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『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』三日月・オーガス役の河西健吾さんに聞く! 三日月を演じる喜びと不安と(インタビュー・後編)

公開日時:2016-05-20 19:00:00

●『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第1期を終えて 三日月・オーガスを振り返る

 稼動5周年を迎える『ガンダムトライエイジ』のアニバーサリーイヤーを盛り上げるため、トライエイジ研究所に『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』で三日月・オーガスを演じる河西健吾さんが登場。後編となる今回は、先ごろ終了した『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』第1期のアフレコエピソードを中心にお届けする。

※インタビュー中で『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』の内容に触れた箇所、いわゆるネタバレがあります。同作を未見の方はご注意ください。

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――先ほど『機動武闘伝Gガンダム』が好きだとおっしゃっていましたが、ガンダムは好きで昔から見ていらっしゃった感じですか?

河西 そうですね。厳密に言うと『機動戦士Vガンダム』が最初だと思うんですけど、頭から最後まで通してちゃんと見たというのは『Gガンダム』が最初ですね。そこから『新機動戦記ガンダムW』や『機動新世紀ガンダムX』など、欠かさず見るようにはしていました。

――『ガンダム』のどんなところに惹かれたのですか?

河西 『Gガンダム』の影響が強いので、熱い戦いだったりだとか、「ガンダムなのに生身で戦っているぞ」、みたいなところが(笑)。あとは、ゲームなどを遊んでいて、「『ガンダム』はこういうものだよ」というイメージがあったのですが、そこをいい具合にぶち壊してくれたのが『Gガンダム』ですね。ぼくは、その辺が好きですね。『鉄血のオルフェンズ』にはビーム兵器が一切出てきませんし、戦いかたが鈍器で殴るっていうところは『Gガンダム』に近くて、そのへんも好きですね。

――今日はアニメ『鉄血のオルフェンズ』のお話も聞きたいのですが、三日月役は、どのような形で決まったのですか?

河西 オーディションです。そのときはまだモビルスーツの絵はなくて、キャラクターの相関図とセリフだけがあって、それで演じました。いまの三日月とは全然違う、年相応な少年という感じでしたね。そうしたら「彼はもっとクールな役なので」というディレクションがあって。自分の中ではクールな役だとは思っていなかったのですが、自分が考えるクールな役を提示したら受かった……という感じです。

――オーディションが受かったのはどのような形で知ったのですか?

河西 マネージャーさんからの電話で知りました。ふだんは事務所から連絡が来るので、珍しいなって(笑)。「なんだろうな」と思って電話に出たら「決まりました、おめでとうございます!」って。ただ、公式発表までは誰にも言えなかったので、少し悶々としました(笑)。『ガンダム』で、しかも主人公で……というのは、すぐさま親にも報告したいし、友だちにも言いたいし……。うれしかったですけど、言えない苦しさというのはありました。発表後はいままで来たこともないようなリツイート数が来たりして、『ガンダム』ってすごいコンテンツなんだなって改めて認識しました。

――三日月役が決まったときの、ご両親やお友だちの反応はどんな感じでしたか?

河西 すごく仲のいい十年来の友だちは反応が薄くて。おそらく、端役で受かったと思っていたんでしょうね。「主役だよ」って言ったら、「えっ!?」って驚いた反応が返ってきました(笑)。たとえ見たことがなくても、どの世代にも“ガンダム”っていう名前は浸透していると思うので、反応はすごかったです。両親はアニメには詳しくないんですけど、父親からは「ラジオ聴いたぞ」とか、「イベントで香港に行くらしいけど、クーデリアとはいっしょに行くのか?」みたいなメールが。

――(笑)。

河西 すごく調べてくれていて。気にしてはくれていますね。

――三日月の演技に関して聞かせてください。三日月は最初から確固たるイメージがあった感じでしょうか? それともスタッフや音響監督とやり取りして固めていったのですか?

河西 監督さんから「こうやってください」、「ああやってください」っていう具体的な演技指導はなくて、ぼくが作ってきたものに対して、そのシーンで、その演じかたは「三日月っぽくない」となったところを修正する感じです。ぼくが持ってきたものを主体にしてもらって、いびつなところはそぎ落としてもらいつつ、三日月の形を作るという、ある種パズルをしているみたいな、1ピース1ピースをはめ込んでいくような作りかたでした。三日月は、アニメが始まった当初は何を考えているかわからない感じだったんですけど、話数進むごとに周りやヒロインのクーデリアともだんだん打ち解けてきて、後半はすごい人間味が出てきたので、そこからはちょっとだけ人間味に寄せた演技を心掛けて演技をさせてもらいました。第1話ではクーデリアとはしなかった握手を、最終的には三日月の側から求めるようになったのは、とても印象的でしたね。

――最初のぶっきらぼうな感じの基本線は守りつつも……?

河西 そうですね。三日月は戦いになってしまうと敵に関しては無関心というか、とりあえず戦って倒すということが前提なので、戦闘時の演技に関しては昔のままというか。仲間が危険に晒されたら怒って感情を露わにするっていうところは変わってないと思います。

――河西さんは三日月というキャラクターをどのように分析していますか?

河西 うーん……最初は……

――わけがわからないキャラだった?(笑)。

河西 (笑)。自分が仲間と認めている相手に対してはけっこう軽い感じでしゃべっているシーンもあったんですが、自分が認めていない“他人”に分類される人たちには無関心というか。名前も覚える気がない(笑)。その中で気になる人、マクギリスだったりとかガエリオだったりとか、気になる人に対しては独特の愛称をつけて彼なりに覚えているんだなっていうのはありますね。

――メリハリが激しい感じ?

河西 そうですね。急にボルテージが上がったり、冷めているときは全然反応しないとか、(感情の)上がったり下がったり、起伏があるのかなとは思います。

――河西さんのそばに三日月がいたらどうなりますか? 好きになるのか、それとも嫌いになるのか。

河西 どう接すれば仲よくなれるかがわからないですね(笑)。クーデリアは根気よくつきあってあそこ(本編後半)まで持っていったんだなと。けっこう根気がいるんだろうなという気はします。

――演じているときも「クーデリアはがんばっているなあ」と思ったりしますか?

河西 それはないですね。演じているときは役で精一杯なので。ただ、もうひとりのヒロインのアトラあたりと話しているシーンの台本のト書きに“めんどくさがって適当に返す”って書かれていたりするので、内心はけっこう(笑)。「こう言えば喜ぶんだろうな」と思って話しているっていう、書きかたがされていましたね。

――最初はパズルを作っていくような感覚で役作りをなさっていたということですが、だんだん“三日月”という演技の形が出来上がり、アフレコの後半はセリフのニュアンスなんかはディレクションなしで意思の疎通ができた、という感じでしょうか?

河西 そうですね。コイツだったらこのシーンはこういう風に言うだろうな、っていうのは台本を読んでいてなんとなくわかりました。でもいちばん「三日月はこうだから」って言われたのは、22話でオルガが意気消沈しているのを立ち直らせるシーンですね。ぼくは声を張り上げて奮い立たせようとする演技をしたのですが、監督さんから「いや三日月はこうじゃなくて、感覚としては一点を見つめて、相手の逃げ道をふさぐような、相手を追いつめるような感じでしゃべってください」と言われました。

――『鉄血のオルフェンズ』のアフレコの雰囲気はどんな感じだったのでしょうか?

河西 最初の数話は「『ガンダム』をやっている」っていうピリッとしている感じもあったんですが、回を重ねるうちに和気あいあいした雰囲気になりました。ライド役の田村睦心さんが、すごいライドっぽいというか、場を盛り上げてくれる人で。現場が終わったあとに「飲みに行く方、いますか!?」って声をかけてくださって。そこからだんだんとみんなで終わったあとにご飯に行くようになりましたね。

――『鉄血のオルフェンズ』は話が進むにつれて、だんだん重い話になっていきましたが、それが収録現場や飲み会に影響したりとかはありましたか?

河西 1話で鉄華団の少年が死んだときなんかはそんな余裕はなかったんですけど。収録を楽しむ余裕ができてからは、そうですね、フミタンが亡くなったときの収録なんかは……。別にお通夜という雰囲気ではなかったですけど、スタジオでクーデリア役の寺崎(裕香)さんはじめ女性陣がわんわん泣いていて。男性陣はポカーンとしていて。「そんなに泣くか!?」って(笑)。まあ気持ちはわかるんですけど。その収録後にみんなで飲みに行ったときは、監督からフミタン役の内山(夕美)さんに花束贈呈があったりしましたね。それから主要なメンバーが退場したときはみんなで送り出す、みたいなことはやっていました。

――台本をもらったときに話の展開に驚いたことはありますか?

河西 いちばん「あ、こうなるんだ」と思ったのは、ビスケットが死ぬときの話がちょっときつかったです。『鉄血のオルフェンズ』の役者陣やスタッフのLINEグループみたいなのがあるんですけど、そのLINEの中で「つぎの週(ビスケットは)死ぬな」って話はしていて。でも台本を読むまではわからない、とも思っていたんですけど、先に台本を読んだ人からLINEが飛んできて、「あー、やっぱりそうなっちゃうんだ」って感じで知って。で、台本を受け取ったときは、死ぬことはわかっていたので、「どういう風に死ぬんだろう?」って思いながらページをめくったら、最初にビスケットの妹たちがしゃべっているシーンがあったので、「ああ、こういう演出をするのか。これは絶対泣いちゃうな」って思って。あれはきつかったです。

●『ガンダム』の主役を演じることで受けた影響

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――ところで、『ガンダム』の主役ということがプレッシャーになったことはありますか?

河西 やっぱり1話目の収録前がプレッシャーで。かなりそわそわしていました。まあ、収録が始まれば『ガンダム』であってもやること自体はふだんといっしょだ……って思っていたんですけど、具合が悪くなってしまって。自分では気にしてないつもりでも、第1話は共演者も多くて大所帯で、みんなの熱量や期待を知らず知らずのうちに受け取っていたというか……。ずっと気持ち悪いまま収録をしました。長丁場の収録で、収録後にはスタジオの方が食事をご用意してくださっていたんですけど、ちょっとしか食べられなくて。マクギリス役の桜井(孝宏)さんが、「座長が食べないとみんな食べられないから、食べな食べな」って、気を遣ってくださったんですけど。あんな状態になったのは初めてです。

――放映が始まってからのファンからの反応はどんな感じでしたか?

河西 Twitterやお手紙とかで、「三日月好きです」だったり「応援しています」っていうコメントはよくいただきます。おひとりだけ、「周りはこうしたいと思っているのに、三日月は自分勝手に行動して、私は好きになれません」っていうリプライを送ってくださった方がいたのですが、プラスでもマイナスでも、“影響を与えた”という点では、誇るべきことなのかなと。

――三日月というキャラクター自体が、プラス面だけで語れるようなキャラクターではないですもんね。

河西 そうですね。いままでの『ガンダム』シリーズの中でも異質だと思うので。『ガンダムW 』のヒイロに近いセリフもあったので、最初はヒイロと近いキャラクターなのかも……と思ったのですが、深く知れば知るほど、「いや、こいつはちょっと違うな」って。ヒイロは戦いを止めたいという、後ろめたさを多少持っていたと感じていたんですけど、三日月は前に進むためだけに戦うというか、そこが違うなと思いました。こんなに軽く引き金を引くキャラクターも珍しいし、生身で人を撃つというキャラクターは、ほかの『ガンダム』作品でも、じつはそんなに見たことがないなという。生きるためにはしょうがないということがいっぱいある世界なので、そう(引き金を引く)しないと自分が死んでしまうなら、やらないといけないんだろうなとは思っています。

――子どもには、けっこうずしりと来る展開かもしれませんね。

河西 いとこと話す機会があって、その子は中学生なんですけど「『鉄血のオルフェンズ』はすごくおもしろい」と言ってくれました。とくにどういう点がおもしろいかということまでは聞いてないんですけど、すごい食いついていてくれていて。アニメのオープニングで、三日月とオルガが腕をクロスするシーンを、ぼくとやりたいというのを、いとこのお母さんから聞いて(笑)。

――それは、ぜいたくですね(笑)。

河西 そういうこともあって、『ガンダム』っていまの子どもにも受け入れられているんだなあって思うと、やっていてよかったと思えます。

――では最後に、この秋から始まる『鉄血のオルフェンズ』の2期へ向けての意気込みをお願いします。

河西 現状(4月下旬)の段階では、役者陣も2期がどうなるかは全然わからないんですけど、『鉄血のオルフェンズ』の楽しみかたのひとつとして、ガンダムバルバトスの形態が変わっていって……というのは、きっと2期でもあると思うので、楽しみにしていてください。そして、ガンプラなど幅広い展開があると思うので期待していてください。きっと、『ガンダムトライエイジ』にもどんどん登場するでしょうし。ぼくたちといっしょに、物語を楽しんでいただければ……と思っています。

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