『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『三國志13』のIP(知的財産)を使用し、同社監修の元で開発されたiOSとAndroidでサービス中のスマートフォン向けゲームアプリ。 本稿では、『三國志 真戦』をもっと楽しむためのインタビュー企画を掲載。第1回に引き続き、第2回でも、『三国志』研究の第一人者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に三国武将についての詳しいお話を伺った。

公開日時:2022-01-09 18:00:00

 iOSとAndroidでサービス中の戦略シミュレーションゲーム『三國志 真戦』。本作には、史実や歴史小説である『三国志演義』に登場するさまざまな武将を仲間にすることができる。本稿では、そんな三国武将たちのエピソードを、前回に引き続き、渡邉義浩氏と仙石知子氏に伺った。

 本作に登場する武将たちは、なぜそのパラメータを持っているのか。このインタビューを見れば、能力設定の理由がわかるかも?

 本インタビューの前編はこちら

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知れば知るほどおもしろい三国武将の世界

――前回に引き続き、今回も武将についての逸話をお伺いできればと思います。前回は3大君主と蜀の武将についてお伺いしました。続いては魏の武将ということで、夏侯惇についてお伺いできますでしょうか。

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渡邉 夏侯惇は金庫番で、曹操のお金や兵糧を管理していた人でした。呂布に1回だけ捕まったことがあるのですが、その時はお金と交換で解放してもらえたほど。曹操の寝ているところに勝手に入れたのはこの人だけなんです。曹操の絶大な信頼を得た、弟みたいな存在なんです。

仙石 曹操のじつの従兄弟でした。

――曹操と夏侯惇は深い信頼関係で結ばれていた仲だったんですね。

渡邉 曹操に「皇帝になれ」といちばん最初に言ったのも夏侯惇でした。夏侯惇が曹操の描いていた絵をどれくらい見えていたかはわからないのですが、「とにかく曹操についていく」と考えていた人なんです。

仙石 『三国志演義』では前に出て戦うような描写が多いですが、史実ではそんなこともなかったんですよね。彼が戦場に出てくるときは、いよいよ曹操が負けてしまうかもしれない、といったシチュエーションのときが多かったんです。

渡邉 もし、『三國志 真戦』に“忠誠度”みたいなパラメータがあったら、趙雲と並んで圧倒的な1位に輝くと思います。蜀における、劉備、関羽、張飛みたいな関係ですね。

――続いては荀彧です。曹操の覇業を補佐した名軍師ですが、知力、政治、魅力が非常に高く設定されています。なかでも政治のパラメータは全武将中1位です。

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渡邉 荀彧は好きな人物なので、うれしいです。

仙石 私も好きです。でも晩年が悲しい武将なんですよね。

――どんなところが好きなのでしょうか。

渡邉 荀彧は背が高くて容姿端麗なんです。禰衡(魏に仕えた人物。その立ち振舞から、人から恨まれることが多かった)という口の悪い人がいるんですけど、「葬式に行くのだったらあいつ(荀彧)の体を借りたい」と言わせるほど、優れた人物でした。彼のすごいところは、野心あふれる武将・軍団の中に身を置きながら、他人を推挙することができる冷静さや謙虚さの持ち主だったところです。ふつう、優れた才能を持っているなら、自分だけを推せばいいじゃないですか。でも、彼は君主である曹操にどんどん優秀な人材を紹介していきました。

仙石 『三国志演義』だと、曹操が荀彧に空の器を贈るエピソードが有名ですね。荀彧が休んでいるところに曹操から贈り物が届くのですが、それは空の器でした。これは要するに「お前は死ね」と言われていることと同じで、それが原因となって自殺をしてしまうというシーンがあります。いままでは曹操と同じビジョンを描いていたのですが、最後には描く未来がズレてしまって、仲違いしてしまったんです。

――仙石先生がおっしゃった晩年が悲しいとは、そういったエピソードがあったからなんですね。つぎは司馬懿に移りたいと思います。このキャラクターは知力が諸葛亮に続いて2位となっていて、名軍師だと思わせる能力になっています。

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渡邉 個人的には、政治の値が1位でもいいくらい、とにかく政治の能力が高い人物です。さきほどの荀彧に推挙された人物で、荀彧が失脚したあとは、その勢力をまとめ上げて自分の勢力を作り上げ、最後にはクーデターで魏の権力を握りました。現代の日本で政治家をやっていたら、確実に総理大臣になっていると思います。それほど、圧倒的な政治力を持った人物でした。

――『三国志』の歴史のなかでも、とくに政治力に長けた人物だったんですね。

渡邉 裏で暗躍して、人脈を張り巡らせて、勝てるときに一気にひっくり返すというのが司馬懿という人物です。負ける戦いはそもそもやらないし、勝てるときは電光石火で叩き潰していくという。戦争だけでなく、人と争って自分の地位を上げていくという、本当の意味での戦いを知っているすごい人なんです。ものすごく能力は高いんですけど、絶対に友だちになれないですね(笑)。

――続いては呉の武将のお話をお聞きしたいと思います。最初は孫堅から、お願いできますでしょうか。

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渡邉 孫堅は非常に武力が高い人物でした。董卓の軍隊と真正面から戦って勝てたのはこの人だけですから。だから、個人的な武力はかなり高いと思います。惜しむらくは、司馬懿の10分の1でも政治能力を持っていたら、国を持てたんじゃないかなと。あと、魅力もかなり高い人物です。呉の武将には孫堅に憧れて仕えた人がかなり多かったんです。部隊の統率力も非常に高いですし、パラメータはかなり史実に忠実だなと感じます。

――全体的に高い能力を持つ人物でしたが、政治が回せなかったんですね。

渡邉 孫堅は、すごくいい人なんです。だから、司馬懿みたいにうまく立ち回れなかったんですね。孫策(孫堅の息子。呉の基盤となる勢力を作るが、26歳という若さで亡くなった)も似たようなタイプですが、彼には周瑜という名軍師がいたので、孫策の代になってやっと、江東に国を持つことができました。

――孫策に仕えたという周瑜についてはいかがでしょうか。

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渡邉 軍師なので武力が低いのはそのとおりですが知力はかなりのものですね。政治能力や統率力も高い人物で、呉ではナンバーワンだったんじゃないでしょうか。伝統的な名家の出身で、かなりの影響力を持ちますが、それに見合うだけの努力も重ねていった人で、かなりちゃんとした人間ですね。あと、彼はすごい美男子なんですよ。歴史では容姿についてはあまり書かれないことが多いのですが、彼だけは「美しかった」と書かれるほど。奥さん(小喬)も美人ですし。

――容姿端麗な武将だったんですね。

渡邉 呉にとってのいちばんの損失は、周瑜に早くに死なれてしまったことだと思います。この人がいれば、もっと呉はちゃんとした国として運用されていたと思います。また、人間関係もかなりよかったんです。程普(孫堅、孫策、孫権と、3代に渡って孫家に仕えた武将)は、周瑜が軍を率いていることに不満がありました。でも、周瑜が周りに頭を下げて接することをきちんとやっていたので、程普もその魅力に虜になったというエピソードがあります。赤壁の戦いでは、孫権が「戦いたい」と言っても周りは納得しなかったのですが、周瑜が言えば納得するほどでした。それだけ、周りからの信頼が厚い人物だったんです。

仙石 渡邉先生がおっしゃるように史実で考えるとかなり魅力ある人物ですが、『三国志演義』だと、すごく嫉妬をする人物に描かれています。赤壁の戦いのときには、諸葛亮の知力に敵わないので、妬んで殺そうとしたと書かれています。さらに、なかなか戦おうとしない周瑜に対し、諸葛亮は「曹操が呉に攻め入ってくる理由は大喬と小喬(二喬と言われた絶世の美人姉妹。大喬は孫策の妻で、小喬は周瑜の妻)だから、ふたりを差し出せば曹操はこっちに来ませんよ」と言うんです。それを聞いた周瑜はカッとなって戦いに赴きました。

――孔明の煽り能力!(笑)。自身と義兄弟の妻を差し出せと言われれば、戦意も高揚しますよね。呉の最後は、陸遜についてお伺いできますでしょうか。

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渡邉 陸遜は悲劇の人なんです。孫策が陸遜の叔父にあたる陸抗と戦ったときに、孫策は陸抗の一族を女・子どもを残して滅ぼしてしまいました。陸遜から見たら、孫策は一族を滅ぼした人物なんです。なのに、自分は孫策の娘と政略結婚させられてしまうと。自分の一族を滅ぼした人の娘と毎日暮らしていたわけです。それでも陸遜は孫家に一生懸命仕えて、夷陵の戦いでは劉備を破るという大功績を上げました。でも、最後には孫権の後継者争いに巻き込まれ、散々責められたあげく、死んでしまいます。そういった悲しい歴史のある武将でした。呉の武将たちは若くして悲劇の結末を迎えることが多いですが、『三国志』ではいちばん陸遜が可哀想な人だなと、私は思っています。

――ゲーム中では知力のパラメータが非常に高いですが、才能はあった人だったのでしょうか。

渡邉 史実から考えると、呉という国はまだ開発途中だったんです。呉には山越(呉に従わなかった不服従民たちのことをいう)という人たちがいたのですが、陸遜は彼らを討伐して呉の領地を広げ、内政を安定させるという作業を一生懸命やっていました。史実ではそうなのですが、『三国志演義』ではそう書かれていないので、史実とは若干印象が異なる人物なんじゃないかと思います。ただただ、可哀想な人です。

――続いてはそのほかの勢力の武将について、お伺いしたいと思います。呂布についてですが、武力が全武将中1位と、圧倒的な武力を誇ります。

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渡邉 意外と魅力が低いんですね。呂布は、中国では女子に大人気なんです。中国で作った『三国志』のテレビ番組には、呂布と貂蝉(『三国志演義』に登場する人物。絶世の美女だったと描かれている)の恋愛物語があるほど、イケメンのイメージがある武将です。けっこう二枚目の俳優さんが演じていて、女子にモテモテというイメージがあります。

仙石 10年前くらいに『呂布と貂蝉』というドラマもあって、けっこう話題になったみたいでしたね。

渡邉 日本と中国ではイメージがかなり違うと思います。日本人はとにかく武芸に優れた武将としてのイメージが強いですが、中国ではハンサムでカッコよくて女性にモテるといった印象ですね。呂布は最後に曹操に捕まって殺されてしまうのですが、そのときに本当に殺してしまうか、曹操はかなり悩みました。でも、劉備がそこにやってきて「呂布がこれまでの主人に対して何をしてきたのか考えてください」と言い、思い返して殺した、というエピソードもあります。

――曹操も欲しがるほどの魅力あふれる人材だったんですね。

仙石 統率の数値もけっこう高いんですね。

渡邉 曹操みたいに法律で縛るといった人物ではなく、自分が戦っている姿を見せるのが呂布なので、後ろを付いていきたくなる魅力があるんだと思います。呂布といっしょに戦えばまず負けない。そういったところから彼に魅力を感じて「付いていこう」と考える部下も多かったんじゃないでしょうか。

――最後は、黄巾の乱を引き起こした張角を見ていただきたいと思います。

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渡邉 やっぱり魅力は高いですね。張角は宗教者ですから、彼を信じた人は、みんな張角に付いていっちゃいますよ。彼は黄巾の乱を起こしましたが、この乱が成功すれば、国を取れたかもしれないほどの人物でしたから。

――あの戦いの結果によっては、時代は大きく変わっていたんですね。

渡邉 そうです。彼は奇術師みたいな捉えかたをよくされていますが、政治によって民を動かしていた人物でした。なんせ、36ヵ所で同時に、しかも、宮中にも味方を作って反乱を起こした人物ですから。宗教性と政治性を兼ね備えたのが、張角なんです。

――ですが、戦わせていたのがふつうの民だったので、兵士には勝てなかったと。

渡邉 もう少し軍人に信仰を広げればよかったんですけどね。



 ゲーム中では見られない、群雄割拠の時代を生きた三国武将たち。彼らの歴史を知ったことで、武将たちの新たな一面を垣間見ることができただろうか。これらのエピソードを聞けば、なぜその武将がこのパラメータを持っているのかにも、納得感が出てくるだろう。

 今後も、『三國志 真戦』には、新たな武将がつぎつぎと登場することが予想できる。まだ登用したことがなかい武将が仲間になったら、ぜひ、そのキャラクターの歴史を振り返り、いままで知らなかった『三国志』に対する知識を深めてほしい。


 なお、著名研究者である満田剛氏にさらなるお話を聞くインタビュー第2弾も掲載。こちらもぜひチェックしてほしい。

『三国志』のことはプロに聞け! 第3回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

◆『三國志 真戦』とは
三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの監修の下で開発したスマートフォン向けゲームアプリです。「三國志」シリーズ原作の遊び方をしっかりと継承しています。

▼ゲームダウンロード
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id1524742294
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.qookkagame.sgzzlb.gp.jp

▼公式情報サイト
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タイトル
三國志 真戦
メーカー
Qookka Games
対応ハード
iOS/Android
価格
基本プレイ無料(アイテム課金制)
ジャンル
シミュレーション
公式サイトはこちら