Secret Level 10: タルコフ系FPSの新たな大本命? 『Gray Zone Warfare』は結構なポテンシャルを感じる!

今回はアーリーアクセスが好調のFPS『Gray Zone Warfare』にトライ。
文:BRZRK 編集:ミル☆吉村

公開日時:2024-05-10 19:20:00

 ドモー。気付けば今年のゴールデンウィークは終わっているわけで、特に旅行にも行かずゲームを遊び続けていた感じのBRZRKです。夏にはどこか行きてぇなぁ。


 今回紹介するのは2024年4月30日に突如としてアーリーアクセスを開始したエクストラクションシューターの『Gray Zone Warfare』だ。

 「エクストラクションシューターってなんぞや?」と思うかもしれないが、いわゆる“タルコフ系”のことで、敵AIや競合するプレイヤーたちと交戦しながら任務を達成し、所定の脱出ポイントから生還する設計のFPS/TPSのことを指すゲームだ。

 その過程で倒されてしまうと所持していたアイテムや装備類をロストしてしまうため、かなりの緊張感が感じられるジャンルだと言えるだろう。というかアドレナリンがドバドバ。

 筆者はこの手のFPSの源流だろう『DayZ』の初期(MOD時代)からこの緊張感の強い1デス=全ロスというハイリスクなゲームを楽しんでいたのだが、ここ何年かはそういったゲームと出会えていなかった。一応、タルコフは持っているんだけど、色々都合があってあんまり触れず。

 そこで今回の『Gray Zone Warfare』だ。海外のストリーマーの様子を見ると面白そうなうえに、DayZ時代からのフレンドも本作をプレイする予定だということで注目していたんだよね。

 でも「あと数週間ぐらいで出してくるかな?」ぐらいの感覚だったのだが、先月末、競合であるタルコフがちょっと大炎上した隙に立て続けに発表をして、あれよあれよという間に数日でアーリーアクセスが開始。

 「これは大本命の競合へのシーンの信頼が揺らいだ最大のチャンスに、思い切って本来の計画よりもリリースタイミングを繰り上げてきたかな?」と思ったりも。じゃあ勝負をかけただけのものがあるか見せてもらおう、ということで今回プレイしてみたわけだ。

■3つのプレイヤー勢力がせめぎ合うオープンワールド

 本作はPvPvEおよびPvEのオープンワールド型FPSだ。参加プレイヤーは3つの異なる民間軍事会社のひとつを選んで所属し、弾丸の飛び交うラマン島で高難度なタスクに挑む。ちなみにマップサイズは42平方キロメートルと広大で、最大48人(各勢力16人)が同じインスタンスに参加できる仕様となっている。

 プレイヤーは最初に所属する勢力を選択することになるのだけど、こちらはアカウントごとに固定になっているので、プレイごとに違う勢力を選ぶようなことはできない。もし選び直したいという場合は、キャラクターを削除して最初からのやり直しになってしまう。本作をフレンドと遊びたいというのであれば、事前にどの勢力に所属するかのすり合わせはしておこう。

『Gray Zone Warfare』

 ここではまず、PvEでの一連の流れを説明しよう。いざゲームを始めると、プレイヤーは前線基地であるFOBにスポーンする。ここではベンダーからタスクを請け負い、それを達成することでお金や装備類といった報酬が貰えるのだが、倒した敵やマップ上から入手した装備品をベンダーに売り飛ばすことで、一度の出撃でより多くの収入を得ることもできる。

『Gray Zone Warfare』

 FOBからの出撃は徒歩でもできるのだが、広大なエリアでの活動となるので移動に時間がかかってしまう。ではどうするかというと、マップを開いてLandingZone(LZ)を選択することで、リトルバード(ヘリコプター)に乗り込み目的地へと送ってもらうことが可能だ。利用できる場所は限られているのだが、タスクを進めていくと少しずつLZが増えていき、活動エリアも自ずと広がっていく。

 FOBには他のプレイヤーも多数いるのだが、早くヘリに乗りたいという思いが強すぎてヘリに接触して死亡する人が結構居る。その亡骸を見ていると夏にコンクリートで干からびているミミズを思い出してしまうのは俺だけだろうか。

『Gray Zone Warfare』

■慎重さとアグレッシブさの適度なバランスで生き抜け

 タスクは敵性AIの武装勢力が制圧している建物や街などを巡り、そこにある遺体を調べたりGPSを仕込んだりといったお使い要素で構成されている。その道中には結構な数のAIが跋扈しているため、ランボースタイルを決め込んで無防備にドンパチしていると、あっという間に銃声や物音に反応したAIに襲撃されて死んでしまうことも。

『Gray Zone Warfare』

 じゃあじっくりと走らず着実に進めていきたいというのであればそれも良いだろう。しかし、タスク内容によっては特定のエリアに出現するボスを倒さなければならないものがあり、こういった場合はある程度のアグレッシブさが大事だ。

 というのも、前述した通り本作はMMO形式なので、同じミッションを受注している他のプレイヤーが先にボスを倒してしまうことがある。そうなると新たにボスがリポップ(再出現)するまで待たなければならない。だがそこまで待ったとしてもそもそも次のリポップで倒せる保証もないし、周囲の護衛に手間取っている間に、あとからやってきた更に別のプレイヤーに横取りされることもしばしば。

 まぁこういうのもネットゲーの醍醐味っちゃ醍醐味なんだけどね。かくいう筆者もあえて他のプレイヤーがボス退治に挑もうとしているのを横からボスを倒して嫌がらせしたりしている。う~ん、ワルだなぁ。

『Gray Zone Warfare』

 そうこうしてベンダーから得たタスクをこなしていくと、REPUTATION(REP)を獲得できる。このREPが溜まっていくとベンダーのレベルが上がり、売ってもらえる商品の幅が少しずつ増えていく。

 例えばフィールドで収集したアイテムや武器を収められるバックパック。ベンダーのレベルが上がれば大容量のものが追加され、より多くのアイテムを収納できるので結果的に一度の出撃で得られる収入が増えるというワケ。良いこと尽くめなので地道に辛抱強くタスクをこなしていくことが大事だ。

『Gray Zone Warfare』

■負傷システムもシビアだぜ!

 銃撃戦で被弾などをすると、出血や目眩、骨折などステータスに異常が生じて戦い辛くなってしまう。そういった場合は止血帯やガーゼ、サージカルキットなどを使用することでその場で状態を回復させることが可能だ。

 また、分隊行動中にフレンドが倒れた場合、死亡していなければ治療を行うことで戦線に復帰させることができる。ただし、寄ってきた敵を先に無力化するまでの間に死亡してしまうこともあるのでシビアだ。

『Gray Zone Warfare』
『Gray Zone Warfare』

 許容できないダメージや致命傷を受けるとその場で力尽きて、リスポーンを余儀なくされる。そうなるとセーフボックスに入れているアイテム以外は全てその場に落とし、FOBからの再開となるペナルティーが課せられる。

 再出撃後に自分の亡骸から再度アイテムを回収することは可能だが、ネットワークエラーで切断されて全ロスなんてことも多々あり、シンドいというのが正直な印象だ。まぁアーリーアクセスってことで今後の改善に期待ってところだろう。

『Gray Zone Warfare』

 で、無事タスクを終えたらFOBまで帰還して報告をすればコンプリート扱いとなり報酬を獲得。つまり「基地に戻るまでが作戦です」といった感じでゲームを進めていくのが基本なのだが、もちろん本作はこれだけではない。ソレについては次の段で説明しよう。

■緊張感がガン上がりのPvPvEモード

 前述したように本作は3つの勢力に分かれて遊ぶゲームだ。それぞれのプレイヤーの活動範囲が広がると当然ライバル勢力とかち合うこととなり、PvPvEモードだとほぼ交戦に発展するだろう。しかも、所属勢力と敵対勢力のプレイヤーとで見た目にあまり差がないためパッと見の判断で見分けることは難しい。

 いちおうマップを開けば味方の位置は表示されるのでそちらを確認しながら進めていくことは可能だが、四六時中画面の右側をマップに占拠されるのは非現実的。なので、何か不穏な空気というか物音が聞こえたらサッと味方の有無をチェックして、居なければ敵との遭遇戦に備えて立ち回る必要がある。

 で、いざ出会ってしまえば殺るか殺られるかの展開となり、倒せば敵の装備をガッポリ、倒されれば全ロス(セーフボック以外)のオール・イン状態に。特にタスクの帰りだったり、よさそうな装備を拾った帰りだと緊張感が半端なくアドレナリンが出っぱなしに。

 それで勝てればいいんだけど、状況によってはどうにもならず敵にブチのめされてしまうことも多々ある。やっぱ全ロスすると精神的なダメージは計り知れないし、この手のPvP要素による全ロスが苦手という人は心がポッキリ折れてしまうかもしれない。

 人によってはそういうのが嫌だと思うかもしれないが、本作は対人戦のないPvEモードでも遊ぶことが可能だ。他のプレイヤーからの妨害をあまり受けず、AIとの戦闘に打ち込みたいという人はPvEモードでコツコツとタスクをこなすといいだろう。

 PvEモードでは他の勢力のプレイヤー同士で撃ち合ってもダメージを受けないので、敵勢力圏内での一期一会というか、その場限りの共闘なんてことも結構ある。実際、筆者はマップのとある場所にあるシューティングレンジで他勢力のプレイヤーと共闘状態になり、最後はお互いの健闘を祝して食料品を交換して別れたことがある。う~ん、良い一期一会だった。

 なおPvPvEとPvEで使用するキャラクターは共通で、PvEで装備を整えてからPvPvEに挑んだりとまぁ好きなモードを遊べば良いんじゃないかと思う次第。ちなみに筆者は現状だとタスクを進めているために9割がPvEで残り1割が安い装備を持ってのPvPvEといった割合で遊んでいる。

■アーリーアクセス版の現状の課題

 前述した通り、本作はアーリーアクセスだ。そのため不具合と言わざるを得ないような不満点がいくつかある。ここでは正直にその点について言及していきたいと思う。

 まず最初にグラフィックのチューニングがまともにされていない点だ。筆者はCore-i9 12900kとGeforce RTX 3080を積んでいるのだが、それでも描画が重い。恐らく描画距離によるポリゴン数の変化や、ライティングなど細かい負荷が重なりまくっているのがひとつの要因だろう。
 
 次にネットコード。サーバーと通信している時に行う同期が上手く取れず、それが原因でクライアントが受け取る情報に遅延が生じて描画が遅れたりしている疑惑がある。もろもろの問題の積み重ねか、歩いてもすぐ引き戻されるラバーバンディングが生じやすい。まぁこの辺は今後最適化されていくのだろうけど。

 敵AIの挙動にも問題がある。例えばプレイヤーが遮蔽物に隠れてもこちらの位置を把握した行動をしてくる点。まぁなんというか「天然のウォールハックかよ」と突っ込みたくなるような挙動なうえに高い命中精度なわけで凄くシンドい。物音を聞きつけてから常にこちらの居場所を把握しているかのような移動もするので今後の調整に期待したい。
 
 まだまだ不満点はあるんだけど、筆者はすでに40時間以上プレイしており、概ね満足している。タスクを進めていくうちに自分の基地よりも敵勢力のほうが基地に近くなり、その分だけ攻略難度もリスクも上がっていく……というのは面白いポイントだと思う。

 対人が嫌であればPvEでじっくり遊ぶことも出来るので、PvPvEを強制されるようなエクストラクションシューターは苦手という人でも腰を据えて遊ぶことが出来るはずだ。


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著者近況: カレーが美味かった
編集者近況: 日本に帰ってきたんだけど、久しぶりの日本の梅雨と夏が怖い。あと冬も怖いし花粉症もやだなぁ。

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BRZRK
週刊ファミ通やファミ通Xboxに“スオミ松崎”名義で執筆していたFPS歴15年のフリーライター。現在は他媒体でも使用しているBRZRK(バーサーク)名義に変更し、執筆活動のほかにゲーム大会の実況・解説やインターネット番組に出演したりしなかったり。まぁ、そんな感じでイロイロやってます!

BRZRKの「うるせー洋ゲーこれをやれ」(仮)