2022年8月13日(土)~28日(日)にかけて、VRSNS『VRChat』と『VKETCLOUD』にて、世界最大のVRイベント“バーチャルマーケット2022 Summer”が開催! 一般公開よりひと足早く先行体験する機会をもらったので、レポートをお届けする。
バーチャルマーケットとは?
バーチャルマーケット(通称、Vket)とは、バーチャル空間上にある会場で、アバターなどのさまざまな3Dアイテムや、リアル商品(洋服、PC、飲食物など)を売り買いできる、世界最大のVRイベントだ。
2018年8月の第1回開催以降、1年に約2回のペースで開催され、規模は徐々に拡大。開始当初は有志のメンバー&クリエイターが集まり開催されていたが、現在ではJRや大丸松坂屋など、名だたる企業も参加する一大イベントとなった。
“Vket2022 Summer”では、パラリアルニューヨークとパラリアル大阪の2ワールドで60社の企業が出展し、一般サークルが出展する20のワールドでは540サークルにもおよぶ多数のブースが展開。今回の取材では、企業が出展するパラリアルニューヨークと、パラリアル大阪にひと足早くご招待いただいた。
パラリアルニューヨークの煌びやかな街並みに叫ぶ
最初に紹介していくパラリアルニューヨークは本イベントの玄関口だ。バーチャルマーケット2022 Summerのロゴが設置された巨大な客船から始まって、ヘリコプターに乗り込み出発する。
メインエリアへ降り立った瞬間、眼に飛び込んでくる煌びやかな街並みは圧巻のひと言。過去のVketや『VRChat』内でさまざまなワールドを見てきた筆者でも「うおー! マジですげーっ!」と叫んだほどだ。
どこを見るか迷う膨大な情報量で再現されたタイムズスクエアの迫力はもちろんのこと、その中に各種ブースが違和感なく溶け込んでいるのがすごい。ニューヨークの空気すら感じるような街並みの中にVR機器を使って立っていると、いまいる場所がバーチャルの空間であることを忘れてしまいそうだ。
画像でも伝わると思うが、エリアの大きさはとびきり広い。それも、だだっぴろいのではなく、密度が高い。濃い。すべて回るだけでもかなりの時間を要し、筆者を含む取材班は、広報さんの案内付きで細かい部分は省いてサクサクと見て回ったのだが、パラリアルニューヨークだけでも2時間半。続いて回ったパラリアル大阪でも1時間半以上もの時間が必要だった。広報さんは「今日は1時間あれば全部回れると思います~♪」と笑顔で語っていたが、大嘘である。
そんなブースをひとつひとつ解説していくと、ひとつの記事ではまとめられないボリュームとなってしまう。今回は筆者が実際に見て回った中から、注目度の髙かいブースをピックアップしてご紹介したい。
株式会社JVCケンウッド&ビクターエンタテインメントブースであの曲が踊れる
JVCケンウッドは、グループ会社であるビクターエンタテインメントと共同でブースを展開している。バーチャルマーケット2022 Summerの企業ブースはどこも気合の入ったコンテンツを用意しているが、中でも話題になると思われるブースがココだ。
“スター・スライダー”と名づけられたブースは、ナイトプールを表現した作りで、センターには特設ステージが用意。この場所では、ピンク・レディーと広瀬香美さんによる30秒間のライブパフォーマンスを好きなときに楽しめる。しかも、自分のアバターもいっしょに踊れるうれしいギミックつきだ。
ピンク・レディーのステージでは、デビュー曲『ペッパー警部』をおふたりの3Dアバターとともに鑑賞できる。世代を超えて愛されるアイドルの楽曲とパフォーマンスをこれほどの近くで、それもいっしょに踊れるというのはバーチャル空間ならではの体験だ。
そして、『VRChat』ユーザーによる『ロマンスの神様』のバズリで記憶に新しい広瀬香美さんのステージでは、もちろん『ロマンスの神様』……、
ではなく! 『promise』に合わせて広瀬さんのアバターがビアノ伴奏を披露してくれる。
つまり、広瀬さんのバックダンサーとして、自分のアバターを躍らせることができるわけで……。察しのいい皆さんはすでにお気づきだろう。
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揺れる廻る振れる切ない気持ちになれるのだ! 公式で!
こちらのブース、もともとはピンク・レデイーのステージのみで企画されていたものに、広瀬さんの出演が急遽決まったという裏話をお聞かせいただいた。準備時間が短かったため、少しでも早く進めるために『VRChat』のユーザーが利用するboothの販売アバターを広瀬さん自らチェックしてご自身のアバターを決定。3Dクリエイター・ひゅうがなつさんが作るまりえるちゃんを、運営協力のもとでカスタマイズした特別仕様となったそうだ。ぜひ、ゴールデンな冬の女王といっしょに、あの踊りを楽しんでもらいたい。
アルパインマーケティング株式会社でキャンプタイム
エントランスを抜けて最初にあるアルパインマーケティングは、カーシェアリングサービス企業。アルパインスタイルによってカスタマイズされたトヨタアルファードの乗車体験ができるほか、カーシェアサービス“STORYCA”仕様の三菱・デリカを使ったキャンプ体験が注目ポイントだ。
キャンプ体験には専用エリアが用意されており、そこに駐車されたデリカのトランクにはキャンプグッズがぎっしり格納。持ち運び用状態のグッズを取り出し、周囲の好きな場所に展開すると、立派なキャンプ空間を設営できる。
しかも、グッズを展開する前には展開予想図が地面に表示される仕組みで、ふだんから『VRChat』に慣れ親しんだユーザーからすると「これ、ほかのワールドでもやってほしい!」と驚くシステムだ。
展開したバーベキューセットを使えばお肉を焼いたり、お湯を沸かしてコーヒーを淹れたりもできる。素敵なキャンプグッズに囲まれながら、フレンドといっしょにのんびりとした時間を過ごしていると、マジでキャンプしてる気分に浸れるだろう。VRの魅力を完璧に理解したうえでの展示をぜひ体験してもらいたい。
SMBC日興証券株式会社のホラーワールドがすごい
証券会社であるSMBC日興証券は、名前からしてお堅いイメージがある企業。……しかし、その実態は、前回のVketでも渋谷に巨大なジェットコースターを設置して株式の歴史を解説しちゃうような、おちゃめな企業さんでもある。今年もバッチリとキメてくれた。なんと、ブース全体をホラーワールドにしてしまったのだ。
※ホラーワールド:ホラー体験をメインにしたワールドのことで、『VRChat』でも人気のコンテンツ。
その名も“投資について学べるミステリーダンジョン”。タメになる株式クイズに挑戦しながら、ダンジョンを攻略していく脱出ゲームだ。
見た目がかわいいのでホラー耐性がない人でも遊びやすく、ところどころでしっかり驚かせてくれる。ひとりで深夜にホラーワールドを巡回するような筆者でも、しっかり楽しめる出来栄え。アルパインさんのブースでも感じたが、Vketの期間限定公開とするにはもったいないクオリティだ。
株式会社ベルクであの頃の夢を叶えよう
関東地方で有名なベルクは、Vket初のスーパーマーケット業界からの出店。食品通販をするブースかと思ったらレース場だった。
何を言っているかわからないかもしれないが、ベルクの店内でショッピングカートに乗り、最大4人で対決できるのである。その名も“スーパーマーケットカートレース”。子どものときに思い描いていた“カートで店内を爆走する夢“を実現できる日が来たのだ。ひゃっほー!
さらに、公式マスコットキャラクターである“ベルクックちゃん”が本イベントのために初の3Dアバター化。ベルク、かなり気合が入っている。本気のレースを会場を用意するという発想といい、「それでいいのかベルク」と突っ込みたくなる人もいるかもしれない。
そんなブースを見て、これから贔屓にしていこう……。そう心に決めたのだった。
株式会社大丸松坂屋百貨店はバーチャルアルバイターが宴会を企画
大丸松坂屋百貨店は、4回目のVket出店となる常連企業。毎回、おいしそうなごちそうのオリジナル3Dモデル展示&販売にあわせて、現実世界で食べられるお料理通販を実施。来場者からも人気を獲得している。
今回も夏にぴったりなごちそうグルメの3Dモデル14点の展示&販売を行うほか、通販では過去最大となる全600点もの食品購入が可能となった。
ブースは現実店舗の特徴を盛り込んだデザインの外観で、華やかなパラリアルニューヨークの中においても抜群の存在感を放つ。加えて、屋上には、昔ながらのデパートの屋上遊園地をイメージしたビアガーデンスペースを用意。入口横でバルーンを受け取ると、そのまま浮遊する形で飛び上がり、登れる仕組みだ。上昇中には大丸松坂屋百貨店の歴史を学べるアトラクションも用意されている。
大丸松坂屋が用意した目玉企画は、『VRChat』で活動するメタバース飯テロ部隊“餃子force”とのコラボによるメタバース接客アルバイトプログラム。おきゅたんbotさんや、ドコカノうさぎさん、草羽エルさんほか、餃子forceに所属するメンバーが大丸松坂屋アンバサダーとなりブース内でリアルタイムに接客! ビアガーデンスペースを活用したメタバース大宴会も企画しているそうなので、ファンのみなさんはしっかりシフトを確認しておこう。
情報解禁されたので発表します!
大丸松坂屋さんとの二度のコラボを経て
【初となる、メタバース接客アルバイトを採用】という事で
餃子forceのメンバーが、大丸松坂屋アンバサダーとなりブース内で接客します
シフト表は画像の通りで… https://t.co/sVG019Svvm
— 餃子force (@gyouzaforce)
2022-08-04 18:25:55
ゲーム関連企業は人気のアバターアイテムを再販!
ゲーム関連企業からは、過去のVketで販売されたアイテムが続々再販。スクウェア・エニックスからは『ニーア オートマタ』のA2、2B、9S、エミールショップの3Dモデルが、日本一ソフトウェアからは『魔界戦記ディスガイア』シリーズからゼット、プリニー、ビーコ、エトナの3Dモデルなどが再販される。
ほかに、アークシステムワークスの『ギルティギア』なりきり衣装セットも購入可能。こちらは、メイ、エルフェルト、ディズィー、梅喧、蔵土縁紗夢といった人気キャラクターの衣装を、『VRChat』のアバター向けに調整した専用衣装だ。前回のVketにおいて、とくにユーザーからの人気が髙かったアイテム。まだ手に入れてない方は、ぜひこの機会に入手しておこう。
パラリアル大阪は街全体がお祭りムード
パラリアル大阪は、文字通り大阪を再現したワールド。道頓堀の戎橋、通天閣、大阪駅など、人気の観光スポットをモチーフとしたエリアを「ぎゅっ」と凝縮した作りである。
道頓堀グリコサイン(グリコポーズの看板)や、かに道楽の巨大看板、くいだおれ太郎など、現実でも有名な広告塔とバーチャルの展示物が入り混じる街並みは、お祭りの中にいるような空気感だ。
JR西日本グループは大阪駅を完全再現!
パラリアル大阪の目玉は、JR西日本グループのブース。大阪駅を完全再現した空間で、関西在住の取材メンバーが見て「本当にこのまんま」と言い切った再限度だ。シンボルである時空の広場では、ステージライブの開催も予定されている。
券売機でICOCAを発券して改札口にタッチすると、おなじみの電子音とともにゲートがオープン。駅のホームに降りれば、現実世界で2023年開業予定のうめきた(大阪)駅に採用される世界初の“フルスクリーンホームドア”が設置された、未来のホームが体験できる。
ホームへ到着する特急“はるか”に乗車すると移動開始。パラリアル大阪の街並みが流れる車窓を眺めながら、優雅な電車旅行を楽しもう。
その終着駅は、関西空港エリアになっている。ここでは泉佐野市と焼津市が、それぞれおいしそうなPRブースを展開。
泉佐野市ブースでは公式キャラクター・ゆるナキンがお出迎え。お肉を全面にアピールした構成となっており、人気のふるさと納税返礼品を3Dで体験できるほか、おいしいお肉を焼きまくれる。
焼津市ブースは自慢のミナミマグロをシンボルとした展示を実施。世界初をうたう“バーチャルマグロ解体ショー”の体験も可能で、見て遊んで楽しい内容となっていた。どちらのPRブースも、デジタルポスターから直接ふるさと納税寄附サイトに遷移し、その場で寄附ができる。
このほか、駅構内では他企業ブースや広告が展開。人型重機ロボットと鉄道工事用車両を融合させた“多機能鉄道重機”が設置されているほか、大屋根を使ってゴジラに飛び込むダイナミックな滑り台まで楽しめる。とんでもないボリュームなので、隅々まで楽しもう。
株式会社阪急阪神百貨店(阪神梅田本店)はなにわの住人も大喜び?
関西地方の皆さんにはおなじみであろう、阪急阪神百貨店のブースでは、2022年4月に全館グランドオープンした阪神梅田本店の店内を再現する“バーチャル阪神梅田本店”を設置。
余談となるが、Vketに設置される企業ブースの3Dモデルは、基本的には運営会社のHIKKY協力のもとで制作されている。しかし、阪急阪神百貨店さんは違う。なんと、すべて自社で制作したそうだ。すごい気合の入りようである。
店舗1階は、“551HORAI”、“阪神名物いか焼き”、“クラブハリエ”などの関西グルメの紹介スペース。店舗2階は“バルミューダ”のコーヒーメーカーやケトルなどの3Dモデルや、阪神梅田本店で人気のリカーコミュニティスペースがワインバーとして登場。もちろん、ここで展示されている商品は現実でネット注文が可能だ。
なお、551HORAIの名物CM「あるとき~」を再現できる空間も用意。ここでは、関西在住の取材メンバーが異様なテンションで喜び、関東在住メンバーはぽかーんであったが、「これは、すごいことなんですよ!!」とのことだ。ぜひ記念撮影をしておこう。
株式会社ビームスは同社初のアバター用衣装を販売!
ファッションからバーチャルに切り込むビームスは、Vket4度目の出店にして初のアバター用衣装を7点販売。関西の実店舗に勤務する約50名のショップスタッフが交代でVR接客を実施するほか、8月20日(土)には『VRChat』のユーザーイベントであるリアクロ集会とのタイアップイベントも実施される。
ショップ内部のエレベーターを使うと池田エライザさんのライブ会場に到着し、バーチャルライブも体験できる。このライブは“パーティクルライブ”と呼ばれるもので、曲にあわせて空間全体で演出を楽しめる、バーチャルならではの内容だ。そのクオリティはすさまじいので、ぜひ体感してほしい。
ブースの最上階には、のんびりとしたバーベキュースペースも設置されている。パラリアル大阪の街並みを眺めながらひと休みするのもいいだろう。
玄人志向のゲーミングチェアは空を飛ぶ。
PC周辺機器ブランドでゲーマーにも人気の玄人志向ブースでは、新作のゲーミングチェアを7種を展示。リアルの商品はもちろん、3Dモデルも購入が可能だ。ついでに、空飛ぶゲーミングチェアに試乗もできる。未来だ。
中央のステージでは、玄人志向がVketのために用意したかっこいいオリジナル曲にあわせ、ゲーミングチェアを使ったダンスを自分のアバターで楽しめる。友人とふたりで踊ったり、VketイメージキャラクターであるVケットちゃん1号といっしょに踊ることも可能だ。アンケートに答えればVケットちゃん1号の3Dモデルを無料でもらえるので、ぜひ応募しよう。
株式会社みずほ銀行ではフィジカルと頭脳が試される。
銀行業界から初出店のみずほ銀行は、みずほカラーで彩られたタワー型のブースを設置。銀行店舗をイメージした1階は交流スペースで、8月20日(土)にはみずほ銀行の店員さんとゲストによる座談会が開催される。
中央にあるワープゾーンから上がれる2階はボルダリングゾーン。なぜ、銀行でボルダリングなのか。さっぱりわからないが、楽しいからよし。タワーの頂上に登るには、全3問のクイズに正解しつつ、一生懸命に登る必要がある。本当に疲れる。
しかも、出題内容がわりと難しく、ランダムなうえ、間違えるとクイズの地点からやり直し! フィジカルと頭脳が試される空間だ。見事に頂上に到達すれば、王冠の3Dモデルを受け取れるのでがんばってほしい。
まとめ
紹介してきた以外にも、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』を彷彿とさせる“浮遊型ホバーボード”でニューヨークを駆け巡ったり、『キャッツ・アイ』の衣装や『シティーハンター』の100tハンマーアバターアイテム販売があったり、『うまい棒』や『レッドブル』のコラボキャンペーンがあったりなどなど、とにかく要素がてんこ盛り。これに加えて、主役である一般サークルブースのワールドが20もあるので、到底1日では周り切れないボリュームだ。
全体の印象としては、過去の内容に比べても、企業ブースはゲーム要素を盛り込んだ体感型が多いように思える。マーケットの領域を超えて、テーマパークとして楽しい内容になっていた。初めてVRで遊ぶ人にとっても、VRの魅力を最大限に楽しめるイベントなので、友人を誘って遊びに行けば、盛り上がること間違いなしだ。
バーチャルワールド最大のお祭りに相応しい、過去最高に楽しい空間となっているバーチャルマーケット2022 Summer。なんと、これだけの内容で入場無料! メイン会場である『VRChat』も無料で、PCがあれば、VR機材がなくてもプレイが可能だ。ぜひこの機会に体験してほしい!