2022年6月某日、新宿にあるカプコン東京支社にて、新作対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6』(以下『スト6』。対応ハードはPS5、PS4、Xbox Series X|S、Steam)のメディア向け体験会が実施された。

 本稿では、複数メディアによる開発スタッフインタビューの内容をもとに、記事担当の豊泉三兄弟(次男)が独自の補足を加えながら開発スタッフの想いを紐解いていく。

※リュウ、春麗、ルーク、ジェイミーのプレイリポートはこちら

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今回の取材は発売前のトライアルバージョンをもとにしています。製品版や今後の試遊バージョンと内容が異なる可能性があります。
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今回遊べたのはシリーズでおなじみのリュウと春麗に加えて、『ストリートファイターV』(『ストV』)から登場したルーク、そして『スト6』の新キャラであるジェイミーの4体。
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2D対戦格闘ゲームの王道『ストリートファイター』シリーズの最新作。グラフィックの向上や新システムの搭載など大幅に進化しているが、基本のゲーム性は継承しているので、『ストV』を遊んでいたプレイヤーであればすんなり入れるはずだ。

■インタビュー出席者

松本脩平 氏(まつもと しゅうへい)

プロデューサー

中山貴之 氏(なかやま たかゆき)

ディレクター

ドライブシステムの搭載で進化したバトル

――『ストリートファイター6』の開発でもっとも力を入れている部分はどこになりますか?

カプコン もちろんすべてに力を入れているのですが、対戦部分は開発チーム内で時間を掛けて対戦を重ねていますので、バトルバランスはかなりいいです。

――ドライブシステムが多彩でかなり多くのバトルシステムが搭載されていますが、今回はどういった駆け引きを想定して作られているのでしょうか?

カプコン まず、ストV』でできたことはなるべく残しながらも、キャラクターの個性は『ストV』以上になるよう考えています。

 そして、ドライブシステムによる強い攻撃(ドライブインパクト)、強い防御(ドライブパリィ)、特殊なキャンセル行動(ドライブラッシュ)を使ってバトルの展開を組み上げていくというテクニックの部分を重視して共通システムに載せました

 リュウでたとえると、『ストV』のVトリガー“電刃練気”のようなものを必殺技に落とし込んでいるように、いままでの要素を大切にしつつ、新しいことにチャレンジできるような要素を盛り込んであります。

 ドライブシステムに関しては、プレイスタイルによるゲージの使い方で個性が出るようにしています

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『スト6』の鍵となるドライブシステム。ドライブゲージ(体力下の緑色のゲージ)を消費してアーマーで相手の攻撃に耐えながら一撃をくり出す“ドライブインパクト”や、相手の攻撃をさばく“ドライブパリィ”など、複数のアクションが用意されている。
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特定の技をキャンセルして前ダッシュできる“ドライブラッシュ”。写真ではリュウのしゃがみ中キックをドライブラッシュでキャンセル。
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前ダッシュからさらに通常をくり出せばコンボをつなげられる。写真では筆者のプレイがへっぽこのため、間違えて前ダッシュから“鎖骨割り”を出してしまったのですが、なんとつながってしまうくらい有利な時間が大きくてビビりました。
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ドライブパリィをキャンセルしてドライブラッシュに移行することも可能。『ストIV』の“セビキャン”に近いと言えばイメージが伝わりやすいか。
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中山ディレクターの「『ストV』でできたことはなるべく残してある」、「リュウでたとえると、『ストV』のVトリガー“電刃練気”のようなものを必殺技に落とし込んでいる」という言葉にあった通り、本作のリュウは必殺技で“電刃練気”が使用可能。電気をまとって波動拳などがパワーアップしていた。

――『ストV』ではVトリガーというわかりやすい盛り上がりどころがありましたが、そういった盛り上がりどころは『スト6』では何に置き換わっているのでしょうか?

カプコン スーパーアーツがレベル1、2、3と3つありまして、どこにスーパーアーツゲージを使っていくかという部分が盛り上がりのポイントになると思います。

――『ストリートファイターIII』のブロッキング、『ストリートファイターIV』のセービングアタックといった過去作の共通システムのようなものが復活しています。これらはどういった哲学のもと構築されているのでしょうか? また、クラッシュカウンター、白ゲージ、スタンといった要素は残っているのでしょうか?

カプコン 『ストV』にあった要素はしっかり残しています。たとえば、“クラッシュカウンター”と同じような効果を誘発するものとして“パニッシュカウンター”が入っていて、白ゲージはドライブインパクトについている“アーマー”で攻撃を受けると白ダメージとなります。

 『スト6』のスタンはこれまでのように連続して攻撃を食らうと発生するものではありませんドライブゲージをすべて消費すると一定時間ドライブシステムが使えなくなる“バーンアウト”という状態になります。この状態で画面端に追い込まれてドライブインパクトを受けて壁にぶつかるとスタンするという仕様です。

 ドライブゲージは、戦っているキャラクターの集中力を表しているというコンセプトですので、集中力が切れた状態でダメージを受けるとスタンする。ガードが緩くなってしまうというイメージです。

 このように、『スト6』の新しいシステムの中に過去作の要素を取り入れ、整理した形になります。

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本作にはスーパーアーツがレベル1~3の3つ用意されている。リュウであればレベル1のスーパーアーツは真空波動拳だ。
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そしてレベル3のスーパーアーツは真昇龍拳。
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中山ディレクターいわく「(一定時間で回復する)“白ゲージ”はドライブインパクトで相手の攻撃を受け止めた際に入る」とのこと。たしかに2P側の春麗の体力が少し白くなっている。
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ドライブゲージをすべて消費すると、キャラクターが集中力を切らした状態“バーンアウト”になり、このときにドライブインパクトをステージ端で受けてしまうと、背中を打ち付けられてしまい、“スタン”が発生するそうだ。ちなみに、バーンアウトからの回復には時間がかかり、この間は相当不利な戦いを強いられる。
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ステージ端に追い詰められたリュウがドライブインパクトをガード……
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なんと、ガードしてもよろけて壁やられが発生して追撃まで入ってしまう。写真は通常状態だが、バーンアウト状態であればここでスタンが発生する。

――ドライブゲージの管理が重要となり、上級者どうしの戦いではバーンアウトを狙うような展開を想定しているのでしょうか?

カプコン 上級者はバーンアウトしないようにゲージを管理したり、ドライブパリィで攻撃をブロックすることでドライブゲージが回復するので、そういった仕様も駆使しています。

 オーバードライブを使ってガンガン攻める人もいますし、うまいことドライブラッシュを使って隙を消したりコンボをつないだりする人もいるので、ドライブゲージの運用が人によって違うのでおもしろいですよ。

――少しプレイさせていただいた感触としてはドライブインパクトがかなり強いと思いました。また、ドライブパリィは防御手段としてかなり強く、投げくらいしか対抗手段が思い浮かばなかったのですが、バランスは大丈夫なのでしょうか?

カプコン ドライブインパクトとドライブパリィが強い行動というのは正解です。それを狙って開発しています。もちろん、しっかり調整していますので大丈夫です。

 ドライブインパクトもドライブパリィも強いのですが、“ゲージを払って強い行動を作る”というのは、両プレイヤーともできることですので、使いどころが大切になると思っています。ドライブインパクトは後出し有利になっていますので、相手の技を誘発させるような心理戦がおもしろくなると思います。

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かなり強い防御行動として位置づけられているドライブパリィ。上記の質問で挙がっているように投げが対抗策となる。パリィを投げるとパニッシュカウンターとなって通常の倍くらいのダメージを与えられるようだ。
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オーバードライブ(『ストV』で言うEX必殺技)でガンガン攻めにドライブゲージを使っていったり……
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ドライブラッシュで攻め込んだりと、ドライブゲージの使い方でプレイヤーの個性が出る。
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春麗のドライブインパクトを誘い、リュウがドライブインパクトを後出しして迎え撃つ。
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後から出したリュウのドライブインパクトが勝ち、コンボを決める。ドライブインパクトは強い行動だが、それを誘い出す心理戦がおもしろくなるという。

――今回の体験プレイでは“波動拳キャンセル真空波動拳”ができなかったのですが、必殺技をスーパーアーツでキャンセルする“スーパーキャンセル”はあるのでしょうか?

カプコン “オーバードライブ波動拳キャンセルスーパーアーツ”はあります(※)。そのあたりは今後の調整が入っていく部分ですが、現時点ではゲージを消費した行動に対してメリットをということでそのような仕様になっています。

※スーパーアーツのレベルごとに仕様が異なる。スーパーアーツ2(レベル2)はオーバードライブ版の必殺技からキャンセル可能

――『ストV』では、Vゲージがダメージを受けると溜まる仕様だったので、試合の盛り上がりが後半に来る設計でした。ですが、『スト6』のドライブゲージは最初からMAXになっています。これは序盤から試合を動かすことを意識したのでしょうか?

カプコン そうですね。行動を狭めるよりは、最初からガンガン攻められるほうがおもしろいなという単純な考えもあります。

 スーパーアーツに関して言うとラウンド開始から使えるものではないので、そことのバランスかと思っています。ユーザーがやりたいと思う行動はなるべく最初からできるようにしたいということです。

――Vトリガーはわかりやすい逆転要素として用意したと思いますが、今回その逆転要素に当たるシステムがスーパーアーツということでしょうか?

カプコン スーパーアーツはレベル1、レベル2、レベル3とあり、さらに体力が25%を切るとレベル3がクリティカルアーツに変化し、威力と演出が変わるという要素が入っています。そういうところに逆転要素がありますし、レベル2のスーパーアーツに自己強化を持ったキャラクターがいるので、そこで形勢が変わるはずなので、試合の展開や盛り上がりに関してはキャラクターやプレイヤーのスタイルで変わってくると思います。ただ、今回は後半にしか盛り上がらないようには作っていません。

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体力残り25%になると、レベル3スーパーアーツがクリティカルアーツになり、演出や威力がパワーアップする。リュウの真昇龍拳は、拳にビリビリと電気をまとい画面が白黒に。

――『ストV』はやり込むとフレーム単位の攻防が大切になりますが、そのあたりは変わらずでしょうか?

カプコン 『ストV』でおもしろいと思っていただいたところはなるべく残してありますし、フレームの駆け引きについてはより深いものになっています。

 たとえば、通常状態とバーンアウト状態ではガードバックや硬直が違っているなど、『ストV』の2倍以上のパラメーターが入っています。ですから、掘れば掘るほど上級者の人には研究し甲斐があるはずです。

 その一方で、初心者の方でもドライブインパクトやドライブパリィといった強い行動があれば、フレームを気にしなくてもやり取りできるように作ってあります。

――ドライブパリィが加わったことで防御システムが増えました。格闘ゲーム初心者からすると、ガードの種類が複数あるということで導入が難しいと感じると思うのですが、そこはいかがですか?

カプコン ドライブパリィは強い防御行動としてあって、上段、下段の差がないので、「困ったらこのドライブパリィを使う」ということでゲームに慣れていただきたいと思っています。対戦格闘ゲームはやり始めると難しいことがいっぱいあるので、少しずつ慣れてもらうしかないと思っています。最初は、フレームに関係なく遊べると思って始めてもらえたらうれしいですね。

 ドライブシステムの難易度のステップとしても、ドライブインパクトは触りたてでも使って楽しい強い行動。難しいけどリターンがあるドライブパリィ、やり込み要素としてドライブラッシュがあるという感じで、ゲージの消費量やユーザーの腕前によって使い分けられるようにシステムも段階的に用意しています。

 ちなみに、ドライブラッシュ後に出す通常技は性能が変わっていたり、慣性がかかってヒットしやすくなっていたりするので、プレイヤーの腕前ややりたいことで用途が変わってくるかなと思っています。

――デバイスの多様化が進んで、現在のeスポーツシーンではレバーレスのほうが有利という考えも出ています。こういった部分に対してゲーム側の仕様で意識したことはありますか?

カプコン 開発チーム内では、基本的にはすべてのオフィシャル製品デバイスを許容しています。いろいろなデバイスで遊べるということはよしとしたいと思っていて、その思想がないとモダンタイプとかやりませんよね(笑)。

 ただ、インプットをいじってズルをするような行為は避けたいです。プレイヤーのスタイルはいろいろな形があっていいなと思っています。eスポーツのルールはまた別の話なので、ルールはeスポーツ部門の形に沿って考えることになりますけど、開発チームとしては基本的には許容しています。

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ドライブパリィには上下や表裏の区別がないので、初心者であればまずは困ったら“ドライブパリィ”という使い方がいいそうだ。相手の技の高さによって、さばきポーズが異なっている芸の細かさからモーションに対する開発のこだわりを感じます。それにしてもリュウの筋肉すごい。
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ドライブパリィは、ボタンを押しっぱなしにするだけで連続で相手の攻撃をさばいてくれる。これなら初心者でも“背水の逆転劇”を再現できそう(笑)。
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ドライブパリィはジャストタイミングで相手の攻撃に合わせて出すと、演出や効果が強化される。中山ディレクターのおっしゃる通り、難しいがリターンのあるアクションだ。
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中山ディレクターから説明のあったドライブラッシュ。この前ダッシュからくり出す通常技は、ふだんよりも慣性が乗ったりと性能が異なるそうだ。攻撃の起点として使えそう。
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なんとバーンアウト状態では硬直差などのフレームが通常と異なっているという。発売後は、バーンアウト時限定のコンボなどの研究が進むことだろう。

間口を広げる新たな操作モード“モダンタイプ”

――モダンタイプでは、弱、中、強攻撃が1ボタンずつに割り当てられていて、パンチorキックを任意に選ぶことができません。このプリセットの方針はどのように決めたのでしょうか?

カプコン そのキャラクターを使ったときに使いやすい技を選択しています。たとえば、弱パンチか弱キックかで言ったら、「このキャラクターはどちらのほうがよく使うだろうか?」と想定して選んでいます。

 アシストボタンを押しながら攻撃ボタンを連打するとアシストコンボが出るのですが、それを1段で止めると、通常は弱パンチが出るボタンが弱キックになるとか、丁寧に操作すればある程度使い分けられるような部分もあります。

――モダンタイプは入門者向けで、クラシックタイプへの引継ぎとして用意されたものなのでしょうか? それともモダンタイプでも最後まで戦っていけるように想定されているのでしょうか?

カプコン 後者になります。クラシックタイプにはクラシックタイプの強さがあり、モダンタイプにはモダンタイプのやり込みがあるという形にしたいと思っています。それぞれの操作方法で大会や対戦をやってもらいたいですね。

 モダンタイプでは“波動拳”がワンボタンで出せるのですが、波動拳コマンド+弱や中、強ボタンというようにコマンドを入力しても波動拳が出せるようになっています。コマンドを入力した波動拳とワンボタンで出した波動拳で若干性能差をつけているので、「慣れたらコマンド入力をしてみよう」と思えるように階段をつけています。

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操作タイプはキャラクターセレクト時に選択。また、気功拳のような“溜め技”は、しっかりと“溜め”が必要になっていた。
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ちなみに、これはクラシックタイプのコントローラー設定画面。“離し入力”など新たな設定要素が加わっているようだ。

『スト6』用にカスタマイズしたRE ENGINEを採用

――今回、『バイオハザード』シリーズなどで採用されているRE ENGINEが使われているのはなぜですか?

カプコン 会社的にRE ENGINEを活用していこうという動きがあったのがひとつの理由です。そのほかには、ワールドツアーなどを表現するのに適していました。また、今回「筋肉や汗をよりリアルでダイナミックに表現したい」というテーマがあり、RE ENGINEはそういった面ですでに実績があったのも大きな理由です。

 技術面で言いますと、自社開発のゲームエンジンの場合、機能拡張のしやすさがあります。他社製ゲームエンジンの場合はそのメーカーさんにお願いしないといけないケースが出てきますが、RE ENGINEであれば社内のチームと直接やり取りできますし、特定のタイトルに特化したカスタマイズも行えるメリットがあります

 また、そういった技術的なノウハウを社内に蓄積していきたいというのもあります。

――ワールドツアーのような3D世界を表現するのに向いているのですか?

カプコン 例を挙げると、PVで夜のメトロシティが映っているところがあるのですが、さすがRE ENGINEということで暗い場所の表現がズバ抜けています。

 また、リュウの真・昇龍拳の演出で筋肉がパンプアップする場面があるのですが、そういったシーンの演出は『スト6』のためにRE ENGINEチームにエンジンレベルで対応してもらっているので、エンジンの技術者がチームと近くにいることのメリットだと思います。

 筋肉の収縮はディレクターの中山が開発の初期からテーマに掲げており、すごく作り込んだ表現なんです。このように『スト6』のためにエンジン機能を追加してるということは多く行っています。

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リュウの真龍拳で腕がパンプアップするシーン。自社開発ゲームエンジンを使っているからこそできるリアルな表現だ。
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暗い場所の表現がズバ抜けているというRE ENGINE。今回のプレイで体験できたメトロシティステージは、暗い場所が多く、RE ENGINEの実力の一旦が垣間見える。
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ちなみに『ファイナルファイト』をモチーフにしたこのステージには、同タイトルのキャラクターたちが登場する。たとえば、時間が経つとダムドが出現する。さらに口笛で雑魚を呼び出すなど、ニヤリとするような演出も用意されている。

――ゲームのデザイン面ですが、今回はどういったスタイルを目指したのでしょうか?

カプコン デザインはストリートアートやグラフィティーだったり、BGMはヒップホップと、ストリートカルチャーをテーマにスタートしました。

 『ストリートファイターIII』でBGMや演出にヒップホップ的な要素を取り入れた際に評判がよかったのと、『ストリートファイター』がターゲットとしている層と近しいところがあったと肌で感じていたので、そこの再アピールというのがひとつ。また、『ストI』のオープニングシーンで、レンガの壁にグラフィティが描かれてあって、それをパンチで突き破るとロゴが出てくるという演出があったんですよ。もともと『ストリートファイター』の根本にそういうカルチャーがあったという部分をいまの時代に合う形で表現したいなと。

――これまでは世界大会に参加している選手たちという感じでしたが、今回はストリートの喧嘩という雰囲気が伝わってきました。世界観もストリートを大きくフィーチャーしているのでしょうか?

カプコン そうですね。ですので、新キャラクターはそういうイメージを意識しています。リュウや春麗などの歴代キャラクターも格闘家として登場しますので、新世代と旧世代の戦いが見られるというのも狙っています。ですので、新キャラクターはそういったニュアンスが強く出ていると思います。

――今回プレイできたステージはファイナルファイトのメトロシティだったので、そういったキャラクターも出るのでしょうか?

カプコン それはまだお答えできません(笑)。『ストリートファイター』と『ファイナルファイト』は同じ世界で地つなぎになっているので、ニュアンスだったり、ワールドツアーの舞台も『ファイナルファイト』っぽいテイストがたくさん入っていると思います。

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『スト6』ではストリートのケンカ色が濃い雰囲気になっている。
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スプレーを使ったグラフィティーテイストの演出が特徴的。

『ストIII』以降の時代を舞台に最新ストーリーが描かれる

――新世代、旧世代という話が出ましたが、時代背景は『ストIII』の前後どちらになるのでしょうか?

カプコン 『ストIII』より後の話ですね。時間軸的にはシリーズで最新の話になっています。何かと何かの中間でそれを埋めるというストーリーではなく、つぎの時代に進むというタイトルです。

――時代が進んでいるということは、春麗は何歳に?

カプコン 春麗は気持ちはずっと若いままです。生まれた年が表示されなくなった時点でお察しください(笑)。

――なるほど(笑)。ちなみに、リュウは歳を取った感じがよく出ていますよね。

カプコン リュウはそういうかっこよさを表現しています。春麗もいつまでもふつうの女の子になりという夢を追っているだけではないような表現もしていますので、若干お化粧の感じもよりマスタークラスというか、上のランクにいってるような感じを意識しています。

――今回はワールドツアーがありますが、それとは別に各キャラクターのストーリーを描くモードはあるのでしょうか?

カプコン アーケードモードがあって、そこではリュウや春麗など個別のストーリーを追うことができます。そこでは『ストIII』よりあとのストーリーが展開します。

 ちなみに、今回プレイしていただいたバージョンではVSモードしか入れてありませんでしたが、『ストV』にあるモードはほぼすべて入っています。それに加えてワールドツアーとバトルハブが追加されている形です。

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時代が進みマスターっぽさが出てきた春麗。
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さらに年季が入り、レジェンド感が増したリュウ。
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リュウを参考にいろいろな表情を拾ってみましたが、『スト6』は本当に表情豊か。これがRE ENGINEの実力!?

すべての対応ハードで60FPSが担保される

――PC版と家庭用ゲーム機版では違いはありますか?

カプコン 基本的にはありません。かなり細かいグラフィックオプションを用意してあるのがPC版という感じです。もちろん、PS5版、PS4版、XSX|S版、どれでも60FPSは担保しています。当然ですが、ハードの性能に応じて描画されるものが違うというものはあります。

――PCの推奨環境はどの程度になるのでしょうか?

カプコン まさにいま推奨と最低を検証しているところです。

――今回、対応ハードを増やしたのには何か理由があるのでしょうか?

カプコン アタッチできる人の数を増やしたいのがいちばん大きいな理由です。以前からいろんな環境でプレイできるように幅を広げたいと思っていました。

――PS5レベルのものをPS4で動かすのはスペック的にかなりたいへんだと思うのですが、いかがですか?

カプコン かなりたいへんです。かと言って最初からPS4に合わせたスペックで作ってるわけではなく、各ハードに最適化された状態で出せるようにがんばっています。

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舞い散る桜が美しいGenbu Templeや背景のモブキャラが賑やかなMetro City Downtown。PS4でこのクオリティーのグラフィックをどこまで再現できるのだろうか?

ユーザーコミュニケーションを強化するバトルハブ

――バトルハブはゲーム内のコミュニケーション強化を目的としていると思いますが、、どんな思想のもと実装したのでしょうか?

カプコン 前提として、『ストV』を開発をしたり、これまでの対戦格闘ゲームを見たときに、対戦部分にまつわる部分……ランクマッチ、ネットワーク対戦、トレーニングモードしか提供できていなかったなと。自分の中では、いままでの対戦部分をエンドコンテンツという立ち位置にしたくて、そこにいたるまでの導線を作りたかったんです。

 それで、最初の入口としてワールドツアーモード。ひとりプレイで対戦格闘ゲームに慣れてもらうだとか、「対戦格闘ゲームのおもしろいところはこういうところだよね」と思えるような仕掛けをたくさん用意してあります。

 そこからランクマッチなどの対戦に行くには怖いけど、ほかのユーザーさんとの交流やコミュニティーには触れたいというところでバトルハブを用意しました。さらにネット対戦に進む前のコミュニケーションに特化したコンテンツになっています。

 あとは、世の中に散らばっているゲームの情報だったり、eスポーツの情報だったりがバトルハブに来たら入手できる。『ストリートファイター』に関することはバトルハブで手に入るし、友だちとも楽しめる場所を作りたかったというものです。

――散らばっているというと、コミュニケーションツールだけではなく、トーナメントツールもいろいろなものに散らばっていますし、『ストV』で実装されたトーナメントモードはあまり活用されている印象がありません。そのあたりの改善だったり、バトルハブに取り込むことなどは考えていますか?

カプコン そこは続報をお待ちください。『ストV』のトーナメントモードは機能を追加するだけではそこまでアクティブに使ってもらえませんでした。

 ユーザーさんが「使おう」、「使ってみよう」と思えるような環境を用意しないといけないので、まずはコミュニケーションのスペースを用意して、今後発表していく情報にはなりますが、段階的に「これならトーナメントに出られるよね」というステップを用意してあります。詳しくは続報にご期待ください。

――『スト6』では対戦にいくまでの導線をかなり意識して開発しているんですね。

カプコン そこは意識しています。『ストリートファイター』は好きだけど、対戦はあまり……という方もいると思うんですよ。そういう人たちがワールドツアーの中でずっと楽しめたらいいなと。

 それで、対戦をやらない人でも、チャットを使ってバトルハブでほかの人との交流を体験してもらいたいですね。そういった感じで、いろんな切り口から『ストリートファイター』を楽しんでいただけるようにしたいというのが、今回のコンセプトです。

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対人戦が魅力の本作だが、初心者がそこにいたるまでの導線やゲーム内でのコミュニケーションが強化されているという。

大会の雰囲気が味わえる実況システム

――今回初めて実装された実況機能は開発内部から上がったシステムですか? それともユーザーから上がった声ですか?

カプコン 企画書を作った最初の段階から入れてあったネタです。単純に言うと、「実況がついたらおもしろいな」と思ったのが発端です。ゲーム大会で上位のプレイヤーが実況してもらいながら対戦しているという体験を、始めたてのプレイヤーさんが簡易的にでも味わってもらえるようにと。

 そしてそこから、大会やイベント、eスポーツであるとか、そういうところに興味を持つ入口にしたかったんです。

――オフラインでも使える機能?

カプコン オフラインでも使用可能です。ちなみに、リプレイ機能にもあとから実況をつけることができるので、ほかのプレイヤーの対戦に実況をつけて楽しめます。

――実況には字幕表示も可能なんですね。

カプコン 13言語に対応しており、英語実況に日本語字幕をつけたりできます。

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実況に字幕をつけることも可能。実際に実況機能を試してみたが、しっかり状況に合わせた実況が行われていた。

『スト6』は愛を持って継続的にサポートしていく

――『ストV』では、ある種運営型とコンテンツ課金型を組み合わせた形で数年間にわたって運営していましたが、『スト6』に関してもこういった形でのコンテンツ提供になるのでしょうか?

カプコン 『ストリートファイター』をよりたくさんの人に知ってもらうということは短期間では叶えられないことだと思っています。もちろん長く遊んでもらいたいという想いもあしますので、そこはしっかり時間をかけて十分なコンテンツを提供していきたいと考えています。

 開発としても長く遊んでもらえるように最初から「こういう計画です」というのはお伝えしたいですし、「しっかりサポートしていきます」というのが見えるように展開していきたいと思っています。開発メンバーも『ストリートファイター』シリーズに愛を持っているメンバーばかりなので、長く続けていけたらと思っています。

――一般ユーザーが触れられる機会はあるのでしょうか?

カプコン 触ってもらわないとわからないところがあると思うので、日本、海外問わず、触れる環境はこれから発表していきます。そんなに遠くはないと思いますので、発表をお待ちください。

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長く継続してサポートしていくという『スト6』。取材時のバージョンでは4キャラが遊べたが、参戦キャラクターはどこまで増えるのだろうか?

取材を終えて

 どうもこんにちは、取材を担当させていただいたとよまんこと、豊泉三兄弟(次男)です。最後に今回のインタビューを終えての感想をざっくり。

 実際に体験プレイとインタビューを通じて、大幅なグラフィックの進化や新たに構築されたバトルシステムなど、見るべきところは多かったのですが、僕としては開発の松本さん、中山さんらから伝わってくる“コミュニケーション”、“対戦への導線”に対する想いが強く印象に残りました。

 格闘ゲームは、インターネットやSNSの発達などで、対戦から始まったコミュニティーが大きな広がりを見せています。それに最近では、ストリートファイターリーグなどのeスポーツコンテンツの観戦をきっかけとして入ってくるファンもとても多くなっていると思います。個人的には、対戦を楽しむプレイヤーよりもeスポーツ観戦やコンテンツを楽しむファンのほうが多いんじゃないかと感じているほどです。

 しかし、せっかくさまざまな人に広がりを見せたにも関わらず、コミュニティーはゲーム内だったり、SNSだったりさまざまな場所に散らばっていて、すべてのファンが集まって交流できるような場所がなく、少しもったいないと思っていました。

 そんな背景から、コミュニケーションが取れたり、対戦しなくても楽しめるような場所がゲーム内(これ重要)に用意されるということを聞いて、ようやく、“対戦人”も“コンテンツファン”も“プレイヤーファン”も、みんなが一ヵ所に集まって交流を深められる場所ができるのかもしれないと考えると、とてもワクワクしています。MMORPGみたいに仲間と交流したがために毎日ログインするような感じになるといいですよね。

 それに加えて、4ボタン操作のモダンタイプの導入を始め、対戦することへの敷居を下げるシステムや、対戦へ段階的にステップを踏んでもらえるような施策も用意されているようなので、最初は観戦やコンテンツから入った人たちも、いつの間にかいっしょに対戦を楽しんでいるなんて感じになっていたらとても素敵ですよね。

 今回はそんな未来が見えてきそうな取材だったので、イチファンとしても今後の情報を楽しみにしています。

取材メンバー:とよまん、ベックス、西川くん、ででお