皆さん、SF小説って読みますか?
僕は普段あまり読まないのですが、最近、例外的に読み思わず読破してしまったSF小説があります。それが、中国の小説家・劉慈欣(りゅう じきん)氏による『三体』(さんたい)。
2021年4月時点の世界累計発行部数2900万部、国内発行部数50万部弱とまさに大ヒット中で、近年のSF作品としては最高の売り上げと言っていいでしょう(数字の出典は国内版元の早川書房公式note)。
人類をはるかにしのぐ超高度文明“三体文明”と、地球文明とのコンタクトが描かれるというもので、壮大なテーマや斬新なSF理論などが大いに評判を呼びました。2015年には世界の優れたSF作品に送られる“ヒューゴー賞”をアジア人作者として初めて受賞しています。
ハードカバーで計5冊に及ぶ大作。読書中は、作者の圧倒的想像力に翻弄されて、SFならではの未来的描写にどっぷりと浸り、活字の海に溺れる幸福な読書体験が堪能できますよ。
壮大なSF設定のみならず中国現代史も作品に盛り込んだ骨太な内容で、SF小説のAAA(トリプルエー)タイトルとも言える本作。ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』チームの手によるNetflixドラマ化も予定されています。
さて、そんな超人気小説が、ネットイースが運営するバトルロイヤルTPS『荒野行動』と初コラボを果たしました。
これまで多くの他社IP(知的財産)とコラボを行っている『荒野行動』ですが、映像化前の小説とコラボするのは初めて。映像化されていない作品をゲームに落とし込むということは、キャラクターデザインや衣装や小物などの各種設定が準備されていることの多い映像作品と違って、本コラボのために小説をもとにさまざまなアイテムや建造物などの“絵を起こす”必要があります。そうまでして『三体』コラボを実現したかったという、ネットイースの本コラボに対する意欲を感じますね。
世界が興奮した新時代のSF小説と、TPS。本稿ではちょっと意外なその取り合わせについて詳しく紹介します。
※ゲームの設定を解説するために小説『三体』のネタバレを少し含んでいますので、「これから『三体』読もうと思っていたのに!」という方はご注意ください。
『三体』世界でバトロワ!
『荒野行動』は最大100人が参加できるマルチプレイバトルロイヤルTPS。iOS、Android版のほか、PC版、家庭用ゲーム機ではNintendo Switch、プレイステーション4版もあります。
※ただし、今回の『三体』コラボはプレイステーション4版では遊べませんのでご注意を。
今回のコラボ内容は
- コラボ特設サイトが公開
- コラボマップ“三体”が実装
- コラボガチャが開始
の3種に大きく分けられます。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
『荒野行動』×『三体』コラボ特設サイト
『荒野行動』プレイヤーはもちろん、ふだんゲームを遊ばない『三体』ファンにもぜひ見てほしいのが今回のコラボ特設サイト。公式サイトが『三体』の特別仕様にガラッと様変わりしています。
まず観ていただきたいのがコラボムービー。このデキがとてもいいのです!
冒頭でキャラクターがヘッドセットを装着するのは、小説に登場するVRゲーム『三体』をプレイしているという表現(このへん名前の事情がややこしいのですが、気になる方はぜひ原作小説をお読みください。大丈夫、おもしろいから!)。さらに小説のタイトルにも深く関わっている3つの太陽と、近未来的なピラミッド型の建造物、大地がボロボロに焼け焦げバラバラに砕け散る惑星がつぎつぎと映し出されます。
宇宙空間に並ぶ流線型の宇宙艦隊、悠々と飛空する銀色の水滴。『三体』読者は、どれにつけても「あ、あのシーンだ!」とうれしくなること請け合いです。『三体』読んだ人はこのコラボムービーだけでもぜひ観て!
続いてサイト中段にあるのは、“水滴”や“智子”といった『三体』世界の用語解説。小説を読まずに『三体』コラボをプレイされる方はこれを読むと最低限の作品知識が得られ、また、複雑な設定がビジュアルとともに簡潔まとめられており、すでに読んだ方にとっても見応えのあるものになっています。原作読書中にもこの用語解説サイトがあったら話が理解しやすかったのになあ(笑)。
何気なく置かれていますが、『三体』ファンにとってはかなり楽しめる部分かと思います。
また、ツイッターでは、
もし、住んでいる世界に太陽が三つあったら⁉️
荒野行動×三体コラボ開催決定
荒野のエージェントたちは新時空でサバイバルの試練を迎える!
詳細は続報をお楽しみに‼️
#荒野三体コラボ をつけて引用RT
抽選で16名様に劉慈欣先… https://t.co/Tu0ZNWU0Nz
— 荒野行動-『KNIVES OUT』公式 (@GAME_KNIVES_OUT)
2022-02-17 10:00:00
こちらのツイートを引用RTすることで作者劉慈欣氏のサイン入り原作本などが抽選で当たるとのことなので、こちらも要チェック。
コラボマップ“三体”
ゲーム部分で本コラボのメインコンテンツとなるのがコラボマップの実装。ゲーム“三体”を選択することでプレイ可能です。
三体マップの簡単な解説
コラボステージのモデルになっているのは、地球から4光年離れた場所にある三体文明の母星。
三体星は、影響を受ける恒星が3つあり、その位置関係によって文明が発展できる安定した気候(恒紀)と、生命がほぼ絶滅する気候(乱紀)をランダムに繰り返します。恒星が3つあるせいで恒紀・乱紀は長いときもあり短いときもあり。恒星は互いに影響し合うため、その挙動は恐ろしく複雑で、物理学の世界では“三体問題”と呼ばれる古典的な問題でもあります。これが原作タイトルの由来になっているわけですね。
さらにかんたんに言うと、太陽が星から離れて気温がマイナス259度以下になったり、逆に3つの太陽が出てメチャクチャ熱くなったり、太陽に近づきすぎて星がバラバラになったりするヤベー惑星がコラボステージのモデルというわけです(※)。
ひとまずこれだけ押さえておけば、原作未読の方が抱くと思われる「どういうことなんだよ、このマップ!」という疑問の答えにはなるかと思います。
※厳密に言うとコラボムービーにある通り、三体星そのものではなく、小説中に登場する“三体星をモデルとしたVRゲーム『三体』”が舞台となっているようなのですが、そのあたりを詳しく説明すると長くなるので割愛。
今回のコラボでは小説の設定を忠実に再現。“恒紀”のあいだ、通常通りプレイできているかと思うと、つぎの瞬間には“乱紀”が訪れてマップ中が炎上したり、逆に雪景色となったり、隕石が降り注いできたりするかなり過酷なマップとなっています(ちなみに小説『三体』では、三体星人が過酷なこの星をどうにかしたいと望んでいることが物語を大きく動かす理由にもなるのですが……)。
コラボ実装後、さっそくプレイしてみました。
レジャーモード“三体”は、4人1チームでプレイするスクワッド制。最大24人の6チームが参加し、最後の1チームになるまでこの過酷な三体星で撃ち合います。通常のモードと比べ参加人数が少なく、マップは非常に狭いうえに、プレイエリアも短いスパンでどんどん収縮。アイテムも序盤から強力なものが拾いやすく、すぐに撃ち合いになる上級者向けのマップと言えるでしょう。
このコラボを切っ掛けに『荒野行動』を遊んでみようと思った初心者プレイヤーは、まずは操作を練習する“射撃場”と通常ルールで何回か遊び、ゲームの操作に慣れてからコラボマップに参戦することをおすすめします。
そのほかの特徴としては、回復アイテムの使用時間が短くなっていたり、マップ内にあるポイントを訪れることでチーム全体に強化が掛かったりととにかくスピーディーになっている印象。熟練の『荒野行動』プレイヤーの方も楽しめるスリリングなステージになっています。
もしやられてしまっても、最大24人なので新しいゲームで素早くリスタートできるのはうれしいところ。ある意味では最大100人で遊ぶ通常ルールよりも気軽にプレイできるのではないかと。麻雀で言う半荘戦と東風戦の違いと言いますか。
慣れてくると、すぐに決着が付くエキサイティングな三体ルールがきっと病みつきになるはず!
ステージには三体人の避難所であり保管庫である“ピラミッド”や、印象的なオブジェクトである“巨大な振り子”が設置されています。『三体』は先述の通り映像化が決定しているのですがこちらはまだ公開前。
ここまで忠実に作られた『三体』世界を眺められるコンテンツというのは、じつは本コラボが初めてではないかと思います。そんなわけで、ウキウキでこの三体マップを観光気分で眺めていると……
撃たれます。戦場ですからね。
あるいは……
乱紀が訪れて、撃たれなくても体力がゼロになることもあります。リスポーンが2回あるのが救いといえば救いですが、何しろチーム戦なので、観光気分でやられてしまうと他プレイヤーの足を引っ張る形にもなり……。
マップがとてもこだわって作られているだけに、じっくりと三体世界を堪能できるCPU戦やソロモードもあるとよかったなあと思いますね。
今回のコラボのある意味いちばんの見どころはこのマップの過酷さ。ただでさえ撃ち合っている最中、“乱紀”が訪れマップ中が炎上し、自分の体から炎が上がるのを見るのはまさに極限状態。あたかも自分が三体人になったかのような気持ちで(?)楽しめます。早く……早くピラミッドに入らなければ……!
初プレイ時は思わず「いや俺が三体人になるのかよ!」とツッコミを入れずにはいられませんでした。こんな世界で超文明を発展させた三体星人はすごかった。三体人の苦労がしのばれます。
コラボガチャを実プレイ!
もうひとつの本コラボの目玉となっているのがコラボガチャ。中でも興味を惹かれるのはやはり“智子”(ちし)衣装でしょう!
“智子”は三体文明から地球に送られた素粒子であり、次元展開するスーパーコンピューター。こいつが地球にあることで地球人は窮地に陥るのですが、小説全編を通して憎らしくも印象的な敵役となっています。
漢字が日本語では“ともこ”と読める人名であることを理由に、作中では和服を着ている設定なのですが、本コラボではそのデザインを初実装。和服っぽさがありつつも近未来的なデザインとなっていて、「なるほど、こういう服だったのか」と納得できます。
ではさっそく引いていきましょう。9800円ぶん引いた結果はこちら!
智子衣装は……出ない! この後、10連でなく1回ガチャでも最後まで引きましたが出ず。たぶんこれも智子による妨害のせいでしょう。
とはいえ、智子衣装などコラボアイテムはガチャだけでなく物資で獲得する方法もありますので、確実に手に入れたい場合は物資をコツコツ集めてゲットしましょう。
面壁者たちよ暗黒森林『荒野行動』に集え
智子衣装を始め“ピラミッド”や巨大な振り子など三体世界を再現したステージは、『三体』読者にとって小説の世界を映像的に楽しめるコンテンツとあって必見です。まずは特設サイトだけでもご覧になってみては。未読の方も、ランダムで乱紀が訪れ予想の付かないスピーディーな展開になるマップはテクニカルかつスリリングに楽しめるはず。
どこの誰ともしれない人々と銃を突きつけ合い“ヤラれる前にヤる”と決意しながら探索する『荒野行動』。この緊張感はある意味まさに、『三体』第二章のタイトルともなっている“暗黒森林”そのものかもしれません。
意外なほどマッチしている本コラボ、『三体』既読の方も未読の方も、ぜひ一度プレイしてみてはいかがでしょうか。