ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウイークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、『パワフルプロ野球』シリーズの最新作『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』(『パワプロ2022』)です。
【こういう人におすすめ】
- 野球ファン
- 『パワプロ』ファン
- 詳しくないけどルールや選手を覚えたい野球初心者
堅田ヒカルのおすすめゲーム
『eBASEBALLパワフルプロ野球2022』
- プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4
- 発売日:2022年4月21日
- 発売元:KONAMI
- 価格:各8250円[税込]
- パッケージ版:あり
- ダウンロード版:あり
- CERO:全年齢対象
- 備考:ダウンロード専売の『パワフルエディション』は各10450円[税込]
個人的一生やる系ゲームナンバーワン
『パワフルプロ野球』(『パワプロ』)シリーズを初めて遊んだのはスーパーファミコンの『パワプロ2』だ(1995年発売)。
当時はまだサクセスモードがなく、ゲームとしてはひたすらCPUと対戦するか、兄弟や友だちと対戦するものだった。当時10歳にも満たない僕は、愛するヤクルトスワローズのピッチャー岡林を使ってシュートを投げたりスライダーを投げたりしていた。
それからウン十年。
僕は先日、ついにプレイステーション5を手に入れた。まだPS5専用ソフトを購入しておらず、とりあえず何か入れて遊びたいぞ! と、PS4に入れっぱなしになっていた『パワプロ2020』を入れ替えて試しに起動してみることに。御存知の通りPS5では×ボタンが決定になるので、「ひょっとしてホームへの送球(×)とファーストへの送球(◯)が入れ替わったりしてややこしいのでは?」という不安があったのだがそんなこともなく、PS5上で遊んでもまったく違和感なく遊べた。
愛する東京ヤクルトスワローズのピッチャー奥川でフォークを投げたりスラーブを投げたりしていた30代の僕はここでふと気づく。
ハードがスーパーファミコンからPS5になっても『パワプロ』を遊んでいる。四半世紀遊んでいる。おそらくこの先、ハードがPS6になろうがPS7になろうが、僕は一生この『パワプロ』シリーズを遊び続けるのだな。そういう確信じみた気持ちを抱いた。
それだけ長く遊び続けているシリーズの魅力を改めて説明するのはおみそ汁のおいしさを他人に説明するようなもので、逆に難しさもあるし、有名な作品なので「もう知ってるよ」という方も多いだろうけど、あえておすすめしてみよう。おみそ汁は今日もうまいですよ。
野球ファンなら。野球ファンでなくても
プロ野球ファンなら『パワプロ』はきっとすでにご存知のことだろう。現実の球場に広告が掲出されていることもあるし、何しろ本作には12球団のチームや選手が実名で登場する。プラス、すでに引退してしまったOB選手も収録されており往年のファンも大満足だ。
新作が出たりアップデートが掛かったりするたびに、ごひいきの選手や注目選手の能力をチェックしては「ええ~もっと能力いいだろう!」とか「負け運って何?」とかぼやいたりするのも野球ファンにとっては楽しみのひとつ。
本作でも当然2022年開幕時の選手を収録しており、2023年シーズンまでの無料アップデートが予定されている(先日、完全試合を達成した千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希選手はどんな能力になるかな?)。
だからプロ野球ファンは買うとまず楽しめるだろうし(すでに持っている人もたくさんいるだろうし)、逆に僕はむしろ、野球のルールに詳しくない野球初心者にこそ『パワプロ2022』をおすすめしたい。
というのは、『パワプロ』などの野球ゲームが、野球のルールを覚えるのにもっとも適しているのではないかと感じているからだ。
野球のルールはけっこう複雑。点の入りかたひとつとっても、「ホームランが入れば1点なんだよね!」というところから始まり(これはわかりやすい)、「そうそう、塁上にランナーがいればそれ以上入るんだよ。満塁ホームランなら4点だね」と続き(この辺でランナーの存在を説明する必要性がある)、「点の入りかたはそのほかにタイムリーヒット、タイムリーエラー、タッチアップ、押し出しとかがあって……」となるあたりで、おそらく聞く側は我慢できまい。
僕ももし、何かの競技でルールをまくしたてられたら「わかったわかった! ぜんぜんわかんない」と返事することだろう。
新しいカードゲームやボードゲームを遊ぶときのことを想像してもらえればわかりやすいけど、ゲームのルールを覚えるには何よりやってみることだ。いくら聞いてもピンと来ないことが、実際に遊んでみればすっと理解できる。
そこで『パワプロ』だ。
もちろん、ゲーム内でも野球のルールはそのままだが操作はじつにシンプルで、打撃では投げてくるボールにミートカーソルを合わせてボタンを押すだけ、投球では球種を選び投げたいところにカーソルを動かしてボタンを押すだけだ。初心者向けにさらにかんたんな設定も可能。ゲーム操作自体はじつにシンプルな体系にまとめられている。
たとえば、子どもといっしょに野球の話をしたいお父さんとかは、無理やり球場に連れ出して(口でいくら言っても伝わらない)ルールを説明しながら3時間の試合を見せるよりも、『パワプロ』を1本買ってゲーム機の横にそっと置いておくだけで、気づけば子どもは野球通になっているかもしれない。
モードはたくさん。ボリュームもシリーズ最大級
さらに、『パワプロ2022』には、シンプルに野球の試合をするだけではない多彩なモードが準備されている。“ペナント”や“LIVEシナリオ”で現実のプロ野球を追体験したり、“マイライフ”モードでプロ野球選手になったりする楽しみもある。
なかでも“サクセス”は、このモードを独立させたアプリ版『パワフルプロ野球』がリリース以来ずっと人気であり続けるように、幅広いファンから愛されている。さまざまな設定で野球選手の成長物語を楽しめるサクセスは“野球マンガ体感ゲーム”と言い換えることもできるだろう。野球を知らずとも、自らが主人公となってドラマチックな物語を堪能できるモードだ。最近のサクセスは、ジャンルとしてはほとんどテキストアドベンチャーと言ってもいいくらい、物語はおもしろくキャラクター性は豊かになっている。
本作のサクセスは、これまでの主要サクセスキャラクターのストーリーが改めて楽しめる“パワフル高校 ライバルズ”、ぐっとキャラ要素にフィーチャーした“ときめき アオハル学園”、シンプルなサクセスをずっと楽しめる“千将高校 君がキャプテンだ!”とバラエティー豊かな3校が並ぶ。
そのほかにも、 “パワフェス”には『パワプロクンポケット』シリーズからもキャラクターが初参戦して登場キャラはついに総勢300人超え。収集心がさらに刺激される。高校野球の監督シミュレーションモード“栄冠ナイン”は秋の大会が追加されてさらに高い目標にチャレンジできるようになった。あらゆるモードでそれぞれの進化を遂げている。
だから、前作『パワプロ2020』やその前のタイトルを購入していて「そういえば栄冠ナインとかパワフェスとか久しぶりにやりたいな~」と思っている人には、本作も間違いなくおすすめできる。栄冠ナインは相変わらず延々と遊べる。「あと1試合やったら寝よう……」というのをくり返して何度も夜明けを迎えたダメ監督が僕です。
野球のおもしろさをゲームに再構築
野球のおもしろさとはなんだろうか。
打つ、投げる、取る、走る。アクションすべてにリアクションがあり、うまくいくときもあれば、うまくいかないときもある。大きな当たりを放ったとしても外野手が好捕することもあれば、ボテボテの打ち損じが運よく内野安打になったりすることもある。満塁のチャンスからホームランもあれば、目を覆いたくなるようなダブルプレーもある。針の穴を通すようなコントロールで投じた外角低めいっぱいのストレートが狙い撃ちされることもあれば、意図せずど真ん中へ行った半速球の失投が空振り三振を奪うこともある。
そのすべてが現実の野球でも起こり得ることで、そのすべてが『パワプロ2022』でも起こり得ることだ。
そしてもっとシンプルに、かっ飛ばしたときの気持ちよさやピッチングの緊張感、ゲッツーの爽快感。そういった“アクションの快感性”も野球が持つ魅力であり、ずっと『パワプロ』が持っているものだ。『パワプロ』の根底にある、野球アクションひとつひとつのおもしろさ。その部分は僕が遊んでいた四半世紀前の『パワプロ2』からずっと変わっていない。
だから僕はいつでも安心して『パワプロ』の新作を遊ぶことができる。『パワプロ』は野球じゃないんだけど、野球のおもしろさが詰まっているよ。