は改めて発表させていただきますが、発表時の反響はとてもよかったです。続報を楽しみにしておいてください。
――最後に、トゥーキョーゲームスの今後の展望を教えてください。
小高お話をした通り、複数のラインが動いていて、どの作品にも全力投球をしていますが、なかでもコンセプトアート3はギャンブルと言えるような挑戦になっていますね。トゥーキョーゲームスという会社を作ったからには作らないといけない、狂気を感じる作品。人、お金、時間、そしてコンプライアンス、すべてギャンブルですが、それだけやる価値がある。
打越めちゃくちゃおもしろいおもしろい作品になると思いますが、スタッフは何人か死ぬかも（苦笑）。
小高コンセプトがあまりにも正気ではないので、また紆余曲折があるかもしれませんが、仲間が死なないようにがんばります！（笑）
※トゥーキョーゲームス設立発表時の記事はこちら
