俺「いやーおもしろいねマルチプレイ! 日々暗殺し合ってるよ!」
少し前に『アサシン クリード ブラザーフッド』のスペシャルエディションを渡され、おっかなびっくりマルチプレイ対戦を始めた自分だったが、いまやすっかり夢中になっていた。
後輩F「何よりです。で、チーム戦はやってるんですか?」
俺「それがなかなか踏み込めなくて……」
操作にも慣れてきて、個人用モードはけっこう遊んではいたものの、やはりチーム戦を遊ぶのには少し抵抗があった。まだレベルも低く、使えるアビリティが少ないというのもあったが、本音を言うと“味方の足を引っ張るのが怖い”だ。
後輩F「アラフォーのおっさんが、いつまで小学生の運動会トラウマを引きずってんですか。てか、いったい何があったんですか」
俺「話すと長いけど、その事件以降、話さなくなった同級生が少なくとも3人います」
哀れむような微妙な表情で俺を見るF。見るな! そんな目で俺を見るな!
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そんなトラウマのあるなしはともかく、オンライン対戦プレイのふたつ目の壁は、そこにあると思うのです。
ひとつ目の壁は前回も話した、“ヘタだから”楽しめるかわからないというものです。プレイヤーどうしが戦うオンライン対戦では、基本的にプレイヤースキルの差が勝敗に大きく影響します。FPSなどではそれが顕著で、極端な話をすれば初心者=カモになってしまっているゲームも、ないわけじゃありません。
もちろん本作でも、プレイヤースキルによる技術の差や、プレイ時間を重ねることで使用できるようになるアビリティなど、先行プレイヤーのアドバンテージはあります。
だけど“ウォンテッド”のルールでは、暗殺対象と追っ手が複数の中でシャッフルされているので、初心者にも暗殺のチャンスがあるシステムになっています。しかも順位が下がってくると、自分を暗殺対象とするプレイヤーがいなくなるので、ゲームの基本さえ理解していれば、ほぼ確実に暗殺のチャンスは巡ってきます。このルールはとてもウマイですね。
要するに“ウォンテッド”は、“ヘタでも楽しめる”モードだと思うんですよ。もちろん、順位でトップを目指すとなると、テクニックの向上は必須になりますが、たとえヘタでも目立たないように動くことで、そこそこの順位にいけたりします。俺ですらそうなんですから。
つまり、ひとつ目の壁が本作には、ほとんどありません。初心者も楽しめます。
問題はふたつ目の壁、“味方の足を引っ張るのが怖い”です。これは大小はあれども、誰もが危惧することではないでしょうか。
「俺、そんな風に思ったこと人生で1回もないし!」という大らかな人はここでサヨウナラです。君は大丈夫。強く生きていける。ただ、俺と友だちになれるかはわからない。
とは書いたものの、その大らかさも初心者には必要だったりします。
言ってしまえば誰でも最初は初心者です。多少は足を引っ張ります。本作ではマルチプレイ用のレベルも表示されるので、初心者なのは隠しようもありません。
確かに「こ、こいつレベル5の動きじゃねえ!」とか思われるのは痛快ですが、そんな夢は見るだけムダです。素直に初心者である自分を認め、基本を守りつつ先人たちのプレイから技術を学んでいればいいのです。
そりゃもちろん、チーム戦で敵チームの前に無防備にど派手に登場して暗殺されまくったり、やたらとNPCを暗殺しまくって目立つようなマネをしていれば、外人プレイヤーさんからボイスチャットで「F○○○!」とか言われるというものです。
そこは最低限のマナーは守りつつ、“目立たない行動をしつつ暗殺を試みる”という大基本さえ押さえれば、そうそう味方の足を引っ張ることはありません。引っ張っちゃったときは反省すりゃいいんです。だってみんな、最初は初心者だったんですから。
こんな風に思えるのは、実際に俺がそう感じたからなんですよ。
さて、チーム戦ですが、『ブラザーフッド』ではダウンロードコンテンツも含めると、5種類遊ぶことができます。今回はその中のひとつで、『リベレーション』でも収録される予定の“エスコート”モードで遊んでみました。
このモードを簡単に説明すると、2チームに分かれて、防御側はVIPと呼ばれるNPCを攻撃側から護衛し、攻撃側は防御側の隙を突いてVIPを暗殺していくといった感じです。攻撃ラウンドと防御ラウンドは交互で1回ずつ行われ、勝敗はポイント制。ポイントはVIPの一定時間の護衛や暗殺のほか、相手チームのプレイヤーの暗殺でも入ります。
なぜこのモードを選んだかというと、『リベレーション』でも遊べるからというのもありますが、直接的に戦う“マンハント”などよりも、少し戦略的な要素が強そうと感じたからです。味方の動きを見ていれば、自分がどう行動すべきかわかるかなあと。
そんなわけでゲーム開始。まずは攻撃側から始まりました。チームは皆、外見は同じなので、開始早々におっさんたちがダッシュで屋根に上がったりする姿はなかなか不気味です。
攻撃時はコンパスにVIPの居場所のみ表示されます。防御側のプレイヤーはコンパスに表示されないので、視認がおもな判別手段になります。
あっという間に味方たちとはぐれてしまったので、とりあえずVIPのいる方向に目立たぬように移動していきます。意外とすぐ近くにいたので、これは楽勝かなーと一気に詰め寄ったら、屋根で待ち伏せていた防御側によってバッサリ。さすがに俺もいろいろ場数を踏んできたので、あまり驚きもせず「ですよねー」と思う。
防御側にしてみればVIPはエサなので、素直に近付いたらバレるのも当然です。ならばと、こんどは近付く直前に変装をしてみたら、見事VIP暗殺成功! ヤッターと喜んでいると、ダッシュで現れた防御側にグッサリ。「ですよねー」と思う。暗殺後も、当然防御側にしてみたら狙いどきです。
殺し殺されているうちに、だんだんと定石のようなものが見えてきます。暗殺&アウェイは基本だし、変装やピストルも使えそう。防御側への足止めになるので、反撃も積極的にしたほうがよさそうだ、など。あと自分の印象では、攻撃時はあまり仲間との連携は、意識しないでもいいように感じました。
何回か暗殺に成功しつつも、それ以上に反撃を食らっていると、前半戦が終了。今度は自分が防御する側です。
防御時は、移動するVIPが目的地に移動するとポイントが加算され、それ以外にも攻撃側を暗殺することでも入ります。
ボイスチャットは利用していないので、細かい連携は取れないのですが、味方の動きを見ていたら、ぼんやりと自分の役割を決めた方がよさそうだなと感じました。
大きく防御側は、VIPの護衛をメインとして、見える距離で攻撃側の接近を阻止する役割と、積極的に攻撃側を捜し、暗殺し返す役割に分けられるようです。
とりあえず自分はVIPの側を歩くようにして、攻撃側が近付かないか見張ることにしました。そんなSP気分を満喫して歩いていると、通りすがりのお姉さんにサクッと気絶させられました。「ですよねー」。そりゃVIPの側で、変装もせずに歩いていたら狙われますって。ただ、自分が倒されたあと、速攻で俺と同じ顔の仲間がお姉さんを暗殺してくれたので溜飲を下げます。ありがとうブラザー。今度は気を付ける。
反省を活かし、再開後はVIPから少し距離を置き、目立たぬように周囲を警戒。すると、攻撃側のお姉さんフェイスが、ふたりもVIPに近付いているじゃないですか! 一大事と近寄ってひとりに目星をつけて暗殺! NPCでした! 間髪入れず、もう片方のお姉さんに襲われて死亡! 何このデジャヴ!
と、このように攻撃側と防御側で、行動パターンがまったく異なるのが、このルールの醍醐味。そして、どちらの側でも完全なる攻撃や防御は成り立たせられないので、あまり圧勝や惨敗というのはない、バランスのいいゲームデザインだと感じました。
さて、いざチーム戦を何度か遊んでみれば、意外と勝ったり負けたりで、すごく楽しんでいました。“味方の足を引っ張るのが怖い”なんてどうとやらです。
そりゃ人間ですから失敗するこたあります。でも、自分もすれば味方もする。敵だってします。だけど本作ではそれが、あまり気になりません。というか、ほとんど気が付かないし気が付かれません。あとは自分がどう思うかの問題だけで、勝負が終わるたびに反省をして、つぎはこうしようと考えれば、それでいいのではないかと思うのです。
もちろん、“エスコート”のルールだったからというのもあるでしょうし、事前に“ウォンテッド”で基本をある程度身に付けていたのもあると思います。
それらを踏まえても、本作のオンライン対戦は、それほど“味方の足を引っ張るのが怖い”ゲームではありません。それどころか、そんな理由でこの楽しさを味わわないのはもったいないと思えるぐらい、新しい形の対戦ゲームです。だからもし、本編だけでマルチプレイを遊んでいない人がいるのなら、ぜひ遊んでみてください!
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俺「やってみると楽しいねチーム戦! 日々暗殺し合ってるよ!」
後輩F「何よりです。アラフォーおっさんがいつまでもトラウマ引きずってる姿とか、みっともないですもんね」
このFという男は、ひと言多い。というか、もはやひと言じゃない。
俺「オンラインレベルもやっと上がってきたし、ようやく上り始めたばかりって感じかな、この果てしなく遠いアサシン坂をよ……」
後輩F「あれ言ってませんでした? 次回から『リベレーション』のマルチプレイですよ。またレベル1からがんばってください」
上り始めてませんでした。
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次回(2011年12月8日更新予定)は『リベレーション』マルチプレイの新モードを中心に紹介する予定! この原稿を書いている時点ではソフトが発売していないので、まったくゲーム内容が見えませんが、ご期待ください!
●今週の一枚