長く続いているシリーズではよくある話なのだが、SNSなどで「『龍が如く』シリーズでいちばんおもしろいタイトルは?」という話題がファンのあいだで取り沙汰されることがある。
そんなとき、だいたい上位に食い込んで来るのが『龍が如く0 誓いの場所』と『龍が如く7 光と闇の行方』(以下、『龍7』)の2作品。個人的にはほかにも思い入れのある作品があるものの、前述の意見を否定するものではなく、「まあそうだよね」という感じだった。少なくともこれまでは。
『龍が如く8』(PS5)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『龍が如く8』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『龍が如く8 DXパック』の購入はこちら (セガストア)そんな筆者が本作『龍が如く8』をプレイしたのは、おそらくメディアではトップクラスに早いタイミング。なぜなら、同作の完全攻略本を作っているという兼ね合いがあるからだ。
無事にクリアーした直後の感想はと言えば……「ぶっちぎりじゃん!」。まったくもって個人的な意見だが、 本作と前述の2作品のあいだにネットでよく言われる“越えられない壁”があるように感じたのだ。それぐらい、本作の完成度はすさまじかった。
まず、バトル。『龍7』で不満とは言わないまでも「まあ、こんな感じか」と思っていた部分はすべて改善されており、シミュレーション感もアクション感もある、これまでにあまり体験したことがない手触りのコマンド式RPGになっていた。
そう言われてもピンと来ない方のために説明すると、本作は『龍7』と同様に、歩いていた街の地理や現在の状況がそのまま反映されてバトルに突入する。ターン制かつコマンド式のRPGなので、コマンドを選んで敵を攻撃するわけだが、本作ではそのタイミングで自身を中心とした数メートルのエリアを自由に移動できるようになった。
「それで?」と思う方もいらっしゃると思うが、これが『龍7』と激烈に違う部分であり、本作のバトルを戦略性の高くした要素のひとつなのだ。
ある程度自由に動けるので、(近くに対象物があれば)街にあるものを任意で拾って攻撃できるようになった。さらに、いい感じの方向に殴った相手が吹き飛ぶように調整し、ガスボンベなどのオブジェクトにブチ当てて与えるダメージを増やす、なんてことも可能に。これだけでも戦略性が高まったと感じられ、これまでの『龍が如く』シリーズにおける“何でもアリの喧嘩バトル”の魅力が、『龍7』よりさらに強烈に受け継がれているように感じたのである。
また、本作には敵を背後から攻撃した際に“バックアタック”が発動し、会心ダメージになるという仕様がある。任意で移動できるということは、意図的にバックアタックを狙えるようにもなったわけだ。
この仕組みのおかげで、敵を挑発したり状態異常にしたりという弱体効果が、効果の内容以上に効いてくれる点も白眉と言える。
このように、バトル時のポジショニングが非常に重要になってくるゲーム性にできたのは、本作のベースがアクションゲームと同じ“ドラゴンエンジン”で作られていることが大きな要因。アクションベースのシステムでなければこういったバトルは生み出せなかっただろうし、それがバトルの斬新な手応えにもつながっているのだ。
※ドラゴンエンジン:龍が如くスタジオが開発したゲームエンジン(ゲーム開発用のソフトウェア)。
さらに、仲間と絆を深めると、やたらと追撃をして与えるダメージを増やしてくれるようになった点も痛快。そんな要素があるからこそ、仮にバトル大好き人間であっても、いち早く仲間たちと絆を深めたいという衝動に駆り立てられる。結果、『龍が如く』の大きな魅力のひとつである街遊びを率先してプレイしたくなる。……この鮮やかに回るゲームサイクルを作り上げたこともご立派!
もちろん、筆者は『龍が如く7外伝』の“龍が如く8スペシャル体験版”を経験していたわけで、要素自体はある程度把握していた。ところが、実際にストーリーを進めながらバトルをすると楽しさはなぜか段違い。前述のような本作バトルシステムは個人的にストライクで、全編通してバトルを苦痛に思うようなことが一切なかった。
というか、徘徊しているスジモンたちにみずからガンガン絡んでいく状態。もちろんシステムに好みはあるだろうが、 デキだけで言えばRPG界を見渡してみても相当上質なものになっていると思う。
そして、『龍が如く』シリーズでおなじみのプレイスポットも、本作はめちゃくちゃ豊富。とくにDIYで家や家具を作り、自分なりのリゾートを作るサンドボックス的な遊び“ドンドコ島”のボリューム感は半端ではなく、もはやミニゲームの域をハミ出しかけている(ミニってなんだ?)。おかげで遊び始めると時間がどんどん溶けていく始末……。
しかも、製品版ではネットワークを通じて他のプレイヤーの島を見学できるそう。絶対にとんでもない島を作り出すプレイヤーが現れるに違いないので、それも楽しみにしていたりする。
ほかにもマッチングアプリや不審者スナップ、スジモンバトルなどの遊びは『龍が如く』らしく、本当にくだらなくて(これも褒め言葉)最高だった。
わき道のボリュームがすさまじいのは『龍が如く』の定番だが、本作はシリーズの中でもトップクラス。筆者のクリアータイムはメインストーリーとサブストーリーを楽しみ、プレイスポットは軽く触れた程度で83時間だったが、あちこち本気でやり込めば150時間は遊べるはず。フルプライスで『アルティメット・エディション』を購入しても単純計算で1時間100円以下になるので、「安くない?」という感じがする方も少なくないと思う。
もちろん、前述のようなボリューミーかつ、あっけらかんとしたプレイスポットが引き立つのも、バトルに匹敵するおもしろさのメインストーリーあってのこと。春日という明るいキャラクターが主人公ではあるし、要所にコメディ的な要素は散りばめられているものの、本作の物語は基本的にかなりのシリアス路線。この記事が掲載されるのは発売直前なので、タイミング的にあまり多くのことは言えないが、考えさせられるようなシーンや胸を打つシーンも多数あった。
基本的に、筆者はゲームをプレイしても泣かない。それでも2ヵ所だけちょっとヤバいシーンがあったことだけお伝えしておく。1ヵ所はメインストーリーにまつわる場所なので言えないものの、もう1ヵ所のヒントは九州一番星。後者はささやかなエピソードなので、伝わるかどうかはわからないが……。
「泣きそうになる」という意味合いではないが、筆者にグッと迫るものを感じさせたのが桐生のエンディングノート。事前情報なしで先行して遊んでいたので、これが出てきたときのインパクトはいまだに忘れられない。言ってしまえば、「ひとつのシステムの名前をエンディングノートにした」というだけのことなのだが、その名前の持つ意味合いがとにかく強烈で……。プレイを進めるごとにボディーブローのように効いてくる。
おそらく、これまで『龍が如く』シリーズをずっと遊んできたから余計にそう思うのだろうが。これは皆さんに実際に遊んでもらって、どのように感じたかを語り合っていただきたい部分だ。
ひとまず、この記事では現在公開されている要素を中心に触れてきた。とはいえ、ここまで読んでいただいたことをすべて忘れ、ゼロの状態から遊んでほしいというのが本音だ。メディア側、まして攻略本を制作している人間が言うことではないのは重々承知だが、何も知らずに遊ぶほど、本作は楽しめると思うからだ(攻略本はデータも充実しているので2周目も役に立ちますよ!)。
ちなみに、『龍が如く8』は動画や生放送の配信禁止区域はなし。ちょっとでも本作に興味が沸いた方は、いったん気になるものをブックマークしておいて、プレイ後に(あるいはご自身が進行しているところまで)配信を観ることをおすすめする。
ほかのプレイヤーがどう思ったかなどは気になるだろうし、配信を観たことで気付きがあるケースもあるはずなので、そういった配信を観ないのももったいないが、それ以上に本作を自身でプレイしないことのほうがもったいないと思うからだ(天地神明にかけて自分でやらぬ、という方はその限りではないけれど)。
さらに言えば、急いでクリアーする必要もまったくない。何なら、1年後にプレイしてもきっと楽しい作品のままであるはず。なので、時間があるときにしっかり腰を据え、ストーリーも、バトルも、プレイスポットを筆頭とした街遊びも、ぜひじっくりと噛みしめるように遊んでいただきたい。