ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)より、2024年3月22日発売予定のプレイステーション5(PS5)用ソフト『Rise of the Ronin』。開発は、コーエーテクモゲームスのTeam NINJAが手掛けている。

 本作は日本の幕末(江戸時代末期)を舞台にした、完全新作オープンワールドタイトル。コーエーテクモゲームスらしい歴史ロマン溢れる物語とともに、近接武器や銃火器など駆使してTeam NINJAらしいバトル性の高いアクションRPGが楽しめる。

 本記事では、コーエーテクモゲームス側のプロデューサーである早矢仕洋介氏と、開発プロデューサー兼ディレクターを務める安田文彦氏にインタビュー。本作の開発が始まった経緯から、どのような物語やゲームになっているのかを詳しくお聞きした。

早矢仕洋介 氏(はやし ようすけ)

コーエーテクモゲームス・プロデューサー。これまでに『デッド オア アライブ』シリーズ、『NINJA GAIDEN』シリーズ、『仁王』シリーズなどのプロデューサーやディレクターを担当。現在、エンタテイメント事業部長。(文中は早矢仕)

安田文彦 氏(やすだ ふみひこ)

コーエーテクモゲームス・開発プロデューサー兼ディレクター。長年『NINJA GAIDEN』シリーズに関わり、『仁王』シリーズではディレクターやプロデューサーを務め、2023年3月に発売された『Wo Long: Fallen Dynasty』のプロデューサーも務めた。現在、Team NINJA ブランド長。(文中は安田)

『Rise of the Ronin』インタビュー
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『仁王』よりも前から構想が始まった完全新作

――まずは『Rise of the Ronin』の企画がスタートした、その経緯について教えてください。どのような発端から、本作の開発が決まったのでしょうか?

早矢仕『Rise of the Ronin』は、じつはTeam NINJAの中では、初代『仁王』が発売される前(※『仁王』の発売は2017年2月)から考えていたタイトルでした。おかげさまで『仁王』は全世界でヒットすることができたのですが、それを受けて、コーエーテクモゲームスとしては「『仁王』の開発経験を活かした大きなチャレンジしよう」と。

 そこで、以前から考えていた『Rise of the Ronin』の原型となるコンセプトをもとに、実際に開発を進めていくことになりました。つまり、本格的な開発スタートは初代『仁王』の発売後になります。当時は、まだまだ小規模なチームでしたが。

 まとめると、『Rise of the Ronin』は『仁王』で培われた経験や開発ノウハウを活かしてTeam NINJAらしい、そしてコーエーテクモらしい完全新作ゲームを作ろうと、全社一丸となって、そしてSIEさんとともに取り組んできたタイトルになります。

――初代『仁王』は続編である『仁王2』が開発されましたし、さらにそのノウハウを活かした、『仁王』の系譜とも言える『Wo Long: Fallen Dynasty』(以下、『Wo Long』)も発売されましたよね。その方向性とはまた別の新規タイトルを作ろう、と狙っていたのでしょうか?

安田『仁王』シリーズも『Wo Long』も、根本にあるのは、いわゆる“死にゲー”と呼ばれる部分や、ハック&スラッシュ性の強いアクションRPGであることかと思います。やはりそことは違う軸で、チャレンジしていきたい気持ちがありました。

 ただTeam NINJAが作る以上、得意とするアクション性で勝負したくて。開発チームでも、どんなゲームにするかいろいろと議論を重ねましたし、SIEさんと一緒に進めることになってからは、より加速して内容が固まっていったように思います。

――もとからコーエーテクモゲームス社内の企画だったものが、今回SIEタイトルとなったのはなぜでしょうか?

安田『仁王』シリーズは、日本国内では販売もコーエーテクモゲームスが手掛けましたが、海外ではSIEさんが販売を担当していたタイトルです。『仁王』シリーズでご一緒したことで、SIEさんからも評価いただきまして、それが今回の『Rise of the Ronin』につながったと思います。

――『Rise of the Ronin』はプレイステーション5専用タイトルですよね。プレイステーション4対応をしないという選択をしたのはなぜでしょうか?

早矢仕初代『仁王』の際も、プレイステーション3で発売してほしいという声は聞いていましたが、そのときもハードの性能に見合った体験を提供することを重視していたので、当時の最新ハードであるプレイステーション4のみで開発しました。今回の『Rise of the Ronin』もPS5でしか体験できないゲームを提供することを目的にしていたので、プレイステーション4対応はしないという判断をしました。

――なるほど。本作のジャンルをオープンワールドにした理由も、別軸でチャレンジするという意図からですか?

安田先ほど早矢仕が言った通り、企画は初代『仁王』の発売よりも前からあったものです。まだ世の中がプレイステーション3の時代で、2010年前後あたりのころ、海外メーカーから多くのオープンワールドタイトルが発売されていました。それを受けて、当時コーエーテクモゲームスとしても「オープンワールドとアクションゲームを掛け合わせたタイトルにチャレンジしたいよね」という話になりまして、そこから『Rise of the Ronin』の企画が始まったんです。

 『仁王』シリーズのノウハウを活かす要素はありつつも、オープンワールドであることは最初から決まっていたコンセプトでしたので、オープンワールドという部分については「別の軸でチャレンジしよう」という考えから生まれたものではないですね。

『Rise of the Ronin』インタビュー

幕末オープンワールドは、江戸・横浜・京都などが舞台に

――では、物語や世界観についてお聞かせください。舞台が幕末の作品というと、コーエーテクモゲームスファンならば『維新の嵐』シリーズや『遙かなる時空の中で5』が思い浮かぶかもしれませんが、コーエーテクモゲームスとしてはなかなか珍しい時代設定ですよね。なぜ、幕末にしようと考えたのでしょうか?

早矢仕まずは『仁王』シリーズの影響が強いですね。『仁王』シリーズは別の時代を描く要素もありますが、ベースは戦国時代です。新規タイトルを作るならば、『仁王』とは違う時代設定での遊びを用意すべきだろうと考えました。

 また、本作を作るにあたり、当社のシブサワ・コウ(襟川陽一氏。現コーエーテクモホールディングス代表取締役社長)に「幕末の時代で、横浜を舞台にしたい」という強い想いがありまして。横浜であることは、コーエーテクモゲームス本社が横浜にあることにも由来していますし、幕末という時代は、和と洋の文化が入り混じるタイミングですよね。そこを描きたいとシブサワ・コウが考え、それは新しい遊びが提供できそうだというポテンシャルも感じましたので、幕末がコンセプトのひとつになりました。

――横浜ですか! ということは、本作の舞台は横浜なのですか?

安田舞台は大きく分けて、横浜・江戸・京都の三都市になります。もちろんほかにもステージはありますが、基本はオープンワールドで作られた三都市を冒険していくのがゲームのメインです。

――もちろんゲームですから多少なり誇張はしているかと思いますが、都市の再現性などはどうなっているのでしょうか?

安田現代の街並みとはもちろん違いますし、本作なりの解釈で表現している部分もあります。ただ、当時あったような名所や建物などはある程度踏襲していますので、観光的な楽しみかたもできるかと思います。

――その3つの都市は、おそらく分かれて個別に存在するエリアなのですよね? どれくらいの広さなのでしょうか。

安田江戸と京都がつながっていたら移動もたいへんですしね。広さは……どう言ったらいいのか。一応調べてきたのですが、都市部分のゲームマップは全体で“27平方キロメートル”ぶんありました。

――す、数字だけだと、よくわかりませんね(笑)。

安田わからないですよね(笑)。ただ、言ってしまうとものすごく広いわけではありません。フィールドにはドラマの舞台となる場所や、各都市の名所などもありつつ、それでいてアクションがしっかり楽しめる密度を用意しました。ただ広いオープンワールドを作ったのではなく、より遊びの密度の高いオープンワールドにすることを目標にしています。

――遊びがたっぷり詰め込まれたオープンワールド、ということですね。坂本龍馬や吉田松陰といった、幕末に名を馳せた志士たちも登場すると聞いています。やはり、幕末維新をベースに物語が語られていくのでしょうか?

早矢仕コーエーテクモゲームスがオープンワールドで幕末を舞台にゲームを作る、となったらやはりファンの方々が期待するのは“歴史”の要素だと思います。きっと皆さん、そこの体験を期待していますよね。幕末にまつわる有名な人物は、たくさん登場します。

 その中で、主人公である“浪人”が、いろいろな人たちと出会っていき、物語が語られていきます。史実をベースにしながらも、あくまでフィクションとして歴史ロマン溢れる物語をプレイヤー自身がゲームプレイを通じて体験できます。ちなみに、先週公開したプレオーダートレーラーで最初に斬首されそうになっている人物は、吉田松陰です。

『Rise of the Ronin』インタビュー

――『仁王』シリーズも『Wo Long』も、史実ベースの設定がありながらも「じつは歴史の裏で主人公が暗躍していた」的な語り口のストーリーでしたが、それに近い感じでしょうか?

安田ストーリーの形は、その通りです。ただいずれも、歴史を語ることを目的しているのではなく、あくまで活躍していたのは主人公であり、主人公たちの物語でした。歴史そのものに残ることではありませんでしたが、あり得たかもしれないオリジナルの歴史のifを描くスタイルですね。それは『Rise of the Ronin』でも変わらないところです。

――その主人公となる“浪人”は、具体的にはどのような人物なのでしょうか?

安田浪人はその名の通り、浪人です。主人公は隠し刀と呼ばれる、侍のような剣術や忍者のような身のこなしなどの特別な訓練を受けてきた存在です。さまざまな事情により藩を抜け、自由な浪人として幕末の世を生きていきます。

――“隠し刀”とは、具体的にはどんな存在なのですか?

安田“隠し刀”は、つねにふたりひと組で力を発揮するチームと言いますか、ふたりでひとつの存在です。隠し刀として、主人公は“片割れ”と呼ばれる隠し刀のバディとさまざまな任務に当たっていた中、とある理由により浪人になります。この一心同体である“隠し刀”の存在が、物語の鍵となります。

 なお、本作の主人公はキャラクタークリエイト方式です。主人公のふたりそれぞれ、別々にクリエイトすることが可能で、プレイヤーはどちらを操作して物語を進めていくのか選択することができます。

――おお、主人公はひとりだけではないんですね!

安田ややこしいのですが、主人公は“隠し刀”のふたりです。トレーラーでもふたりがアクションをしているシーンがあると思いますが、ああいったアクションがゲームの中にもあったりします。

――ふたりを操作できるかもしれないと……! トレイラーを見たところ、『仁王』シリーズで言う妖怪や、フィクション性の強いファンタジー要素は登場しなさそうに見えます。基本、人間が敵になるのでしょうか?

早矢仕オープンワールドの幕末を、まるでタイムスリップしたかのように、リアルに体験していただきたかったので、過度なファンタジー要素は取り入れませんでした。今回描きたかったのは、あくまでその時代に生きた多くの人間たちの“因縁”です。

 そう言うと、もしかしたらアクションゲームの幅として物足りないように感じられてしまうかもしれませんが、人間と言ってもさまざまな装備を活用したり、戦いかたの異なる個性豊かな敵が多数登場します。剣術の達人など、ひと筋縄ではいかない敵と戦うこともあるでしょう。

『Rise of the Ronin』インタビュー

――“因縁”、ですか。幕末ですから倒幕派や佐幕派が居たりと、思想の違いから争いが起きたりと、時代劇らしいドラマが描かれそうですね。 

安田敵となるのは人間ですから、当然戦う理由があり、怪物退治とは違います。幕末はいろいろな“正義”がある中で、それぞれの“正義”すらもどんどん変化していった時代だったと思います。それぞれの思想を持つ勢力の人たちと、自由な立場である“浪人”の主人公がどう関係性を築いていくのか。

 その関係性の部分で、作中では“因縁”という言葉を使っています。どのように因縁を築いていくのかが、本作の軸になっています。そこを描くためにも、怪物ではなく人間ドラマを描くことを重視しました。

――ゲーム的には、いろいろな人々がミッションを持っていて、そこで出会ってミッションを受注しながらゲームを進めていくような感じですか?

安田幕末に生きている人たちと“因縁”を通して、仲よくなったり対立することで、新しいストーリーが展開されたり、新しい要素が解放されていくので、そのイメージ通りかと思います。

 メインとなるストーリーはありますが、どの登場人物との因縁を深めていくのかは、ある程度プレイヤーの自由です。メインとは異なるサブ要素も盛りだくさんですので、自由な順番で浪人の旅を楽しんでみてください。

――つまりオープンワールドがあり、そこにミッションが点在していて、ミッションを始めると、バトルや探索など、各ミッションの目標に沿ったステージが始まるのでしょうか?

安田はい、その通りです。

『Rise of the Ronin』インタビュー

Team NINJAの強みが結集したアクションRPG

――ゲームのシステム部分についてもお聞かせください。ジャンルは“アクションRPG”ですが、アクション性は高いことがうかがえます。RPG部分は、どれくらいのRPG要素があるのでしょうか?

安田まず装備品についてですが、豊富に用意しています。東洋と西洋の文化が入り混じった時代ですので、日本刀片手に短銃を使ったり、和服に革靴を履くですとか、皆さんが想像しているようなスタイルには、だいたいできると思います。

 また、戦国時代ではないので鎧や甲冑がメインではないのですが、すでに特典アイテムなどで公開されているように、日本の甲冑など、忍者らしい姿にもなれます。自由な立場の“浪人”だからこそ、そこのスタイルは自由に楽しんでほしいです。

『Rise of the Ronin』インタビュー

――武器は刀や薙刀などの近接武器に加えて、短銃などの幕末らしいものもありますが、どれくらいの種類があるのでしょうか。

安田日本古来の武器に加えて、本作には戦闘スタイルの流派があります。もちろん、流派の完全再現を目指しているわけではなく、アクションゲームらしい味付けにはしています。それに加えて、幕末らしい短銃や長銃といった西洋の武器種も登場します。このあたりは史実からアレンジしつつ、アクションに落とし込みました。登場人物に深く関わるのでまだ詳しい話はできませんが、多数用意しているのでぜひ楽しみにしてほしいです。

――装備のほかには、レベルがあったり、スキルが存在するようなイメージでしょうか?

安田『仁王』シリーズほどハック&スラッシュ重視で装備品がポロポロ落ちるゲームではないですが、RPG部分の密度が少ないわけではありません。RPGらしい“ビルド”や装備収集要素はしっかりあります。

――移動面については、馬での移動や滑空装置での飛行など、多彩な移動方法で都市の中を探索できるとお聞きしています。

安田都市部分は基本的に行きたい場所や登りたい場所があれば、どこでも行けるようになっています。もちろん、入ることのできない場所もありますが。あとは“鉤縄”という道具があって、屋根の上などいろいろな場所に引っかけて立体的な移動も可能です。バトルアクションとして使うこともできます。

 滑空装置は“アビキル”という名前で、実際に幕末の発明家が設計図を残していて、そこから着想を得てゲームに取り入れました。

――ゲーム的に空を飛ぶ要素を入れたわけではなく、しっかり歴史的な観点から着想を得たアイテムなんですね。

安田はい。ゲーム内でも触れている部分なので、そこもぜひ楽しんでほしいです。

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――映像ではさまざまなアクションがあるように見えました。アクションの方向性としては、『NINJA GAIDEN』シリーズのようなスピーディーなものなのか、それとも『仁王』シリーズのように静と動がある侍的な手触りなのか、またはまったく別のものなのか、どのような方向性でしょうか。

安田初代『仁王』に近いかもしれませんね。ファンタジーな動きをするわけでもないですし、武器自体もオーソドックスなものが多いです。本作はただバトルだけをこなすわけではなく、ステルスアクションがあったり、空中からの立体アクションもあります。そこで武器を変更して攻略性を高めるのもいいですし、1本の武器を使い込むのもいいでしょう。これまでのタイトル同様に、そこの自由度の幅は持たせています。

――アクションの詳細も楽しみです! 最大3人のオンラインプレイも可能とのことですが、どのようなマルチプレイになるのでしょうか。

安田ミッション単位での協力プレイになります。各ミッションに挑むときに、マルチプレイを選ぶことで協力できます。また、オープンワールドの部分では、フィールド内に非同期型のオンライン要素があります。そこはぜひ、続報をお待ちください。

早矢仕イメージ的には、『仁王』シリーズの協力プレイに近いですね。ミッションを選んでみんなで挑戦したり、助っ人を呼び込んだりですとか。『仁王』シリーズでも好評だった部分なので、自由な楽しみかたをしてほしいですね。また、本作ではプレイヤーひとりひとりが、幕末を生きる浪人です。オンラインで浪人たちが手助けし合えるような形を用意したかったという狙いもあります。

――ここまでお話をお聞きしていると、『Rise of the Ronin』は本当にこれまでTeam NINJAが開発してきたタイトルのエッセンスを混ぜつつも、そこに幕末オープンワールドが乗っかった、集大成のようなタイトルに見えますね。

安田ありがとうございます。初代『仁王』からの装備品収集だったり、『仁王2』のキャラクタークリエイトや、『Wo Long』のパリィ(化勁)やジャンプアクションなど、さまざまな部分がミックスされました。長い開発期間だったこともありますが、好評だった要素やそれぞれの反省点も活かして、本作に取り入れられたと思っています。

――2024年3月22日発売予定と、発売もかなり近いですが、現在の開発進捗はいかがでしょうか。

安田いままさに、最後の総仕上げ段階ですね。細かいところのクオリティーアップですとか、オンライン部分の調整、バグ修正などのブラッシュアップを掛けている最中です。

――ちなみに『仁王』シリーズのように、体験版としてベータテストを実施したりはしますか?

安田いまのところは考えていません。今回は物語も重視しているため、なるべくイチから物語を楽しめたほうがいいと思っていますので、ぜひ発売を楽しみにお待ちください。

『Rise of the Ronin』インタビュー
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