エレクトロニック・アーツとコーエーテクモゲームスが贈る、新作和風ハンティングアクション『WILD HEARTS』(ワイルドハーツ)。本作は中世の日本をモチーフにした世界を舞台に、武器や“からくり”などを駆使してモンスターである“獣”を倒していく、ハンティングアクションゲームだ。

 発売日は2023年2月17日を予定しており、対応プラットフォームはプレイステーション5(PS5)、Xbox Series X|S、PC(Origin、Steam、Epic Games Store)。開発は『無双』シリーズで知られる、ω-Force(オメガフォース)が担当している。

 本記事ではメディア向けプレビューバージョンの体験を踏まえて、コーエーテクモゲームスの開発陣にインタビューを実施した。なお、メディアプレビューのプレイインプレッションは、下記記事をチェックしてほしい。

「WILD HEARTS」公式発表トレーラー

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枝川拓人氏(えだがわ たくと)

コーエーテクモゲームス所属。コーエーテクモゲームスが開発を手掛けた、スクウェア・エニックスの『ドラゴンクエストビルダーズ2 破壊神シドーとからっぽの島』の開発ディレクターを担当していた。

平田幸太郎氏(ひらた こうたろう)

コーエーテクモゲームス所属。『進撃の巨人』シリーズのメインプランナーやディレクターを担当していた。

獣たちへ畏敬の念

――『ワイルドハーツ』は、エレクトロニック・アーツ(EA)とコーエーテクモゲームスが、パートナーシップ結んで開発しているタイトルです。EAさんは発売元として、力を発揮されるとお聞きしています。開発自体はω-Forceがおもに手掛けていると思いますが、EAはどれくらい関わっているのでしょうか?

枝川ゲーム制作の部分は、コーエーテクモゲームスが先導をしています。EAさんとのやり取りでは、たとえば「欧米ではこうだ」などの意見をいただくことはあっても、それを反映するのかどうかは我々に完全に任されていますね。

――「ここは絶対に変えてくれ!」みたいな、強制的な開発の舵取りがあるわけではないのですね。

枝川はい。本当に細かいところまで見てくださって、たくさんの意見をいただきます。ですがそれをどうゲームに落とし込むのかはすべて我々の判断ですので、EAさんの命令でゲーム内容が変わったりですとか、そういった関わり方はないです。

――まずプレイして驚いたのは、アクションの軽快さでした。かなり自由度が高く、手触りのいいハンティングアクションを楽しめました。そこはやはり、多くのプレイヤーに遊んでほしいからこその味付けなのでしょうか。

平田『ワイルドハーツ』は、日本はもちろんのこと、全世界のゲームプレイヤーに向けた作品です。骨太ながらも、軽快で自由度の高いアクションにしたいというのは初期から考えていました。

――攻撃チャンスもかなりあって、うまく武器を使いこなせば途切れることなく攻撃できたりと、かなり“攻め”が気持ち良かったです。

平田ハンティングアクションは、敵が攻撃してきたのを回避するというのは基本ですよね。それも楽しいですが、やはりいちばん楽しくて気持ちがいいのは、攻撃チャンスが生まれて、攻撃しているタイミングじゃないですか。そこのメリハリは意識していました。

『ワイルドハーツ』Wディレクターインタビュー。キュートな小型の獣を撫でられる要素はスタッフ愛。制作秘話や最大3人マルチの仕様などを聞いた

――メディアプレビューバージョンでは遠距離武器の弓は別として、刀、傘が使用できました。素早くて使いやすかったですが、重々しい武器なども登場するのでしょうか。

平田はい。今回使用できたのは、比較的シンプルかつ素早い武器でした。詳細は明かせませんが、手触りの大きく違う武器がたくさん登場します。操作性が特殊なものもありますし、武器バラエティは最初から豊富に用意しています。

――今回使ってみて、とくに興味深かったのは、刀が単なる日本刀ではなく“からくり刀”だったことです。蛇腹剣といいますか、ガリアンソードといいますか。なぜ普通の日本刀で終わらせなかったのでしょうか。

平田ありがとうございます。本作に登場するモンスター・“獣”は、強大な敵です。ただの日本刀で戦い、それで獣に勝ててしまうような状況だと、絵や設定に説得力が持たせられなかったんです。なので『ワイルドハーツ』ならではの魅力をひとつ加えるためにも、からくり刀にしました。

――なるほど。アクション中に“からくり”をクラフトしながら戦うのもユニークな要素でした。最初からバトル中にもクラフト可能だったのでしょうか?

平田最初はクラフト要素を登場させようということで、獣と戦っている最中に作るのではなく、事前に罠を設置したり、獣と戦わないときに作るクラフトがメインでした。初期はそれで試していたのですが、それだとしっくりこないというか、おもしろさの柱にはならないサブの要素でしかありませんでした。そこから、リアルタイムで戦況に合わせてクラフトする、相手の技に合わせてクラフトするといった戦術面に絡めたクラフトに変えていきました。

――からくりから建設物まで、設置場所は保存され、マルチプレイにも反映されます。もちろんリソースの限りはありますが、その設置したモノはすべて保存されるのでしょうか?

枝川基本的に建てたものはすべて保存されます。長くプレイすればするほど、自分の独自性のある狩場になるでしょう。マルチプレイではホストの狩場を見ることができますので、マルチプレイしてみたら「なんじゃこりゃ!」みたいな世界が広がっていたり、効率的な狩場になっている場合もあります。マルチプレイが、戦いの参考になるかもしれないところも魅力のひとつだと思います。

――からくりの中に灯篭があり、暗い場所での明かりとして使用できたりしました。灯篭は一応機能を持つからくりではありますが、中には飾り専用の建設物などもあるのでしょうか?

枝川そういったものも用意しています。ただ、狩りや移動を便利するものなど、何かしらの機能を持つものがメインにはなってきます。

――建設で自分ならではの建物を構築したり……といった遊びはあまりなさそうですね。

枝川今回は狩りを思う存分楽しんでもらうためのクラフト要素なので、そういった部分はあまりフォーカスしていません。

『ワイルドハーツ』Wディレクターインタビュー。キュートな小型の獣を撫でられる要素はスタッフ愛。制作秘話や最大3人マルチの仕様などを聞いた

――獣を追い詰め、最後のフィニッシュ時はカットシーンとなり、トドメを刺してお辞儀をするといった演出が、独特な雰囲気を持ちながらもカッコイイ要素でした。あれはどのようにして取り入れたのでしょうか。

平田ハンティングアクションというのは、敵を狩るゲームですから、最後は命を奪ってしまうことになるわけです。本作ではその生命に対して、畏敬の念を込めたかった、というのが理由になります。開発チームは、獣たちに愛情を持って作っています。敵だからといって憎い存在だと思って作ってるスタッフなんて、いないと思います。プレイヤーも獣に対して、そして生命に対して、敬意を持ってほしいという想いを込めて、最後に「御免」と言いフィニッシュするようにしました。

枝川狩りゲーは1体の敵を倒すのにも、そこそこの時間が掛かったりします。その中にはプレイヤーたちそれぞれのドラマが詰まっているはずです。あそこで苦戦して、あのときはうまくいったですとか……。その最後の瞬間をドラマらしく描きたいというのもあり取り入れた要素です。

――獣への畏敬の念なのですね。プレイしているときに大きなネズミの獣が逃げるので、追い詰めた先が自分の巣なのか、そこから小さなネズミが出てきて。「こいつにも子どもがいるのか!」と思うと、気持ち的に倒しにくくなりました。

平田そういったところからも世界観といいますか、ぜひ獣をどう描いているのか感じ取ってほしいです。

――小型の獣はほとんど撫でることができたのもうれしかったです。

平田小型の獣はかわいらしさ重視で作られています。かわいく作ったこともあり「この子たちを狩りたくない!」という開発メンバーの声も大きくなり、撫でる要素を取り入れました。とはいえ狩りゲーですから、狩ることもできます。

――撫でるか狩るかで、取れる素材が変わるというのもゲーム的な選択が楽しい要素だと思いました。

平田ただ闇雲に狩りができてしまうのであれば、我々の考える獣への畏敬の念というのは描けません。素材を手に入れるために、狩らざるを得ない状況への答えを出したかったという理由もあります。

――大型の獣は比較的素材がたくさん落ちて、装備を作りやすかったです。そこのハードルはあえて下げたりしているのでしょうか?

枝川ドロップ数、ドロップ率、装備レシピなども関わってくるところだとは思いますが、あえて装備を作りやすくしようとする狙いはとくにありません。それぞれの装備に対して、どれくらいの狩りが必要か、という点でバランス調整を行っています。

『ワイルドハーツ』Wディレクターインタビュー。キュートな小型の獣を撫でられる要素はスタッフ愛。制作秘話や最大3人マルチの仕様などを聞いた

――ストーリーについて聞かせてください。冒険の舞台となる”あづまの国”は、かつて人間が住んでいたように見えますが、いまは獣に支配されているようにも感じました。どのようにしてそうなっていったのか、ゲーム内でも語られることなのでしょうか。

枝川かつて人間が生活しており、栄えていましたが、自然浸食と獣により滅んだ世界が“あづまの国”です。具体的にどういうことが起きたのかは、ストーリーでも語られていきます。また、日本の文化を描くという中で、四季の美しさだけでは日本らしさを出せない、人の営みを深く感じられるようにしないと思い、デザインしています。

――冒険の中では手紙なども発見できましたが、それらから設定も感じられました。

枝川書物から得られるバックボーンもありますね。

――1章の一部を体験した感じ、システムとしてはメインストーリーのステージ進行があり、その脇にサブクエストがいくつか点在していて、その中で狩りをしたり、建設をしたり、ストーリーを楽しむというようなシステムになるのでしょうか?

枝川そうです。言っていただいた通りのシステムになっています。

――マルチプレイも少しだけですが体験しました。序盤以外は、すべて通しでマルチプレイ可能ということでいいのでしょうか?

枝川チュートリアルやキャラクタークリエイトなど、一部の要素以外はすべてマルチプレイ可能です。

――クエストには途中で参加してきたプレイヤーもいました。途中参加も可能なのでしょうか?

枝川できます。もちろん、クエスト開始前から事前にマッチングも可能です。途中参加は戦闘開始後もシームレスにお助けプレイヤーがやってくるような感覚ですね。

――ちなみに目標の獣を倒す直前で入ってきたからか、呆然としているプレイヤーがいました(笑)。

枝川今回のメディアプレビューバージョンは、敵の体力が一定以下まで減るとマッチングできなくなるという仕様を入れていませんでした。製品版では、倒し切るギリギリではマッチングしないようになっているので、そういったことは起きないです。

――なるほど。ただ、かなり気軽にマルチプレイができそうなのがいいですね。

枝川そこはとくにハードルを下げたい狙いがありました。仲間内で遊ぶところはもちろん快適にしつつも、いわゆる“野良”と呼ばれる知らない人たちとのマルチプレイもどんどんやってほしくて。たとえばマップの中に点在しているゲートから、ときおり助けを求めている光が見えます。探索ついでに「ちょっと助けてやるか」みたいなことをしてほしくて取り入れた要素です。

――野良でプレイしている人は建設物を破壊できますか? 破壊できてしまうと荒らしプレイが現れそうです。

枝川ホスト以外は自分が建てた物しか壊せなくしています。もちろん獣は破壊してきます。

『ワイルドハーツ』Wディレクターインタビュー。キュートな小型の獣を撫でられる要素はスタッフ愛。制作秘話や最大3人マルチの仕様などを聞いた

――遊んだ感じ、かなり完成していることがわかりました。ただ、正直まだまだブラッシュアップされていないなと感じる、細かい粗も見えました。2023年2月発売予定と発売日も迫っていますが、現在の完成度・進捗度は何%くらいになるのでしょうか。

平田メディアプレビューバージョンは、じつはかなり前に制作したものなので70%くらいです。いまはさらに開発が進んでいて、現状80%くらいといった感じです。まだまだおもしろくできると思っていますし、本当に最後の総仕上げの段階という感じで開発を進めています。

――和風のハンティングアクションゲーム、となるとやはりゲームファンとしてはカプコンの『モンスターハンターライズ』を連想してしまうでしょう。遊んでみれば違いはかなりあることが分かるのですが、そんなゲームファンに向けて『ワイルドハーツ』ならではの魅力はどこにあると考えていますでしょうか。

平田たくさんありますが、明確に違うのは“からくり”の要素です。自分で建設をして戦局を変えていくのはもちろん、探索の利便性を上げたりと、そこの自由度は『ワイルドハーツ』の大きなウリのひとつです。

枝川また、フィールドがどんどん自分の最適な狩場に変えられるというのは、狩りゲーのみならずほかのジャンルでもなかなかない体験かと思います。クエストに合わせて効率のいい移動ができるクラフトをしたり、プレイヤーの自由なフィールド作りを楽しんでほしいです。

平田『モンスターハンターライズ』が発表されたとき、同じ和風をテーマにしていたので少し驚きました(笑)。ただ、ゲームの特徴は大きく異なりますし、同じ和風でも違った世界観が展開されています。プレイヤーの皆様には『ワイルドハーツ』ならではのおもしろさを存分に楽しんでいただけると思っています。

――最後に『ワイルドハーツ』に期待を寄せる方々にメッセージをお願いします。

枝川『ワイルドハーツ』はω-Forceが力を入れて作り込んでいる作品です。ω-Forceとしては久々の新規IPタイトルですから、かなりの大勝負だと思っています。トレイラーの反応も非常に良いなと自認していますので、皆さんに楽しんでもらうべく、残りの開発期間しっかりと仕上げていきます。

平田皆さんが体験したことのない狩りゲーを作ろうと、『ワイルドハーツ』は立ち上がりました。ぜひ世界中のゲームファンの方々にお届けできる日を楽しみにしつつ、最後の開発期間に全身全霊で臨みたいです。

『ワイルドハーツ』Wディレクターインタビュー。キュートな小型の獣を撫でられる要素はスタッフ愛。制作秘話や最大3人マルチの仕様などを聞いた