『鉄拳8』は2023年7月にクローズドネットワークテスト(CNT)を実施。16キャラクターを使用でき、当選したプレイヤーはランクマッチなどをいち早く体験できた。また、8月に行われたヨーロッパのゲームイベント“gamescom 2023”では、新たなPVが公開され、参戦キャラクターや新モードなどが続々と発表。

 本記事では、開発陣のおふたりへインタビュー。ネットワークテストの手応えのほか、新要素の“アーケードクエスト”など、発表された新たな要素について、より詳しい内容をたっぷりとお聞きした。

※取材時期:2023年8月下旬

『鉄拳8』開発陣インタビュー。ストーリーは前作以上のボリュームでお届け。ネットワークテストの反響とともに、PVから判明した要素の詳しい内容を聞いた

池田浩平 氏(いけだ こうへい)

開発プロデューサー兼ゲームディレクター。プレイヤー時代の“ナカツ”の名前でも知られる。(文中は池田)

安田直矢 氏(やすだ なおや)

マーケティングプロデューサー。社内のeスポーツ事業に関わる際には“安田イースポーツ”と名乗ることも。(文中は安田)

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ネットワーク周辺の調整は順調

――ネットワークテストが実施されましたが、具体的にはどのような点を見ていましたか?

池田オンラインプレイの快適さはもちろんですが、全ハード間でのクロスプレイに対応していますから、そこも注視していました。また、ワールドワイドに展開することからも、異なる国どうしでちゃんと対戦ができるのか、サーバーがちゃんと動くのかなど、ネットワークまわりのことがほとんどです。

安田バンダイナムコエンターテインメントとしては、別々のハード間でのクロスプレイ対応のノウハウが少なかったので、正直蓋を開けてみないとうまくいくかわからないことも多く、テストを通じて不安でした。細かな問題は多々ありましたが、十分な手応えが得られたので、製品版でもしっかりプレイできることをお約束します。

――ユーザーからの反応はどうでしたか?

安田今回はネットワーク中心の意見を募集しましたが、ゲームバランスへの意見も多く寄せられました。これは発売後もつねにある声でしょうし、もちろん貴重なご意見ですので参考にしています。ただ、今回はバランス調整のためのテストというよりは、本当に名前の通りネットワーク関連の技術検証をしたく実施しました。

池田オンライン対戦の部分ですと「レスポンスがすごくいい」という意見が多かったです。また、たとえば日本と北米間の対戦も、かなりラグが少なくスムーズに遊べると好評でしたね。実際僕も海外プレイヤーと遊んでみて、しっかり対戦できると感じたので、オンライン対戦部分は自信が持てました。ただ、課題は残っています。ネットワーク接続が無線の環境では、レスポンスが悪くなる状況が発生していました。無線環境でもより遊びやすいように、チューニングを進めています。

――対戦格闘ゲームファンは有線プレイヤーが多いイメージですが、海外向けでしょうか。

安田日本は今回7割のプレイヤーが有線でしたが、無線プレイヤーが半数以上を占める地域も多々ありました。やはり、住宅の作りや地域の都合上などで有線にできない事情も多いようです。有線で遊んでほしいのはやまやまですが、プレイヤーの皆さんそれぞれの環境で遊びやすくするのも、我々の仕事です。

池田また、PC版は必要スペックが高いので、PCのマシンパワーが低いと、処理負荷が重くなり、ネットワーク対戦にも影響が出ます。その影響をなるべく少なくするようにも調整しています。しかし、どうにもならない部分はあるので、スペックが足りないと感じたら、ぜひ皆さんの設定や環境を見直してみてほしいです。本作にはオンライン対戦が不調なとき、PCか回線が原因なのか、処理負荷によるものなのかを表示でわかるようになっています。

安田PCで『鉄拳8』を遊ぶとしても、ほかのソフトも立ち上がっている環境が当たり前です。OBSを起動して動画配信をしたり、動画配信サイトで参考動画を見ながら遊ぶ人もいるでしょう。ハイクオリティのグラフィックスと安定したオンライン対戦を担保するため、ゲーム側の負荷は可能な限り下げる努力をしてきたいです。

『鉄拳8』開発陣インタビュー。ストーリーは前作以上のボリュームでお届け。ネットワークテストの反響とともに、PVから判明した要素の詳しい内容を聞いた
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――ゲーム部分の感想・反応はいかがでしたか?

安田ビジュアルや音楽は、すごく手応えがありますね。バトルについては、じつは7月のCNTでテストをしていただいたバージョンは、それよりも数ヵ月以上前の時点のバージョンでした。すでに多くの部分をブラッシュアップしていますが、開発内で出た意見と同じフィードバックをいただいた箇所も多く、いい意味で想定内というところも多かったです。とくに我々の目指している“これまで以上にアグレッシブに戦える”といったコンセプトに沿ったご意見については、積極的に採用させていただいています。今後も、より注力してブラッシュアップし続けていきます。指摘の多かった技などもすでに修正されていますので、ご安心ください。

――では、カズヤの“凶撃轟墜拳”は……。

池田かなり前から修正されているので、ご安心ください(苦笑)。

――ホッとしました! キャラクターPVと一部キャラクターのディテールと言いますか、細かな部分が違うなと思っていましたが、バージョンが違うのでブラッシュアップした結果なんですね。

安田そうですね。調整頻度が多いとどうしてもギャップが出てしまいます。キャラクターPVで使用している映像素材は、もう1年以上前のバージョンのものもありますね(笑)。

――簡単操作で多彩な技がくり出せる“スペシャルスタイル”への意見はどうでしたか?

池田ひとつ課題としてわかったのは、手軽に『鉄拳』ならではの駆け引きが楽しめる要素は好評だったのですが、「使える技の種類を増やしてほしい」、「もっと上級者とも戦えるような技にしてほしい」という意見も多くて。たとえば、反撃に使える技が出せないですとか。現在は技の選定であったり、出す方法なども含めて調整を加えている最中です。

――たしかに、遊んでいて「確定反撃が取りにくいな」(相手の大技をガードしたとき相手が隙だらけになるので、そこへ絶対に反撃できる技を出すこと)と思っていました。

池田たとえば反撃に使いやすい技を何らかのボタン操作で出せるようにするとか、下段攻撃だけではなくガードを崩しやすい技が出せるようにする、などを考えています。本来の駆け引きに紐づく部分は、現在ブラッシュアップしている段階です。

安田ただ、その方針で要素を加えすぎると、初心者にとっては操作や駆け引きが複雑になってしまい“スペシャルスタイル”が目指した本来の狙いを達成できません。

池田はい。ですから、なるべく複雑な操作は要求せず、ボタンと移動入力くらいで多彩な技やコンボを出せるようにしたいですね。

――攻める部分はスペシャルスタイルで楽しめるかもしれませんが、ディフェンスの部分はほとんど『鉄拳』シリーズそのままの要素だと思うのですが、何か初心者向けの要素は取り入れていますか?

池田アグレッシブなゲーム性を目指していますから、アグレッシブなぶん、攻められて一方的に攻撃され「何をしていいのかわからなかった」という意見も少なくないです。

 自分が一定時間パワーアップする“ヒート”の発動手段のひとつとして、攻撃しながら発動する“ヒートバースト”があります。現在、そこの性能を見直している段階です。

 たとえば“ヒートバースト”に“パワークラッシュ”(相手の一部打撃を受けても怯まずに攻撃できる技の属性)の性能をつけることで、困ったときには切り返しの手段として、ヒートバーストで攻撃を受け止めながらヒート状態になることで、「アグレッシブな戦いに飛び込みやすいようにできるのでは?」など、いろいろな要素を考えつつ、駆け引きの細かい部分を現在調整しています。

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――製品版までに、かなりシステムも変わりそうですね。

池田いただいた意見で改善すべき大きなところは、チューニングチーム含めて実験を重ねながらいまも取り組んでいます。たとえば「空中コンボが長い、自分が操作できない時間が多すぎる」という意見がありました。それは、通常の空中コンボから、ヒートバースト、ヒートダッシュ、レイジアーツと、全システムを導入したコンボの場合の話です。

 ですから、ヒートバーストを使った空中コンボには制限を設けて、ネットワークテストバージョンほどの長いコンボはできないようになっています。

安田本作はアーケード版からの始動ではなく、ナンバリングタイトルとしてはシリーズ史上初の「家庭用版から全世界同時にスタートする新作」です。これまでもさまざまなフィードバックをいただいてきましたが、発売までの残り時間には限りがありますので、こういったテストの機会にはぜひご意見、ご要望をどんどんいただきたいです。

――驚いたのが、チュートリアルでした。コマンド入力などを学べますが、「もう少しボタンを早く押すと出るよ」的なことをゲーム側が教えてくれたりして。ゲーム側が入力を見て、コツを教えてくれるのはなかなかないですよね。

池田操作の結果に応じて、いくつかアドバイスを用意しています。開発チームよりも、ぜんぜんゲームを遊んでいないスタッフたちの操作を参考にしていまして。わからないと、ボタンの押しかたもわからないんだなと。ですので、同時押しができていない、ボタンのタイミングが違うなど、できる限りのフォローはしようと工夫しています。

安田鉄拳7』ではアップデートでいくつか上達のために使える機能を追加しましたが、いま振り返ると発売当初から初心者に向けたそういった要素が十分に揃っていたかというと、決してそうではなかったと思います。幸い『鉄拳7』は多くのお客様にご支持をいただきシリーズ史上最高のセールスを記録しましたが、『鉄拳8』では初心に戻って「『鉄拳』って聞いたことがあるけど、どんなゲームだろう」という方にも遊びやすくなるような要素を盛り込んだつもりです。

池田上達というのは“気づく”ことだと思うんです。ゲーム側が教えてあげないと、気づいてもらうチャンスが少なくなってしまいます。すべてフォローできるわけではないと思いますが、できるだけ「なるほど、こうすればいいのか」と気づいてもらえる仕掛けを用意しています。

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――ちなみに、国内と海外でユーザーの反応の違いなどはありましたか?

安田意見としての本質的な部分には大きな違いはないと思います。ですが、SNSなどでのゲームの評価の仕方の違いはありますね。たとえば、国内のプレイヤーはまず最初に細かい部分を見て指摘する傾向が強いですね。プレイテストでもファーストインプレッションでいきなり「この技のフレームは……」みたいな意見をいただくことが多く、よく瞬時に理解できるなあと感心しました。

池田原田もSNSで言及していましたが、欧米圏のプレイヤーからは「手触りがいい」、「レスポンスがよくてアグレッシブに戦えそう」などの誉め言葉をいただきつつも、そのあとに「ここはどうにかならないのか」と、気に入っている点と改善してほしい点を同時に意見として挙げていただくことが多いと思います。

 開発としては褒められた部分は評価していただいていることがわかるので、よりよくなるように磨き上げていこうと思いますし、逆に不満点については、よい点を潰さないように改善するにはどうすればいいかと考えることができます。

安田『鉄拳』歴の長い熱心なプレイヤーほど“『鉄拳』シリーズのナンバリングタイトルなのだからここはよくて当たり前だ”と思う人もいるでしょうし、“当たり前なんだからわざわざ言及する必要もない”と思って無意識的に言語化を避けてしまう方もいるのかなと思います。

池田悪い部分の意見も当然、すべて目を通していますが、そういった部分を改善するだけではいいゲームにはなりません。「ここが悪いです」という意見を取り入れるために、じつはよかった点を潰さなくてはならない場合もあります。ですので、いいと思った部分も教えていただけるとうれしいですね。よりゲームがよくなるはずですし、なにより開発チームのモチベーションにつながります。

安田自分が好きなゲームだからこそ、遊んでいて気持ちがいい、対戦が楽しくてしょうがない、なんでもいいです。ぜひ皆さんの「ここが好きだ」というお声もお聞かせください。

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新PVで公開された要素を深堀り!

『鉄拳8』発売日告知トレイラー

――ここからは、gamescomで公開された“発売日告知トレイラー”を見て、さまざまなことをお聞かせください。まずはアーケードクエストモードについて教えてください。どのような経緯で導入することを決めたモードなのでしょうか?

池田アーケードクエストは、ざっくり言うと、遊べるRPG風のチュートリアルです。主人公がゲームセンターを転々としながら、最後はゲーム内の大会で優勝を目指すという流れの中で、相棒や仲間とともに『鉄拳』の基礎知識を学べます。相棒のマックスが適宜「入力が遅いよ」などのアドバイスをくれたり、褒めてくれたりもします。状況に合わせて操作や駆け引きを楽しく学べるモードになっています。

安田先ほどもお話した通り、本作から『鉄拳』シリーズを遊び始める人たちに向けて、敷居をぐっと下げたい思いがありました。そこで「最も長く続くビデオゲームの物語」でおなじみのさまざまなキャラクターが織りなすメインのストーリーモードだけでなく、プレイヤー目線のストーリーモードを用意しました。もしかしたら「最近発売された某格闘ゲームにも、こういうモードがあったよね?」と思われるかもしれませんね。

 我々も正直、あのモードの発表には驚きましたが、やはり対戦格闘ゲームの敷居を下げるために、見ている方向はみんな同じなんだなとも感じました。いっしょに格ゲーファンを増やす仲間として内容を比較するつもりはありませんが、本作ならではの独自要素にも注目してほしいです。

池田鉄拳タッグトーナメント2』では、ひとり用のモードとしてチュートリアルを兼ねつつも、自分だけのバトルロボを育成する“ファイトラボ”がありました。今回はプレイヤー自身が主人公となり、ゲームセンターでの対戦や相棒、仲間との会話、大会などを疑似体験することで自分の成長を体験していただきます。最後までクリアーすれば、『鉄拳』の基本操作や駆け引きがマスターできるはずです。

 ちなみに、アーケードクエストは、『鉄拳』の基礎知識だけでなくそれぞれのファイターが得意とする技や立ち回りも教えてくれます。全32キャラクター対応したチュートリアルになっています。

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――マックスがプレイヤーを褒めてくれるようにしたのは、なぜでしょうか?

安田じつはもっと最初はシンプルな演出だったのですが、初心者ユーザーのテストを通じて「うまいプレイをしたり正解の行動をとったんだから、もっと“褒め感”が欲しい」という意見が多く、褒めかたも派手になっていきました(笑)。

池田できるようになって、ようやく対人戦の勝ちにつながるはずです。ですので、できるようになったことを褒めたり、何が間違ってるのかも教えるべきだと思いました。これまでの『鉄拳』シリーズはそこの配慮が少なかったのもあり、今回かなり力を入れています。

安田『鉄拳』シリーズはアーケードの文化とともに育ってきたゲームです。たとえばその場にいるプレイヤーから教えてもらったり、講習会があったりと、フィジカルな場での人と人とのコミュニケーションを通じてプレイが上達していくという側面が強かったと思います。『鉄拳8』は家庭用からスタートするタイトルですが、そういうアーケード文化からも着想を得て、「架空のゲームセンターを旅しながら、ゲーム内の仲間たちと切磋琢磨して上達していく」というモードになりました。

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――主人公はキャラクタークリエイト式ですか?

安田はい、そうです。アバターをカスタマイズする各アイテムについてはゲームを進めていくと手に入るようになっていて、いつでもカスタマイズが可能です。一種のやり込み要素と言えると思います。

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――ではプレイアブルキャラクターのカスタマイズ機能ですが、どのような要素が進化しているのでしょうか?

安田本作では靴を単体でカスタムできるようになりました。『鉄拳7』では下半身のアイテムに紐づいていましたが、要望が多くて今回は単体でカスタマイズに対応しています。また、各アイテムのカラー変更ですとか、アクセサリ類の位置や大きさも調整できるようになっています。

池田カスタマイズは『鉄拳7』のように、あらかじめ用意されたプリセットもあります。

――アイテムの大きさまで変更できるとなると、『ソウルキャリバー』シリーズのクリエイトモードを彷彿とさせますね。

池田『ソウルキャリバー』シリーズくらいカスタムできるようにしたいな、と考えていたのですが、オンライン対戦やeスポーツなどの競技シーンでは、対戦部分で視認性が悪くジャマになるようなカスタムは好まれないですよね。あまりにも自由度が高いとそういったこともできてしまうので、サイズや位置は変更できても、なるべく対戦部分に影響が出ないようにしています。とはいえ、それなりの自由度は用意しています。

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――プレイヤープロフィールなどの表示カスタムも特徴ですが、本作にもありますか?

池田はい、もちろんあります。決着後に対戦相手が動かなくなるアイテムなども含めて、前作にあったそれらの要素はすべてあります。

――リリと飛鳥がコスチュームを取り換えていたり、そういったのもあるんですね。

池田一部のキャラクターは、たとえば因縁のある相手のコスチュームなどに変えることができます。特殊な入手条件があるのですが、それはまたいつかお話できればと。

――また、映像内ではポールが旧髪型&衣装だったり、レイヴンも昔登場したコスチュームが復刻していますね。

池田デザイン性を大きく変えたキャラクターたちもいますが、従来のイメージのまま遊びたい人もいるでしょうから、そこはしっかり用意しています。また、過去に人気だったコスチュームもいくつか用意しています。

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――ではメインストーリーは、まだ多くは語れないと思いますが、どのような物語が展開されていくのでしょうか。

安田はい。まだ多くは語れません。ですが、いつもより壮大な親子喧嘩を楽しんでいただきたいです(笑)。今回は仁の母親である、風間準が出てきます。彼女の存在が、仁と一八のふたりにどう影響していくのか、というところが注目ポイントです

池田ストーリーモードは『鉄拳7』のシステムを踏襲していて、カットシーンがあって、バトルが始まったらシームレスにバトルへ移行する仕組みで描いていきます。よりシネマティックにブラッシュアップされたシーンが盛りだくさんですので、見応えがあります。

――メインストーリーのボリュームはどれくらいですか?

安田もちろん『鉄拳7』よりも多いです。あの……立場的には、掛かった予算を見て目が飛び出ました。「こ、これはすごい」と(笑)。

池田僕らは作らなくてはいけないそのボリュームを見て「こんなの無理では……」と、驚いていました(笑)。 最低でも32キャラクターが登場するので、それをどうまとめようか頭を悩ませました。とはいえ対戦格闘ゲームはキャラクターの魅力が花形で、それぞれの魅力を知ってほしいので、サイドストーリーを描いた“キャラクターエピソード”も含めると膨大なボリュームになっています。

――メインのストーリーモードがあり、各キャラクターのサイドストーリーもあり、さらにアーケードクエストまであるわけですから、シングルプレイモードは相当のボリュームになりますね。もともと、対戦以外のモードが非常に多いシリーズではありますが。

安田『鉄拳7』は世界で1000万本以上の売り上げを記録しましたが、1000万人がオンラインで対戦をしているかというと決してそうではありません。また、『鉄拳8』のように初心者向けのコンテンツが数多くあるわけでもなく、ある意味でかなり硬派な対戦格闘ゲームの側面を持っていると思います。

 それでも多くのお客様にご支持をいただけたのは、「グラフィックがすごそうだな」、「長く続くストーリーを体験してみみようかな」、「キャラクターが好きだから試してみようかな」など、対戦以外のゲームとしてのいろいろな魅力を30年弱かけて伸ばして磨いてきた結果だと考えています。『鉄拳8』では“アーケードクエスト”を含めいろいろな要素を追加していますので、ぜひ発売まで楽しみにしていてください。

池田これまでもボウリングですとか、アクションゲームが遊べたりですとか、いろいろな施策をしてきました。ただ、ゲーム内ゲームを作り込んでも、それだけのために遊んでくれる人というのは、少ないはずです。これまで用意してきたモードの狙いは、基本的にはすでに『鉄拳』を楽しんでいる方々が、息抜きとして遊べるように作られたものだと考えています。今回、アーケードクエストについては「よりうまくなりたい」という初心者やカジュアルなプレイヤーへ向けて、しっかりと対戦部分につながる導線にしています。

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――8月以降、参戦キャラクターも多数発表されました。新キャラクターであるアズセナのコンセプトを教えてください。

池田『鉄拳』シリーズでは、いろいろな形からキャラクター制作が始まります。たとえば実在する格闘技先行であったり、地域が先に決まっていたりですとか。アズセナは、南米のキャラクターを作ろう、というところからスタートしました。そこから調べていくと、ペルーには、“ルミ・マキ”というボクシングに近い武術があるので、打撃中心の総合格闘家にしようとなりまして。

「女性の総合格闘技キャラクターはなかなかいない」という発想から、そこに身体が勝手に動いて打撃を避けてしまう要素を取り入れました。たとえば天才的な動きで相手のパンチを回避するのが得意だったプロボクサーのナジーム・ハメド選手のような、 歴史に名を残す天才的な格闘家たちの動きからヒントを得て、回避が得意なファイターになりました。技の種類として特殊な構えがあり、その構え中、中段攻撃以外の打撃を自動で回避します。

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――アズセナがコーヒー好きなのは、やはりペルー出身だからですか?

池田ペルーならコーヒーだろう、というのが由来で、ストーリーや設定にも取り入れました。アズセナが持っているコーヒーカップをよ~く見てもらうとわかるのですが、リロイが描かれているんですよ。

安田クローズドネットワークテストなどでも体験できたバトルステージには、リロイ印の“スミスコーヒー”というお店があります。そういった小ネタや関係性もぜひ注目してみてください。

池田ちなみに、7月のクローズドネットワークテストではまだアズセナを公開していなかったので実装していなかったのですが、製品版ではステージ内のビジョンにアズセナのコーヒーのCMが流れるようにもなっています。

――ステージにはアルパカがいて、曲も含めて『鉄拳6』の羊ステージを思い出しました。すごく人気でしたよね。

池田ああいうコミカルなところも『鉄拳』シリーズのよさ、ですよね。ペルーのマチュピチュのような場所をベースに、コーヒー農場にアルパカがいるようなステージにして、大胆なBGMを採用しています。『鉄拳6』の羊ステージはとても評判でしたし、印象も強かったですよね。それをセルフオマージュしたような形で、現代の技術と新しい味付けで表現しています。ちなみにアルパカはバトル中、過去の羊のように触れることができるわけですが、かわいそうなので絶対に蹴らないでください!

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――ちなみにクマの鮭はいったい……?

池田あれは“メカニカルスペースサーモン”という名前です。 よく見るとイクラが飛び散っているので、ぜひ見返してみてください。

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