2015年に発売された、CD Projekt RED開発の『ウィッチャー3 ワイルドハント』(以下、『ウィッチャー3』)。魔物退治の専門家“ウィッチャー”である主人公・ゲラルトを操作して戦うアクションRPGシリーズの3作目であり、没入感の高い冒険体験や秀逸な世界設定などが評価され、2015年の“The Game Awards”にてゲームオブザイヤー(GOTY)に輝いた。
そんな『ウィッチャー3』は、2022年12月14日より新世代機向けのアップデートが実施される。その概要は以下の通り。
- Xbox One版からXbox Series X|S版へのアップデートは無料
- PC版も無料でアップデートできる
- プレイステーション4版を持っているユーザーは、100円でプレイステーション5版へのアップグレード版を購入できる
また、PS5、Xbox Series X|S、PC用に、ダウンロードコンテンツなどが全部含まれた『ウィッチャー3 ワイルドハント コンプリートエディション』のデジタル版も、2022年12月14日に発売される(※)。
※パッケージ版は2023年2月9日に発売予定。
本記事では、新世代機版アップグレードに対応したバージョンのプレイインプレッションをお届けする。試遊はプレイステーション5で行った。基本的にはネタバレはないので、これから『ウィッチャー』の世界に触れてみようという人も安心してほしい。
『ウィッチャー3』とは?
本作は“ウィッチャー”である主人公・ゲラルトを操作し、さまざまな冒険をくり広げていくオープンワールド型のアクションRPG。続き物ではあるが、前作などを遊ばなくとも楽しめるようになっているので、迷わず本作から飛び込んでいい。
メインストーリーではゲラルトの養子である女性・シリを巡る物語が展開。それだけではなく、多種多様なサイドクエストや素材を集めての武具作成などを楽しめたり、カードゲームのグウェント(現在は単体ゲームとしてリリース中)をプレイできたりなど、いろいろな寄り道ができるタイプのオープンワールドゲームだ。
道中に現れる魔物との戦闘はシンプルながら、敵ごとに用意された攻略法を探すのが楽しい。武器やアイテムなど、それぞれの魔物に合うアイテムを準備しながら戦うのが『ウィッチャー3』の醍醐味だ。
なお、本作は“18歳以上のみ対象”の作品だ。ゆえに、エピソードの中にはアダルティーなものもあったり、“オトナの関係”もほぼほぼ直球で表現されていたりする。
ビジュアルをレイトレーシングモードにすると陰影に深みが増す
新世代機向けのアップデートということで、グラフィックはある程度美麗に進化。“ある程度”と遠慮がちな表現にしたのは、『ウィッチャー3』のグラフィックはもともと美麗なので衝撃を受けるほどの変化を感じなかったからだ。
ゲームオプションとして、60FPS(※)でキビキビ動くパフォーマンスモードと、30FPSになるがレイトレーシングによりさらに高繊細なゲーム画面を楽しめるレイトレーシングモードを搭載。ヌルヌル動く画面がいいなら前者、グラフィックを優先したい場合は後者にするといいだろう。
※今回はPS5版でのプレイのため、PC版のフレームレートとは異なる可能性があります。
筆者の体感としては、やはりレイトレーシングが陰影に関わる要素のため、光や影が強い場所ではとくに美麗に見えるなという印象。パフォーマンスモードはゲーム的にクッキリ陰影をつけているが、レイトレーシングモードの場合はより太陽や炎の光を自然に感じられる。
新要素のフォトモード
新たな追加機能として、フォトモードを搭載。カメラや画角、露出や被写体深度などを変更でき、ゲラルトたちの活躍を自由に撮影できるようになった。撮影可能なシチュエーションは、会話シーン以外の操作可能な場面。またカットシーンなどは起動不可能だ。
機能としては最低限の搭載に留めている印象で、同じくCD Projekt RED開発の『サイバーパンク2077』ほど多機能というわけではない。あくまでオマケとしてフォトモードが楽しめるようになった、という感じだ。
ドラマ版の要素
Netflixで配信中の実写ドラマ『ウィッチャー』の要素をリスペクトした新要素が登場。ドラマに登場したものをモチーフとした武器や鎧が使えるようになるほか、一部NPCの衣装をドラマ版のような見た目に変更可能。さらに、ボリュームは少なめだが、それらに関連した新クエストも用意されている。
そのほかの細かい修正点
高低差に強くなった
ゲラルトさんはこれまで高低差にやたらと弱く、自分の身長くらいの高さから落ちた場合、受け身に失敗すると落命するほどだった。
これはファンのあいだでもよくネタにされていたが、今回のアップデートで高低差にそこそこ強くなった。身長の2倍くらいの高さなら耐えてくれるのに加えて、自動で受け身も取ってくれるので、比較的安全に冒険できるようになった。
とはいえ、本当に“そこそこ”という感じで劇的に強くなったわけではない。平屋の屋根から落ちても無傷だけど、2階建てだとゲームオーバーかな、というくらい。
植物などを収集しやすい
フィールドにある植物などの素材をウィンドウ表示なしで収集できるようになったので、ゲームのテンポがよくなった。なお、箱や宝箱などはこれまでと変わらず、ウィンドウが表示される。
一部の装備品を変更しやすい
爆弾などの一部の消耗品アイテムは、いちいち装備メニューを開いて変更する必要があり面倒だった。しかし今回のアップデートにより、印(いわゆる魔法)などのアクションメニューから変更できるようになっている。とくにゲーム後半はアイテムの種類が多くなることもあり、瞬時に変えられるのはありがたいところ。
カメラが近くてド迫力
デフォルトのカメラ位置がこれまでよりもゲラルトに近づいたため、より迫力のあるシーンが楽しめるようになった。「近すぎる!」という人もいると思うが、そこはオプション設定で変更できるのでご安心を。
MODが導入されている
一部のPCゲームには、ファンがゲーム内容に手を加える“MOD”という文化がある。『ウィッチャー3』の新世代機向けアップデートには、ファンが作ったMODが公式のものとして導入されている。
内容としてはグラフィックをより美しくするものと一部不具合を改善するものが主で、プレイしていて実感できるタイミングは少ないが、家庭用版を遊んでいるユーザーにはうれしいところだ。
PS5版のロードについて
今回プレイしたプレイステーション5版での感想になるが、ロードが非常に早く、ファストトラベルは1秒くらいで終わるので、とてもプレイが快適だった。筆者が遊んでいたアップデート前のPC版よりも遥かに早い。もしゲームオーバーになったら長めのロードからリトライせざるを得なかったが、そのストレスがなくなったのは非常にありがたい。ファストトラベルを気軽に使用できるのもグッドだ。
もっと大胆な変化もほしかった
ほかにもいくつか追加・変更点はあるが、おおまかなところだとこんな感じ。2015年に発売されたゲームということもあり古臭さの若干残る仕様もいくつかあるが、ちょこちょこと遊びやすくなった印象を受けた。
個人的にはもっと大胆に遊びやすくしてもよかったのでは? と思った。たとえば『ウィッチャー3』のファストトラベルは道案内の看板を通して行う。トラベルの終着点は看板のままでもいいが、いつでもファストトラベルできたほうが“いま風”なのではないだろうか(世界観や物語性を守るために看板のみに制限している、などの理由もあると思うが)。
また、馬に乗っての移動中でも素材収集などをできるようにしたほうが、より遊びやすかったように思う。これも「馬に乗りながら素材を取れるわけないじゃん」という感じもするので、世界観を守るためにあえてそうしているのかもしれない。
新規プレイヤーは、いま遊ぶべし!
といった感じで、全体的にはあくまで微調整という感じの新世代機向けアップデート。劇的に進化しているわけではないし、追加要素もあくまでオマケという感じなので、すでに『ウィッチャー3』をクリアー済みの人は、ある程度確認したらそれで充分かも。
一方で、まだ『ウィッチャー3』を遊んだことがない人にとっては、ここが間違いなく始めどき。もともと秀逸だったゲームが、細かなところまでブラッシュアップされて遊べるようになったのである。ゲラルトとの旅をまだ体験したことがない人は、ぜひいまの機会に購入してみてはいかがだろうか。