ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の国内3回目となるオーケストラコンサート “FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-”が、2022年12月17日と18日の両日に開催。同作の楽曲を愛する大勢の光の戦士(『FFXIV』プレイヤーの呼び名)たちが東京都・江東区の東京ガーデンシアターに集結し、東京フィルハーモニー交響楽団が奏でる名曲の数々に酔いしれた。

『FFXIV』のオーケストラコンサートとしては、2019年9月21日と22日に神奈川県・横浜市のパシフィコ横浜で催された“FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2019 -交響組曲エオルゼア-”の開催依頼、約3年ぶり。待ちに待ったコンサートの当日とあって、会場に集まった人々は一様に笑顔。近年主流となりつつあったいわゆるオンライン開催には見られない、大規模リアルイベントならではのにぎやかで華やかな雰囲気が場内に満ちあふれていた。

 本記事では、2日間で合計4回開かれた公演のうち、12月17日の昼公演の模様をお伝えする。光の戦士たちと演奏者が一体となって盛り上がった当日の会場の雰囲気が、読者の方々に少しでも伝われば幸いだ。なお、会場内及び出演者の方々の写真は、一部を除きスクウェア・エニックスから提供されたオフィシャルなものを掲載している。リポートとは異なる日程の公演の写真も含まれているのでご了承願いたい。また、画面写真や楽曲の説明文などにネタバレの要素が含まれているので、『暁月のフィナーレ』までメインシナリオを進めていない人は注意して読んでほしい。

 まずは公演のリポートに入る前に、開場前の東京ガーデンシアター周辺の様子からご覧いただこう。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
会場の最寄り駅は、りんかい線の国際展示場駅もしくはゆりかもめの有明駅。撮影時は開演2時間前にも関わらず、すでに多くの人々が東京ガーデンシアターを目指していた。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
目的地に到着すると、“THEATER”の文字が!
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
グッズ販売コーナーの入り口周辺はすでに黒山の人だかり。開演1時間30分前にして、すでに売り切れの商品が。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
フォトスペースには、各所から贈られたスタンド花がズラリ。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
『FFXIV』らしいスタンド花はとくに一見の価値あり。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
フォトスペースの脇には、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターをはじめとする方々の直筆サイン入りのメッセージプレートが置かれていた。

事前に発表された曲目を改めて解説

 今回のオーケストラコンサートは、2019年にパシフィコ横浜で行われた公演と同様、演奏の曲目が事前に公表されている(2017年の初開催時は非公表)。そのおかげで、光の戦士たちは前もって十分に予習あるいは復習を済ませたうえで、当日を迎えることができた。注目のセットリストは以下の通り。過去の公演で演奏された『紅蓮のリベレーター』までの楽曲に加え、オーケストラによる生演奏がほとんど行われていない『漆黒のヴィランズ』と『暁月のフィナーレ』の名曲の数々も、いよいよお披露目となる。

 なお蛇足かもしれないが、『FFXIV』のシナリオが大好きな記者の独自解釈を含む解説文と画面写真もセットリストに添えておくので、こちらもご覧いただきたい。なお、この日のアンコールで演奏された2曲と、サウンドディレクター祖堅正慶氏が飛び入り(?)で参加した“スペシャルな1曲”のタイトルは、記事の後半のリポートでお伝えする。

第一部 新生/蒼天/紅蓮編

 公演の前半は『新生エオルゼア』、『蒼天のイシュガルド』、『紅蓮のリベレーター』から厳選された10曲を演奏。過去に開催されたオーケストラコンサートのなかでも、とくに人気の高かった楽曲がチョイスされた印象だ。

  • 天より降りし力
     おもに高難度のF.A.T.E.などで流れる楽曲。『新生エオルゼア』のリリースに先立ち、2012年9月に公開されたトレーラー映像“Limit Break!”に用いられたことで多くのゲームファンの注目を集めた。『FFXIV』全体を象徴する曲のひとつ。
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  • 希望の都
    冒険のスタート地点となる都市国家のひとつ、砂の都ウルダハのBGM。“商都”とも称されるかの地にふさわしい、活力と熱気に満ちた曲調となっている。冒頭にファンファーレが勢いよく鳴り響くことから、プロデューサーレターLIVEのオープニングなど、さまざまなイベントでも用いられる。
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  • 静穏の森
     黒衣森(こくえのもり)特有の静謐(せいひつ)さを体現する曲。さざ波のように落ち着いた旋律が特徴的で、このエリアが持つ神秘的なイメージを増幅させる。豊かな木々に囲まれ、清らかな水をたたえる森を守護する精霊。この偉大な“見えざる支配者”の許しがなければ、何人たりとも足を踏み入れることができない……まさに聖域を思わせる荘厳さが漂うメロディーだ。
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  • 究極幻想
    『新生エオルゼア』のラストで登場する、“アルテマウェポン破壊作戦”のBGM。古代アラグ帝国が魔科学の粋を集めて建造した対蛮神兵器と光の戦士たちによる、エオルゼアの未来をかけた戦いの記憶が再びよみがえる。
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  • Dragonsong
    『FFXIV』初の拡張パッケージ、『蒼天のイシュガルド』のメインテーマ。作曲は『FF』サウンドの生みの親ともいうべき植松伸夫氏が担当している。はるか昔に起きた悲恋の物語をベースに、ドラゴン族と人類が歩んだ憎しみの歴史を回想。大逆の罪を着せられ追われる身となった冒険者の苦悩と、終わりのない“竜詩戦争”が生み出す慟哭も、この1曲に凝縮されている。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • Heavensward
     本作のサウンドディレクター兼コンポーザーを務める、祖堅正慶氏の渾身の一曲。ゆっくりとしたテンポで始まる前半部分のソプラノパートが、山の都イシュガルドの凍てつく寒さとそこに住まう人々の悲哀を表現。中盤に突入すると勇ましい曲調に一変し、RPGの王道と呼ぶにふさわしい雰囲気を醸し出す。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • 英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~
     蛮神の力を宿した教皇トールダンと、その親衛隊ともいうべき蒼天騎士団のメンバー。彼らとその一族が1000年にわたり隠してきた欺瞞を打ち砕くべく、光の戦士たちが戦いを挑む。聖歌隊を思わせる清らかなコーラスと、“複数対複数”による激闘の響きが交錯する、『蒼天のイシュガルド』のクライマックスで登場するバトル曲だ。
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  • 鬨の声
     拡張パッケージ第3弾『紅蓮のリベレーター』で新たにお目見えした、一連のインスタンスダンジョンのラストに登場するボス戦のBGM。まるでラスボス戦かのような気迫に満ちたメロディーとパワフルなコーラスが、いまなお多くのプレイヤーの心を惹きつけて離さない。
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  • 塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~
     ガレマール帝国に蹂躙された都市国家アラミゴに隣接する、ギラバニア湖畔地帯の昼の時間帯に流れてくるBGM。荒涼とした大地、滅び去った栄華、帝国軍の脅威、差別に苦しむ人々の悲しみ……アラミゴを取り巻くあらゆる状況が、メロディーに凝縮されている。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • 空より現れし者 ~次元の狭間オメガ:アルファ編~
     惑星ハイデリン(アーテリス)に逃れたドラゴン族を追跡すべく、星々の向こうからやってきた自律型機械兵器オメガ。分析と思考をくり返し、改善を図ることで驚異的な戦闘力を手に入れたオメガは、人の持つ強さを目の当たりにし、それを我がものにしようと画策。ついに、人の強さの根源たる“機能”を探るべく、あらゆる手を尽くして光の戦士を攻撃を始める。それでも歯が立たないことを悟ったオメガは、標的の分析をかなぐり捨て、すべてのリソースを戦闘に振り向ける最終形態へと変貌。対象の即時抹殺を企てる……。リミッターを解除したことで絶望的なまでの強さを得たオメガを表現した、『FF』ナンバリングタイトルのボス戦らしい一曲。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

第二部 漆黒/暁月編

“FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2022 -Eorzean Symphony-”の後半パートでは、拡張パッケージの直近2タイトルとなる『漆黒のヴィランズ』と『暁月のフィナーレ』から8曲(+α)をチョイス。、国内のオーケストラコンサートで過去に披露された曲は、これらの中で『砕けぬ想い ~ハーデス討滅戦~』の1曲のみ。生演奏としてはほとんどの楽曲が初めてとあって、記者のリミットブレイクゲージともいうべき涙腺は、いやがうえにも緩まった。

  • Shadowbringers
     拡張パッケージ第4弾『漆黒のヴィランズ』のメインテーマ。謎の声に導かれるように第一世界へと渡った“闇の戦士”の過酷すぎる運命を予感させる曲調。ジェイソン・チャールズ・ミラー(Jason Charles Miller)さんの歌声を中心に展開されるロック調の曲が、新たな『FFXIV』ミュージックの幕開けを感じさせた。今回の公演ではジェイソンさんが登場するのかどうかも含めて、この曲がどのように披露されるのか注目されていた。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • To the Edge
    『漆黒のヴィランズ』を起点とする一連のシナリオのフィナーレを飾る、“ウォーリア・オブ・ライト討滅戦”のBGM。アシエン・エリディブスに対し、“始皇帝の玉座”が置かれたクリスタルタワーのテラスで決戦を挑む光の戦士たち。互いの運命を悟りつつも、譲れない正義のために最後の刃を交える思いがメロディーに投影されている。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • 砕けぬ想い ~ハーデス討滅戦~
    『FFXIV』だけでなく、『FF』シリーズ全体のなかでも屈指の名キャラクターとして名高い、アシエン・エメトセルクとの決戦時に流れる曲。みずからの名を明かし、“転身”によりその力を高めることで光の戦士の打倒を試みるエメトセルク。“なりそこない”たる人類の価値を心のどこかで認めつつも、漆黒の闇の中で眠る同胞を救うには、是が非でも“光”から世界を奪い返さねばならない……。彼の人生そのものだったこの宿願が旋律からあふれ出す、まさに名曲。決着をつけよう、エメトセルク……。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • Tomorrow and Tomorrow
     命を賭して紡がれたいくつもの思いを託されながら、光の戦士はあきらめることなく前へと進んでいく。そんな『漆黒のヴィランズ』の物語を象徴する楽曲。透き通ったソプラノボイスと、ピアノが奏でるどこか寂し気な調べが、第一世界での冒険を終えたプレイヤーの涙腺をいまなお崩壊させてやまない。冒頭部分も含めて、もうひとつの『Shadowbringers』といえる1曲だろう。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • Your Answer ~ハイデリン討滅戦~
     拡張パッケージ第5弾『暁月のフィナーレ』を象徴する名場面のひとつ、“ハイデリン討滅戦”で流れてくる曲。かつて“時代の終焉”トレーラーや大迷宮バハムート:真成編4などで用いられた『Answers』をアレンジしたバージョンだが、ストーリーの盛り上がりと相まって、まったく異なる感情を聴く人に植え付ける。『Answers』の歌詞が持つ意味の真相を、改めてプレイヤーに知らしめた一曲かもしれない。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • Close in the Distance
     かつてこの世に生を受け、絶望の中でみずからの種を断絶させた生命体の残留思念が滞留する宙域、ウルティマ・トゥーレのBGM。『暁月のフィナーレ』では、この“最果ての地”での冒険の進行に合わせて、当初はぼんやりとしか聞こえなかった旋律が3回に分けて変化。最終的に先述のジェイソンさんによるボーカルが加わり、『Close in the Distance』が完成する仕掛けになっていた。果たしてオーケストラコンサートではこのあたりがどう表現されるのか期待が高まる。そもそも、ジェイソンさんは会場に姿を現すのか……!?
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • Flow
    『暁月のフィナーレ』のメインシナリオを象徴する曲。『Tomorrow and Tomorrow』と同様、美しいピアノの調べとともに、アマンダ(Amanda Achen)さんの澄んだソプラノボイスが響き渡る。終末の元凶を滅ぼしうる光の戦士との“再会”を信じ、1万年を超える長き時間を、待って待って待ち続けたヴェーネス。たとえ世界が14に分かたれ、“真なる人”がみずからの存在と神のごとき権能を失ったとしても、彼らの魂を受け継ぐ人類がその中から生きる強さを得ることで、もう一度風に乗り舞い上がれる。そんな彼女の思いを歌に込めつつ、聴く人の背中をそっと押してくれる名曲中の名曲だ。人はもう大丈夫だ、ヴェーネス……。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
  • ENDCALLER ~ゾディアーク討滅戦~
     オリジナルと呼ばれるアシエンたちが、世界を本来あるべき姿に戻すための切り札として、永きにわたり復活を画策してきた闇の神ゾディアーク。『FFXIV』が新生を迎えて以降、長らく“ラスボスの中のラスボス”と目されてきた、このゾディアークとの決戦時に流れるBGMだ。『暁月のフィナーレ』のメインテーマ『Endwalker』のフレーズが各所に散りばめられており、きびしかったこれまでの旅路を思い起こさせる。人類の命運を懸けた戦いを彩る激しい曲調の中に、どことなく感慨をも呼び起こす一曲だ。
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

第一部リポート:3年ぶりのオーケストラコンサートがいよいよ開演!

 開演のブザーが鳴り、オーケストラの演奏者とコーラスの合唱隊がステージに姿を現すと、ホール全体を拍手が包み込む。そこに指揮者の栗田博文氏が登壇するとさらに大きな拍手が巻き起こり、オーディエンスの期待が最高潮に達したところでコンサートが開幕。『天より降りし力』の演奏が始まると、ステージ後方に設置されたスクリーンに早くもエメトセルクの姿が……この時点で、すでに涙腺の崩壊レベルが危険水域に達しているのを感じる。それにしても、オーケストラの生演奏の迫力はやはり想像を超えたものがある。記者は5年前の“FINAL FANTASY XIV ORCHESTRA CONCERT 2017 -交響組曲エオルゼア-”も取材しているのだが、薄れかけていたそのときの興奮を早くも1曲目で思い出すことができた。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 続いて『希望の都』のファンファーレが鳴り響くと、いよいよオーケストラコンサートが始まったのだなという気持ちに。現在、記者はデジョンのホームポイントをウルダハに置いているので、自身としてはいまなお聴き慣れたBGMなのだが、やはりこの日の音色は別格。とりわけ演奏が夜のテーマに差し掛かると、管楽器が織りなすハーモニーがギューッと心に沁み込んで、不思議な感動を呼び起こした。

 冒頭の2曲が終わると、吉田直樹氏が「皆さんこんにちは!」と元気にステージに登場。「私、株式会社スクウェア・エニックス取締役執行役員、第三開発事業本部事業本部長、『FFXIV』プロデューサー兼ディレクター兼、本日の司会・進行を担当いたします吉田と申します。よろしくお願いします!」と挨拶すると、客席から一斉に拍手が起こった。ここで唐突に吉田氏は、「ふだんタンクのロールでプレイしている方は?」と挙手を催促。手を挙げた人たちに対して「今日はあなたが先導役です。誰よりも早く手を叩き始め、最後までそれを続けてください」と促すと、客席からドッと笑い声が上がった。これは過去の公演でもおなじみの、オーディエンスをゲーム内のロールにたとえたものだ。

 続いてDPSロールのジョブに慣れ親しんでいる人に向けて「皆さんの仕事は火力を出すこと。つまり最大出力の拍手を続けるのです」と説明。一方でヒーラーでプレイしている聴衆に対しては「この公演は皆さんの思いが詰まっていますので、急に感極まって泣いてしまう方が多数いらっしゃいます。そういう人をヒーラーの方々が見つけたら、優しく寄り添って回復してあげてください」と役目(?)を指示。そのヒーラーさんもいっしょに泣いてしまった場合は「リミットブレイクを使って蘇生を」と述べると、さらに大きな笑いが場内を包んだ。

 吉田氏のトークで場内が盛り上がったところで、3曲目と4曲目の演奏へ。ピアノ演奏から始まる、『静穏の森』のゆるやかな旋律に心を癒されていると、『究極幻想』の力強いコーラスを合図に曲調は一変。エオルゼアの属領化を試みるガイウス・ヴァン・バエサルが搭乗する、アルテマウェポンとの激闘の記憶が鮮明によみがえった。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 演奏が終了すると、吉田氏の招きに応じる形でサウンドディレクターの祖堅正慶氏が登場。「『FFXIV』でサウンドを担当しております祖堅と申します。皆さま、本日ははるばるようこそ!」と挨拶。続いて、東京フィルハーモニー交響楽団や栗田氏をはじめとするパフォーマーを紹介していった。祖堅氏によれば、今回のコンサートでコーラスを担当しているのは、GLORY CHORUS TOKYO(グローリーコーラストウキョウ)の皆さんとのこと。過去の公演に勝るとも劣らない、パワフルな合唱がとても印象的だった。

 大興奮のなか、コンサートは『新生エオルゼア』のパートを終えて『蒼天のイシュガルド』へ突入。『Dragonsong』、『Heavensward』、『英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~』の3つの代表曲がそろい踏みとなった。これらの中でとくに心に残ったのは、同作のメインテーマである『Dragonsong』。ふだんはスーザン・キャロウェイ(Susan Calloway)さんの歌声で慣れ親しんでいる曲だが、この日はなんと、『Tomorrow and Tomorrow』や『Flow』でおなじみのアマンダ・エイケン(Amanda Achen)さんがボーカルを担当したのだ。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 澄んだ声が奏でる『Dragonsong』は、スーザンさんの歌唱とはまたひと味違う趣きを感じさせる。記者の勝手な思い入れだが、氷の巫女イゼルのイメージにより近く感じられたため、感情移入のレベルが急上昇。スクリーンに彼女が映し出されると、いつも以上に激しく気持ちが揺さぶられた。『Heavensward』もGLORY CHORUS TOKYOによるソプラノボイスが美しく、続く『英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~』はオーケストラのド素人である記者でもわかるほどのコントラバスの奮闘ぶりに心を動かされた。

 前半のトリを飾るのは、『紅蓮のリベレーター』の楽曲。過去のオーケストラコンサートで好評を博した3曲が連続で押し寄せる、何ともぜいたくな取り合わせだ。1曲目に演奏されたのは『鬨の声』。『究極幻想』をさらに上回るコーラスの力強さに圧倒されまくりだった。続いて登場したのは、直前のトークで吉田氏が「『紅蓮のリベレーター』の中でもっとも好きな曲」と話していた『塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~』。メロディーはゲーム内で楽しめるBGMとほとんど同じなのだが、演奏の重厚さと迫力に圧され、記者の耳には別物の曲のようにも感じられた。そしてラストの『空より現れし者 ~次元の狭間オメガ:アルファ編~』では、奏者とコーラスの両陣営がいよいよパワーを発揮。ステージから大波のように発せられる合奏と合唱の“圧”に、「まだこんなに出力が上げられるのか」と驚くばかり。スクリーンに映し出された次元の狭間オメガ零式:アルファ編4の映像はたしかに目に入ったのだが、「ハロー・ワールドの位置取りが難しかったなぁ」などと思い出に浸る余裕はまったくなかった……。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

第二部リポート:演奏と合唱のリミッターが解除され、ついに涙腺が崩壊!

 約20分の休憩の後、オーケストラコンサートは後半戦に突入。冒頭でお伝えした通り、以降の曲目は生演奏としてはほとんどが国内初となる。ここから先はまさに未知の領域……まるで“零式コンテンツ”を挑む前のように気を引き締めながらも、心の底から湧き上がってくるワクワク感を抑えられなかった。

 トップバッターとして登場した曲は、『Shadowbringers』。指揮者の栗田氏が準備を終えて配置に着いたところで、ステージの端から男性と思しきひとりの影が。あの革ジャンパーとテンガロンハットは……ジェイソンさんだ! ステージ上をライトが照らし、彼がボーカルを務めることが改めてわかると、場内から「おお!」や「本物だ!」といった喜びの声が。盛大な拍手に迎えられながら『漆黒のヴィランズ』のメインテーマが開幕した。ジェイソンさんの“生歌”をいち早く聴ける幸福に酔いしれつつ、同曲のオーケストラバージョンがかもし出す重厚なメロディーに感涙。ロック調だった“原曲”とはまたひと味違う、格調の高さを感じる曲に仕上がっていた。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 ジェイソンさんの出番はまだ終わらない。『Shadowbringers』に続いて、アシエン・エリディブスとの決戦を彩る名曲『To The Edge』も披露。ゲームに登場するBGMでは、ジェイソンさんの歌声は少しだけ演出が加えられていたが、今回はそうしたところは一切ナシ。正真正銘の彼の持ち歌として味わえたのはもちろんのこと、新たな『To The Edge』のオーケストラバージョンとしてしっかりと心に刻むことができた。

 日本のファンに初めて歌声を披露したジェイソンさんは、「ここに来られてうれしいです。2~3年ほど掛かってしまいましたが、ついにここに来られました!」と挨拶。「『FFXIV』のファミリーになれてとてもうれしいです。私を迎えてくれて、世界中でいちばんのコミュニティーの一員になれたことを誇りに思っています。祖堅さんには、私を信じてくれてありがとうと言いたいです」と述べると、客席から大きな拍手が巻き起こった。

 この発言を受けて、彼のすぐそばに立っていた祖堅氏は「“コロナ禍”でも何とかして日本に来られないものか」とジェイソンさんが話していたことを紹介。吉田氏によれば、「貨物船に潜り込んでもいいから何とか(日本に)入れないものか」と願っていたのだとか。それくらい、ジェイソンさんも日本での公演を心待ちにしていたのだ。

 続いて演奏されたのは、『砕けぬ思い ~ハーデス討滅戦~』と『Tomorrow and Tomorrow』の2曲。エメトセルクを象徴する前者で涙腺を弱らせてから、後者で『漆黒のヴィランズ』の旅路を想起させてトドメを刺す……記者からすれば、そんな組み合わせに思えてならない。なかでも、『Dragonsong』に続いて登場したアマンダさんの美声が染み渡る『Tomorrow and Tomorrow』は秀逸。ゲーム中に流れるメロディーをオーケストラが下支えするという、シンプルな意味での再現度としてはおそらくこの歌がナンバーワンなのだが、“再現”という言葉だけではまったく表現しきれない、リッチで奥行きのある響きがたまらなく気持ちよかった。テスリーンやライナといった面々がスクリーンに映し出されると、いよいよ涙腺は限界点を突破。記者の目は真っ赤に充血した。

 歌の披露を終えたアマンダさんは、「コンニチハ、アリガトウゴザイマス!」と日本語で挨拶。「この場所にいることができてうれしいです。実際に光の戦士たちにお会いできたことをとても光栄に思っています。祖堅さんの音楽を歌えてうれしいです」と自身の正直な気持ちを話していた。

 吉田氏によれば、初めてアマンダさんの歌声を聴いたのは「最初に海外でオーケストラコンサートを開催したときのリハーサルの場」だったとのこと。そこで彼女の歌声を聴いたあと、祖堅氏から「あの人を使って曲を作りたいんだけどアリかな?」と提案があり、それを契機に実現に向け進み始めたというのだ。祖堅氏から改めて仕事を依頼された際の印象についてアマンダさんは、「ビックリしましたし、ワクワクもしました」と当時の思い出を紹介。「祖堅さんから名刺をもらってすごく驚きました。名刺を渡された経験がほとんどなかったので」とのエピソードも。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 そうしてこの日のオーケストラコンサートは、いよいよメインのイベントへと突入。最新拡張パッケージ『暁月のフィナーレ』の楽曲が登場するかと思いきや、なぜか祖堅氏は指揮台のすぐ脇に段ボールを置き、ガムテープでそれを固定し始めたのだ。よく見ると、彼の右足に無数の鈴が取り付けられており、手にはオタマトーンが握りしめられている……。場内を不思議な笑いが包む中で、“スペシャルな1曲”として『迷宮 ~ラヴィリンソス:昼~』がスタートした。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 この曲は、ワルツのリズムに乗せてラヴィリンソスののどかな風景を表現しているのだが、祖堅氏は「ズンチャッチャ」の「ズン」のタイミングで段ボールを「ドン」とキック。「チャッチャ」に合わせて右足を振り回し鈴の音を響かせるという、まさに体を張った演奏を披露したのだ。サビの部分では手にしたオタマトーンを鳴らそうとするのだが、なかなか思うようにメロディーが奏でられない。それでも曲が後半に差し掛かると、オタマトーンをどうにかコントロール。東京フィルハーモニー交響楽団の均整の取れた伴奏も相まって、祖堅氏の悪戦苦闘が終わると大きな拍手が場内を包んだ。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 ステージに固定された段ボールを大急ぎではがし終えたところで、コンサートはついに『暁月のフィナーレ』のパートへ。1番手として登場したのは、『Your Answer ~ハイデリン討滅戦~』だ。光の戦士はハイデリン(ヴェーネス)の心情を痛いほど理解しているが、自身の力を証明すべく、あえて武器を取る……。それまでの笑いから一転、『FFXIV』史上もっとも心情的に苦しかった戦いを思い出し、涙をこらえるのに必死になった。

 落涙をどうにか耐えきり演奏が終了すると、事前&会場で販売されたグッズである“エルピスの花”を手にした吉田氏が登場。いっしょに登壇した祖堅氏が「エルピスの花をお持ちの皆さま、ご協力をお願いします。これ、ギミックですから」と切り出すと、つぎの曲の演奏中に行う“儀式”の説明を始めた。いわく、演奏中に指揮者の栗田氏から合図が出たら、最前列に座る聴衆が花を点灯。これが見えた瞬間、残りの客席に座る人も続いてエルピスの花を輝かせるという段取り。演奏を始めるまえに行われた練習がうまくいくと、その美しさに客席だけでなく奏者の方々からも驚きの声が上がった。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 すべての準備が整ったところで、『Close in the Distance』と『Flow』の2曲を続けて演奏。どちらも、『暁月のフィナーレ』を代表する曲だ。まずはジェイソンさんが再度登場し、『Close in the Distance』を披露。ピアノが奏でる清らかな旋律に乗せた歌声は、まさに鳥肌もの。ウルティマ・トゥーレにたどり着くまでに背負ってきた幾多の思いに勇気づけられながら、最終目的地に向けて坂道を登り続ける……あの名シーンが思い浮かび、涙腺が崩壊。思わず嗚咽を漏らしてしまった。そんな記者の事情などお構いなしに歌がサビに差し掛かると、手はず通りに栗田氏が合図。すると一斉にエルピスの花が点灯し、光の戦士がコンサート会場を“メーティオンと再会したあの場所”に作り替えたのだ。これぞ現代の創造魔法! 会場全体がひとつとなって作り上げたギミックを目の当たりにして、自身の目頭がさらに熱くなるのを感じた。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 続いては、『暁月のフィナーレ』の物語の仕掛け人であるリードストーリーデザイナーの石川夏子氏が、もっとも印象深い曲として挙げた『Flow』。記者自身、最高の名曲だと思っているし、多くのプレイヤーの方もそう感じておられるだろう。イントロが耳に届いた時点で、すでに涙腺は崩壊寸前。ほどなくアマンダさんの澄んだ歌声が響き渡ると、意外なほどあっさりリミットブレイク(号泣)してしまった。あまりにも激しく心を揺さぶられ続けたために、この曲をリポートする材料を集めることさえままならず……。記事を書くために来ているのに、ライターにあるまじき失態。ごめんなさい。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 感動の演奏が終わると、吉田氏と祖堅氏が改めてステージに上り、来場者に感謝の言葉を述べた。やや長めなので、おふた方のコメントを個別にご紹介していこう。

吉田氏コメント(要約)
私事に近いかもしれませんが、ちょうど2年前に僕と同じくらい……もしかしたら僕よりも『FFXIV』を大好きでいてくれていた友人が他界してしまいました。本日は光のお父さんと、光のお母さんにいらしていただいています。きっとマイディーも今日のこの場に来て、最後まで聴いてくれたのではないのかなと思っています。ありがとうございます。

祖堅氏コメント(要約)
“コロナ禍”ということでなかなかコンサートを開けませんでしたが、今日こうやって皆さんにお越しいただくことができました。すばらしい演奏をしてくださるオーケストラと合唱の皆さんをはじめとする、たくさんの方々の協力のもとでコンサートが開催できました。ほんとうにうれしく思います。こういう催しができるのは、皆さんがゲームを楽しんでくれているおかげだと思っています。これからもおもしろいゲームを作れるよう、『FFXIV』チームのみんなといっしょに引き続きがんばっていきます。今後も皆さん、ゲームを楽しく遊んでください。どうぞよろしくお願いします!

 そしてこの日最後の曲目として演奏されたのは、『ENDCALLER ~ゾディアーク討滅戦~』。解説文にある通り、“ラスボス中のラスボス”との戦いを象徴する曲にふさわしく、演奏とコーラスのパワーはどちらも最大出力。いままで以上に力強さを増したコーラスをさらに押しのけるように、オーケストラのパワフルな合奏が曲全体を盛り上げた。そうして曲が『Endwalker - Footfalls』のアレンジ部分に差し掛かると、記者の涙腺はまたまた崩壊。周囲に気取られぬよう、泣きながら「higher,oh higher」とつぶやいていた。

 予定されていたすべての演奏を終えた後は、お待ちかねのアンコールへ。鳴り止まない拍手に迎えられて栗田氏が再度指揮台に登ると、『そして世界へ』がスタート。初代『FF』では『オープニング・テーマ』と呼ばれた、シリーズ全体を代表するおなじみの楽曲だ。幼少時から親しんできたこのメロディーは、記者からすればまさに一服の清涼剤。ぐちゃぐちゃになった感情を落ち着かせるのに最適だった。

 アンコールは、もちろん1曲だけでは終わらない。オーケストラコンサートの大トリを飾る曲は、『終焉の戦い』。『暁月のフィナーレ』のクライマックスで登場するBGMにして、『新生エオルゼア』および過去に発売された拡張パッケージのラスボス戦のアレンジ曲で構成された傑作だ。『FFXIV』が新生を迎えてはや9年。その歩みを間近で見てきたプレイヤーからすれば、この曲はまさに本作の歴史そのものだろう。激戦の記憶と自身のこれまでの歩みが重なるとともに、“ハイデリン・ゾディアーク編”はこれでほんとうに終わったんだな……感動の中にどこか寂しさも感じる、不思議な気持ちになった。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

 この日の模様は以上の通り。言葉では到底表現しきれない、感動と興奮と涙に満ちたオーケストラコンサートだった。個人的な感想でほんとうに恐縮だが、私の心の中の淀みのようなものが、思い入れ深い名曲の数々できれいに洗い流された気がした。音楽の力は、確かに実在する。このことを実感させてくれた指揮者の栗田博文さん、東京フィルハーモニー交響楽団とGLORY CHORUS TOKYOの皆さん、そして吉田氏をはじめとする『FFXIV』チームの方々に心から感謝を申し上げたい。

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!

祖堅氏、吉田氏より公演終了後のコメントが到着!

『FF14』オーケストラコンサートリポート。『漆黒』や『暁月』の人気曲の生演奏&生歌に聴衆の涙腺はリミットブレイク!
左より吉田氏、ジェイソン氏、栗田氏、アマンダ氏、祖堅氏。

『ファイナルファンタジーXIV』サウンドディレクター 祖堅正慶氏コメント

――コンサート、全4 公演終えての感想をお願いします。

祖堅『新生エオルゼア』発売からの約9 年間、意外と光の戦士たちの心に刺さる音楽を作れていたかもしれないな、という実感がわきました。こういう興行はいいですね。

 ゲームは海外ではわりとエンターテインメントとしての地位を確立しているけど、日本ではまだ「ゲームなんかやって…」というような風潮があると思います。でも、僕はゲームというエンターテインメントは素晴らしいと思っていて、自信があるし自慢でもある。コミュニティも凄いですし。今回のオーケストラコンサートではゲームというエンターテインメントの無限の可能性を見ることができたし、そのなかでもサウンドが表現できることの素晴らしさも改めて感じました。

 あと、自分で言っちゃいけないかもしれませんが、自分たちが作った『FFXIV』はいいゲームなんじゃないか、という気がしました(笑)。 もちろん、いいゲームを作っているつもりでいつも奮闘しているわけですが、改めてこうしてお客さんと対面できて、同じ空間を共有して、音楽を共通キーワードとしてやりとりしたつもりです。それで、光の戦士たちが心を動かして、感動して、泣いている姿を見て、「『FFXIV』のサウンドを作ってきてよかったな」と改めて思いました。

――観客のリアクションは、どこからか見ていたのですか?

祖堅公演が始まったら、最初に舞台袖からオーケストラ奏者や合唱、指揮の栗田さんたちをステージに送り出すのですが、その後にはダッシュでPA ブースに行って音をチェックしていました。今回の会場は4 階層あったので、演奏が始まったらそれぞれの階でチェックして、どこをどう調整したいかを逐次、PA さんにフィードバックする。そのときにお客さんの顔が見えるんですよね。そのお客さんの顔が、早くも2 曲目から…… 1 曲目はお客さんを見る余裕もないですが、2 曲目から感極まって泣いている方がいらっしゃるのを見ると、心を動かせたのかな、という気持ちになりました。

 仕事として頑張るのは当たり前ですが、「ゲームサウンドを介して人の心を動かせた」という結果に、今度はこちらが感動する。そういった2日間でした。得るものがあったので、これをまたゲームサウンドに活かしていこうと思います。そしたらまたさらにいいゲームになるんじゃないかなと思いつつ、精進するしかないですね(笑)。これからも、いいゲームサウンドを届けられるよう頑張ります!

『ファイナルファンタジーXIV』プロデューサー兼ディレクター 吉田直樹氏コメント

――公演を終えての感想を教えてください。

吉田まずは「ほっとした」というのが大きいです。今回は曲数をかなり詰め込ませてもらったのですが、時間には限りがあるのでMC の時間を延ばせないと厳密に言われていました。いっぽうで、オーケストラコンサートが初めてで緊張している方も多くいらっしゃるので、そこを「いつもの『FFXIV』、いつものエオルゼアだよ。リラックスして聴いて、思い思い楽しめばいいんだよ」というところに繋げられるようにしたい。僕は司会業が本業ではないし、そこが難しいところで…… 終わった直後の感想はというと「ほっとしました」という一言です。

――ひさびさの有観客でのオーケストラコンサートでしたが、いかがでしたか?

吉田各公演の開演前にちょっと舞台袖から顔を出して、来場者の皆さんとアイコンタクトしたり手を振ったりして、変な話、お互いが実在するというのを確認しながらオケコンに臨めたというのはすごくよかったと思います。多くのスタッフもコンサートを聴きながら自分たちがやってきたことの足跡や歩みみたいなものを、『新生エオルゼア』から改めて振り返ることができたと思います。そこは僕も含めて開発・運営チームにとって物凄くよかったですし、これほど多くの光の戦士を見られたことは明日からの活力になったと思います。

アンコールを含めたセットリスト

<第一部>
1. 天より降りし力
2. 希望の都
3. 静穏の森
4. 究極幻想
5. Dragonsong
6. Heavensward
7. 英傑 ~ナイツ・オブ・ラウンド討滅戦~
8. 鬨の声
9. 塩と苦難の歌 ~ギラバニア湖畔地帯:昼~
10. 空より現れし者 〜次元の狭間オメガ:アルファ編〜

<第二部>
11. Shadowbringers
12. To the Edge
13. 砕けぬ想い 〜ハーデス討滅戦〜
14. Tomorrow and Tomorrow
15. 迷宮 ~ラヴィリンソス:昼~
16. Your Answer ~ハイデリン討滅戦~
17. Close in the Distance
18. Flow
19. ENDCALLER ~ゾディアーク討滅戦~

<アンコール>
20. そして世界へ
21. 終焉の戦い