『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『三國志13』のIP(知的財産)を使用し、同社監修の元で開発されたiOSとAndroidでサービス中のスマートフォン向けゲームアプリ。 本稿では、『三國志 真戦』をもっと楽しむためのインタビュー企画を掲載。第4回となる今回は、中国・三国時代を研究する満田剛氏を招き、三国時代のさまざまな逸話について伺った。

公開日時:2022-02-14 19:00:00

 iOSとAndroidでサービス中の戦略シミュレーションゲーム『三國志 真戦』をさらに楽しむためのインタビュー企画を掲載!

 第4回となる今回も、『三国志』を長年に渡って研究している満田剛氏に登場いただき、『三国志』について語っていただいた。

 今回は、各武将たちのリーダーとしての資質や逸話を中心にお話を伺っている。このインタビュー記事を読めば、英雄として見られていた三国武将たちが、ちょっとだけ身近な存在として感じられるかも?

 本インタビューの前編はこちら

『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

Interview 満田剛氏
 中国・三国時代の史学史を専攻。東京富士美術館“大三国志展”学術アドバイザー。著書に『三国志 正史と小説の狭間』(白帝社)など。

部下の管理がたいへんなのはいまも昔も変わらない!?

――『三國志 真戦』はプレイヤーどうしが同盟を組んでほかの勢力と戦っていくゲームシステムとなっていて、それぞれリーダーが必ず存在します。リーダーとしては仲間のモチベーションを高めることが必須となりますが、三国時代では、このモチベーションの維持のためにどんなことが行われていたのでしょうか。

満田 曹操に関する話があります。曹操は“官渡の戦い”で袁紹を破っているのですが、その戦いの後、袁紹側の陣地から曹操の家臣の手紙がたくさん出てきました。

――それにはなんと書かれていたのでしょうか。

満田 文章として伝わったわけではないのですが、曹操の部下が袁紹に向けて「袁紹様が勝った暁には~」など、“曹操が負けるであろう”という前提で書かれた手紙を送っていたと考えられています。ですが、曹操はそれらを一切見ないで全部燃やし、それを書いた人たちも不問に処したという逸話があります。曹操自身でさえ負けると思っていたんだから、家臣も当然そう思っているだろうと言って、家臣のことを許して度量を見せたんです。後漢の光武帝にも似たような逸話があり、手本にしたと思われます。

――曹操は非常にきびしい人物だと思うのですが、そういったエピソードもあるんですね。『三國志 真戦』は集団戦での勝ち負けが重要なゲームですので、ゲーム内の同盟のリーダーは、曹操のような鷹揚な対応をするとチームの結束力が高まるかもしれませんね。

満田 たしかにきびしい人物ですが、両面あると思います。不利なことを自分に取って有利なことに変えられたので、非常にいい対応だったと思います。曹操は冷酷な人物だと書かれることが多いですが、血のつながりを大切にする一面もありました。曹操、曹仁、曹洪などの曹氏の人物や、夏侯惇と夏侯淵などの夏侯氏は、幼いころからずっといっしょにやってきたから、彼らのことは非常に信頼していたという話もあります。

――きびしい部分だけの人物ではなかったんですね。

満田 つぎは諸葛亮のエピソードを。馬超という武将が蜀に来たときに、関羽が諸葛亮に「馬超はどんな人物なのか」と聞きました。諸葛亮は、「張飛とはいい勝負だけど、髭殿(関羽)とは比べ物になりませんよ」と手紙で関羽を褒め、関羽はその手紙を周囲に見せびらかして喜んだというエピソードがあります。諸葛亮はそういった、“くすぐりかた”も非常にうまい人物でした。

――人の気持やプライドを大切に扱っていたのですね。『三國志 真戦』でも、人と人が協力して遊ぶゲームですから、同盟員とコミュニケーションを取って、褒めたり感謝の気持ちを表すことは重要になりそうです。ところで、そんな関羽や張飛は、諸葛亮の言うことをあまり聞かなかったと言われていますが。

『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

満田 出会った最初のころはたいへんだったと思います。劉備、関羽、張飛はおそらくそれほど年齢が離れていませんが、関羽たちと諸葛亮は、それこそ親子ほどの年の差がありました。劉備と諸葛亮が親密になっていくことにふたりが複雑な思いを持っていたと史実にありますので、「そんな子どもみたいな若造の提案をもとに命令を出されても……」という気持ちになっても不思議ではないかもしれませんね。でも、孫権の呉ではもっとたいへんで、地方の豪族たちにものすごい配慮しないといけませんでした。

――どういった理由から配慮しなければいけなかったのでしょうか。

満田 孫氏は、軍事力を基盤として力をつけてきた人たちだったわけです。おそらく孫氏一族自体もある程度の豪族ではあったと思いますが、呉の有力者たちが孫策や孫権を君主として認めていたのは、その軍事力が自分たちを守るのに使えると思ったからなんです。だから孫家はその武力を誇示して豪族たちを安心させないといけない。そういった配慮をするのは、たいへんだったと思います。

――強大な軍事力を持つからこそ従えられていたと。『三國志 真戦』では、自分の武力などのパラメータ(自分の競争力)を示して同盟の人材を募集する人もいますし、やはり、自分の実力をアピールすることは重要なんですね。

『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

満田 また、周瑜は孫権に積極的に頭を下げるなどのことをしていたのですが、それを見せていたから、ほかの部下たちは孫家を敬っていたという話もあります。周瑜の一族は、国家官僚トップクラスの人物を輩出した名門中の名門で、孫氏よりも格が高いとされていた一族でした。そんな名門出身の周瑜が積極的に頭を下げているのだから、まわりの人たちも孫権を認めないわけにはいきませんよね。

――周瑜はそれを見越して、しかたなく孫家に頭を下げていたのでしょうか。

満田 それもあると思いますが、孫策との人間関係から孫氏に仕えていた部分もあると思います。孫策は、父の孫堅が董卓と戦うというときに、周家に居候していた時期がありました。

――周瑜と孫策は幼なじみだったんですね。

満田 はい。ふたりは断金の交わりと言われるほど、固い友情で結ばれていました。友情もあるし、周瑜としては孫家の軍事力があれば漢王朝復興ができると思って仕えていたし、さきほどいった政治的な意味合いもあったしと。

――孫権が君主として認められたのは、周瑜のおかげでもあると。こう聞くと、どの勢力も部下にはかなり気を遣っていたんですね。

満田 三国時代に限らないと思いますが、かなり気を遣っていたと思いますよ。

――とくに蜀の人物が代表的かなと思いますが、蜀には“仁”や“義”といった、感情で仕えていた人が多かった印象があります。

『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

劉備

満田 そういったエピソードが記録に残るということは、逆に珍しかったのではないでしょうか。

――たしかに、そうかもしれませんね(笑)。ちなみに、満田さんは、三国時代の武将に仕えるなら、どの人物を選びますか?

満田 一周回って諸葛亮ですかね(笑)。非常に真面目な人物で、過労死したのではないかと言われるくらいの働きかたをした人でした。あと、人情の機微にも通じた人だったんです。譙周という人物がいたのですが、その風体を見た官僚が会議の最中に笑ってしまったことがありました。大事な会議の場で笑ってしまうようなことは規則違反だったようで、この官僚たちをどう処罰しようかという話になりました。ですが諸葛亮は、「私でさえ我慢できなかったのだから」と不問にしたという逸話があります。

――真面目なだけの人ではなかったのですね。ゲームでも、統治者はカリスマ性を持ち、リーダーシップを発揮する場面が多々ありますから、そういった逸話から『三国志』を楽しんでみるのもおもしろいかもしれません。

満田 漢王朝復興という大義名分こそあれ、諸葛亮はある意味いちばん腹黒い人なのではと考える人もいますが、彼は家臣を大切にする人です。彼のもとで働いていたら、変な陰謀は仕掛けてこないだろうから安心できますね。

――満田先生は『三国志 最強武将Top45』という書籍を書かれていますが、ご自身が考える三国時代の最強の武将をひとり挙げるとしたら、誰になりますでしょうか。

満田 やっぱり曹操じゃないでしょうか。

――なるほど。どういった部分が?

満田 三国時代で最強の覇道を敷いた人ですし、やはりあれだけの勢力を作り上げたのはすごいことだと思います。非常に頭もよかった人ですし。

――学問にも優れていたと。

満田 兵法書の『孫子』が有名ですが、三国時代のころには、いろいろな人が書き足しをしてしまって、もとの形がわからなくなっていたんです。それを削ってもとの形に復元しましょうということをやっていたのが曹操なんです。

――そういった逸話もあるんですね。

満田 教養もありますし詩人としても一流ですし、総合的に見て、やっぱり彼が最強なんじゃないかなと思います。

――曹操はゲーム中のパラメータを見てもかなり高く、統率の値は全キャラクター中1位という数値になっています。

『三国志』のことはプロに聞け! 第4回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

満田 統率力はそのとおりですし、不利なときには絶対に無理をしないような頭のよさもありますね。諸葛亮とはまた違った強さだと思います。

 曹操は宦官の孫とされていますが、当時の曹操の周りにいた人って、それこそ国家官僚のトップクラスにいたすごい人たちばかりでした。「おじい様にはお世話になりました」って言ってくれる人がたくさんいたんです。曹操はそういう人たちからいろいろなものを教わっていて、知識や情報、教養を得たと言われています。

 また、諸葛亮についてですが、彼も相当の人脈を持っていていました。当時の荊楚は、新たな学問の動きが起こった場所で、そこで勉強してきた人ですから、知識人たちの人脈は、かなりのものだったと思います。周瑜もさきほどお話したとおり、一族から国家官僚のトップを輩出した一族ですから、こちらも情報力という点ではすごいものだったんだろうなと考えています。

――人脈が自身の情報力に影響する時代だったんですね。

満田 当たり前ですが、インターネットもない時代ですからね(笑)。

――『三國志 真戦』の上位プレイヤーになると高いカリスマ性を持ち、リーダーシップを発揮することが多々あります。強い人のもとには、人が集まりやすかったんですね。

満田 そうですね。やはり人の上に立つ者の魅力というのは、いまも昔も変わらなかったんだと思います。


 全4回で展開したインタビュー企画にて、我々が知らなかったさまざまな『三国志』を知ることができた。『三國志 真戦』にもあるように、三国時代にはさまざまな武将たちが登場し、それぞれが魅力的な逸話を持っている。さらに『三国志』のことが知りたくなったという人は、今回のインタビューで登場した人物たちが執筆する書籍にて、さらに知識を深めてみてはいかがだろうか。

 また、本企画の第1弾として、著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』についてのお話を聞くインタビュー企画も掲載中。こちらでは三国武将の逸話を紹介いただく内容を中心に掲載しているので、ご覧あれ。

『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた
『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2

◆『三國志 真戦』とは
三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの監修の下で開発したスマートフォン向けゲームアプリです。「三國志」シリーズ原作の遊び方をしっかりと継承しています。

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タイトル
三國志 真戦
メーカー
Qookka Games
対応ハード
iOS/Android
価格
基本プレイ無料(アイテム課金制)
ジャンル
シミュレーション
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