『三国志』のことはプロに聞け! 第3回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの歴史シミュレーションゲーム『三國志13』のIP(知的財産)を使用し、同社監修の元で開発されたiOSとAndroidでサービス中のスマートフォン向けゲームアプリ。 本稿では、『三國志 真戦』をもっと楽しむためのインタビュー企画を掲載。第3回となる今回は、中国・三国時代を研究する満田剛氏を招き、三国時代のさまざまな逸話について伺った。

公開日時:2022-01-29 12:00:00

 iOSとAndroidでサービス中の戦略シミュレーションゲーム『三國志 真戦』。本作は、当時の時代を再現したリアルな地形、当時を生きた多彩な三国武将が登場し、三国時代の群雄割拠の戦いを楽しめるゲームとなっている。

 『三国志』の詳しいお話を専門家に聞くシリーズの第2回となる今回は、中国・三国時代の史学史を専攻する満田剛氏を招き、さらなる三国時代の魅力について伺った。

 本記事は前後編の前編。ここでは、三国時代の成り立ちや、各地域の特色、貨幣についての話題を掲載。これを見れば、さらに三国時代のことが詳しくなり、より一層『三國志 真戦』を楽しめるはず!

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

Interview 満田剛氏
 中国・三国時代の史学史を専攻。東京富士美術館“大三国志展”学術アドバイザー。著書に『三国志 正史と小説の狭間』(白帝社)など。

栄える場所に塩あり!? 君主たちが争奪し合った三国時代の土地

――まず、三国時代の成り立ちからご説明いただけますでしょうか。

満田 三国時代が始まる前、“後漢”という時代がありました(西暦25~220年)。この後漢が建国されてから80年ほどが経過したころ、内部の混乱が頻発するようになります。この後漢を治める皇帝が代替わりするにつれてどんどん幼くなってきて、その幼帝を支える外戚(皇后や妃の一族)や宦官(宮廷や後宮に仕えた去勢された男子)に加えて地方の有力者でもある官僚が入り乱れての権力闘争から、この動乱の時代が始まることになります。

――皇帝はいますが、実質的な最高権力者としての地位をかけて、権力闘争をしてきたわけですね。

満田 その後、『三國志 真戦』でいうと、西涼や巴蜀といった地域から反乱が続発するようになり、最終的に、皆さんご存知の黄巾の乱が起こりましたが、当時の中国が寒冷化の時期を迎えて農作物がうまく育たなくなってしまい、食べることに苦しんだ農民によって起こされたことが原因のひとつとされています。これは数十万人という農民たちが立ち上がって1年近く戦っていた反乱なのですが、これだけの数の農民だった人たちが農業から離れても食糧を確保しながら反乱を続けられたということは、ただの突発的な蜂起ではなく、背後で誰かが支援していたのではないかと考えられています。

――それは誰なのでしょうか。

満田 それが、さきほどの権力闘争のなかで、国に失望した元官僚たちなんです。黄巾の乱は失敗に終わりましたが、全国的に反乱が続きました。その後、宮廷闘争の混乱の中で董卓が台頭して、反董卓軍との戦いが起こり、さらに群雄割拠の争いの中でつぶしあいが続いていきますが、最終的に魏呉蜀の三つ巴の三国時代が訪れる……というのが、三国時代の成り立ちですね。

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

――『三國志 真戦』では、勢力を拡大することが重要なポイントになっています。実際の三国時代では、勢力を拡大することにどんな意味を持っていたのでしょうか。

満田 当時は農業が経済のベースになっていますから、食の源であり経済のベースにもなっている土地の確保は重要になっています。農業生産に有利な土地は、争いの場所になりやすいですね。あと、農地だけでなく、商業の基盤になっている都市や、交通の要所も重要ですから、そういった場所では争奪は起こりやすいです。董卓が台頭して以降の群雄割拠は、勢力拡大を目的とした争いが続発します。ですが、三国成立のころからは、その争いも沈静化します。どこかを攻めてしまうと2対1の戦いになってしまいますから、睨み合いの形式になりやすい時代だったといえます。

――3ヵ国の勢力が拮抗していると、どこかを自分以外の2ヵ国が敵になってしまった場合、自国が一気に潰されることになりかねないからですね。

満田 三国時代は土地の争奪がしにくくなっているので、辺境に勢力を広げていった時代でした。

――ちなみに、この時代に武将として生まれたとしたら、満田先生ですとどこの土地の人間になりたいですか?

満田 いやあ、命のやり取りが続発しているような時代ですから、まずこの時代には生まれたくないなぁ(笑)。

――身も蓋もない(笑)! そこをあえて。

満田 そうですねえ、このゲームの中の地域でどこかひとつ選ぶとなると、西涼、巴蜀、荊楚あたりの西方や南方の土地でしょうか。このあたりは異民族が多いので、その人たちと協力してやっていけるのであれば、このあたりが勢力を広げやすい場所だなと考えています。荊楚は、後漢の終わりのころには劉表が支配していた土地ですが、この土地は東西南北のすべてにつながる交通の要所だった地域なんです。交通の要所は商業の拠点になりますから、荊楚を最初から支配できるとしたらかなりポイントは高いです。多くの勢力が争奪し合っていた場所だから、守るのもたいへんそうですが。

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

――重要な場所なだけに、ここに国を建てたら狙われやすいと。

満田 狙われますね。巴蜀は盆地なので、地形的には守りやすいと言われています。西涼は巴蜀と商業でどう結びつくのかというのがポイントになっている土地ですね。

――『三國志 真戦』は、史実に忠実なマップが登場しますから、三国時代の実際の地形を知っておくと、有利にゲームを進められるかもしれませんね。そして、そのほかの土地を選ばないのにはどんな理由が?

満田 河北や山東は、黄巾の乱などでぐちゃぐちゃになってしまった土地なので、治めるのは難しそうです。ですが、山東は塩の生産などが盛んだったので、そういった点ではかなり有利な土地だったと思います。荊楚のたいへんな点のひとつに、“塩をどうやって手に入れるのか”という問題があります。そのほか、江東や荊楚は長江流域にあるのですが山もけっこう多い土地です。農業が栄えるのが川沿いしかなさそうなので、農業がやりづらく、難しそうです。

――ああ、なるほど、塩。内陸に位置する巴蜀では、塩はどのように手に入れていたのでしょうか。

満田 このあたりは塩水が出る井戸から塩を取っていたと言われています。じつは、「三国時代の各国の勢力範囲は、それぞれの地域の塩の行き渡るエリアだった」……と述べられている方がいるくらい、塩は重要なんです。蜀の地域は、その井戸の塩水から取った塩、呉は海から塩を取っていた地域で、魏は、海沿いに加えて洛陽と長安のあいだにあった塩湖(解池)から塩を取っていました。

――塩は人間に欠かせないものですから、生産できる土地は戦略的に重要ですね。

満田 ちなみに、曹操や袁紹が目指した、河北を取ってそこから河南などを攻めてどんどん南下していくルートは、後漢を築いた光武帝が通ったルートなんです。それを真似することで、自分も同じように動いてみたいというイメージがあったんだと思います。

――『三國志 真戦』は、洛陽の争奪を目的としたゲームとなっています。三国時代の洛陽という場所は、どのように重要だったのでしょうか。

満田 そもそも後漢での洛陽(当時は雒陽)は皇帝が住んでいる都です。黄巾の乱のあと、董卓は洛陽を捨てて彼の配下の出身地に近い西の長安に移っていきましたが、そのときに洛陽は董卓に焼き払われてぐちゃぐちゃになってしまっています。ですが、もともと後漢王朝の首都としてみんな認識していた場所ですから、ここを支配するということには大きな意味があったんです。

――戦で荒れてしまってはいるけれども、シンボル的な意味もあり、ここを支配している人が三国の覇者だと思わせる場所だったんですね。

満田 そうですね。もともと非常に豊かな土地ですし、各地に移動もしやすく、盆地で関塞を固めて防衛することもできるというすごい場所なので、シンボル的な意味合いがありつつも、ほかにも手に入れたくなる要素が満載の土地でした。

三国時代の“お金”事情

――『三國志 真戦』では、“玉璧”、“金銖”、“銅貨”というゲーム内の通貨が登場します。こちらについて、当時どういった価値のあるものだったのか、教えていただけますでしょうか。

満田 銅貨というのは文字どおり銅で作られた貨幣で、当時から流通していました。玉璧は、“玉”と呼ばれる宝石でできた、平たくて環状のものです。

――(「玉璧」で画像検索して)おお、なるほど。翡翠などでできた巨大な5円玉というか、穴の空いたお盆というか。サイズはいろいろありますが、どれもきれいなものですね。お金とはまた異なる価値を持つものだったんですね。

満田 直径30センチ以上もある大きなものもあり、祭祀のときに用いたり、皇帝の権力を象徴するものとして贈られたりしていました。

――ちなみに、『三國志 真戦』で武将を登用する際は、以下の方法で登用できます。

1.金銖を消費する
2.銅貨を消費する。※獲得手段:マップに点在する賊を討伐するか、造幣場で製造する

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

3.探訪をする。※銅貨を使い町に赴き、武将を探して登用する

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

満田 金銖と銅貨を消費するときは、「これをプレゼントするから自分に仕えてくれ」というふうに使っているのかもしれませんね。

『三国志』のことはプロに聞け! 第2回 著名研究者である満田剛氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その1

――“金銖”はどうでしょうか。

満田 うーん、“金銖”というワードでそのまま思い当たるものは歴史書『三国志』にもないのですが、当時の中国には“五銖銭”という貨幣が流通していたので、これは“金で作られた通貨”という意味で設定されているのかなと思います。

――当時も、金は貴重な金属だったのでしょうか。

満田 そうですね。当時から価値のある金属として扱われていました。

――金以外でも、いまほど発掘・精錬技術も発達していませんから、金属自体が貴重なものだったでしょうね。

満田 董卓の時代の前には、「お金が足りません」となったときに、銅銭(五銖銭)を真ん中で撃ち抜いて銅銭を中と外に分け、2倍にして使っていたというエピソードもあります。加えて、董卓が粗悪な銭を作ってしまい、誰も当時の貨幣を信用しなくなって、物々交換に近い状態に逆戻りしてしまったという逸話もあるんです。

――では、貨幣はあまり使われなかったのでしょうか。

満田 いえ、そうとも限りません。董卓が倒されたあと、ある程度情勢が安定すると、各勢力が貨幣制度を敷き直したと伝えられています。西涼のほうに敦煌(とんこう)という都市がありますが、そこのお墓から蜀漢の通貨が出土しており、わりと流通していたことがわかります。魏と呉も貨幣制度を敷きますが、あまりうまくいかなかったという話もあります。


 さまざまな逸話が飛び出した満田剛先生のインタビューは、後編に続く!

 また、本企画の第1弾として、著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』についてのお話を聞くインタビュー企画も掲載中。こちらでは三国武将の逸話を紹介いただく内容を中心に掲載しているので、ご覧あれ。

『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた
『三国志』のことはプロに聞け! 著名研究者である渡邉義浩氏と仙石知子氏に『三国志』の詳しい話を聞いてみた。その2


◆『三國志 真戦』とは
三國志 真戦』は、Qookka Entertainment Limitedがコーエーテクモゲームスの監修の下で開発したスマートフォン向けゲームアプリです。「三國志」シリーズ原作の遊び方をしっかりと継承しています。

▼ゲームダウンロード
App Store:https://apps.apple.com/jp/app/id1524742294
Google Play:https://play.google.com/store/apps/details?id=com.qookkagame.sgzzlb.gp.jp

▼公式情報サイト
公式サイト:https://sangokushi.qookkagames.jp/prism-kldd0u80
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『三國志 真戦』ファミ通.com特設サイト

タイトル
三國志 真戦
メーカー
Qookka Games
対応ハード
iOS/Android
価格
基本プレイ無料(アイテム課金制)
ジャンル
シミュレーション
公式サイトはこちら