“ポケモン”と“初音ミク”によるコラボプロジェクト“ポケモン feat. 初音ミク Project VOLTAGE(ポケミク)”

 週刊ファミ通2024年1月25日号(2024年1月11日発売)では、“ポケミク”の特集を表紙64ページに渡って大々的に行った。特集では、企画に参加しているボカロPたちへのインタビューも掲載中。

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 そんなインタビューの中から、『ボルテッカー』を制作したDECO*27さん、『JUVENILE』を制作したじんさん、『ミライどんなだろう』を制作したMitchie Mさん&動画チームへのインタビューを、ファミ通.comにて全文を公開していく。

 今回は、『ミライどんなだろう』を制作したMitchie MさんおよびMV制作チームへのインタビューをお届け。初心者~上級者までポケモンに対する見かたが多角的なチームだからこそ作れるMVや楽曲へのこだわりに注目。

Mitchie M

2011年に『FREELY TOMORROW』をニコニコ動画に投稿し、VOCALOID楽曲としては当時最速で10万再生、100万再生を達成。 近年では『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』のテーマ楽曲や、『ラブライブ!サンシャイン!! × 初音ミク』のコラボ楽曲を担当。 調声技術には定評があり、初音ミクが人間さながらに歌う楽曲は海外でも高い評価を得ている。

波多ヒロ

イラストレーター兼マンガ家として、『ミスミさんは見透かせない』や『犬と勇者は飾らない』の作画を担当。また、姉弟による音楽ユニット“家の裏でマンボウが死んでるP”のメンバーでもある(竜宮ツカサ名義)。これまでにもMitchie Mの楽曲にイラストを提供している。『ミライどんなだろう』ではイラストを担当。(Xアカウント:@manbou_ane)

TSO(とさお)

2009年からボーカロイド楽曲のPV制作を始め、2012年に『Bad ∞ End ∞ Night』が大きな話題となったことをきっかけに、活動を本格化させていった。現在はSYNCHROTRONに所属。映像制作、イラスト、デザイン制作を生業としている。『ミライどんなだろう』では、おもに映像制作のディレクションを担当。(Xアカウント:@anarchylily)

ONda Yuki

フリーの映像クリエイター。ふだんはおもにVtuber関連の映像制作を手掛けている。映像クリエイターとしての初仕事は、Mitchie Mの代表曲のひとつである『ビバハピ』のカバーMV。その後2023年1月にはMitchie Mによる『少女Aに夜露死苦』の公式MV制作をTSOとともに手掛けている。『ミライどんなだろう』では、映像制作を担当。(Xアカウント:@1006_ten_six)

takeko

SYNCHROTRON所属のディレクター兼デザイナー。CGデザインやアニメーションなどをおもに手掛ける。個人としても、バンドのMV制作を中心に活動している。『ミライどんなだろう』では、映像制作を担当。(Xアカウント:@unagi_video)

Mitchie Mさん Xアカウント

楽曲制作のためにポケモンを1から猛勉強!

――まずは、今回の“ポケミク”コラボを知ったときの第一印象を教えてください。

Mitchie M初音ミク史上もっとも大きなコラボで、少し話を聞いただけでも「これはすごいことになるぞ」と思いました。さらに詳細を聞くと、18ものボカロPさんが参加されるということで、これまでにない企画内容に度肝を抜かれました。

――本日はMVの制作を手掛けた皆さんにもお集まりいただきました。制作チーム結成の経緯を教えてもらえますか?

Mitchie M今回はポケモンがたくさん登場する楽曲を作ろうと考えました。そうなるとイラストが大量に必要になるので、描くのがとにかく速くて、かつポケモンが大好きな波多ヒロさんがピッタリだろうと思い、いちばんにお声がけしました。以前、僕の別の楽曲で波多さんとTSOさんがいっしょに参加してくれた際に、すばらしい映像を作ってくれていたので、動画部分は続けてTSOさんにお願いした形です。

TSOその後、僕の方からONdaさんと、弊社のtakekoに声を掛けて参加してもらいました。

――イラストが大量に必要ということでしたが、ぜんぶで何枚くらい描かれたのですか?

波多ヒロだいたい60~65枚くらいだったと思います。100枚以上描くこともよくあるので、枚数で見るとそこまで多くないかなという印象でした。

――その量で少ないんですか……!? ちなみに1枚描くのにどれくらいかかるものなのでしょうか。

波多ヒロ今回はミクさんやポケモンだけで細かな背景などは描き込んでいないので、長くかかったものでも1枚30分くらいかと思います。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――長くて30分!?  想像していたより数倍速くて衝撃を受けました。

TSO僕も詳しい時間は初めて聞いたのでビックリです(笑)。素早い、上手い、おもしろい、最高の絵描きさんだと思っています。いつもありがとうございます。

波多ヒロいえいえそんな、こちらこそありがとうございます……!

――ポケモンがたくさん登場する楽曲を作ろうというのは、早い段階から決まっていたのですね。

Mitchie Mじつは最初にお話をいただいてから制作開始までにはけっこう時間がありまして、その期間にポケモンについて勉強したり、どうしたら多くの人が喜んでくれるのかを考えることができました。その結果、ポケモンたち1匹1匹に多くのファンがいることを改めて認識できたので、なるべくたくさん登場させようと考えました。

――具体的には、どのような勉強をされたのでしょうか?

Mitchie M僕は、いわゆるポケモン世代よりも少し上の世代というのもあり、正直に言うと、あまりポケモンのことに詳しくはなかったんです。ですので、今回の楽曲制作のためにどんなポケモンがいるのかをすべて調べたり、ゲームをプレイしたりしました。『ポケットモンスター 赤・緑』、『ポケットモンスター ルビー・サファイア』、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』、『ポケットモンスター X・Y』、『ポケットモンスター ソード・シールド』はクリアーしました。

――それらすべて、話を受けた後にプレイされたのですか!? 『ミライどんなだろう』はむしろ生粋のポケモンファンが作った楽曲なのかと感じる熱量でしたので、ポケモンに詳しくなかったという話を聞いて驚きましたが、圧巻の勉強量ですぐさま納得できました。

Mitchie Mたくさんプレイできる時間があって、助かりましたし、楽しかったです(笑)。

クリエイターそれぞれのポケモンとの想い出

――ここからはMV制作チームの皆さんにもお答えいただければと思います。シリーズ作品の中でとくに思い入れのあるタイトルや音楽を教えてください。

Mitchie Mでは思い入れが強いであろう波多さんからどうぞ。

波多ヒロポケモン』は子どものころから大好きで、シリーズ作品もほぼすべてプレイしているので、いっぱいありすぎて……。でもやっぱり、ベタなのですが『ポケットモンスター 赤・緑』のメインテーマがいちばん好きですね。個人的な話になってしまって恐縮ですが、子どものころに『劇場版ポケットモンスター ミュウツーの逆襲』を観に行ったとき、この曲のアレンジ版が映画館のきれいな音質で流れて、まだ本編が始まってもいないうちに泣いてしまったことがあるんです。今回も『ミライどんなだろう』のイントロがまさにそれで、初めて聴いたときはあのころと同じ涙が流れた感じがしました。

――ゲームもほぼ全作品プレイされているとのことですが、いちばんのお気に入りはどれですか?

波多ヒロ最新作の『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』です。今回は初めてのオープンワールドで、かつシンボルエンカウントだったので、草原や岩場にポケモンたちの姿がたくさんあるじゃないですか。あの光景が、子どものころに外で遊びながら妄想していた世界そのものだったんです。いまになってあの頃の夢が叶ったような気がして、すごくワクワクしました。

――あのころ、同じ夢を抱いていた少年少女はたくさんいたと思います。ちなみに、好きなポケモンもお教えいただけますか?

波多ヒロ子どものころはずっとリザードン推しだったんですけど、いまはスボミーが好きです。小さくて、護ってあげたくなるようなかわいさがあります。

――では続いて、TSOさんの好きなポケモンをお教えください。

TSO僕はフカマルが好きです。僕もMitchie Mさんと同じで、今回を機に勉強したのですが、『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット』でのハッサク先生とフカマル先輩の絡みがすごく好きでした。何を考えているのか読み取れない、何とも言えない表情がたまらなくかわいいです。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――着眼点がすばらしい!

TSOデザインも気に入っています。フカマルに限らずポケモンのデザインは以前からすごく好きだったので、ゲームはプレイしていなくても、資料集だけは買い集めていたんですよ。

――デザイナーさんならではの経験談ですね。takekoさんはいかがですか?

takeko私はヌオーとホゲータが好きです。

――ボーっとしているような感じのポケモンがお好きなんですね。ポケモンに関する想い出はありますか?

takeko3歳くらいのときに『ポケットモンスター 赤』を買ってもらって、子どもながらにプレイしていたのですが、タマムシシティの外にいるカビゴンの起こしかたがどうしても分からなくて。けっきょくそのまま進められなくなってしまったんです。『ミライどんなだろう』のMVで眠っているカビゴンが登場するのですが、今回は無事にポケモンのふえを使って起こすことができてよかったです!

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――ONdaさんからも、ポケモンとの想い出を教えてください。

ONdaシリーズ作品はぜんぶプレイしています。年齢的には『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』の世代なのですが、初めて遊んだゲームは近所のお兄ちゃんにもらった『ポケットモンスター 金・銀』でした。思い入れがある作品はたくさんあるのですが、中でも『ポケットモンスター オメガルビー・アルファサファイア』がとくに印象に残っています。当時は高校生だったのですが、ソフトの発売日が文化祭本番と被っていたんですよ。でもこれは文化祭よりポケモンだろうと、友だちと結託して文化祭を抜け出して買いに行き、本体もこっそり持ち込んで遊んでいたところ、しっかりとバレて先生に怒られました。

――よい子には真似しないでほしいですが、同じ状況なら同じ判断をしていたと思います(笑)。

ONdaいまとなってはいい想い出です(笑)。もちろん最新作もガッツリ遊んでいて、ポケモン図鑑もDLC(ダウンロードコンテンツ)含めてコンプリートしました。『ポケットモンスター スカーレット・バイオレット ゼロの秘宝』“後編・藍の円盤”の配信も楽しみです(※)! 通信対戦もやり込んでいて、ランクバトルでは、むしタイプのポケモンだけのチームでマスターボール級(最上級のランク)まで勝ち上がりました。

※取材日は配信前。

――すごいですね! 昔からむしタイプのポケモンがお好きなのですか?

ONdaはい。いつもストーリープレイ中から基本的にむしタイプのポケモンだけを仲間にして遊んでいます。新作をプレイするときは、どんなむしタイプのポケモンと出会えるのかワクワクしながら冒険を進めています。

TSOONdaさんの知識量には今回何度も助けてもらいました。このポケモンはこう動くとか、ゲーム的にこういう演出があるからMVではこうした方がいいとか、ポケモンファンならこうした方が喜んでくれるとか、アドバイスをいただきました。ONdaさんがいてくれてよかったと思います。

各人のこだわりがこれでもかと詰まった楽曲&MV

――続いて、楽曲についてお訊きしたいと思います。今回の制作を通じて、ポケモン音楽の魅力はどんなところだと感じられましたか?

Mitchie M『ポケットモンスター 赤・緑』の8bit的な音楽から始まって、『ポケットモンスター ダイヤモンド・パール』ではニュー・ウェイヴ的な感じ、『ポケットモンスター X・Y』ではオーガニックなバンドっぽいものだったり、オーケストラだったり。作品によって音楽の傾向が変化するのがおもしろいですね。また、ゲーム体験と音楽が一体化していることで、音楽を聴き直すとプレイしたときの想い出がよみがえってくるのも魅力のひとつだと思います。そして、そんな感動的な音楽が数えきれないほど存在しているのが本当にすごいです。

――ポケモン音楽を引用しての楽曲作りは、ふだんの制作とは異なるものだったと思います。制作はどんな流れで進行したのでしょうか。

Mitchie Mまずは資料としていただいたすべての曲を聴くことから始めました。その際に使いたい曲をリストアップしておきつつ、つぎにファンの皆さんのあいだで人気の曲を調べました。たとえばラップ部分で使用している『戦闘!チャンピオンアイリス』(『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』)はかなり人気が高く、僕も実際に聴いて気に入っていたので、絶対に使おうと決めていました。

――『ミライどんなだろう』というタイトルに込めた意味をお教えください。

Mitchie M初音ミクとポケモンとのコラボということで、ミクといえば未来。未来といえばポケモンでいうとミライドンということで決めました。あとは子どものころの未来に対して抱いていたワクワク感を表現しつつ、ポケモンや初音ミクの将来に対する期待を込めました。

――『ミライどんなだろう』は歌詞も特徴的ですよね。最初に仰っていたようにポケモンがたくさん登場するだけでなく、ポケモンの名前を使った言葉遊びもおもしろいです。歌詞に入れるポケモンを選んだ基準などはありますか?

Mitchie Mありがとうございます。歌詞として入れられそうなポケモンをリストアップしてから意味が通じるように組み合わせていったのですが、なるべく多くの人になじみがあるであろうポケモンを優先して入れるようにしました。結果的に、カントー地方に登場するポケモンが多くなっています。

――とくにご自身で気に入っているフレーズはありますか?

Mitchie M2コーラス目Bメロの「博士曰く僕と君の友情はまだつぼみだから」という歌詞は、全節がきれいにポケモンの世界観を表現できていて気に入っています。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り
【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――“まだつぼみ”とマダツボミもそうですが、“曰く”をイワークにするのがおもしろいですよね。皆さんは、初めて楽曲を聴いたときどう思われましたか?

波多ヒロ感動して泣いてしまいました……なんだか私、泣いてばかりですね(笑)。「みんな大好き」というフレーズがとくに気に入っていて。言葉自体はシンプルですが、ポケモンへの愛や音楽の楽しさ、楽曲の賑やかさなどがぎゅっと詰まった素敵な歌詞だなと感じます。最初と最後に1回ずつあるところもまたよくて、楽曲全体を「大好き」で包み込んでいる感じがするんです。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

TSO最初はMitchie Mさんの楽曲として、シンプルにいい曲だなと思いました。そこから何度も聴き込んでいくにつれて、だんだんと楽曲に込められた意味や歌詞の奥深さを理解していって、いまでは最初の100倍くらい感動しています。

ONdaTSOさんとの打ち合わせ中に聴かせてもらったのですが、その場で泣いてしまって。こんなにもすばらしい楽曲に自分が映像を付けるんだと思ったら、なんだかずっと夢を見ているような気分になってしまっていました。動画が公開されるまで、実感がわかなかったです。

takeko子どものころから知っているポケモンたちがたくさん出てきて、感情が“かわいい”と“楽しい”で埋まっていく感じでした。まるでテーマパークのアトラクションに乗っているような印象で、すごく楽しい気持ちにしてくれる曲だなと感じました。

――MV制作チームの皆さんが、ご自身が担当された部分で、こだわったところや気に入っているところをそれぞれ教えてください。

ONdaひとつはカイオーガとグラードンが出てくるシーン。とくにカイオーガの赤いラインが光る演出は、あえて資料を確認するのではなく自分の中に残っている記憶を頼りに組み上げました。当時感じた畏怖の念をそのまま表現できたと思います。

 もうひとつは、随所で挟まれるホウオウの合いの手です。ホウオウをああいう形で合いの手に使うMitchie Mさんのセンスが本当にすばらしいと感じたので、後ろに太陽を背負わせたりと、どうにかホウオウの伝説のポケモンとしての偉大さを感じられるように工夫しました。あとは、むしポケモンが好きなのでバタフリーが出るカットは作り終わってから自分で「かわいいね~」と拍手していました。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り
【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

波多ヒロすごく楽しい楽曲なので、ミクさんやポケモンたちにも楽しそうにしてもらいたいというのをいちばんに意識していまして、できる限りみんな笑顔で描かせていただきました。マダツボミとミクさんがいっしょに歩いているカットがお気に入りでして、マダツボミがミクさんを見上げてニコっと笑っているんですよ。自分で描いておいてですが、めちゃくちゃかわいいです!

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

takekoムゲンダイナが出てくるシーンです。かわいらしいポケモンたちがたくさん出てくる中で、ムゲンダイナは伝説のポケモンで、たかさが20メートルもあるポケモンです。いかに強大でかっこよく見せるか、TSOさんとも何度も話し合って、時間をかけて作ったので愛着があります。大きいのでゆっくり動かすのですがシビアにタイミングを調整したり、土煙のニュアンスをこだわったり、アニメの撮影技法を多数取り入れたりもして、結果的にかなりダイナミックに動かせたと思います。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

TSOラップパートが自分の担当だったのですが、ここだけはポケモンの公式イラストを使用していて、それに楽しんでもらえるよう動きをつけさせてもらいました。それと、ラップの最後にあるモンスターボールを投げるカットがとくにお気に入りで、企画段階からアニメーションにしようと決めており、波多ヒロさんにコマを描いてもらうよう依頼をしました。楽曲全体で見たときに緩急の急にあたる部分で、すごく盛り上がるシーンなので情報量が大きくなるようにコントロールしています。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――皆さんのこだわりが詰まったMVを見て、Mitchie Mさんはいかがでしたか?

Mitchie M本当に感動しました。僕のこれまでの作品の中でも最高の出来だったと思います。僕の方から追加の指示をすることもとくになかったのですが、そこからさらにクオリティを上げていってくれて、まさしく理想のMVになったと感じています。

TSOtakekoとONdaさんのふたりが、とくにモチベーションが高くて、最後の最後まで微塵も手を抜かずに走り切ってくれました。僕ももうOKじゃないかと思ったところから、さらにもう1段階ブラッシュアップしてくれていて、僕のディレクション以上の仕事をしてくれました。

――MVの中で、とくによかった部分はどこでしょうか?

Mitchie Mミクがラプラスに乗っているシーンがよかったですね。ダイナミックで、ミクの表情もかわいくて、その後ファイヤーが頭上を飛んでいるという構図の移り変わりも含めて気に入っています。

マニアックな小ネタもすべて見つけるポケモンファンの熱量に脱帽

――視聴者の方からたくさんの反応があったと思いますが、ご覧になってどう思われましたか?

Mitchie Mポケモンファンの熱量がものすごいというのが何よりも最初の感想でした。どこに何が使われているっていうのを探してコメントしてくれる方がたくさんいらっしゃいますが、「これは絶対に気付かないだろう」と思っていたところもぜんぶ拾われているんです。

――ちなみにどの部分ですか?

Mitchie Mたとえば、シオンタウンのBGM。短い音のシークエンスなのですが、リズムの入るタイミングも違うし、さすがに分からないだろうと思っていました。でも、やっぱりわかる人はわかるんだと感心させられましたね。

――明るい曲調もあってシオンタウンらしくはないので、本来であれば気付きにくい部分ですよね。皆さんはMVに入れ込んだこだわりや小ネタのようなものはありますか?

波多ヒロポケットモンスター』シリーズのキャラクターは目の形や陰の付けかたに特徴があると思っていて、ミクさんを描くときには寄せるように意識しました。コメントを見ると多くの人が細かなこだわりを感じ取ってくださっていて、感謝でいっぱいです。

――「公式かと思った」という旨のコメントもたくさんありましたね。

波多ヒロうれしいかぎりです! ほかのこだわりでいうと、ミクさんがポケモンの世界を楽しんでいる雰囲気が伝わるように、全身でリアクションをしてもらっています。たとえば「なみのりだミズゴロウ」のところは、ミクさんもいっしょになみのりをしちゃっている様子を描いたんです。ミズゴロウが大きく映っているシーンなのであまり気付かれないかなと思っていたのですが、たくさんの方が気付いてくださっていてうれしかったです。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

TSO僕は今回ポケモンの勉強をしていて衝撃的だったことがありまして、それはマーイーカを進化させるにはゲーム機本体を逆さまにひっくり返した状態でレベルアップさせる必要があるというものです。「そんな進化条件があるんだ!?」と驚かされたので、小ネタとして入れてあります。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――特殊な進化条件の代表的なポケモンですよね。自力で分かった人がいたら本当にすごいと思います。

ONda僕のところで言うと、ライチュウとムチュールがバトルするシーンで、ライチュウのHPが少しだけ減っているんです。これは、このシーンにいたるまでの過程でたくさんバトルを重ねてきたというのを表現したつもりです。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

ONdaそれと、フシギソウのはっぱカッターのエフェクトにものすごくこだわっています。というのも、僕ははっぱカッターという技が昔から大好きなんです。まず葉っぱがふわっと舞って、それを飛ばして攻撃するという2段階のモーションがそれぞれ気に入っていて。ただ、はっぱカッターって作品によってエフェクトが変わっているんですよね。とくに後半の葉っぱが飛んでいくエフェクトがけっこう違うんですよ。個人的に好みなのは、葉っぱが三日月状になってクルクル回転しながら飛んでいく『ポケットモンスター ルビー・サファイア』のエフェクトです。

――たしかにMVでも三日月状になって飛んでいましたね。

ONdaそうなんですよ。でも、フシギソウといえば『ポケットモンスター 赤・緑』で初めて登場するポケモンですし、その要素は入れてあげたくて。なので、葉っぱが舞う方は『ポケットモンスター 赤・緑』を、葉っぱが飛んでいく方は『ポケットモンスター ルビー・サファイア』をそれぞれオマージュすることにしました。楽曲がたくさんのシリーズの音楽で構成されているので、僕の担当箇所はなるべくそのポケモンの初登場作品のエフェクトを入れるようにしています。本当にいろいろと入れたので、ぜひもう一度見直してみていただきたいです。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り
【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

TSOこだわりとは少し違いますが、ドードーがドードリオに進化するシーンで、いただいたイラストが♂が♀に進化してしまっているとONdaさんが指摘してくれたことがありましたよね。僕も知らなかったのですが、ドードーとドードリオは♂と♀で首の色が違うんですよね。

ONda見たときはすこし違和感があっただけなんですが、調べてみたらやっぱり違うなとなって慌てて連絡して、直してもらいました。

TSOそのときに、本当にすごい人だなと改めて思いました。

――その違和感に気付けるのが本当にすごいと思います。takekoさんはいかがですか?

takekoラップに入る前にホミカ(『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』タチワキジムリーダー)の「1、2、3、4」というカウントがあるのですが、それに合わせてポケモンたちが4匹出てきます。それぞれ、1がピカチュウ、2がイシツブテ、3がナッシー、4がフシギソウなんですが、ピカチュウはしっぽが1本、イシツブテは腕が2本、ナッシーは頭が3つ、フシギソウは葉っぱが4枚という風に、じつは対応させているんです。

※『ポケットモンスターブラック2・ホワイト2』のタチワキジムのBGMの冒頭には、ホミカと思しき声で「1、2、3、4」というカウントが入っている。『ミライどんなだろう』には、その部分が引用されている。

TSOそうだったんだ、すごい!

Mitchie Mこれは僕もいま初めて知りました(笑)。

【ポケミク】『ミライどんなだろう』Mitchie Mさん&MV制作チームにインタビュー。“ポケモン感”を詰め込むための過程とは。多角的なチームだからこその作品作り

――いまさらっと話題に出ましたが、ホミカと思しき「1、2、3、4」もゲーム内では特殊な手順を踏まないと聴くことのできない音声ですし、本当にいたる所にポケモン愛に満ちたネタが散りばめられているんだなと感じます。何度聴いても、またもう1度聴きたくなるすばらしい楽曲、そしてMVです。

Mitchie Mありがとうございます。ぜひ何度も聴いていただければうれしいです。

――それでは最後に、読者の皆さんにおひとりずつメッセージをお願いします。

波多ヒロまずは、視聴していただいたすべての方に、本当にありがとうございますとお伝えしたいです。再生するたびに新たな発見があると思いますので、ぜひ何回も観て、聴いていただきたいです。私の「ミクさんとポケモンが大好きだっ!」というシンプルな気持ちを直球で叩き込みました。同じミクさんファン&ポケモンファンの方に共感していただけるとうれしいです。

TSOたくさん観て、聴いていただきありがとうございます。ゼンリョクを込めた制作ができて満足しています。波多ヒロさんのイラストを湯水のように使い、細かいネタもたくさん入れて、すばらしい出来になっていますので、ぜひこれからも末永く楽しんでいただければと思います。

ONdaここではあえて“ポケモントレーナーの皆様”と申し上げます。ご視聴いただき、ありがとうございます。この楽曲が、もう1度冒険してみようかなとか、ポケモンを始めてみようかなと思うきっかけになっていたらうれしく思います。いろいろな小ネタについても、プレイしてみて初めて気付くものもあるかもしれません。ぜひゲームといっしょに楽しんでみてください。

takekoたくさんの人にご視聴いただいて、そして喜んでもらえて、本当にうれしいです。私自身、制作中もずっと楽しく参加させていただきました。ありがとうございました。定期的に見返しながら、今後もずっと楽しみ続けていただける作品になっていたらいいなと思います。

Mitchie M先にひとつ、株式会社ポケモンさんや関係者の皆さんにお礼を言わせてください。歌詞の英訳をすばらしいクオリティで仕上げてくださって、ありがとうございます。ポケモンの名前もバッチリ入っていて、本当にすごいです。感激しました(※)。

 改めまして、本当にたくさんの方に観て、聴いていただけて、たいへんうれしく思っています。この楽曲、そしてMVをきっかけにポケモンを遊んでくれる人がさらに増えることを願っています。そして、この初音ミク史上最大規模の壮大な企画は、まだまだ続きます。これからもボカロPさんたちが続々とすばらしい作品を出してくれますので、楽しみにしていただけたらと思います。

※『ミライどんなだろう』Youtube動画の字幕で英語を設定することで、英訳を見ることができる。

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