ここ数年、買うか買うまいか、ずっと悩んでいた物があります。それが、キングジムのデジタルメモ“ポメラ”。
文章作成に特化したガジェットであり、携帯のしやすさ、無駄をそぎ落としたシステムが魅力で、多くの作家、ライター、ブロガーに長年愛されています。
筆者を数年悩ませたネックはズバリ、お値段です。
最新型であるポメラDM250の値段は、60280円[税込]。スペックをあまり気にしないならノートPCも買えてしまうお値段です。しかもポメラの機能は“文章作成のみ”。
いくら文章を書いて生計を立てているとはいえ、値段の元が取れるのか、非常に不安でした。PCもノートPCもiPadも所持していたため、それらのデバイスと差別化できるかどうかも自信がありませんでした。「結局のところ、PCでよくない?」となりそうで。
そんな筆者が数年の葛藤の末、購入に踏み切った理由は、ポメラDM250のスケルトンモデルが数量限定で発売されるニュースを見たからです。これがめちゃくちゃかわいいのです。
ポメラ発売から15周年を記念して、2023年末に生産された限定モデル。クリアモデルだから本体に指紋がつきにくいし、限定品だし、何より見た目がかわいい。購入のハードルを下げるには充分すぎました。
※数量限定品のため、現在は生産されておりません。
2023年末に購入し、数ヵ月ポメラを触ってみた感想ですが……大変満足しています。
筆者のおもなポメラの利用目的は、記事執筆やアイデアメモ、趣味で書いている小説の執筆など。もちろんそれぞれにメリット、デメリットを感じたので、どういった用途で使うのが心地いいのか、使ってみた感想をお届けします。
ポメラDM250の購入はこちら (Amazon.co.jp)サイズ感と基本的な機能、使用感について
Nintendo Switchよりもひとまわりデカい
ポメラの購入を検討している方の多くは、「ポメラを開くスペースさえあればどこでも執筆環境になる」部分に魅力を感じていると思います。出先にノートPCを持って行くのは何かとかさばりますからね。
筆者自身かなりの出不精なのでベッドに寝っ転がって書いたり、ダイニングテーブルで書いたり、PCに資料を表示しながらデスクで書いたりと、家の中だけでも「便利だなぁ」と思うシーンがたくさんありました。
家から滅多に出ない筆者はさておき、出先にポメラを持って行きたい方が気になるのは、大きさと重さだと思います。サイズ感がわかりやすいよう、Nintendo Switchと比べてみました。
大きさは、ポメラのほうがひとまわり大きいですね。重さも、Nintendo Switchの1.3倍くらいあります。
とはいえ、一般的なノートPCと比べればポメラの大きさは半分以下。筆者がふだん使っている取材バック(一眼レフのケース)にもすっぽり入るので、重宝しています。
自分好みの環境にカスタマイズ可能な基本機能
縦書き、横書き、フォントの種類や大きさ、バックライトなど、自分好みの環境にカスタマイズできます。ちょっとずつ自分が書いていて心地いい環境になっていくのが快感です。
バッテリーは約24時間持ち、ひとつのテキストファイルの文字数上限は20万字。変換ソフト“ATOK”のほか、類語辞典・和英辞典・英和辞典・国語辞典なども内蔵されており、文章作成の心強いサポートをしてくれます。
すぐ起動できて、長時間文字を打っていても疲れない
ポメラは、パカッと開いたらすぐに起動し、ノータイムで文字入力に移れるのが魅力的。「さぁ、何か書くか」と思ってから腰を上げるハードルがとても低いのです。
たとえばこれがPCだと、電源ボタンを押して起動、アプリの通知をチェックして消す、メールチェックをする、何となくYouTubeを開く、などの作業が挟まってしまい、文章作成にたどり着くまでけっこう時間がかかったりするんですよね。ポメラがインターネットに繋がってないからこそ、の強みのひとつだと思います。
あとは、何と言っても文字を打っているときのストレスのなさ。筆者の手は平均より小さめで、指も短めなのですが、あまり手首を動かさずにキーボードを触れるのが嬉しいです。適度な打鍵感もいい。
逆に、手が大きいという方は、慣れるまでタイプミスなどが発生しやすいかもしれません。キーの大きさ、配置の間隔は、携帯用の折りたたみキーボードとよく似ていると思います。
ふだん、デスクトップPCでは青軸キーボードを使っているのもあって、長い文章を書くときは疲れないポメラを使用するようになりました。
ポメラに向いている作業、向いていない作業
筆者が実際にいくつかの用途でポメラを使ってみて、アリだったもの、ナシだったポイントを紹介します。
総括としては、メモや創作活動には向いていますが、資料が必要だったり、リンクをたくさん貼る系のものには向いていないな、と感じました。
○:アイデアメモ
筆者はふだん、ポメラはベッド脇のサイドテーブルに置いています。朝起きて、おもしろい夢を見たら忘れないうちにメモるためです。
あとは、ポメラに内蔵されているスケジュール帳を眺めます。そこには取材や原稿の締め切りなど仕事の予定を入力してあるので、毎朝「うへぇ」と迫り来る締め切りに胃をキリキリさせています。
といった風に、メモ帳としてポメラを活用するのはおすすめです。筆者はToDoリストや買い物メモ、プロット、スケジュールなどに活用しています。
スマホの文字入力が苦手で、手書きは文章を考えるスピードに手がついてこないためイライラしがち、という筆者にぴったりのアイテムです。
○:取材中のメモ
イベントのリポートやインタビューを行うとき、あとで記事を作るために重要なポイントをメモしておくことがあります。
これにもポメラが大活躍。手書きより断然早いです。
しかしこれには条件があり、机がある場合に限ります。ポメラが置けないので。
×:文字起こし
インタビューはあとで事実確認を行うために録音させていただくことが多いのですが、この録音内容を文字に起こすことをそのまま“文字起こし”と言います。
かなり根気のいる作業のため、「ポメラで入力したら、たとえ気分的な問題だとしても少し楽になるのでは?」と思い、挑戦。
結果は惨敗でした。
というのも、インタビュー中の会話には専門用語や作品名が出てくることが多く、音としては聞き取れても言葉として結びつかない場合があるのです。そういったときはインターネットで検索をかけるため、ネットに繋がっていないポメラには荷が重い作業となりました。
○:創作活動
プロット、小説、日記、脚本、どれを取っても相性がいいです。とくにポメラDM250にはシーンエリアとセリフエリアを分けて作成できる“シナリオモード”があるので、脚本家にはぜひおすすめしたい……!
個人的に気に入っているのが、“気軽に以前書いた部分へ戻れない”という点。ポメラにはノートPCのようにマウス機能がないため、前に書いた部分を見るにはひたすら矢印キーを押さなければなりません。でも、それでいいのです。どうせあとでPCに出力して推敲するのだから。重要なのは完成させることなのです。
よく、絵描きさんの間では「ctrl+zを封印しろ」と言いますが、それと同じ原理だと思います。とにかく完成させること。直しはそのあとでやればいい……と自分に言い聞かせています。
○:記事の下書き
Web記事の大雑把な構成や下書きにも、ポメラは有用だと思います。
ネットに繋がらないポメラは、ケーブルでPCと繋いでファイルを送るなり、Bluetooth接続やQRコード読み取りでスマホへ送らなければなりません。「どうせPCやスマホを経由するんだから二度手間じゃん」と思うかもしれませんが、これはむしろアドなのです。
なぜなら、ファイルの転送、記事の流し込みを行う必要があるということは、強制的に“見直し”の機会が生まれるということ。
誤字脱字や誤用はどうしたって生まれてしまうものですが、こうして見直す回数が増えれば少なくはなる……はず……。
×:情報収集が必要な記事
レビューなどではなく、情報をまとめる系の記事や攻略記事などは、不向きだと感じました。理由としてはやはり、ポメラはネットに繋がらないからです。
動画やポストなどのリンクを埋め込む、たくさんのデータが必要、などといった記事はやはりPCで書いたほうが楽ですね。
アプリでデータ共有が楽ちん
ポメラで作成した文書を紙で印刷したり、Webにアップロードするには、いくつか方法があります。PCにデータを送るなら、ケーブルでPCと直接繋いでデータを転送する方法が一般的です。
そして、スマホとポメラ間でデータ共有をするのに断然おすすめなのが“pomera Link”を使った方法。
pomera Linkは無料でダウンロードできるスマホアプリで、インストールすればWi-Fi接続でポメラとテキストファイルを共有できます。ポメラからスマホへデータを転送するだけなら、テキストファイルをQRコード化して読み取ることも可能です。
ポメラは便利ですが、机にしろ自分の膝上にしろ、どこかに置く環境がないと使いづらいのは事実。そういうときにスマホでメモをしておいて、あとでデータを共有する、という使いかたもできます。
ほかにも、日本語ワープロソフト“一太郎”を使っているユーザーには、ポメラのテキストファイルがそのまま取り込める“ソプラ”というプラグイン機能があります。
ライター向けというよりは創作活動に向いたガジェット
本稿冒頭でも「ポメラを購入して満足している」と書きましたが、そう感じたのは筆者がライターであり、趣味で創作活動もしていることが起因していると思います。値段分の働きは充分にしてくれている、と言っていいでしょう。
やはりWeb記事を書くとなると、ネットで調べ物をしながらのほうが書きやすいですからね。そらでソースコードやタグが書ける人などは、ポメラでもブログ記事を書けそうです。
唯一、不満点をあげるとすれば、ポメラに内蔵されている漢字変換ソフトウェア“ATOK”の調教が足りないところです。
ATOKはジャストシステムが開発、販売しているソフトウェアで、日本語入力のサポートに長けているのが特長。同じくジャストシステムが開発、販売している日本語ワープロソフト“一太郎”ユーザーならおなじみのソフトウェアです。
筆者は一太郎を長らく愛用しており、ATOKにも慣れ親しんでいます。だからこそ、の弊害と言いますか……デスクトップPCにも最新版のATOKを入れていて、その最新版とポメラのATOKをどうしても比べてしまうんですよね。
最新版のATOKは直近の変換予測を優先してくれるのはもちろん、ゲームやアニメ、漫画、映画の正式なタイトルを予測変換に出してくれるのです。これがWebライターとしては大助かりな機能。変換メニューで自動的に辞書を開いてくれるのも助かる。全体的に精度もいい。
なんか「別れて新しい彼女に乗り換えてみたけど元カノのありがたみがわかった」みたいなことになっていますが、ポメラちゃんのATOKが悪いわけでは決してありません。悪いのは比べてしまう私です。
ポメラはATOKのほかに、IME入力にも対応しています。ショートカットキーなど、使いやすいほうが選べるのはありがたいです。
長々と語ってまいりましたが、「ポメラはいいぞ!」という筆者の熱意が伝われば幸いでございます。日常的に書き物をしている人は絶対に損はしません! この記事で購入を迷っている人の背中を押し、多くのポメラニアン(ポメラユーザーの通称)が誕生することを祈っています。
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