2021年9月15日から配信されている大型アップデートによって、ついにプレイステーション5(PS5)のM.2内蔵スロットが使用可能になった。同時に、ハードディスクやメモリーカードで知られるブランドからも対応製品が続々と登場。この記事では、そんなPS5対応製品のひとつ、Western Digitalの“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”を取り付ける手順を紹介したい。
※本記事はWestern Digitalの提供でお届けしています。
本体内のSSD容量不足もこれで解決!?
PS5には読み出しが高速なSSD(Solid State Drive:フラッシュメモリを使った記憶装置)が搭載されていて、これにゲームソフトをインストールすることで、DVDなど光学メディアから起動していた時代とは別次元の快適さを味わうことが可能だ。しかし、本体に内蔵されているSSDの容量は825GB。ゲームだけでなく、リプレイの動画やスクリーンショットなどもこれに記録されるので、たとえば自分のプレイを動画でこまめに保存しているユーザーなど、アクティブにPS5を活用しているユーザーほど、その容量に不安を感じているのではないだろうか。
そんなヘヴィでコアなゲームユーザーのために、PS5にはあらかじめSSDを増設できるM.2規格のSSD用内蔵スロットが用意されている。9月15日に配信がはじまったシステムソフトウェアの大型アップデートにより、ついにこの増設スロットが利用可能となった。
従来もHDDやSSDなどUSB接続のストレージを用意すれば、そちらに一時的にゲームを移動させることで、本体に内蔵されたSSDの空き容量を増やすことはできた。PS4用のゲームならその外付けのストレージからダイレクトに起動もできるが、PS5用ゲームの場合はまた本体内のSSDに書き戻さないと起動できない不便さがあった。ところが、M.2増設スロットに装着したSSDは、標準装備のSSDとまったく同様に扱うことができ、PS5のゲームでも直接起動できるところが大きな違いだ。
内蔵スロットに増設できるSSDには、以下の通り、要件が設定されている。
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インターフェース
- PCI-Express Gen4x4対応M.2 NVMe SSD(Key M)
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ストレージ(容量)
- 250GB~4TB
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対応サイズ
- 2230、2242、2260、2280、22110
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放熱構造を含むサイズ
- 幅:最大25mm
- 長さ:30 / 40 / 60 / 80 / 110mm
- 高さ:最大11.25mm(基盤から上8.0mmまで、基盤から下2.45mmまで)
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シーケンシャル読み込み速度
- 5500MB/秒以上を推奨
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ソケットタイプ
- Socket 3(Key M)
出典:PS公式サイト“PlayStation 5にM.2 SSDを取り付ける方法”
いろいろ専門的な単語が並んでいるが、PS5に使えるのは“「NVMe(Non-Volatile Memory Express)」という規格に準じたM.2のSocket 3(Key M)のスロットに接続できるSSD”で、最大4TBの容量まで対応し、物理的な外寸にも細かい制限がある、ということ。各単語にそれぞれ意味はあるが、細かく覚える必要はない。要は「M.2と呼ばれる規格のSSDのなかでもより高速なNVMeという仕様のSSDが使える」とだけ知っておけば問題はない。
じつはけっこう重要なのが使えるSSDのサイズ。SSDは、金属製の円盤にデータを記録していくHDDに比べると大容量であっても非常に小型で軽く作ることができるが、利用時にはちょっとした熱を持つ。放っておくと故障や誤動作の原因になるため、ヒートシンクと呼ばれる放熱用の部品を取り付けて使うのだが、問題はヒートシンクも含めたサイズで取り付けの可否が決まるのである。大きいほうが放熱効果は高いが、大きすぎて取り付けられないのでは意味がない。
いち早くPS5への対応を謳った“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”
こうしたいくつもの条件を鑑みたうえで、
「ではPS5の増設用SSDには何を選ぶべきか?」
という話になるわけだが、接続できる規格にしても、サイズにしても、これを無視することは何かと都合が悪い。とくにサイズに関しては前述の表と製品スペックを見比べて入るかどうかを確認するのもかなり面倒だ。素直に“PS5対応”とメーカーが謳っているものを選ぶのがいいだろう。
その代表的な製品のひとつが、9月15日の正式対応以前、ベータ版が検証されていたころからPS5への対応を謳っていた、“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”だ。この製品は容量別に500GB、1TB、2TBと3タイプがあり、それぞれに“With Heatsink”というヒートシンクが標準で装着されたモデルが用意されている。
容量についてはPS5側では250GBから最大4TBまで対応している。“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”ならこの点でも問題はなく、これを選びさえすれば、買ってきたそのままの状態でいきなりPS5へ装着しても放熱対策はばっちり。すぐに使いはじめることができるのである。
ちなみにソニーは増設するSSDについてそのシーケンシャル読み込み速度を“5,500MB/秒以上を推奨”と規定している。以下が“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”のスペック。ソニーの求める基準をらくらくとクリアーしていることがわかるはずだ。
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シーケンシャル読み取り:
- 2TB: 7,000MB/s
- 1TB: 7,000MB/s
- 500GB: 7,000MB/s
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シーケンシャル書き込み:
- 2TB: 5,100MB/s
- 1TB: 5,300MB/s
- 500GB: 4,100MB/s
さらに10月11日には、この“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”のヒートシンク付きの全モデルがPS5で利用できることが正式にTwitterで発表された。
ヒートシンク付きWD_BLACK SN850 NVMe SSD(500GB/1TB/2TB)の全モデルが、PS5のM.2スロットで動作することが確認できました。PS5システムソフトウェアバージョン21.02-04.00.00以上が… https://t.co/xlFAyM9JgE
— WD Japan公式 (@WesternDigiJPN)
2021-10-11 09:01:01
条件としては、システムソフトウェアバージョンが21.02-04.00.00以上であることが必要とのこと。つまり、前述の9月15日にリリースされたものか、それより新しいアップデートを適用していれば問題ないわけだ。
PS5に最初から内蔵されたSSDはシステムソフトウェアなどでも利用されるため、825GBのうち、ユーザーが使えるのは約670GB。2TBなら本体の約3倍、さらに“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”にはラインアップされていないが、4TBのSSDならじつに約6倍に匹敵する領域が新たに使えるようになるわけだ。とはいえ、容量が高くなるほどSSDの値段も増す。自分のおサイフと相談しつつ、なるべく大きな容量のものを選ぶのがいいだろう。
いざ、増設用スロットにSSDを装着!!
さて、ここからは、“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”をPS5へ装着する具体的な手順を紹介していく。
準備としては、まず、
1. PS5を横置きできるだけの作業スペース
2. できればPS5本体に傷が付かないようにする布や作業用ゴムマットなど
3. +(プラス)ドライバー
4. 取り付けるSSD
を用意する。ドライバーに関してはあまり大きなものだとネジに合わない。先端の太さが3mm前後かそれより細いものがいいだろう。規格で言うとNo.1というサイズが最適だ。上記の準備ができたら作業開始。なお、具体的な交換の手順はプレイステーション公式サイトにも掲載されている。本稿とともに、そちらも参照しておくといいだろう。
SSD装着の手順
1). 電源を切ってすべてのケーブルなどをとりはずす
まずはPS5の電源をオフにし、電源ケーブルやHDMIケーブルなど、本体からすべてのケーブルとデバイスを取り外し、直前まで使用していた場合は本体の熱が冷めるのを待つ。
2). 光学ドライブを上にして本体を横置きにする
内蔵用SSD増設スロットはPS5の光学ドライブがある側に配置されている。こちらを上にして横置きにしよう。本体を傷つけたくないなら布や作業用ゴムマットなどを敷き、そのうえに置くといいだろう。
3). 本体カバーを取り外す
光学ドライブの反対側の角を持ち上げるようにし、さらに縦置きにしたときに底になる面、光学ドライブの方向へ向けてカバー全体をスライドさせ、外す。光学ドライブのわき、ネジ止めされた細長いアルミのプレートがSSDスロットを覆うカバーだ。
4). SSDスロットのカバーを開ける
M.2スロットを覆うアルミのカバーは1本のネジで止められている。これを外して開けるとスロットが見える。ネジ穴がいくつも開いているのは、サイズの違うSSDに対応するため。スロットの横にSSDを置けば、固定するネジ穴がどこかすぐにわかるだろう。
5). 固定用ネジとスペーサーを取り外す
SSD接続端子からもっとも遠い場所に、SSDを固定するためのネジとスペーサーがある。まずはこれを外し、先ほど確認した固定用の穴にスペーサーをはめる。
6). 正しい位置にスペーサーをはめ、SSDを装着
4).で確認したネジ穴にスペーサーをはめ、切り欠きの位置を確認しながら斜め上からしっかりと奥までSSDを差し込む。正しく装着されると、反対側の端が少し浮いた状態になるので、これを軽く指で押さえながら、固定用ネジでSSDを固定しよう。あとは逆の手順でM.2スロットカバー、本体カバーを戻せば、作業は完了だ。
増設したSSD、その速度は!?
SSDの装着が終わり、PS5の電源を入れるとSSDをフォーマットするよう促される。同じメッセージの最後には“セーブデータ、スクリーンショット、ビデオクリップはM.2 SSDストレージに保存できません”という一文がある。つまり、これらのデータはM.2 SSDを増設した後も、本体内のSSDに記録され、M.2 SSDにはゲームプログラム本体だけが入れられるということだ。
フォーマットが終われば増設したM.2 SSDが使える状態になっている。ホーム画面から“設定”→“ストレージ”→“インストール先”とメニューを辿っていくことで、新たにゲームをインストールするメディアを本体かM.2 SSDか選択することが可能だ。
また、すでにどちらかのSSDにインストールされているゲームプログラムを他方へと移動させることもできる。増設したSSDをより大容量のものに変えるときなど、この機能を使って退避させられるわけだ。
気になるのは増設したSSDの読み込み速度だ。それを検証するため、『Ghost of Tsushima Director's Cut』(『ゴースト・オブ・ツシマ ディレクターズカット』)をインストールし、ゲームオーバーから復活するまでの時間をリプレイ動画で検証してみた。その結果は以下の通り。
『Ghost of Tsushima Director's Cut』ゲームオーバーから復活までの時間(単位:秒)
(本体内蔵SSD/増設M.2 SSD)
- 1回目 5.19 4.58
- 2回目 5.21 4.57
- 3回目 5.17 4.58
- 4回目 5.19 4.58
- 平均 5.19 4.5775
- 倍率 1.133806663
高速な読み込みを実現していると言われるPS5の本体内SSDよりも、M.2スロットに増設したSSDのほうが約1.13倍速いという結果が出た。今回装着したのは“WD_BLACK SN850 NVMe SSD”の2TBモデルで、前述のように、読み込みのスペックは“7,000MB/s”と非常に高速。その性能がきちんと発揮された結果であると言えるだろう。
なお、ゲームの起動時間に関しては、ディスクを読みに行く初回以外は有意な差は見られなかった。
これは余談になるのだが、この検証を行うにあたって、ちょっと気になることが。前述のように、PS5にインストールしたゲームソフトは本体内蔵SSDとM.2 SSDのあいだで自由に移動ができるのだが、このときにかかる時間に大きな差が出たのだ。『Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT』の場合、M.2 SSDから本体への移動には約255.5秒、一方で本体内蔵からM.2 SSDへの移動は平均して約43.5秒と、約6分の1の時間で移動が完了したのだ。
ソニー・インタラクティブエンタテインメントに問い合わせてみたところ、これはPS5本体のSSDが読み込み速度に特化した設計であるためとのこと。基本的にPS5のSSDで速度が問われるのはゲームプログラムやさまざまなデータを読み込むとき。逆に大量のデータを書き込むのはゲームソフトをインストールするときくらいと限定的で、その際にはネットの通信速度や光学メディアの読み込みなど、ほかにボトルネックが存在するためにSSDの書き込み速度は問題にならない。限られたコストのなかで実用的な性能を求めたゆえの違いであり、非常に合理的な設計と言えるだろう。
使い勝手は本体内蔵SSDと同等以上のM.2 SSD
前述のように、高速と言われるPS5の本体内蔵SSDよりも読み込み、書き込みともにM.2 SSDは高速であることがわかった。M.2 SSDに入れられるのはほぼゲームプログラム本体のみとはいえ、感覚的には保存先の違いをユーザーはほとんど意識することなく利用できるのはやはり便利。
リプレイ動画やスクリーンショットを撮りまくっている人などは、ゲームプログラムはすべてM.2 SSDに保存し、本体内蔵はそうしたユーザーデータだけを入れる、といった運用をすれば、SSDの容量で頭を悩ますことはほぼなくなるだろう。PS5をアクティブに使いこなすつもりなら、M.2 SSDの購入は非常に有用な投資となるのだ。