KenKen●本名・金子賢輔。数々のバンドを経て、2006年よりRIZEに加入(ドラムの金子ノブアキ氏は実兄)。その後もSPEEDER-XやWAGDUG FUTURSTIC UNITYに参加、自身もソロアルバム(すべてのパートはもちろんプロデュースも手掛けた)を2枚リリースするなど、幅広く活躍している。2014年3月6日現在は、Dragon Ashの全国ツアー“THE SHOW MUST GO ON”にベースとして参加中。2014年3月28日には東京・下北沢GARDENにてムッシュかまやつ氏や山岸竜之介氏らとともに、イベント“LIFE IS GROOVE”を開催する。
文献を読みたくて魔物を倒した
――本サイトで怒髪天の増子さんにお話を聞いたとき、“KenKenさんに『ソルサク』を勧められて興味を持った”とおっしゃっていました。
KenKen そうですね。おもしろかったので、「プレイしたほうがいいですよ」と勧めましたね。
――そこまでKenKenさんが『ソルサク』にのめり込んだ理由は何ですか?
KenKen ストーリーですね。下川さん(下川輝宏氏。『ソルサク』、『ソルサク デルタ』のディレクターを務める)が書かれた“文献”の内容ががすばらしくて。文献があるとないとでは大違いで、気持ちが敵に入っちゃうんですよ。しかも、マップにまで物語が用意されているゲームはなかったでしょう。“すげぇよくできてんなぁ”と感動しました。文献を読むために、敵を倒していましたから(笑)。
――そもそも『ソルサク』との出会いは?
KenKen 東京ゲームショウ2012で初めてプレイしたのかな。いちばん印象に残っていて、それから発売まで楽しみにしていました。
――実際にプレイして、おもしろかったということですね。
KenKen 『ソルサク』みたいなゲームはほかになかったし、とにかく見せかたがうまいというか、没頭できる作りになっていたので。ひとりで黙々とプレイしていたんだけど、クリアーしたときはストーリーの展開にびっくりしたなぁ。こんな物語を考える人はすごいって感動しましたよ。
期待するゲームほど事前に情報を見ない!
KenKen 魔物を倒したときにせつなくなるのもいいんですよね。とくにドッペルゲンガー(※編註:生贄にした影響を受けて、同じ魔物と化した元魔法使いの魔物)の設定とかゾクゾクします。“自分が魔物になったら、どういう魔物になるのか”とか、“自分が捧げるのは指かな”とか、いろいろ考えてました。ただ敵を倒すだけではなく、その背景にプレイヤーが深く入り込めるように作られていますよね。そこがいいんです。
――KenKenさんがいちばん深く入り込んだ魔物は?
KenKen いちばん物語が好きな魔物はフェニックスかな。ふつうは“フェニックス”と聞いて、あんな蛾みたいな見た目の魔物にはならないでしょう? でも、そうなった理由がきちんと描かれている(編註:新生をくり返す女と蛾の因縁がフェニックスを生み出した。詳しくは本編でどうぞ!)。そこが『ソルサク』のスゴイところだと思うし、好きになった理由のひとつです。働くのが嫌になって馬車と融合しちゃったケンタウロスとか、最高じゃないですか!(笑)
――『ソルサク デルタ』でも新しい魔物がたくさん出ますから、さらに世界は広がりますよ。
KenKen 新しい魔物はデザインもカッコイイし、文献が早く読みたい。そもそも、“赤ずきん”とか“ブレーメンの音楽隊”は、そもそも誰もが知っている童話がモチーフになっていますよね。それを『ソルサク』風にどうアレンジしているのか、気になりますよね。
――いくつか魔物とその物語は発表されていますが、お気に入りはありますか?
KenKen 期待しているゲームほど、事前に情報を仕入れたくないんですよ。なので、あえて何も見ていないんです。最初にプレイしたときの驚きを味わいたいので! ファミ通の記事にも文献が書いてあるから、正直あまり読まないようにしていまして(笑)。
――記事で紹介した文献は超ダイジェスト版ですよ! ゲーム中に書かれている文献は、ちょっとした小説くらいありますから。
KenKen そうなんですね。でも、やっぱりゲームで読みたい(笑)。でも、デザインを見るかぎり、いい魔物が揃っていますよね。やっぱりゲームは振り切ったほうがいい。発想がすばらしいです。
――新しいダークファンタジーを作り上げたゲームですよね。
KenKen “ダークファンタジー”と言っても、行き過ぎたらダメだし、おとなしくなったらただの“ファンタジー”になっちゃうじゃないですか。『ソルサク』は、そこがちょうどいいんです。
――陰鬱なだけのゲームではないし、主人公の物語もヒロイックな部分があって、爽快感も味わえると思います。
KenKen わかる! ただのマニアックなゲームにならないよう、気を遣っていると感じますよね。
グリムも気になるけど、アヴァロンへの愛着も!
――ちなみに、KenKenさんのプレイスタイルは?
KenKen 完全に生贄派で、近接攻撃がメインです。真っ黒なオーラを出しているイメージで(笑)。たまに遠距離魔法も使いますが、基本的にはガスガスと突っ込んでいきます。ご覧のとおり、帽子が好きなので(笑)、男魔法使いに大きなフードを着させています。
――『ソルサク デルタ』では衣装が上下別になるうえにアクセサリーも付けられるので、カスタマイズのバリエーションが増えてかなり楽しめますよ。
KenKen それを聞いただけでも、ユーザーの意見を取り入れてくれていることがわかります。魔法も増えていますし、魔法連携の要素にも驚かされました。だいぶ戦いかたが変わりますよね。どこまでプレイヤーの要望に応えてくれているのか、新しい要素が加わっているのか。どこまで変わっているのか、楽しみで仕方がありません。
――先程、『ソルサク デルタ』を少しだけ触っていただきましたが、ご感想は?
KenKen グラフィックがキレイですよね! 前作でもじゅうぶんキレイだと思っていましたけど。確かに女の子もかわいくなっていますね(笑)。同行者のグラフィックも違うな。ボーマンがイイ奴で大好きなんですが、印象が変わっています。魔法連携を探す楽しみもかなりありそうです。
――どの組織がお気に入りになりそうですか?
KenKen まだ決められないですね。グリムは当然気になるんですが、やっぱりアヴァロンへの愛着もあるので、しばらくは前作のデータを引き継いで、アヴァロンでがんばってみようかと思います。
――前作に出てきた魔物もAI(人工知能)が刷新されているので、新鮮ですよね。
KenKen バトルは、属性を考えるのが楽しいんですよ。あまり攻略情報を見ないでプレイするのですが、いざ戦ってみたら、見た目とは全然違う属性が弱点だったりするじゃないですか。でも、文献にヒントが隠されたりしている。「精神的な意味でその属性が弱点なのか!」とびっくりする。いろいろ考えて戦うのがおもしろいんです。あと、やっぱり音楽がいいですね。
――『ソルサク デルタ』では、さらに10曲ほど増えていますね。童話の本場ということで、ベルギーで録音されたそうです。
KenKen そういうの、すごい大事ですよ(笑)。そこでなければ出ない音ってありますから。“我が肖像”で流れている音楽が好きで、10分くらい聞いていたこともあります。それで、何年かぶりにゲームのサントラを購入しましたから。コーラスが入った曲も、ニーノ・ロータ(※編註:作曲家。映画音楽で多大な業績を残した)が作曲した『ゴッドファーザー』っぽいというか、哀愁さが強調されて世界観にぴったり合った、すごいイイ曲だなと思います。
ただのハンティングアクションではない
――あらためて『ソルサク』の魅力とは何だと思いますか?
KenKen やはりストーリーは外せません。前作でいうと、後半にかけてのストーリーの畳みかけっぷりがすごかった。『ソルサク』はいわゆるハンティングアクションに含まれると思うのですが、そういうゲームにはあまりハマれなかったんです。ただ強い敵を倒すためだけに、自分を強くする作業をくり返すというのは好みではない。でも、『ソルサク』は敵に愛着が湧くし、そのストーリーを見たいから頑張れる。そこが、ただのハンティングアクションっぽくない点だと思います。それに演出がうまいので、プレイするときに「おお、始まるな!」と気合いが入る。グラフィックがキレイだ、バトルが派手だ、それだけではハマれません。そこにストーリーが加わることで、初めて夢中になれるんです。
――演出が過剰ではないので、確かに自然と世界観に入り込める気はします。
KenKen 『ソルサク デルタ』では、個人的に“こうなっていればもっといいのにな”と思っていたことが改善されているようなので、楽しくプレイできそうですね。しかし、ゲームを作るということはたいへんですよね。映画よりも、もっと作り込む要素が多いじゃないですか。ストーリーやいい音楽はもちろんですが、ストレスを感じさせない操作感であったり、どこかひとつだけ突出しているだけでは、いいゲームになりませんよね。バンドも同じで、ひとりだけカッコよくても仕方がなくて、全員がカッコよくなって初めてバンドと呼べるようになる。『ソルサク』は、チーム全員で作っていると感じます。ゲームはもちろんですが、言葉ひとつが印象に残っている。名作は“おもしろい、おもしろくない”だけではなく、どこか心に引っかかるものが必ずあるんですよ。そういう意味では、『ソルサク』は名作と呼べると思います。『ソルサク デルタ』は海外でも発売されるんですか?
――時期は未定ですが、発売されるようです。日本らしいこだわりが詰まっているゲームなので、海外でもヒットするといいですよね。
KenKen “グリム”というモチーフは、ヨーロッパでこそ受けると思うんですよね。このゲームを作ったのは日本人なんだ、と言えるのはうれしい。
――この記事が掲載されるのは、まさに発売日です。まずは日本中のプレイヤーが“共闘”を楽しんでいると思います。
KenKen 僕もみんなと遊びたいですね。ちょうどいま、Dragon Ashのツアーに参加しているので、メンバーを誘って“共闘”してみます! 本当に楽しみだな……そのうち、オリジナル衣装とかでコラボしてみたいです。魔法使いの甲部に“KenKenの刻印”とか、どうでしょうかね?(笑)
第6回には、ビッグな“魔法使い”が登場!? 乞うご期待!!