サイゲームスより配信中のiOS、Android、PC(DMM GAMES)対応ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』。2021年8月20日に実装された育成ウマ娘“エイシンフラッシュ”の能力や、競走馬としてのエピソードを紹介する。
『ウマ娘』におけるエイシンフラッシュ
公式プロフィール
- 声:藤野彩水
- 誕生日:3月27日
- 身長:160センチ
- 体重:増減なし(1gの誤差もなく)
- スリーサイズ:B88、W58、H86
ドイツからやってきた、真面目で几帳面な留学生。何事も予定を立て、寸分の狂いもなくこなす。
趣味はお菓子作りで、計量ミスの許されない一面が、周到な性格を育んだようだ。
一方、予想外の出来事に弱く、トラブルが発生するとおたおた慌ててしまう。
エイシンフラッシュの人となり
「小麦粉は100グラムです。101グラムではありませんよ!」
たった1グラムの誤差も許さない、几帳面すぎる黒髪美少女ウマ娘。自他にきびしいその言動は冷たい印象も与えがちだが、情に厚い一面も。栗東寮で同室のウマドル、スマートファルコン(ファル子)とも、いつもファル子ばかりがプレッシャーを受けているようで、じつはいいコンビである。
ゲームではこれまで、スマートファルコンやゴールドシップの育成シナリオのほか、メインストーリーの第3章などでその姿が見られた。
上のセリフはアニメSeason1『BNWの誓い』より、“エイシンフラッシュのお料理教室(仮)”における、ツンデレウマ娘サンバイザーへのきびしい指導で見られたものである。さすがに細かすぎる主張ではあるが、これはエイシンフラッシュのストーリーによると、パティシエを務める父から教えられたことらしい。
自己主張の激しいウマ娘が揃うトレセン学園にあって、エイシンフラッシュは基本的にはマジメでとても礼儀正しい優等生。パドックでも立礼を行う姿が印象的だ(元ネタに関しては後述する)。
エイシンフラッシュの能力
競走馬のエイシンフラッシュがおもに差しで活躍しただけに、『ウマ娘』のエイシンフラッシュも、“レーンの魔術師”、“全身全霊”、“差しのコツ○”と、差し育成に向いたスキルを数多く持つ。
成長率はパワー+10%と賢さ+20%。最近のチーム競技場では賢さを高める育成が注目されているだけに、エイシンフラッシュも活躍しそうだ。
固有スキルの“Schwarze Schwert”は、ドイツ語で“黒い剣”という意味。その名前にちなみ、発動モーションではフェンシングの剣を携えている。
競走馬のエイシンフラッシュ
エイシンフラッシュの生い立ち
エイシンフラッシュは2007年3月27日生まれの牡馬(男馬)。『ウマ娘』ではドイツからの留学生となっているが、競走馬のエイシンフラッシュは、母ムーンレディが受胎した状態でドイツから輸入され、日本で生まれている。いわゆる“持込馬”という立場で、ウマ娘ではほかにマルゼンスキーやニシノフラワー、ビワハヤヒデもそれにあたる。
日本では内国産馬(国内生まれの競走馬)振興のため、1971年から1983年まで持込馬に関する規制が掛けられており、マルゼンスキーはクラシックレースに出ることが叶わなかった。その後ルールが改正され、1971年以前と同じように、クラシックレースに出られるようになっている。
エイシンフラッシュに流れるドイツの血は、当時の世界的な流行からはやや外れた独自路線のため、血統面ではそこまで大きな注目を集めていたわけではなかった。しかし、彼の均整のとれたしなやかな馬体と、美しい黒鹿毛が映える超イケメンっぷりは、濃い競馬ファンのあいだでかなり話題となっていた。
担当厩務員の久保さんが手入れにとても気を遣っていた話も有名で、こだわって美しく見えるようにしていたらしい。尻尾の先もキレイに切り揃えられていたそのこだわりは、ウマ娘としてのデザインにも反映されているので、ほかのウマ娘と見比べてみてほしい。
また、“エイシン”の冠名ではおなじみの赤黒の縦縞が目を引くデザインの勝負服は、ウマ娘としての勝負服にも反映されている。ドイツの民族衣装風(アルプス地方のディアンドル)の大胆なフォルムが目を引くが、スカートの模様が赤黒の縦縞となっているのだ。
競走馬のエイシンフラッシュはプライドが高く、かなり神経質だったようだが、いい意味で気性がオトナにならずいつまでも若々しかったおかげで、息の長い活躍ができたとも言われている。頭は非常によく、飼い葉はきちんと食べるうえに自分で調整もできていたようで、競走馬生活を通じて体重がほとんど変わらず、大きなケガもすることがなかった。
特徴的な“ドイツ血統”
エイシンフラッシュの父はキングズベスト。アメリカ生まれでイングランドを拠点とし、皐月賞のモデルとなったイギリス2000ギニー(芝1600メートル)を勝った馬だ。種牡馬としても世界を股にかけて活躍しており、エイシンフラッシュ活躍後の2013年に日本に輸入。2019年に惜しまれつつこの世を去った。
キングズベストは良血で、彼の半姉は凱旋門賞を制した女傑アーバンシー。アーバンシーは繁殖牝馬としても活躍し、産駒には歴史的種牡馬のガリレオや、一流種牡馬のシーザスターズなどがいる。
エイシンフラッシュの母はムーンレディ。18戦6勝、重賞4勝。ドイツの菊花賞にあたるGII(当時)ドイチェスセントレジャーを制すなど、中長距離路線で活躍したなかなかの名牝だ。
ちなみに、ムーンレディの父プラティニは、1993年のジャパンカップで4着に入っている。同レースに数多くのウマ娘のモデル馬たちが出走しており、ウイニングチケットは3着、ナイスネイチャは7着、メジロパーマーは10着、ライスシャワーは14着、マチカネタンホイザは15着となっている。さらにこのレースには、先ほど話に出たアーバンシーも出走。結果は8着だった。
さて、エイシンフラッシュの最大の特徴は、その体に流れる“濃厚なドイツの血”である。このドイツ血統についても説明していこう。
ドイツでも競馬は盛んで、その歴史は日本よりも古い。サラブレッドの年間生産頭数は日本の6分の1程度だが、多くの名馬を輩出しており、1995年にはランドがヒシアマゾンやナリタブライアン、ナイスネイチャ、マチカネタンホイザといった日本勢を退け、ジャパンカップを制している。
1995年 ジャパンカップ(GⅠ) | ランド | JRA公式
ドイツでの馬産は“牝系(人間で言う母方の血統)”が重視されており、優秀な牝馬に、その特徴を助長できるような種牡馬をつけるというやり方をしているのが特徴。流行の血統に左右されることのない、独自の進化を遂げてきた。
日本やイギリス、フランス、アイルランド、アメリカなどの国々は、それぞれで流行の血統が繁栄しすぎており、近親交配が避けられなくなってきている。その対策として生産者たちが目をつけたのが、流行血統とは無縁で、なおかつ繁殖成績も優秀なドイツの牝馬であり、これを積極的に輸入するようになっている。
エイシンフラッシュの母ムーンレディのほかにも、マンハッタンカフェの母サトルチェンジ(日本人のような名前だがアイルランド産、そしてかなり濃いめのドイツ血統)などが同様の目的で輸入されている。
ちなみにドイツでは母の馬名の頭文字を受け継ぐという決まりがあり、エイシンフラッシュも母ムーンレディ(Moonlady)→ その母Midnight Fever → Majoritat → Monacchia → Monacensia → Motette → Morchel → Morning Breezeと8代前まで“M”の系譜がさかのぼる(※Midnight Feverはアイルランド、Morning Breezeはイングランド産)。ムーンレディの父プラティニも6代母まで頭文字がP、エイシンフラッシュの父キングズベストの母系も7代Aが続いている(父の母もAだがイングランド産)。
ダービーで魅せた史上最速の末脚
エイシンフラッシュは地味な血統構成もあってか2009年のデビュー時はそれほど騒がれていなかったが、7月12日のデビュー戦、2歳新馬(阪神競馬場、芝1800メートル)を6着に負けた後、秋になって調教で時計が出てくると注目の存在に。2戦目の2歳未勝利で勝ち上がると、萩ステークス3着を挟んで4戦目のエリカ賞(2歳1勝クラス)で2勝目を挙げて2歳時を4戦2勝で終える。
新馬戦を6着に負けたというエピソードは、『ウマ娘』でも、選抜レース6着という結果で再現されている。
年明け初戦は京成杯。1番人気に支持されると前目から見事に差し切り勝利。しかしその後熱発で前哨戦を回避して皐月賞に直行することになる。このレースは休み明けを嫌われて11番人気と人気を落とすが、勝ち馬から0秒2差の3着とうまくまとめた。
なお、勝ったヴィクトワールピサはその後ドバイワールドカップに勝ち“世界一の馬”に。2着に入ったヒルノダムールも、後にエイシンフラッシュを下して天皇賞(春)を制することになる。
エイシンフラッシュのつぎなる舞台となった日本ダービーは、ヴィクトワールピサとヒルノダムールの皐月賞ワンツー組に加えて、NHKマイルカップを制したダノンシャンティ、エアグルーヴ産駒で後に香港でGIを勝つルーラーシップ、皐月賞は回避したが注目度は高かった1億円ホースのペルーサ、後のジャパンカップ馬ローズキングダムなどが参戦。注目度の高いカードとなった。その詳細は、以下の記事に詳しい。
このダービーでエイシンフラッシュは、最後の3ハロン(600メートル)を32秒7で走破。現在も破られていない驚異的な記録の末脚で、並み居るライバルを蹴散らした。その脚はまさに“閃光”。しかし、その輝きは以後、だんだんと曇っていく。
2010年 日本ダービー(GⅠ) | エイシンフラッシュ | JRA公式
長きに渡る雌伏の時、そして再びの歓喜へ
秋は神戸新聞杯(2着)から始動。しかしその後筋肉痛が出て菊花賞を直前で回避することに。その影響が残ったのか、改めて臨んだジャパンカップは8着、年末の大一番の有馬記念でも7着と、パッとしない結果に終わってしまった。
放牧を経て、2011年は4月の大阪杯(当時はGII)から始動。その前週にヴィクトワールピサがドバイワールドカップに勝ち、同い年であるエイシンフラッシュたちにも注目が集まっていた。そこで3着とまずまずの滑り出しを見せると、続く天皇賞(春)も2着に。結果だけなら上々なのだが、レース展開がハマらず末脚も活かせず、勝ちきれないレースが続く。
その後も宝塚記念3着、天皇賞(秋)6着、ジャパンカップ8着と成績を落としていく。続く有馬記念は、超スローペースからの直線勝負という、日本ダービーの再現のような絶好の展開に。しかし、大外から飛んできた三冠馬オルフェーヴルにつかまり、僅差の2着で2011年を終えた。
1年半以上も勝ち星から遠ざかったまま迎えた2012年。つぎなる舞台はなんとドバイだった。スマートファルコン、トランセンドとともにDWCへ。『ウマ娘』のファル子のストーリーでは、“DOKIDOL☆WORLD☆CONCERT”となっているが、あれは本当はドバイワールドカップのことなのだ。エイシンフラッシュは、日本から出場した3頭の中ではもっとも成績がよかったものの、6着という残念な結果に。
ともあれ、ここでともに海外挑戦した経験が、エイシンフラッシュがファル子のマネージャー的ポジションになった理由なのは間違いない。
そして帰国後は宝塚記念6着、毎日王冠9着と、内容も結果も悪く、ファンのあいだでは引退の2文字も噂されるようになっていた。
そんな中で迎えた天皇賞(秋)。当時の天皇、皇后両陛下がご来場され“天覧競馬”となったこのレースは、逃げ、先行勢が飛ばしに飛ばし、スピード能力を競い合うハデな展開に。しかし最終コーナーで、それまで控えて後ろにいたエイシンフラッシュにチャンスが訪れる。前にいた馬たちが、スピードに乗ったまま外側に膨らんでいったのである。最内にいたエイシンフラッシュの前に、ぽっかりと視界が開ける。鞍上の名手、ミルコ・デムーロ騎手はその隙を見逃さなかった。エイシンフラッシュは府中の激坂を上がり3ハロン33秒1の末脚で駆け抜け、2度目の戴冠で輝きを放ったのだった。
2012年 天皇賞(秋)(GⅠ) | エイシンフラッシュ | JRA公式
意気揚々とウイニングランをするエイシンフラッシュ。そしてメインスタンドの前に来ると、デムーロ騎手は両陛下に敬意を表して、下馬し最敬礼をしたのである。本来は規則違反なのだが、騎乗停止などの処分はナシとなった。後でものすごく怒られたらしいが、デムーロ騎手の真摯な姿勢に観客は大喜び。『ウマ娘』でエイシンフラッシュがパドックでお辞儀をするのは、このエピソードが元だと言われている。
画像はWikipediaの“エイシンフラッシュ”の項目より(Flickr user kanagen (trimmed by Pastern) - File:2012 Tenn? Sh? (Autumn) 001.jpg, CC 表示 2.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=23175367による)。
その後はハイレベルすぎたジャパンカップで9着に惨敗。続く有馬記念も、1着ゴールドシップから離された4着となった。この有馬記念と、翌年のジャパンカップでのゴールドシップとの戦いが、ゴールドシップの育成シナリオでのエイシンフラッシュとの絡みにつながったと思われる。
エイシンフラッシュは再び負けが込んできたことで、誰もがここで引退するだろうと思った。しかし、大方の予想に反し、現役続行が決まったのである。
さすがにもうズルズルと成績を落とすのみだろうと思われたが、2012年初戦の大阪杯と、続く香港でのGIクイーンエリザベス2世カップの2レースをともに3着でまとめ上げたうえ、秋初戦の毎日王冠は、上がり32秒8の鬼脚を見せて勝利。マンハッタンカフェなどもそうだが、ドイツ血統はしぶといのも特徴なのだろうか。
ただ、続く天皇賞(秋)は内から抜け出せずに3着、ジャパンカップは押し出される形でまさかの逃げを余儀なくされて10着に終わる。最後は有馬記念を使って引退の予定だったが、歩様に乱れが発見されたため出走を取り消し、そのまま引退となった。
引退式はその有馬記念が行われた2013年12月23日。27戦6勝(GI2勝)、獲得賞金は約7億5000万円と、名馬にふさわしい戦績であった。
2014年より種牡馬になったエイシンフラッシュは、現在は日高のレックススタッドに繋養されている。現役時代から端正なマスクで女性ファンからおモテになられたエイシンフラッシュ。いまも変わらずカッコいい。
著者近況:ギャルソン屋城
リアル競馬&競馬ゲームファンでもある、週刊ファミ通『ウマ娘』担当ライター。誕生日:9月5日、身長:168センチ、体重:微増(ヨーグルト食べすぎ)。
最近ジュエルが貯まらないなあと思っていたが、デイリージュエルパックを更新し忘れていたということに気付く。