3月3日と言えば何の日かご存じだろうか。一般的にはひな祭りだったり、“耳かきの日”だったりするが、じつは“クレーンゲームの日”でもある。全国のアミューズメント施設や商業施設でよく目にするクレーンゲームだが、なぜこの日がクレーンゲームを記念した日なのか。さっそく調査してみた。
クレーンゲームの歴史
筆者は初期のクレーンゲームというと1980年代のUFOキャッチャー(セガ)あたりを連想するのだが、日本クレーンゲーム協会のWebサイトによると世界初のクレーンゲームは1896年に作られた手動のキャンディ・ディスペンサーなんだとか。いまから130年近く前にはクレーンゲームの原型が存在していたというのだから驚きだ。
日本で本格的なクレーンゲームが作られ始めたのは1960年代。クラウン602(タイトー)やスキルディガ(セガ)など、景品やクレーンの動きを上から覗き込むタイプが主流だったようだ。
アミューズメント施設に整然と並んでいるイメージが強いクレーンゲームだが、昭和の時代は大きさも形もバラバラだったようだ。当時の店員さんも、店内にどう配置するかで大いに悩んだに違いない。
UFOキャッチャーの登場でクレーンゲームが大ブームになり、どこのゲームセンターにもクレーンゲーム機が数台置かれるようになった。40年近く経った現在はアームや景品が大きくなったとはいえ、筐体の基本的な形は初代UFOキャッチャーから大きく変わっていないところから、とても完成度の高いデザインだったと思う。
クレーンゲームに人生を捧げた人物
話を戻して、なぜ3月3日がクレーンゲームの日だったのかを日本クレーンゲーム協会の代表・中村秀夫氏に聞いてみることにした。
中村秀夫氏(なかむら ひでお)
日本クレーンゲーム協会代表理事。
クレーンゲームの魅力にハマって30年以上。埼玉県を中心に“エブリデイとってき屋”や“世界一のゲームセンターエブリデイ行田店”などのクレーンゲーム専門ゲームセンターを経営する。
――日本クレーンゲーム協会は、どんな活動をされているのでしょうか?
中村くれ達検定(クレーンゲーム達人検定)というイベントを毎月開催しています。
――検定! 学生時代にゲームセンターでバイトしてクレーンゲームに触れてきた身としては、非常に気になります。くれ達検定は、どんな経緯で開催することに?
中村まず、クレーンゲームを初めてプレイしたときに「取れねえじゃねえか!」、「自分には向いていない」と諦めてしまう方も一定数いらっしゃると思います。
――ああ、確かに。
中村でもそれは“取れない”のではなく“取りかたを知らない”だけなんですよ。とは言えネガティブなイメージが定着してしまうとクレーンゲームという文化がいずれなくなってしまいます。そこで多くの方にクレーンゲームの楽しさを知っていただきたいと思い、くれ達検定の開催を思いつきました。
――定期的にくれ達検定を開催するきっかけとして、日本クレーンゲーム協会が生まれたと。ここから本題ですが、なぜ3月3日がクレーンゲームの日なのですか?
中村3と3を向かい合わせにしてみてください。
――ええと……こうですかね。“ε 3”あっ、クレーンのアームっぽい! それでか~。なんかクレーンの仕組みを考えた偉人のお誕生日とかそういうのかと思っていました。考えてみたら“ファミ通の日”(※)も語呂合わせだから、記念日って案外軽い理由で決まりがちなんですね。
※9月1日はファミ通の日。8(ファ)3(ミ)2(ツー)→8月32日→9月1日というのが由来。
中村いまはアームが3本になっているものも多いですが、皆さんが想像するクレーンゲームってだいたいアームが2本なのでしっくりくると思いました。
――日本クレーンゲーム協会のWebサイトではクレーンゲーム機械の歴史などがまとまっていて読み応えがありました。近年だとめちゃめちゃ大きいぬいぐるみが景品だったりして、進化が感じられますね。
中村日本でも1930年代にはクレーンゲームがすでにあったようです。景品が大きくなり始めたのはUFOキャッチャーが世に出てからですね。大きな景品に合わせてアームも大きくなり……という流れで現在の大きなクレーンゲーム機が稼動するようになりました。
――大きい景品とか、箱に入ったフィギュアとかは難度が高そうです。取るためのコツをお聞きしたいです。
中村12の技を駆使することですね。
――12の技! なんか『キ●肉マン』みたいですね。どんな技があるんですか?
中村日本クレーンゲーム協会監修の『クレーンゲーム攻略大全』にわかりやすくまとまっていますが、以下の12種類になります。
- 雪崩
- ファイナルアタック
- 三点取り
- たすき掛け
- 真一文字
- すきま引っ掛け
- カギ穴通し
- 針穴通し
- 差し込み
- バウンドアプローチ
- 横滑り
- ムーンサルト
――なんかすげえ……ムーンサルトを使いこなして“クレーンゲームあらし”とか呼ばれたい。
中村これらの技を組み合わせれば無限の可能性が出てきます。あの景品をここまで移動させるには……と頭の中でシミュレーションしながらプレイするのが楽しいと思います。
――数手かけて取ることを考えると。とにかく景品を掴めばいいってものでもないんですね。
中村クレーンゲーム機の種類によっても特徴が異なりますから、とにかく観察することが大事ですね。ゴルフに例えると、ドライバー選びやグリーンに乗せるまでの手順を考えるようなものです。
――わかりやすいですね。初心者ほどいきなりホールインワンを狙いがちとか。
中村日本クレーンゲーム協会としては、たくさんの方に考えてクレーンゲームをプレイし、その楽しさを知っていただきたいです。
クレーンゲーム攻略大全(Amazon.co.jp)――今度クレーンゲームを見かけたら挑戦してみようと思います。近年はオンラインクレーンゲームなどもあったりしてまだまだ進化が続きそうですが、今後のクレーンゲームはどのような形になると予想されていますか?
中村オンラインクレーンゲームは比較的高額な景品も扱えるんですよね。それに対してリアルのクレーンゲームは景品の価格に上限があります。そのためか、ここ数年で小型のクレーンゲーム機が再び増えてきました。
――小さい筐体だとアミューズメント施設だけでなくさまざまなお店に置きやすそうですね。
中村そうですね。もしかしたら近いうちに、コンビニエンスストアに設置されるかもしれません。
――コンビニでクレーンゲーム! それは確かに身近ですね。買い物のついでに遊んじゃいそう。では最後にひと言お願いします。
中村クレーンゲームは一見シンプルですがとても奥が深いので、皆様も腕を磨いてゲーム性を楽しんでください。景品を取るだけじゃなく、取るまでの過程がおもしろいのでぜひ!