このゲームを遊んでから脳がキュッキュッキュッキュッキュキュッキュッキュッキュ破滅しろクソムシーーー! はぁはぁはぁはぁ……塩メッシュ……。すみません、冒頭から取り乱してしまいました。それくらい、あまりにも狂気に満ちており、1文ごとにSAN値をチェックされるような濃厚な体験が味わえる。今回取り上げるのは、ちょっとどころではないおかしな恋愛アドベンチャー。PLAYISMより、2023年7月18日にSteamで配信される何もかも会話が噛み合わない恋愛アドベンチャー『狂気より愛をこめて』のクリアー後レビューをお届けしたいと思います。なお、画像はベータ版をプレイした時点のものです。製品版では修正されている可能性があるので、その点はご了承ください。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
『狂気より愛をこめて』Steamサイト

※本記事はPLAYISMの提供でお届けしています。

たとえるならはみがき米、もふフナムシ味、MAYA、ブレンダー、戦争、ピヨピヨスープ

 まず、私が正気のあいだに書いておくと、『狂気より愛をこめて』はjamsanpoid、VampireK.K.が開発する恋愛アドベンチャーです。選択肢を選びながら4人の男子と1年間交流し、恋愛を成就させるマルチエンディングのアドベンチャー。基本構造は、とても素直でストレートな恋愛アドベンチャーとなっています。ただし、それ以外のすべてが狂気。

 地の文も、学校のチャイムやちょっとした効果音などのSEも、キャラクターの会話も、そもそも主人公自体の性格も、この世界に流れる常識もカレンダーも、何もかもが正気ではなく話が通じない前代未聞の体験ができます。ゲーム自体は1キャラクター2時間程度で攻略できるのですが、私はあまりにも疲れるので休憩を挟みつつベータ版を3日くらいかけて攻略したあと、ぐったりと布団に倒れ込みました。それくらいイカれ……突き抜けた世界観だと言うことが、少しは伝えられたでしょうか? わざとやっているとしか思えないふざけた会話や頭のおかしい展開も、最後まで突き抜けると立派な個性と魅力になるのです。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
タイトル画面のタイトルコールですら、フルボイスなのにまともなコールをしてくれません。頼むから、正しいタイトルコールをしてくれ!

 ただですね。はい。マジで疲れる。私、アドベンチャーは大好きなのですが、文章をしっかり読んでいて、ぐったりするという経験をしたのは、これが初めてかもしれません。とにかく、狂気が濃すぎて疲れるんですよ! 遊びきるのに、すごくエネルギーがいる。こんな恋愛アドベンチャーがあるとは……。会話を読んでいて、おもしろいけど疲れるという経験はなかなかないですね。

 発音含めたズレっぷりも見どころなので、たぶん静止画だけではわからないと思います。絶対わからない。そういう意味でも、ボイスを飛ばせないゲームですよ。まともな人間が(主人公を含めて)皆無。学校のチャイムですらおかしい。キンコンカンコンじゃないです。ドンドンドンドン! ドンドンドン! ドンドンデンデンデデデッデッデ! みたいな。選択肢を選ぶときのSEも、キャンセル音も、音ですら休ませてくれません。モブの言い回しですらーーもーーー 発音もー! こんな感じぃーで~! おかすぅーいので! フルボイスがぁー! とーばせない。疲れるので飛ばしたいのに飛ばせない。先生ですらまともな人はいません。たぶん、作中で唯一まともに会話できる人は、オカルト部の部長であるマキシマム穴子先輩です。見た目がウツボであるということ以外は完璧。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 メインキャラクターよりも先に穴子先輩を紹介してしまいましたが、それくらい徹頭徹尾、徹底的に狂気が散りばめられており、もうマジで1行ごとにツッコミながら遊んでしまうゲームなんですよ。とはいえ、完全なおふざけではないのです。ちゃんと遊んでいると狂気に満ちたキャラクターたちの内面や性格もつかめてきて、真っ当な恋愛アドベンチャーに見えてくるのが本作のよさ。会話も完全なでたらめではないですね。そこら辺も含めて、本作の魅力について語らせてください。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
焼き鳥サイダーを飲んで感想をもらすところで、明らかに声優さんが笑いをこらえきれずに吹き出しちゃってる場面も。どうみてもNGシーンなのに、そのまま収録してるのもムチャクチャで最高です。ふつうのゲームじゃないからよし!

キャラクターの詳細なんか知りたいのか、豚がよ。失せろ、クソムシ

 本作の舞台は、私立古詩庵歌羅芽琉院学園(しりつこしあんからめるいんがくえん)。省略して古歌院学園(こかいんがくえん)と呼ばれる学校です。ご安心ください。危ないオクスリを連想させてしまう名前なので、きちんとピー音が入ります。そう。こかいん、のあとに「こかいんピー」と聞こえる場面がたくさん用意されていて、ちゃんとピー音が……ズレとる! ズレとるわい!! ピー音が入る位置がずれてるじゃねーか、おかしいだろ! などといちいち突っ込んでいると、きりがないので先に進めましょう。おかしいだろうがーーーー!

 はぁはぁ……。そんな狂った学校に転校してきた2年生。それがプレイヤーであるアナタです。このクレイジーな世界におけるツッコミ役であり、会話が通じない4人の男性と交流して結ばれる(かもしれない)存在。転校してきた先で出会ったイケメン4人はみんな個性的なので、誰を選ぶか迷っちゃうかもしれませんね。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
クソでか名前入力のあとに、私、僕、某から選べる一人称を選べばゲームがスタート。しばしば、主人公自身も変なことを言うのでプレイヤーと同一視できなくなるときがありそうですが、この世界の常識(狂気)に浸れれば、だんだん慣れてきます。……慣れてきます?

 本作はマルチエンディングの恋愛アドベンチャー。特定のキャラクターに絞って狙いをつけないと、グッド(?)エンディングを目指すのは難しいでしょう。どのキャラもよい味を出していますし、ギャップ萌えもあるので、遊ぶ前に狙いをつけておいてもよいかもしれません。というわけで、交流できる4人がこちら。

【佐伯 祐介】

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 主人公と同じクラスの金髪やんちゃ系イケメン。会話の途中に垢メッシュエキス調味パウダー(小麦大豆鶏肉豚肉)、低π圧下いんげん生成マシーン、など意味不明な単語を羅列するので、何を言っているのかわかりません。しかし、仲よくなってくるとごく稀に意味が通じる一貫した文章を言ってくるときがあり、ドキッとさせてくることも。そこがいいんですよね。

【荒川 修司】

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 タツノオトシゴが髪に絡まっているおっとり系の保険医。意外と腹黒いところがあるものの、基本的にはやさしい先生です。ことわざや特定の単語だけが置き換わっている喋りかたをするので、やはり何を言っているのかわかりません。ですが、法則を理解すると意外と言っていることが読みやすいタイプ。もしかして、おちょくってるのか!? なんて、思わなくもないのですが、イイ人です。

【田村 マシュマロ】

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 見た目はかわいらしいけど、辛辣な罵倒をしてくる少年。とにかく罵ってくるのですが、彼のルートを進めていくと罵倒する理由がなんとなく見えてきて感情移入できる……かも。なお、ほかの人は満遍なくイベントが起きやすいのですが、マシュマロだけはオカルト部を優先しないとイベントが消えるので気をつけましょう。物語としては一番先が気になるイベントも。

【アオルタ】

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 品行方正、成績優秀。超立派な生徒会長なのですが、テキストで表示される言語も発音もまったく意味不明という人。見た目も青白い肌でどう見ても人間に見えないのですが、真面目でいい人です。じつは、あることをすると彼の言葉が理解できる仕掛けがあります。そこに気づけば、主人公はともかくプレイヤーは完全に理解して交流できますよ。

◆◆◆◆

 どのキャラクターも常識からはずれた会話ばかりするので読んでいて楽しく、同時に非常に疲れるのですが、みんな印象に残るんですよね。自分はアオルタ先輩が好きで、1周目は先輩狙いで突き進みました。何を言っているのかが、一番読みやすかったという理由もありますが、守ってあげたくなるタイプでしたね。それぞれのパーソナリティーがわかってくると、どのキャラも真っ当な恋愛アドベンチャーのキャラクターに見えてくるのが不思議な作品です。

 ちなみに、ベータ版なので修正される可能性もあるのですが、キャラクターのイベントを進めていくとセンシティブな絵やえっちなスチル絵なども見られます。パッチもないのに、すごくギリギリを攻めている! だからこそ、好きなキャラクターと交流するのが一番ですね。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

触らぬかにのたたき美味と言いますが、実際に遊んでみると恋愛ゲームのような気もします

 ゲームの進行も、かなりオーソドックス……オーソドックス? うん。オーソドックスに進んでいきます。4月の入学から3月の卒業式がある時期まで、2年生の1年間を古歌院学園で過ごしつつ、4人と交流することがメイン。ひとつの月は前半と後半に分かれており、選択肢で場所や行動を選ぶことで、その月に出会える人や会った人の好感度が変化する仕組みです。行事や季節のイベントもありますよ。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
バックログやスキップ、複数のセーブデータ作成などもあってシステムもオーソドックス。効果音が明らかに狂っているけど気にしたら負け。このバックログを読むだけでも、このゲームのヘンさがわかるでしょ?

 まともな会話なんてないですし、7月の4.2日や6月の119日など、日付すらもイかれているのですが、この世界で過ごすうちに「コレはそういうものだ!」と思えてくるので安心ですね。何を言っているのかわかるようになってくると逆に不安を感じてしまうかも。ハマってくると、まるでこの作品内の常識こそが当たり前のように感じられてくるのです。うなぎミルクもおいしそう。購買で売っている食事が、ホオジロザメの船盛定食なのは当然でござるよね。某もよく高校時代に食べましたよ(存在しない記憶)。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 正気を取り戻すと食べたくないようなものばかり出てきたり、SAN値が削れる会話ばかりが飛び交ったりしますが、おもしろければなんでもアリ。アリなのです。この世界の常識に則って行動すれば、問題なく遊べるゲームですよ。たとえば、各キャラクターの誕生日ではプレゼントを渡す選択肢が発生しますが、これも読めます。私たちが生きているこの世界の常識で考えれば、ふつうは渡さないものを選べばいいのです。これは間違いだと思う? なら、それが正解!

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!
恋愛ゲームで逆張りするような発想の人ほど、狂気の世界では恋愛が成功するとわかる誕生日イベント。現実で同じことをしたら、絶対嫌われそう。

 主人公から地の文、背景、モブ生徒の発音にいたるまで、すべての歯車がおかしい狂気の世界。ですが、起きるイベントやキャラクターの心情。交流することで見えてくるものは、割と王道でストレートなんですよ。ちゃんと恋愛したくなるキャラクターになっているのです。そこが愛おしい。狂気に満ちた世界だからこそ体験できる不可思議極まりないプレイ感と、しっかりした恋愛アドベンチャーを遊んだ満足感。それはそれとして、ちょっといくらなんでも演出でふざけ過ぎでは? と思えるくらいのボイスとテキストのはっちゃけかた。いや、もう好きですね、私。こういうゲーム大好きなんだよな~。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

 静止画だけではなく、ボイスとの合わせ技で笑わせてくるゲームでもあるので、実況との相性もよさそう。いちいち突っ込んでいたら日が暮れてしまうくらい、最後までしっかり狂気に満ちています。タイトル通りの『狂気より愛をこめて』。ここには狂気もあれば、愛もある。評価は実際に遊んでからしろよ豚、クソムシ。もふフナムシ味。ああ、すみません。罵倒しているわけじゃないんです。私の意識があちらの次元に引っ張られてしまっただけなんです。まあ、正直に言ってこの狂気はレビューだと伝えきれません。だって、本当に変なゲームなのだから。というわけで、もうこれ以上は言いません。最後に、この画像をみなさんに捧げてお別れしましょう。

『狂気より愛をこめて』は、狂気も突き抜けてやり過ぎると個性になると教えてくれる傑作。それはそれとして、何を言ってるのかぜんぜんわからない!

『狂気より愛をこめて』

プラットフォーム:Steam
メーカー:PLAYISM
開発:jamsanpoid、VampireK.K.
発売日:2023年7月18日発売
価格:1680円[税込]
ジャンル:アドベンチャー
対象年齢:――
備考:ダウンロード専売

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