“eスポーツ”と聞いて、まずなにを思い浮かべるだろうか。熱気あふれる会場のステージ。トップレベルのプレイヤー同士がゲームで対戦し、優勝者が決まった瞬間には拍手喝采。そのような大会の1シーンが真っ先に浮かぶ人が多いかと思う。
だが、昨今“eスポーツ”という単語は多様化を極めている。そもそもスポーツにおいても、たとえば野球はプロ野球がすべててというわけではなく、親子が休日にキャッチボールで遊ぶ微笑ましい光景だって野球であり、楽しいものだ。筆者はeスポーツもまた、プロ競技のみに終わらないものと考えている。
ゲームが持つ多様性、そしてそれを題材としたeスポーツの可能性は、突き詰めればどこまでも広がっていく。そんなeスポーツのさまざまな側面をオンライン、オフラインの両方から“体感”できるイベントがあった。2024年1月26日(金)から28日(日)の3日間にわたって開催された“東京eスポーツフェスタ2024”だ。
イベント会場を歩き回ったところ、さまざまな取り組みを確認できた。eスポーツをどのように体現し、どのように普及していくのか。さまざまな試みをぜひご覧あれ。
大会はやはり盛り上がる。競技としてのeスポーツの魅力
イベント会場となった東京ビッグサイトでは、下記の6タイトルで“東京都知事杯”を巡る競技大会が開催された。
『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』一般部門&親子部門
『モンスターストライク』一般部門&親子部門
各部門で優勝し、東京都知事杯を手にしたのは以下の皆さんだ。各部門ともに激戦を制しての優勝となっており、数々のドラマを魅せてくれた選手たちには心より拍手を贈りたい
- 『WBSC eBASEBALL パワフルプロ野球』:ショーラ選手
- 『グランツーリスモ7』:とかり選手
- 『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』一般部門:kazermiyaび選手
- 『太鼓の達人 ドンダフルフェスティバル』親子部門:チーム“しはる親子”
- 『パズル&ドラゴンズ』:となかい選手
- 『ぷよぷよeスポーツ』:ともくん選手
- 『モンスターストライク』一般部門:チーム“えすかるご!?”
- 『モンスターストライク』親子部門:チーム“リトルバード”
大会中は現状無敗の選手による圧巻の優勝など、競技シーンらしいドラマは当然見られた。そのなかでも、個人的で恐縮ではあるが筆者が一番胸を打たれたのは『モンスト』親子部門の決勝戦だ。
チーム“リトルバード”は2022年、2023年も『モンスト』親子部門に出場。決勝の檀上でも以前の大会と同じく、じつに楽しそうに親子でハイタッチを交わしながらのプレイを見せる。以前の大会からこの日まで、親子で『モンスト』を楽しく遊び続けてくれていたのだと思うと、嬉しさで目頭が熱くなる。
配信アーカイブ
試合の模様は東京eスポーツフェスタ公式YouTubeチャンネルのアーカイブで視聴可能。なお、『ぷよぷよeスポーツ』のアーカイブはセガのぷよぷよ公式チャンネルにアップロードされている。
東京eスポーツフェスタ2024 メインステージ DAY2
東京eスポーツフェスタ2024 メインステージ DAY3
【アーカイブ】セガ公式大会「ぷよぷよカップ」in 東京eスポーツフェスタ2024
京王電鉄主催の『ストリートファイター6』大会
今回の会場で開催された大会は東京都知事杯だけではない。メインステージ以外の各出展ブースでも、おもしろいイベントが開催されていた。
なかでもとくに盛り上がりを感じたのが、TechnoBlood eSportsとユウクリ、京王電鉄が共同で開催した“KEIO CUP STREET FIGHTER 6”だ。『ストリートファイター6』は公式戦の新シーズン目前。もともと『スト6』に注目が集まるタイミングでもあったが、それ以前にステージの作りがいいのだ。
スポンサーも全力でイベントに食い込んでくるこの姿勢がすばらしい。大会中はウィナー側のトーナメントを“京王ライナー”や“通勤快速”、ルーザー側を“各駅停車”と例えたり、“乗り換え”や“車庫にぶちこむ”などの表現が飛び出したりと、司会陣のセンスも脱帽ものだった。
もちろん試合は真剣勝負なのだが、全体を通してレクリエーション風というか、“前のめりに楽しんでやろう”という雰囲気が感じ取れる。笑いが絶えないeスポーツというのもいいものだ。
大会の内容自体も見どころ満載。ふ~ど選手をはじめ、言わずと知れた強豪選手が多数活躍したほか、モダンスタイルのケンという意外なキャラを使いながら快進撃を見せたくらま選手が新たなスターとして喝采を受ける。
入場無料でこれほどの大会を生観戦できるとは、いい時代になったものだ。このおもしろさをきっかけに『スト6』や競技シーンに興味を持ってくれる人も多いだろうと、確信できる大会だった。
KEIO CUP STREET FIGHTER 6
深く考えればどこまでも進化するeスポーツの“発表”の場
ゲームを競技として扱い、真剣勝負を行う。大会の観戦はやはりおもしろいものだ。当該のゲームを楽しんでいるプレイヤーなら自分のプレイの参考にでき、そうでなかったとしても選手のがんばりやドラマを感じ取れる。
それらに加え、会場内ではさまざまな方向からeスポーツシーンの現在を体験できた。ゲームに対する出展各社のアプローチは、これまでとは異なる広がりを見せているのだ。
体験ブース
誰でも都知事杯のゲームタイトルを体験プレイできるブース。こちらでも親子や友人同士、カップルなどでゲームを楽しむ様子が見られた。人が楽しそうにプレイしている様子を見るだけでも、そのゲームへの興味が湧くというものだ。
学習企画エリア
『ぷよぷよ』と『マインクラフト』を用いたプログラミング体験コーナーが設けられていた。実際のゲーム内での動きを見ながら、ゲームやゲーム内オブジェクトが完成していくまでのプログラミングを学習できる講座を実施。
講座以外の時間ではブース内でゲームを自由に体験でき、学習成果をより深めることができた。また同ブースでは、『マイクラ』配信で人気を博すYouTuberドズル氏との交流イベントも開催された。
メインステージ&ビジネスステージ
当イベント初日のメインステージでは開会式に続いて、出展事業者がeスポーツ関連産業の活性化に向けた新規サービスのプレゼンテーションを行ない、審査によって評価するというビジネスピッチコンテストが開催。
さらにその後には、サウジアラビアのeスポーツ市場を解説するというビジネスセミナーが開催された。知らない人には驚きの連続が待つこと間違いなし。詳細は別記事で紹介しているので、ぜひご一読いただきたい。
ビジネスステージでは、各出展企業や講師によるセミナーステージが数多く開講された。2日目の“アンチドーピング”をテーマにした講義や、3日目の“ゲーム”と“eスポーツ”の境界についての対談、複数の観点からeスポーツにアプローチする講義など、内容盛りだくさん。競技シーンにいるゲーマーのみならず、選手たちを応援する人や日常的にゲームを楽しむ人に取っても考えさせられる内容である。
東京eスポーツフェスタ2024 ビジネスステージDAY1
東京eスポーツフェスタ2024 ビジネスステージDAY2
東京eスポーツフェスタ2024 ビジネスステージDAY3
コミュニティステージ
コミュニティステージでは3日間を通してバラエティー色の強いイベントが開催された。著名人を招いてのエキシビジョンマッチやライブパフォーマンスなど、その場にいるだけでわくわくしてくる催し多数。
『スーパーボンバーマン R』を使った企業対抗戦やゲストアーティストによる対戦は、肩の力を抜いて笑いながら観覧できる展開も多かった。アーティストのファンからしたら、ふだんとは少し異なる側面を見られたのではないだろうか。
こういうエンターテインメントを通じてゲームを知らない層に興味を持ってもらうというアプローチも、なるほど確かに効果的だと感じた。
3日目には『IdentityV 第五人格』“悪夢の影”モードを使った試合を実施。プロチーム代表と一般決勝進出者の計8名がしのぎを削る。終了後には『IdentityV 第五人格』について、プロゲーマーにさまざまな質問を投げかけるトークステージも開催さ
東京eスポーツフェスタ2024 コミュニティステージDAY1
東京eスポーツフェスタ2024 コミュニティステージDAY2
東京eスポーツフェスタ2024 コミュニティステージDAY3
ライブステージも大盛況。eスポーツもまたエンタメの一部
今回のイベントではさまざまなアーティストによるライブステージも開催。とくに2日目はDJステージやダンスパフォーマンスなども交え、多岐に渡る出演者の熱演が続いた。
筆者はスケジュールが合わず、じっくり楽しむことができなかったのだが、音楽に身をゆだねて踊るのが好きな担当編集者いわく「ずっと踊っていたかった」とのこと。そうとう楽しかったらしい。
コミュニティステージの紹介でも触れたとおり、今回のイベントではライブに出演してくれたアーティストの皆さんが『スーパーボンバーマン R』を楽しく遊ぶ姿も見られた。ファンに嬉しいステージなのはもちろん、ゲームを知らないアーティストのファン層と、アーティストを知らないゲーマー層がお互いに興味を持ち合える試みだったように思う。
出演アーティスト(敬称略)
- LIL'J
- DJ CHARI
- Sound's Deli
- すーたむわーるど
- DJ NORIO
- DALU
- Jinmenusagi
- REAL AKIBA BOYZ
- DJ小宮有紗
- つんこ
- かめりあ
- ヒゲドライバー
ライブの模様
※記事内の画像には配信のキャプチャー画像を一部に使用しております。