往年のコマンド選択形式アドベンチャーゲームに影響を受けて作られ、レトロPCゲーム風なビジュアルや現代的なテーマで日本でも話題を呼んだMidBoss開発によるアドベンチャー『2064:Read Only Memories(2064: リードオンリーメモリーズ)』。その続編にあたる『Read Only Memories:NEURODIVER(リードオンリーメモリーズ:ニューロダイバー)』が、日本国内でも2021年に発売される。対応プラットフォームは家庭用ゲーム機とPCで、パブリッシャーはコーラス・ワールドワイトが担当する。

 本作の舞台となるのは、前作と同じくネオ・サンフランシスコ。新主人公は、超能力を持つエージェントES88。彼女は、“ニューロダイバー”と呼ばれる特殊な生命体を使って、他人の記憶に潜ることが可能。本作では、そんな彼女と、人の潜在意識に隠れる超能力犯罪者との戦いが描かれる。前作でもおなじみだった、遺伝子ハイブリッド弁護士のジェスやハッカーのトムキャット、さらには前作の事件後に刑事を退職し私立探偵となったレクシーなどの前作プレイヤーにはおなじみの顔ぶれも登場するようだ。

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ES88と“ニューロダイバー”と呼ばれる特殊な生命体。画面は英語版のものでなおかつ旧UI。本作は日本語完全対応で、なおかつ日本語音声にも対応予定!

 前作で好評だった、PC88、98時代を思わせるレトロなグラフィックや、FM音源を使ったミュージックは本作でも健在。グラフィックはより精彩に描き込まれている。さらには、ゲームに登場する生物・ニューロダイバー特有の機能を表現するために、前作からUI(ユーザーインターフェース)を一新。メニュー画面なども大きく変更されるという。

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こちらは新UI。

 かように期待も高まる同作だが、開発元であるMidBossのクリエイティブディレクター、ジョン・ジェームス(JJSignal)氏にメールインタビューをする機会を得たので、以下にお届けしよう。

記憶の捉えかたやその重要性が本作のテーマ 

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John James(ジョン・ジェームス)

MidBoss『Read Only Memories:NEURODIVER』クリエイティブディレクター

――『Read Only Memories:NEURODIVER』(以下、『ニューロダイバー』)のプロジェクトはいつからスタートしたのでしょうか? 2015年に『2064:Read Only Memories』(以下、『2064』)のリリース後すかさず、続編の開発を決意されたのですか? また、なぜ続編を作ることにしたのか、その理由をお教えください。

JJ『ニューロダイバー』の開発は、前作『2064』をコンソールでリリースした1年後の2018年から始まりました。この形になるまでに、かなりの数のシナリオ案を練りました。最終的に、そのままの続編を作りたくなかったため、同じ世界観と設定で、前作のキャラクターと新しい主人公を使い、別のストーリーを作り上げることにしました。

 このアイデアによって、シリーズを初めてプレイするユーザーでも、1作目をプレイすることなく、本作を楽しめるようになっています。一方で、1作目をプレイしたユーザーは、前作で出会ったキャラクターである、ジェスやトムキャット、レクシーの個人的な部分をより深く知ることができ、さらに多くの経験をすることが可能になっています。

 もうひとつのアイデアは、タイトルである“リードオンリーメモリーズ”を探求するというものです。それぞれの冒険は、新しいキャラクターや前作のキャラクターとの新しい体験になります。ネオ・サンフランシスコや未来のどこかでの新しい記憶というわけです。

 そして、新しい主人公であるES88は、彼女が駆使する特殊生命体の“ニューロダイバー”の名前の通り、記憶の中に直接潜ることができます。この、直接的には前作とストーリーがつながっていない続編の作りかたは、米国のマンガ出版社IDW Publishingによる『2064』短編コミックシリーズの制作にも反映されていて、そちらでは、2064年から数年後の『ニューロダイバー』のストーリーが始まる直前に、私立探偵となったレクシー・リバーズを軸に据えた話が描かれています。前作『2064』に対する『ニューロダイバー』の立ち位置と同様に、ゲームをプレイしなくてもコミックの世界を楽しめますが、ゲームをプレイしたほうがよりたくさん得るものがあります。

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画面は旧UIで英語版のものです。

――『ニューロダイバー』を開発するにあたってもっとも注力したポイントをお教えください。

JJまずは、物語に注目していただきたいです。本作では、ES88というエスパーコードと、彼女の同僚であるGATEと呼ばれる脳を制御するアンドロイド(BCA)に焦点が当てられています。彼らはともに“ミネルヴァ”という名前で知られている情報科学組織で働いています。ふたりに与えられた任務は、他人の記憶の中に身を隠している“ゴールデンバタフライ”と呼ばれる超能力者を追跡することです。

 ES88は、ニューロダイバーと呼ばれる生命体を使って、3人の記憶に潜ることになります。前作『2064』のメインキャストである、ジェス、トムキャット、 そしてレクシーです。彼女は彼・彼女らの記憶を修復し、記憶から追い出さなければいけません。

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ネオ・サンフランシスコでは、ゴールデンを名乗る者たちが暗躍している。名前の通り、黄金のボディと道化師のように派手な見た目をしている。外見だけでも、明らかに一般人ではなさそうだがゴールデンバタフライとは関係があるのか……?

――本作のテーマを教えてください。昨年ファミ通ドットコムに「僕はずっと、さまざまなメディアの物語に出てくるサイキック能力や夢に関する仕掛けの大ファンでした。愛する日本の古いスタイルのアドベンチャーゲーム、そしてそれらに影響を与えた漫画やアニメなどのことです」とコメントしてくださっていますが、“サイキック能力や夢に関する仕掛け”がテーマになるのでしょうか。また、“サイキック能力や夢に関する仕掛け”という点において大いに参考にしたエンターテインメント作品はありますか?

JJ『ニューロダイバー』のテーマは、記憶の捉えかたやその重要性、過去、それらが少しずつ歪んでいくことで、登場人物が自覚していないような不安などの問題が現れてくることです。その歪みや記憶は夢ではないのですが、夢のような論理性を持っていて、それがゴールデンバタフライの策略によって増幅されています。

 本作を開発するにあたっては、『パプリカ』と『カイバ』のふたつのアニメ作品には、記憶と夢の論理をテーマにする上でかなり大きな影響を受けました。映画『マルコヴィッチの穴』と『イグジステンズ』もミーティングの中で、ときどき取り上げられます。とくに、『イグジステンズ』は、ES88の相棒とも言える生命体“ニューロダイバー”の設定を考えるうえで、大きな影響を受けました。

――新しい主人公ES88について教えてください。彼女はどのようなキャラクターなのですか?

JJES88の名前は、NECのパソコン、PC-8801にちなんで名付けました。彼女は、強力なエスパーであり、ミネルヴァの新しいエージェントのひとりです。彼女の性格は少し気まぐれで子どもっぽいのですが、どんな仕事でも自分の思い通りにこなすことができます。彼女をサポートするのはGATEと呼ばれるBrain Controlled Android (BCA)です。彼らはとても仲がよく、どんな仕事でもいつもいっしょに行動します。ES88は、彼女のはちゃめちゃな能力を安定させるために、ミネルヴァに連れて来られました。

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――本作のストーリーの触りをお教えください。また、おなじみのキャラクターたちが登場しますが、主人公のES88とはどのように関わってくるのでしょうか?

JJゲームの始まりはゴールデンバタフライの事件に取り掛かる約1年から2年前の、ゴールデンバタフライとは関連のない事件から始まります。ES88とGATEは、誰かが自分のアパートに侵入した理由を解明するために捜査をおこないます。それ以外では、彼女がニューロダイバーを初めて使用するということ以外は、現時点ではお伝えすることはできません。

 これまでの登場人物である、ジェス、トムキャット、レクシーは、知らず知らずのうちにゴールデンバタフライの宿主となってしまっていました。過去の記憶に取り込まれ、徐々に記憶を歪めていく彼らの記憶を修復し、ゴールデンバタフライを追い出すために、ES88は彼らを助けなければなりません。そこには前作『2064』に見られたものよりも、さらに深くより親密な彼らの側面を見ることができます。さらに、前作をプレイした方にはおなじみのキャラクターも登場します!

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プロモーションイラストのES88(左)とGATE(右)。

――『ニューロダイバー』では、『2064』からUIを一新されるとのことですが、なぜ変更することにしたのですか? また、変更するにあたっての方針などをお教えください。

JJ昨年(2019年)、最初のトレーラーでお見せしたUIは、古いバージョンのUIをベースにしていました。しかし、開発期間が長くなるにつれ、そのレイアウトでは必要としているものがうまく機能しないことに気づきました。そこで私たちは改編するのではなく、新規で作り直すことを決めました。解像度は少し高く、16:9の解像度でプレイした場合、PCエンジンでプレイしているような感じに似ています。これによって、より大きなセットでも余裕を持つことができ、ゲーム内のニューロダイバー特有の機能をより柔軟に処理することができます。

 残念ながら、初期のコンセプト的なスクリーンショットを除けば、いまのところお見せできるものはありません。

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こちらが新UI(英語版)。マップやアイテムなどのアイコンが、画面の下部に並んで表示されている。

――今回、日本語版は音声も日本語対応するとのことです! 率直なご感想を教えてください。また、「この役は◯◯で◯◯を演じていた◯◯に担当してほしい」といった希望などはありますか?

JJ何度も考えたことがありましたが、ジェス、トムキャット、レクシーに関しては忘れてしまいました(笑)。『2064』の制作時は、『スペース☆ダンディ』のQTを演じた佐武宇綺さんの声がとても好きで、チューリング(前作登場のキャラクター)の声にはかわいくてよいかもと思いました。

――最後に、本作を楽しみにしている日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。

JJ超能力要素が入ったこの新しいアドベンチャーゲームでは、前作『2064: リードオンリーメモリーズ』からの古い友人たちと再会し、彼らについての個人的な部分をより深く知ることができますので、皆さまにお楽しみいただけると思います。日本のアドベンチャーゲームには何か特別なものがあると思っており、本作『ニューロダイバー』でそれが再現できていれば嬉しいです。また、『2064: リードオンリーメモリーズ』のファンアートを見て、とても励まされました。ありがとうございました!

『Read Only Memories:NEURODIVER』コンセプトアートを紹介

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Old Birds Concepts 2
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Crow_Profile_Roughs_wip
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