2023年3月4日に、東京・武蔵野公会堂にてTOKYO INDIE GAMES SUMMITが開催される。エフエムむさしの、武蔵野市、並びにPhoenixx主催により実施されるこのイベントは、同社がオフィスを構える武蔵野市・吉祥寺との密接な連携によって生み出されたものだという。今回、武蔵野市市長・松下玲子氏にご出席いただき、イベント運営の責任者であるPhoenixxの川村梓氏を交えながら、開催の経緯や期待することなどを聞いた。(聞き手:週刊ファミ通編集長・嵯峨寛子)
TOKYO INDIE GAMES SUMMIT
- 開催日時:2023年3月4日
- 会場:武蔵野公会堂
- 入場料:1000円[税込]
- ※小学生以下無料(保護者同伴必須)
松下玲子氏(写真左)
武蔵野市市長
川村梓氏(写真右)
Phoenixx TOKYO INDIE GAMES SUMMIT運営責任者
吉祥寺の街全体をイベント会場に!
――TOKYO INDIE GAMES SUMMIT(以下、TIGS)が企画された経緯を教えてください。
川村2019年にPhoenixxを設立して、パブリッシャーとしてインディーゲームを幅広く広めていきたいという思いのもと、数々のインディーゲームイベントに参加させていただいたのですが、その過程で、“自分たちの拠点である武蔵野エリアでインディーゲームを広めるようなイベントを実施したい”と思ったのがそもそものきっかけです。
折に触れ、市役所の方やFM放送局のエフエムむさしのさんとかとコミュニケーションを取らせていただく中で、私たちのやりたいことをお伝えしていたのですが、皆さんとても興味を持ってくださいまして、TIGS実施に向けて動き始めました。
――武蔵野市で開催するということが大前提としてあったんですね。
川村そうですね。私たちPhoenixxは武蔵野市・吉祥寺に本拠地を置いているのですが、吉祥寺エリアはサブカルチャーやエンタメの匂いがしつつ、特定のコンテンツだけの色がついているというわけでもない、すごくステキな街なんです。さまざまな才能が集まり行き交う場所でもあり、「ぜひ吉祥寺でやりたい」と思ったんです。
松下ありがとうございます。確かに、吉祥寺は住みたい街として一般の方から支持されているだけでなく、マンガ家さんやクリエイターの方からも評価していただいていると思います。実際、市内ではお店に行くとクリエイターの方に遭遇できたりして、集まっているというのを実感できたりもしますよ(笑)。今回、ゲーム業界の方からも評価していただいたのは、とてもありがたいです。
川村評価だなんておこがましいです。とにかく吉祥寺という街がすごく好きなんです。
松下個性的な街ですよね。会場となる武蔵野公会堂も、歴史を感じる味のある施設なんです。
川村すごくレトロですよね(笑)。
松下そのレトロな公会堂で、レトロではない現代のゲームというマッチングが、ミスマッチなようでおもしろいかなというふうに思っています。
――会場を武蔵野公会堂に決めた理由は?
川村吉祥寺という場所でゲームの展示に加えて、ステージも実施したいとなったときに、両立できるところを……ということで武蔵野公会堂にしました。先ほど市長がおっしゃったように、武蔵野公会堂にはレトロ感があって、現代と昔ながらの歴史のバランスもすごくいいなと思いました。
松下公会堂周辺のエリアには井の頭公園もあって、クリエイティブ関係の皆さんにとっては、オアシスというか、発想の源泉みたいな場所になっているように思うんです。マンガ家の方とお話をしていても、「息が詰まったら井の頭公園を散歩しています」とうかがいます。
――(笑)。
松下息抜きには、やはり井の頭公園の水と緑の環境がいいんでしょうね。
川村もう最高です。私たちも会社がすごく近くなので、息が詰まったら歩きます。
松下歩きますよね? そうなんですよ! 息が詰まると、歩いて、何かこう……降りてくる、みたいなのがありますよね(笑)。そういうエリアなんです。すごくクリエイターさんにとっても魅力のある街だし、憩いの場であるのかなというふうに思います。
川村また、TIGSでは、吉祥寺東急REIホテルさんにもご協力いただいていまして、クリエイターさんとBtoBでコミュニケーションを取れるスペースを、会議エリアという形でお貸しいただけることになっています。
――武蔵野公会堂でゲームをプレイしてまわりの緑にも触れてという感じで、吉祥寺の街全体を楽しむという感じですね。
川村そうですね。TIGSには全部で約80作品が出展されます。中には海外タイトルや今回初出展となるタイトルもありますよ。
松下楽しんでほしいですね!
川村ハーモニカ横丁(※)の皆さんにもご協力していただきます。TIGSにご来場された方には、ご厚意でビールと飲み物が一杯無料になる券を差し上げる予定になっています。
※吉祥寺駅北口駅前にある商店街。路地に、商店や飲食店など、100軒近くが並ぶ。
松下TIGSの帰りに寄ってね、みたいな感じですね。
川村私たちもハーモニカ横丁が大好きで、毎日いるのですが(笑)、お越しいただいた方にはいろいろなところで飲んでいただきたいですし、クリエイターどうしのコミュニケーションを取っていただきたいです。
松下それも大事ですよね。やはり、コミュニケーションって大事ですよね。知らない人どうしでも、少し会話を楽しんだりとか。一杯飲みながらコミュニケーションを……というのができる街ですね、吉祥寺は。新宿や渋谷ともまた違ったよさがある。吉祥寺のよさを体験していただけるといいですね。
川村本当に。隣りで会った人が、本当にマンガ家さんだったとか、けっこうよくあるんです。そんな雰囲気を体験していただけるとうれしいなと思っています。
――街全体がイベント会場みたいな趣ですね(笑)。
川村武蔵野公会堂自体には、入場券を購入して入場していただく形になるのですが、公会堂の駐車場スペースで、いわばお子さんに向けてのキッズエリアのようなものを設けさせていただきました。ここは、保護者の方といっしょに入っていただくことで、無料でゲームが楽しめるようになっています。着ぐるみも来る予定です。
川村あと、これは武蔵野エリアのいちばんすばらしいところだと思うのですが、とにかくクリエイターさんがたくさんいらっしゃるんですよ。アニメ会社が数多くあって、アニメーターさんがたくさんいらっしゃいますし、マンガ家さんやバンドをやられている音楽クリエイターさんなど、いろいろな方がお住まいになっています。TIGSでは、そういうエンタメ業界の近いところにいるんだけど、いままであまり接点がなかったクリエイターさんとつながりができるように、いろいろな方をお呼びして、交流ができるようにしています。TIGSの前週に開催された“第18回吉祥寺アニメーション映画祭”との連携も実施します。
エンタメに近いところにいるんだけれど、いままで接点がなかなか持てなかったようなクリエイターさんとの交流ができるような場みたいなものを準備したりしています。
ちなみに、Production I.Gさんは武蔵野市にありまして、今回イベントパートナーという形でTIGSをサポートしていただいています。Production I.Gのアニメーターさんもいっぱい来てくださるとうれしいですね。
松下いまだとアニメと連動したゲームもあるんですよね?
川村そうですね。アニメが原作のゲームもありますし、私たちがおもしろいなと思ったのが、ゲームクリエイターさんとアニメーターさんがいっしょに作っている『ピギーワン SUPER SPARK』というインディーゲームが最近話題になっていたこと。
松下へえー! 異業種のコラボレーションですね。
川村そうです。それを見て、すごくステキだなと思って。このイベントでそういう素敵なコラボレーションが生まれてくると本当にいいなと思っています。
――たしかにそうですね。クリエイターが出会って新しいものが生まれるというのはすばらしいですね。
松下異業種のコラボレーションが吉祥寺で生まれると楽しいですね。わくわくしますね。
川村はい。ワクワクします。ハーモニカ横丁で将来について語り合ってほしいですね、飲みながら(笑)。
――お話をうかがっていると、いずれにせよTIGSは、相当地域に密着したイベントと言えそうですね。
川村そうですね。私たちもふだんからいろいろなインディーゲームイベントに行かせてもらっているのですが、それぞれ特徴があって素敵だな、と。TIGSを企画するにあたってまず始めに考えたのが、“街の皆さんに応援されるイベントになりたい”ということでした。だからこそ、街の方々と密接にコミュニケーションを取らせていただいています。とくに、市役所の皆さんには本当に頭が上がらないです。とても助けていただいています。
松下とんでもないです。インディーゲームに可能性を感じているということもありますが、私たちとしては、地域の方々といっしょに取り組んでほしいというのがありました。私たち自治体はつなぐのが役割なんです。街を盛り上げたいと思ってがんばっていらっしゃる商業者の皆さんが数多くいらっしゃいます。イベントを機に市外からいらっしゃって、イベントを満喫したあとでお食事をしたり公園のブラブラ歩きを堪能したりとか、とにかく街を楽しんでいただきたいなと思います。
川村吉祥寺はけっこう海外の方も多い印象があります。今回も海外のクリエイターさんにも多く出展していただくのですが、国内外のインディーゲーム関係者が吉祥寺に集まって、井の頭公園で楽しくみなさんで散歩されたり……とか、そういう未来を夢見ていたりもします。
――TIGSが吉祥寺の新しい観光にもつながるかもしれないですね。
松下“吉祥寺から世界へ”ですね。
TOKYO INDIE GAMES SUMMITを毎年恒例のイベントにしたい
――TIGSでは、いろいろと独自の企画も盛り込んでいるとのことですが、ステージイベントも開催されるんですよね?
川村そうですね。今回、ステージイベントは全部で3つ予定しています。ひとつ目が、野田クリスタルさんや古川未鈴さんをお呼びして、ゲーム遍歴やオススメインディーゲームについて熱く語っていただくトークセッションです。
ふたつ目が、Cygamesさんにサポートしていただいて、TIGSチームが「これからが楽しみ!」というタイトルを複数選ばせていただいて、VTuberの闇ノシュウさんにプレイしていただくというステージイベント。
最後が、バンダイナムコエンターテインメントさんによる、“第1回 GYAAR Studioインディーゲームコンテスト”の結果発表ですね。兼ねてより話題を集めていた、支援金総額最大1億円のインディーゲームコンテストの結果がついに発表されるんですよ。
松下へー! すごいですねー!
川村すごいんですよ。クリエイターさんにとって、お金があることによって、身の回りのことをあまり気にせずに制作に集中することができるというのは、すごくいいことかなと思います。
――けっこうな応募があったんですよね?
川村はい。209もの応募がありました。インディーゲームクリエイターさんにとっては、コンテストへの応募が作品作りのきっかけにもなりますし、イベントの出展に合わせてがんばって作る、という方もたくさんいらっしゃいます。TIGSも、クリエイターさんにとってのモチベーションアップの役割を担うことができたらいいなと思います。
――少し気が早い話ですが、TIGSを継続していく展望はありますか?
川村皆様にご相談させていただいているのですが、私たちとしてはTIGSを毎年恒例のイベントにしていきたいという思いがあります。最近は少しずつ増えてきたのですが、日本のゲーム業界における3月のイベントというのは、まだあまり多くない気がしていて。さらに多摩地区で開催するインディーゲームイベントというのもないので、できれば来年以降も継続していきたいです。
――ところで、今回せっかく女性が3人集まっているというところでお聞きしたいことがあるんです。ゲーム業界は比較的女性の数が多いほうですし、かなり多くの女性がゲームをプレイする世の中になってはいますが、それでもまだ、“ゲームを遊ぶのは男性”というイメージはあります。私も一個人として、もっと女性がゲームをする機会が増えてもいいのではないかと思います。そこで、女性の方にTIGSの魅力を伝えるならば、どんなところをアピールしますか?
川村私自身はどちらかというと昔からすごくゲームを遊ぶタイプの人間です。まあ、だからこそゲーム業界にいるのですが……。でも、まわりの友だちはみんなそこまでゲームをしない子も多いですね。ただ、きっかけは人それぞれだと思っています。
このイベントにしても、たとえばひとつのアートワークに心惹かれていらっしゃる方もいるかもしれません。「なんかかっこいい」、「よさそうなイベントがある」と思って、来てくれる方がいるかもしれないとも思います。
あと最近は、「彼氏がやっているから」、「友だちがやっているからいっしょに」というきっかけで入ってくる人も多いですよね。ゲームという感覚ではなくて、タッチポイントがいろいろなところに増えていくのは良いことだなと思います。
私なりの目線で言うと、そういうとがった見た目や、“かっこいい”、“かわいい”なども含めた、それぞれいろいろな人たちに刺さるコンセプトやグラフィックの作品が増えてくると、ゲームという意識をせずに触れてもらうきっかけが増えるのではないかと思っています。
実際のところ、自分がゲームのプロモーションをしたりするときも、それをすごく意識したりはしています。「イベントのロゴやアートワークはできるだけかっこよく」というのも、チームでもめちゃくちゃ言っていて。ちなみに、TIGSは渾身のロゴです!
松下かわいいですよね。ポップアートみたい。
川村ありがとうございます。自分がステッカーがほしくなるようなものにしたいなと思っていたんです。
――──ステッカーを配られるのですか?
川村まだ最終決定ではないのですが、配ることも検討しています。スタッフ用にTシャツも作ります。
――着たいデザインじゃないとイヤですよね。スタッフTシャツって。
川村そうなんですよ! そういうのってすごく大事じゃないですか。どれだけゲームが好きでも、「なんかちょっと違うな」と思わせるデザインだったらイヤだなあと(笑)。
――では、最後にTIGS開催に向けての抱負をお願いします。
川村TIGSは、吉祥寺から世界へ羽ばたいていくクリエイターさんが出会うきっかけになるような場所になればいいなと思っています。今回が初回となりますが、来年以降も継続できるようなイベントにしたいです。ぜひ皆さんに、吉祥寺に遊びに来ていただきたいです。
松下吉祥寺でTIGSが行われることをとてもうれしく思っています。ゲームの魅力はもちろんですが、周辺の街の魅力も味わっていただきたいなと思います。井の頭公園もありますし、飲食店もあるので、ゲームを楽しんだ後は、街でお食事をしたり、ゲームについて語り合ったりしていただきたいなと思います。