2023年9月21日(木)~24日(日)に、千葉県・幕張メッセ国際展示場で開催された“東京ゲームショウ2023”(TGS2023。※9月21日、22日はビジネスデー)。その初日となる2023年9月21日に、ネットイースゲームスブースにて、Quantic Dream(クアンティック・ドリーム)のパブリッシングレーベル“Spotlight by Quantic Dream”のプレゼンテーションが行われた。

 Quantic Dreamは『HEAVY RAIN(ヘビーレイン) -心の軋むとき』や『Detroit: Become Human』(デトロイト ビカム ヒューマン)などを手掛けるフランスのゲーム開発・パブリッシャー。2022年にネットイースゲームスと戦略的パートナーシップを締結した。

 また、パブリッシングレーベル“Spotlight by Quantic Dream”を立ち上げ、『Under The Waves』、『Dustborn』、『Lysfanga: The Time Shift Warrior』の3タイトルを発表している。

※これまでディベロッパー(開発会社)として展開していた同社が、パブリッシング(販売・流通)事業に乗り出すタイトル郡となる。

 ファミ通.comでは、プレゼンテーションにも登壇したQuantic Dreamの共同代表取締役CEO兼出版部門長のギョーム・ド・フォンドーミエール氏にインタビューを実施。ネットイースゲームスとパートナーシップ締結後の変化やパブリッシングレーベル“Spotlight by Quantic Dream”を立ち上げた経緯などを聞いた。

TGS2023関連ニュースはこちら
『Detroit: Become Human Value Selection』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)

ギョーム・ド・フォンドーミエール

Quantic Dreamの共同CEOとして、ネットイースゲームとの戦略的パートナーシップを締結。2019年にQuantic Dream発のゲームを自己出版するためのパブリッシャー、2023年にQuantic Dreamによるパブリッシングレーベル“Spotlight by Quantic Dream”を設立。サードパーティスタジオによって開発されたさまざまなインディ―タイトルを発表している(文中はギョーム)。

――ネットイースゲームと戦略的パートナーシップを締結されてから約1年が経過しましたが、ゲーム制作において環境の変化などはありましたか?

ギョーム先に答えだけを言ってしまうと何も変わっていません。ネットイースゲームの方々と初めてやり取りした段階から「資金やリソースは提供するものの、ゲームの作りかたや内容について口を出したり、介入したりするつもりはない」というお話をしていただいていました。

――そもそも、戦略的パートナーシップを締結したのにはどういう経緯があったのでしょうか?

ギョームネットイースゲームと戦略的パートナーシップのお話を始める前というのは、プレイステーションの人たち(ソニー・インタラクティブエンタテインメント)と長年にわたっていっしょに仕事をして、3本のゲームを発売しました。その中で、ゲームの開発やプロデュースの方法、マーケティング的な視点など、さまざまな知見を得ることができました。

 そうした中で、「そろそろ独立してゲームを制作するだけではなく、自分たちでパブリッシングを行ってもいいのではないか?」と考えました。そして、これまでの自社でのゲーム開発に加えて、ゲームを開発する人たちをサポートしてパブリッシュできる資金をしっかりと提供してくれるパートナーを探していたところ、ネットイースゲームが我々のビジョンに共感してくれました。

 最初にパートナーシップ締結後に何も変わっていないとお話ししました。確かに独立性という意味では何も変わっていませんが、ネットイースゲームの資金提供によって会社の規模はかなり拡大できました。現在、パリとモントリオールの2ヵ所に拠点があるのですが、そこで約400名のスタッフが働いています。

――その後、パブリッシングレーベル“Spotlight by Quantic Dream”を立ち上げられました。パブリッシングをするタイトルはどのように選ばれたのでしょうか?

ギョーム我々がパブリッシングを行っていくと発表したときに、世界中のさまざまなデベロッパーからプレゼンを受けました。その中で『Under The Waves』と『Dustborn』を「いっしょにやりたい!」と思ったので、まずはその2タイトルと進めていきました。

――現在“Spotlight by Quantic Dream”では、いまお話いただいた『Under The Waves』と『Dustborn』に加えて、『Lysfanga: The Time Shift Warrior』の3タイトルを発表されていますが、それぞれパブリッシングすることになった決め手などがあれば教えてください。

ギョーム『Under The Waves』は、ストーリー重視な作品になっています。そのストーリーの中で語られることというのが、現実世界の我々の生きかたなどにも繋がるようになっているところが気に入っています。

Under the Waves (アンダー・ザ・ウェーブス) | グローバルローンチトレーラー

 『Lysfanga: The Time Shift Warrior』は、いわゆるハックハンドスラッシュで、ベースとしては世の中に溢れているジャンルではありますが、その中に“分身”という要素を盛り込んでいて、新しいゲームプレイ体験を提供できるのではないかと感じました。

Lysfanga: The Time Shift Warrior | Adventure Trailer

 『Dustborn』は見た目でおわかりいただけると思いますが、非常に独特の世界観になっています。その個性的な世界観がありつつ、さらに言葉を武器として使うということで、ゲームプレイの面でもいままで見たことがなく、非常に特徴的だと思いました。

Dustborn | Reveal Trailer

――パブリッシングするタイトルを決める際に何か基準のようなものはあるのでしょうか?

ギョーム3タイトルとも見た目もジャンルも違いますが、ひとつの共通点があります。それはそれぞれがユニークであるということです。我々は唯一無二の独特なゲームを世界中の皆さんにお届けしたいと考えています。

――確かにどれも独特性の高い作品ですね。これまでクアンティック・ドリームが手掛けられてきた作品はアクションアドベンチャーのイメージが強いです。『Lysfanga: The Time Shift Warrior』はハックアンドスラッシュというこれまでに挑戦していないジャンルになるかと思いますが、“Spotlight by Quantic Dream”では、ユニークなゲームであればジャンルは問わないということでしょうか?

ギョーム“Spotlight by Quantic Dream”に関しては、これまで我々が作ってきたようなストーリー重視のゲームであるということにはこだわらず、さまざまなゲーム体験ができるものを探していますし、新たなジャンルであってもどんどん開拓していきたいと思っています。まだ詳しくはお話できませんが、今後もハックアンドスラッシュに限らず、これまで我々が作ったことのないようなジャンルのゲームも準備しています。

――ちなみに日本のスタジオと組むという可能性もあったりするのでしょうか?

ギョーム我々はどこにあるスタジオということよりも、どういったゲーム体験を届けられるかということをいちばん大切にしています。日本はとてもユニークなものを作っていて、日本の開発スタジオやコミュニティを非常にリスペクトしていますし、もしそういった作品を作っているスタジオをご存じでしたら、ぜひ紹介してください。

――サポートの体制についても聞かせてください。9月21日に東京ゲームショウ2023のネットイースゲームブースで行われたプレゼンテーションの中で、“Spotlight by Quantic Dream”として発売するタイトルの制作について、「(クアンティック・ドリームは)ゲームは開発せず、アドバイスとサポートのみを提供する」と紹介されていました。

ギョームはい。

――イメージとしては、デベロッパーが制作した脚本やゲームのビルドなどの成果物をクアンティック・ドリームがチェックとフィードバックを行って、その内容をデベロッパー側で反映していくというイメージでしょうか?

ギョームその通りです。ただ、それだけではなくて各タイトルにクアンティック・ドリームからプロデューサーをアサインしています。そのプロデューサーが開発チームと日々連絡を取り合って、どういったサポートが必要なのか、つねに探っています。たとえば、技術が必要であれば技術を提供しますし、モーションキャプチャーや音声収録する場所が必要であれば、無償ではないものの会社としてのマージンを取らない最低限の価格で弊社のスタジオを貸し出したり、さまざまなものを惜しまずどんどん提供するという形を取っています。

――開発会社としてはすごく心強そうですね。第1弾の『Under The Waves』が先日発売されましたが、手応えはいかがでしょうか?

ギョームまずはデジタル(ダウンロード版)のみリリースしました。日本においては、2023年12月14日にパッケージ版をプレイステーション5、プレイステーション4向けに発売予定です。現時点の売り上げとしては、我々が予想してものと近い数値で非常に満足しています。

 発売が大型タイトルで賑わっているタイミングではありましたが、こういったストーリー重視のタイトルというのは、初速で一気に売れるというよりは、ゆっくりと長く売れていくものだと思いますので、パッケージ版も含めて今後にも期待しています。

――プレイしたユーザーからの反応はいかがですか?

ギョームこれは『Under The Waves』に限らず、どのタイトルを発売したときもそうですが、やっぱり実際に遊んでくれたユーザーに楽しんでもらえることが何よりうれしいです。皆さんが書き込んでくれているコメントなどもチェックしているのですが、本作はストーリー重視の作品ということで、ストーリーで「感情を揺さぶられた」、「感動した」というような反応は、ご褒美だと思っています。

――残りの2タイトルについても続報や発売を楽しみにしています。最後にひとつ聞かせてください。“Spotlight by Quantic Dream”の作品はもちろんですが、やはり、クアンティック・ドリーム自身が手掛ける作品を楽しみにしているファンも多いと思います。現在、ルーカスフィルム ゲームスタジオとの共同で『スター・ウォーズ エクリプス』を制作していることが発表済みですが、同作以外も含めて自社で開発中のタイトルについてお話いただけることはありますか?

ギョーム残念ながら、まだまだお話できる段階ではありません。将来的に発表できるタイミングが来たらお話しますので、それまで楽しみにお待ちいただけるとうれしいです。